IS 速星の祈り   作:レインスカイ

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今回のコンセプトは
『悪意の行先/越えた一線』となっています。
もう、ね…行きつく先が、大きく踏み越えてます


第80話 災風 近づく

「頭痛い…」

 

早朝訓練を終えて朝食のために立ち寄った食堂、いつもの海が見える席では楯無さんが突っ伏していた。

近くには本人が用意したのであろうカフェオレがすっかり冷めた状態になっていたが、本人としてはそれどころではないのかもしれない。

 

「ちょっとウェイル、アレどうするのよ?」

 

「俺に訊くなよ…」

 

この状態の人には関わりたくない。

絡み上戸になった碧の釣り人(クーリン氏)を思い出すが、絡まれそうになった点でシスター(?)らしき人に簀巻きにされて引きずられて行ってたっけか。

だがそんな現実逃避をしたところで、目の前の楯無さんの状態がどうにかなるわけでもない。

…仕方ない…。

 

「どうしました楯無さん?」

 

非常に面倒だが、鈴に背中を押されてしまっては仕方ない。

少しは良いところを見せておこうか、カウンセリングは得意分野ではないんだけどな。

 

「先日の会議の結果、あの二人がどうなったかは覚えてる?」

 

「ええ、覚えてますよ。

織斑が半年謹慎、篠ノ之が無期限謹慎。

付け加えて反省文を毎日50枚でしたっけ。

あ、謹慎処分終了後に懲罰が待ち受けている、とかも在ったかな」

 

「なのに織斑君と篠ノ之さんの懲罰処分に関して日本政府が干渉してきて言いたい放題してきているのよ」

 

訊かなきゃよかった。

あの連中、まさかあの二人また野放しにするつもりじゃないだろうな…。

 

「だけど自室謹慎処分という落し処は着けているから暫くは大丈夫だと思うんだけど…」

 

「どうせまた問題行動を引き起こすのは目に見えてるのに、もう刑務所にでも収監したらどうなの?

人の姿して悪知恵が働く災害みたいなもんじゃない!」

 

「そうですね、不用心にも程があります」

 

ううむ、メルクも鈴も言いたい放題だ。

だが内容としては大いに同意だ。

だが、自室謹慎、ねぇ。

 

反省文提出で忙しくなりそうだが同情なんざしない、自業自得だ。

イタリア政府は何らかの報復処置を働くかもしれないが、未だに動いているのかどうかすら怪しい状態だ。

昨晩、家族には話はしたけど、嫌な顔されたからなぁ。

モニターには映っていなかったが、姉さんの姿がなかったことを考えるに、相当忙しくしているんだろう。

 

「他にもあってね、千冬さんだけど、学園から去る数日前にあちこちに電話をかけていた事が判明したのよ。

どこに電話をしていたのかは判らないけれど、こっちも嫌な予感がしているのよねぇ…中には海の向こう側にまで届いているらしき番号まで存在していた始末だし」

 

…どう考えても厄ネタだ…。

 

「私のお仕事が山積みなのよ…」

 

「虚さんに負担を押し付けないようにしてくださいね」

 

厄ネタには関わらないのが賢い判断だろう、悪いが此処で会話を打ち切ろう。

逃げの姿勢に入ったが…いつかのように服の背中の部分をつかまれた。

 

「ここまで言わせて逃げるだなんて薄情でしょう!?

せめて手伝ってくれたっていいじゃないのよぉぉぉぉっ!」

 

「アンタ、カフェオレで酔ってるのかよ!?

離してくれ!白衣に皴がつくだろぉぉっ!」

 

「手伝ってくれるまで離さないぃっ!」

 

恨むぞ鈴!お前が押し付けたからこんなことに…!

 

「…その、ごめん…こんな形になるまでとは思わなかったわ…」

 

「鈴さん…」

 

いや、謝られると俺も言葉に困るわけでな。

仕方ない、だったら最後の手段だ…!

 

「楯無さん、そんなに掴みかかってくるのなら俺にも考えがある。

あのバングル(・・・・・・)、取り付けますよ。

とうとう永久ロック式が完成しましたので」

 

その言葉でようやく楯無さんの手が固まった。

あのバングルは彼女にとっても十二分に精神的苦痛を刻み込んでいた筈だ、到底あらがえる代物ではないのは判りきっている!

 

「手を放すか、あのバングル(・・・・・・)を装着されるか、嫌なほうを選んでください」

 

ここでさらに選択肢を狭めておいた。

ようやく離してくれたようなので、一歩逃げに入った。

 

「流石にアレは堪忍して…非人道的にも限度があるでしょ…」

 

楯無さんの顔が一気に青褪めていった。

 

「アンタいったい何をやったのよ…?」

 

前後両方から冷たい視線が突き刺さってくるが、俺は悪くねぇ!

 

「俺としては話しても良いが…」

 

「離すから話さないでぇ…」

 

紛らわしい事を言ってやがる…

 

話は食事をしながらになった。

とはいえ話は先程出ていた状態のままであり、無難な対応に応じるしか学園にはないらしい。

そこで他の生徒に危害が加わる事が無いように、自室に閉じ込める形で謹慎期間を過ごしてもらう形にするのは話がついているらしい。

他の生徒に被害が広がる事も無く、本人達の頭が冷めるまでは謹慎、頭が冷ませられないなら、謹慎処分の期間を延長させるとの事。

これで始末が着けばいいんだけどなぁ。

個人的に、俺は織斑と篠ノ之を信用しない、これは今後も変えることのない考え方だ。

 

「それで、日本政府には何か得られるものでも?」

 

「自己満足と保身、それだけね」

 

「頭の中がお花畑じゃないの?」

 

鈴の言葉が冷たい…。

とはいえ俺も同じ考えだ。

だが日本政府は『有事に備えて』の考えではなく、『事が起きなければそれで良い』という性質の考えなんだろう。

その結果、迷惑をこうむるのが自分でなければ、それ以上考慮していないのかもしれない、薄情だなぁ。

以前、姉さんが言っていた『地図の上からは人が見えない』という考えの亜種なんだろう。

 

「迷惑を被り続けているのは私達なんですけど…」

 

「本当にごめんなさいね…」

 

「中間管理職ってのは辛いなぁ…」

 

そんな職には就きたくないけど、俺も将来的にはその椅子に座ることになるかもしれないんだ。

無能な働き者って面倒だよなぁ。

 

 

暗い話はそこまでになった。

楯無さんの復帰まで5分を要し、

 

「そうだ、皆は臨海学校の準備はしているのかしら?」

 

ようやく明るい雰囲気に持ち込ませるに至った。

そういえば、そんなイベントがあるって言われていたよな。

学園からバスで向かう海に面した旅館で過ごす一週間の旅。

いいよなぁ、久々に釣りに集中出来そうだ。

鈴とティナの釣り竿も完成しているし、二人にも釣りを体験してもらおう。

ついでに、簪、ラウラ、シャルロットの釣り竿も既に完成している。

虚さんと楯無さんの釣り竿にもすでに取り掛かり始めている、出発までには渡せるだろう。

 

「ええ、釣り竿は完成してますよ」

 

だから堂々と言い切っておく。

だが反応は…イマイチだった、なぜか知らんが冷たい視線を向けられてしまっている。

おかしいな?まだ何か足りなかったか?ああ、アレだな、思い出した。

 

「鈴とティナの二人はそろって生餌は触れたくないという事なので、人数分の疑似餌(ルアー)も作ってます。

もちろん竿本体だけでなくリールも作っておきました、電動式はあまり好まないので、自分の手でリールを巻く手動式です。

生憎と釣糸(ライン)は市販の品にはなりますが…」

 

「………」

 

おかしい、何故か視線がさらに冷たくなった。

すでに極寒の域に入っているような…。

……解せぬ…

 

「そうじゃなくて!

せっかくの海水浴日和なんだから泳ぎなさい!

水着の用意はしているのかって言ってるの!」

 

いや、泳ぐのなら学園内ではプールが有るし、釣りが出来ないから…

 

「それもそうね…ねぇウェイル、一緒に買い物に行きましょうよ!」

 

私が(・・)お兄さんと一緒に行きます!」

 

右手に鈴、左手にメルクが組み付いてくる。

なんでこうなった?

 

「じゃあ、私も一緒に行こうかしらね?」

 

後ろの席に居たらしいティナまで後ろから乱入してきて抱き着いてくる始末。

後頭部に水風船のような感覚が感じられるが、俺は動じない…姉さんだって同じ事を何度もしてきているんだ、大丈夫、俺なら耐えられる…!

よし、耐えた!

 

「アンタ達、便乗しすぎでしょ!」

 

「私は身内ですから同席するのは当然です!」

 

「仲が良いわねぇ、二人とも」

 

だが、俺の頭上で言い合い喧嘩するのはどうにか出来ないか?

助け舟を要求しようと楯無さんに視線を投げるが…既に逃げていた。

やれやれ、仕方ないなぁ…。

スケジュールを整理しておかないとな。

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

彼等は反省など一切していなかった。

自分達こそが正しく、それを咎める側こそが間違っているのだと信じ、決して疑う事などしなかった。

 

「なんでオレがこんな目に遭わなくちゃいけないんだ…!」

 

あれから毎日毎日、勉強机に向かい合う時間だけが彼の日常になっていた。

毎日毎日、反省文を書いては提出する。

食事は『配給制』と言わんばかりに細く開かれた扉の隙間から差し込まれるだけ。

回収はされず、自分達の手で洗って片づける。

それが終わればまた勉強机に向かい合う、それだけをまるで機械のように繰り返す日々だった。

 

これまで過ごしてきた中学校までは優秀な成績を収め、教師からも優秀な生徒として見られていた。

そしてそれを姉に伝え、「私の自慢だ」とまで言われていた自分が、今では誰からも白い目を向けられていた。

事もあろうに、自身の姉である織斑千冬でさえもそんな視線に晒され続けていた。

そして、先月末にはとうとう織斑千冬が学園から追い出された。

それだけでなく、自宅でさえも不審火によって失った。

帰る場所を失うなど彼からしても到底予想など出来なかった、許せる事ではなかった。

なのに…接触・干渉禁止とされた少年が、笑顔を浮かべて過ごしていることが許せなかった。

気に入らない、だから今度こそ潰す(・・・・・・)と決めた。

自分の手で下したいと思ったが、自分の手を汚すなど、スマートなやり方ではないと考えていた。

だから、使い慣れた常套手段を使うことにした。

 

「何もかも全て、お前が悪いんだぞ、ウェイル・ハース」

 

そんな折の日、扉の前から会話が聞こえてくる。

それは近隣の部屋の女子生徒だろう

 

「ねぇ、今度の臨海学校に合わせて水着は用意した?」

 

「ううん、まだだよ。

今度の土曜日に行くつもり!」

 

「土曜日?どこかでバーゲンでもやってるの?」

 

「3組のウェイル君が今度本土側に買い物に行くって話を聞いちゃったの!

偶然を装って同行しようって思ってるのよ!」

 

「ズルい!私も行く!」

 

「ふふん!ウェイル君は日本本土側は巡った事は無いだろうから、新宿駅付近一帯を一緒に巡ってみようっと!

そうと決めたらさっそく誘ってみないと!」

 

盗み聞きされているとは彼女らも全く考えていなかったのだろう、笑い声と一緒に立ち去っていくのが聞こえた。

運が巡ってきた、それはその二人の脳裏によぎった悪意だった。

 

彼は携帯端末に手を伸ばす。

 

「そうだ、こうすれば良かったんだ」

 

それは彼にとっては常套手段の一つだった。

気に入らない、それだけの理由で相手を追い詰めることなど迷いなどなく今まで繰り返してきた。

他者の心を動かし、他者を利用し、自らは動くことなく、自身の目的を達成する。

自分が輝いているように見せるため、他人を踏み躙ることなど、彼にとっては日常だったのだから。

 

「確実に仕留めてくれよ、お前ら」

 

以前から付き合いのある腰巾着達に対し、画像付きのメールを送り、すぐにその送信したメールを削除し、痕跡を消した。

それで完全に消えるものではないと、そう考えもせずに。

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

「あいつだ、あいつが何もかも悪いんだ…!」

 

ここにまた一人、反省などせずにいる者が居た。

同室の少年が不機嫌でいる理由などすぐに察し、怒りで肩を震わせている。

自分達が怒りを他者へぶつける事は正当であり、それを遮ろうとするのは理不尽そのものであると本気で考えている。

その怒りをぶつける事は今ではとても難しいのが理解出来ていても、だ。

今まで暴力で相手を黙らせ続けた、それで自分の意見を押し通した。

どのような形であれ、自分の意見が通ったのなら、正しいものであると疑いもしない。

だから、暴力とは彼女にとって唯一の手段と成り果てた。

例え、その暴力で相手に傷を与えようと、相手の未来を奪おうとも、夜襲の結果として何の関係もない他人を傷つけることになったとしても、その考えは変わらなかった。

そして、傷を負わせた事を咎められそうになれば、姉である『篠ノ之束』の名前を出して黙らせる。

それが常套手段となり、彼女はとうとう今に至るまで、咎められる立場から逃げ続けた。

それが今に至る。

姉の名前さえ出せば、自分が『咎人』の扱いにならずに済むと学習してしまっていた。

今に於いても。

 

「直接手を下せないのなら…誰かを利用してしまえば良い…!」

 

この仕返しは正当なものであると自身の中で完結させていた。

自分は咎められる人間ではないと本気で思っていたから。

そして夜、布団を頭から被りながら携帯端末を操作し始める。

 

NO NAME

『誰でも良い、この男を討ってくれ』

 

そう書き込みをし、画像を添付する。

添付したのは、白い髪を伸ばした少年だった。

だが、その写真はどう見ても隠し撮りしたものというのが明白だった。

匿名の掲示板故にだろうか、返信はすぐに発生した。

 

NO NAME

『物騒な書き込み乙』

 

その書き込みが最初だった。

そこからもコメントが次々に記されていく。

 

NO NAME

『銀髪…?いや、白髪かな?これはウィッグか?』

 

NO NAME

『討ってくれとか殺人委託みたいじゃん、危ない事を書くなよ』

 

NO NAME

『しかもこの角度からしたら、撮られた本人は気付いてなさそうだし、隠し撮りじゃね?』

 

NO NAME

『撮られた本人の許可を貰ってんの?

そうでなきゃ肖像権侵害で犯罪かもよ』

 

難しい言葉が出てきたが、それについては何も考えない。

見なかった振りをして、文字をそのまま入力していく。

 

NO NAME

『この男の名前はウェイル・ハース。

イタリアで発見された男性IS搭乗者だ』

 

その書き込みの後数分間は返信が途絶える。

本名だけでなく、彼の素顔を不特定多数の人間に公開した事など深く考えはしない。

正当な仕返してあれば、その手段が如何なるものであろうと正当化される、咎められる人間は自分ではなく、ウェイルであると本気で信じ込んででいたのだから。

 

NO NAME

『イタリアの代表候補生がハースとなってるのは確認出来たが』

 

踏み込んできた人物が居る。

それを見て彼女はニヤリと嗤う。

 

NO NAME

『そうだ、写真に写っているのはソイツの兄だ。

この男はIS学園で詐欺を続けている極悪人だ!

私はコイツに貶められ、濡れ衣を着せられ続けているんだ!』

 

NO NAME

『イタリアの男性搭乗者だがソースが見つからないぞ。

寧ろ様々な話が飛び交っていて真実らしい情報がどれになるのやら』

 

NO NAME

『画像の男がその張本人だという保証が無いだろ。

仮に張本人でも肖像権侵害と殺人委託のセットで逮捕確実だろ。

その辺で止めとけ、既に手遅れかもしれんが』

 

にべもない返信に箒は歯軋りをする。

怒りで肩を震わせるが、大声を出す事だけは耐えた。

同じ部屋には幼馴染みである全輝が居る以上、自分の怒り声で彼の眠りを妨げる事はしたくなかったのだろう。

それでも、震える声は怒りと苛立ちを募らせていた。

 

「何故誰も理解をしない…!

奴は私達を陥れる極悪人なんだぞ…!」

 

その時だった、食い付いたかのような投稿がされたのは。

 

NO NAME

『なぁ、写真の後方に注目してみろよ。

あのオブジェクトらしきもの、IS学園に実在するものだぞ』

 

NO NAME

『…ふぁ!?じゃあ本物!?』

 

NO NAME

『信憑性は増してきたかも。

尤も、その人物の名前が本当に符号してたらかもだが』

 

ニヤリと、口の端が歪む。

望む展開に近付いてきた。

そう思うだけでも、表情が歪んできた。

追撃とばかりに更に文言を書き加えていく。

 

NO NAME

『奴は学園の中で人を陥れる悪行を繰り返す犯罪者だ。

現に多くの生徒が奴に騙され、冤罪を被っている、それも何度もだ!

それだけじゃない!

ウェイル・ハースの陰謀で学園から千冬さんが追い出されたんだ!

これ以上の蛮行を許すわけにはいかないんだ!』

 

また、投稿が途絶えた。

自分の望む展開に流れたかと思えば、思わぬ方向へと転がってしまう。

その理由が自分に在ると考えず、常に他人のせいにするのが篠ノ之箒の性分でもあった。

 

「だったら…!」

 

NO NAME

『7月7()日から臨海学校へ赴く事になるが、準備の為に4日に新宿へウェイル・ハースが向かうと判明した。

私は奴の手によって冤罪を被り、動く事が出来ない。

IS学園の中で奴がこれ以上の犯罪行為を行い、他の生徒に危害を加えるよりも前に、誰でも良いから奴に裁きを下してほしい!』

 

そう投稿する。

同時に、隠し撮りした写真を掲載し直した。

ここまですれば、誰かが動くだろう。

そうなれば、ウェイルが誰かの手によって仕打ちを受けると想像して。

だが、決してそれ以上の事など考えようとしない。

 

自分に非が在るとは考えない。

この報復は正当なものである、と。

自分だけが正しいのだ(・・・・・・・・・・)と、信じて疑わない。

 

「ここまですれば誰かが動くだろう」

 

本当の事を言えば、自分の手で、剣で裁きを下したいとも考えていた。

だが、それが出来ないのなら誰かを利用すれば良い。

そう、本気で思い込んでいた。

 

考えの相違など、力で捩じ伏せる。

姉の名を出せば、誰もが押し黙る。

相手が黙るのなら、自分が正しいというなによりの証拠。

 

その乱暴な三段論法が彼女の考えでしかなかった。

単純思考故にだろうか、怒りによるものだろうか、この夜だけで幾つもの(・・・・)致命的な間違いを犯した(・・・・・・・・・・・)事に気づいてもいなかった。

 

「そうだ、私は何一つ間違ってなどいない。

全輝の為にやっている事なんだ、間違いである筈がない。

そうだ、私は何も間違ってなどいない」

 

忌々しい者が、何処の誰とも知らぬ者達によって裁かれるだけ。

自分は何一つ咎められる事などしていない。

何故なら

手を下すのは自分ではない(・・・・・・・・・・・・)のだから。

人間ですらない物など(・・・・・・・・・・)考慮するに値しない(・・・・・・・・・)のだから。

 

その行いの先に、自身に待ち受けているのは輝かしい未来が約束されているのだと、そう疑いもしない。

忌々しいものを排除し、千冬と全輝から讃えられるそんな未来が在るのだと…

 

「そうだ、私が正義(・・・・)だ」

 

そう呟き、端末を充電用コードに繋ぎ、眠りに就いた。

 

そして数日後、地獄が繰り広げられた。




ティナ・ハミルトン
誕生日 4月7日
年齢 16歳
アメリカ出身の一般学生。
軍にも籍を置いてあり、教練も受けているため技量は高い。
地元では有名な学府に通っており、成績もトップクラスだった。
人当たりもよく、誰が相手でもであろうと分け隔てなく親しく接する彼女に対し、故国では本人の与り知らぬところで隠れファンクラブも非公開で設立されていたとか。
IS学園でも1年2組にてクラス代表補佐を務める事となるも、なかば鈴の世話焼きをすることになっているが、本人はその類のことで手を焼くのを楽しんでいる。
ウェイルの件は鈴が編入してきてから知ることになり、興味を持つことに。
鈴がウェイルに不思議な視線を向けていることにも早々に気付いており、あの手この手でで背中を押そうとしている。
髪の手入れを手伝うのも、その一環。
学年別タッグマッチトーナメントで鈴にヤキモチを焼かせるためにタッグの申請書をウェイルに預けてみたりした。
あっさりとウェイルが受け入れることに驚くも、それからは友人としての距離を保ち続けている。
が、やはり鈴のコロコロと変わる表情を見るのを楽しんでいる節があり、大胆な行動に出ることも。

国家代表候補生就任を目標にウェイルと一緒に切磋琢磨している。
本人曰く、太りにくい体質だとか。
バストサイズは98らしい。

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