IS 速星の祈り   作:レインスカイ

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Q.ウェイルの考案した兵装などは何かモデルになったものとかがあるのでしょうか?
あるのであれば教えてほしいです。
P.N.『匿名希望』さんより

A.飛行機を見て思いついた、というのが作品中の設定ですが、それぞれモデルにしたものは確かにあります。
それに関しては…まあ、秘密ということで。



第74話 嘘風 真贋を問わず

ウェイル・ハースとティナ・ハミルトンの連携、そして私の一瞬の判断ミスによってシャルロットが戦闘不能に追いやられた。

ああ、これは確かに私のミスだ。

迫りくる深紅の槍を、AICを使ってもあの推進力を受け止めきれないからと、ギリギリで受け流すのが精一杯だった。

だが、その先に居たであろうシャルロットに背後から直撃させてしまった。

 

これは紛れもなく、私自身のミスだ。

このミスは必ず試合の後に贖う、そう決めた途端だった。

 

バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!

 

空気の抜けるような音とともに私の眼前を何かが埋め尽くした。

 

「コレは…!?」

 

L字型の飛来物、大きさは私の腕ほどだろうか。

それが、群勢(・・)となって飛び交っていた。

 

「今回はアルボーレを使わない…いや、使えない(・・・・)んだ。

奇策に次ぐ奇策、これが俺達の最後の手札『知慧の梟神(ミネルヴァ)』だ!」

 

「その程度ォッ!」

 

AICを展開して、真正面から迫る飛来物を受け止める。

慣性停止結界の前では無力となったそれを観察する。

L字型の物体には何か武装が搭載されているようには見えない。

これが最後の手札…?

あまりにも奇妙だ、副腕といったような奇策を使ってきた相手が今更こんなものを目晦ましにでも使うというのか?

 

バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!

   バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!

      バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!

 

…発射音がまだ続いている…!?

 

観察を中断し、視線を周囲に向けた。

L字型をした飛来物が、大量に飛び交っていた。

 

「まだまだいくわよ!」

 

ティナ・ハミルトンの両腕の兵装から、飛来物が再び射出されていく。

その数は…既に400を超えて…!?

いや、ハースの両腕にも…!?

 

「チィィッ!」

 

両腕のプラズマブレードを展開、ワイヤーブレードも射出を…!

 

バシィッ!

 

意識が反れた。

それが致命的なミスだったのかもしれない。

背面浮遊部位(アンロックユニット)に飛来物の一部が張り付いていた。

それと同時に、いくつかの数のワイヤーブレードの射出口が塞がれてしまっていることに気付く。

そのまま恐ろしい速度で飛来物が背面浮遊部位(アンロックユニット)に次々と貼りついていく。

 

バシィッ!

 

リボルバー・カノンの弾倉部位に張り付く。

同じように飛来物が大量に貼りつき、弾倉部位の回転が封じられ、装填が出来なくなる。

これでようやくこの兵装の能力の正体がわかった。

 

「『武装を封じる』為の兵装か!」

 

右手の手刀で飛来物を切り裂く。

左手で結界を展開して飛来物を防ぐ。

それでも全体の数に比べれば極微量の破壊でしかない!?

 

「少し違うな、ミネルヴァは『捕縛』を主眼に置いた兵装さ」

 

捕縛、だと…!?

この大量数の飛来物が捕縛のため、だと…!?

 

バシィッ!

 

脚部装甲に張り付き、その上から更に飛来物が張り付く。

更にその上からも…両足が早くも封じられた。

右から、左から、上から…後ろから…!

AICで止めようが、ワイヤーブレードを稼働させようが、手刀で切り裂こうが、補いきれない数の梟の群勢が飛び交ってくる。

 

「足が動かせなくなったところで…!」

 

バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!

 

…まだ来るのか!

 

バシィッ!バシバシィッ!バシィッ!

 

左肘に取りつかれた!?

なるほど、捕縛を主眼に置いているというだけある。

たった三つだけで私の左腕すべての動きを封じられた。

右手だけでAICを展開するも、その数に対して補いきれず、背面スラスターに取りつかれ、空中での機体制御ができなくなり、落下する。

 

「カハッ!」

 

肺の中の空気全てが一気に吐き出され、呼吸が出来なくなる。

酸欠気味になり、霞む視界だろうと慣性停止結界を維持させるも右腕に取りつかれる。

振りほどこうと、腕を振るうが、まるで離れない。

 

「…やってくれる…!」

 

まさか、こんな手段を講じてくるとはな…!

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

「すっごいわね、このミネルヴァって…」

 

上空から見下ろす光景としては、アリーナグラウンド全体にこのブーメランが大量に飛び交い続けている。

ウェイル君から聞いた話だと、一つのマガジンに400個が収納されている。

それがウェイル君と私の両腕に持っているから、その総数1600程。

 

「俺も詳しくは知らないが、イギリスのBBCから接収したBT兵装のデータが応用されているらしい」

 

「あれを!?ってことはこのミネルヴァって第三世代兵装じゃないの!?」

 

BT兵装って確か脳波で兵装を稼働させるものよね!?

私はその適性があるのかどうかは判らないけど、そんな兵装をぶっつけ本番で使わせる!?

 

「BT兵装のデータを応用した、と言っただろう?

只でさえ、ISは女性にしか動かせない、適正で稼働率が変化する、なんて言われている。

そこで更に使用できる人間が限られる、なんて兵装が何になる?

使えるというのなら、誰もが使えるような汎用性と応用に富んだものにするべきだろ」

 

「あ、うん、技術者の職業病が出たの?」

 

「誰が職業病だよ」

 

現状、君以外に誰が居るのよ?

 

「話を戻す。

脳波で動かせる人間が限られているようなものはナンセンスだ。

道具と言うのは、誰もが均等に使える物であるべきだ。

だが、兵器や武器はそれこそ限られたものが持つべきもの。

それこそ、命を奪い預ける事になるからな。

このミネルヴァは、その力を持つ者が暴走をした際に、非力な者が使うために作られた兵装だ」

 

「なるほどね…」

 

一般市民は力を持たないのが普通(・・・・・・・・・・)だ。

それこそ力を持っている方が異常(・・・・・・・・・・・)なのは少し前の世論でも当たり前だった。

ISが登場してからはその思考は転換してしまった。

誰だって力を得られる可能性がこの学園開校と共に始まったから。

そして、ISを使ったテロリストなんてものも今の世の中には居るものだから、力を持っていないからというだけで(・・・・・・・・・・・・・・・・)殺される人間だって居る。

ウェイル君はその真っただ中にいる人間なんだもの。

だったら、逆境に立たされる人間の考えがわかるのだろう。

その為のミネルヴァ、力を暴走させる者たちに対しての抑止力だ。

 

「よく考えたものね、このミネルヴァって…」

 

「ああ、コイツの数量からはそう簡単には逃げられないさ。

ましてやこのスピードからは、な…」

 

整備室での作戦会議でも簡単にその話は聞いている。

事前に教えてもらった話では、このミネルヴァの速度からは、現状の第二世代機並みのスピードからは逃げられない。

それこそ…『テンペスタⅡ』の速度が最低でも必要になる。

…あれ?これって、今後はイタリアのテンペスタのシェア率が一気に上昇するんじゃないの?

私、その片棒担がされてない?

 

「これって、量産が出来るの?」

 

「多分、な。

だけど、これを持てる人間も限られるだろうさ。

抑止力になるとはいえ、力は力、使う人間次第で悪用もされるだろう、だからこれを持てるのは…いや、ちょっと待て」

 

ウェイル君の視線が私からボーデヴィッヒさんに向けられていた。

眼下に居るボーデヴィッヒさんはというと…ミネルヴァに集られ包まれ行動不能の…筈…?

 

「え…なに、アレって、まさか…!?」

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

テロリストは嫌いだ。

奴らは笑いながら人を殺す。

自分以外の命に価値が無いと笑いながら殺す。

俺は奴らが起こした騒ぎによって、命が失われる瞬間を目撃したことがあった。

だから……だろうか。

それに抗える力を求めたのは…。

 

あの日、飛行機を空に見た。

それを見て、最初に思い付いたのがプロイエットだった。

参考にしたのは、飛行機の脚部だった。

ローラーブレードにモーター機構と、操作パネルを持てば、誰もが風を切って走れるようになるかもしれないと。

一般には、速度を多少抑えたものを販売する予定がイタリアでは進められていると聞いた。

 

最初がプロイエットなら、最後に思い付いたのがこのミネルヴァだ。

これは『力を持たない者』が持てる力だ。

そして、『力に飲まれた者への抑止力』とも言える。

多少時間はかかるが、これは相手を無力化し、捕縛に特化させた。

生産コストも安くて量産も可能、そして取り回しもしやすい。

今回はミネルヴァの使用に重きを置いてある。

その為に、アルボーレの為に使用していた情報処理リソースの全てをこちらに全て費やした。

そうでもしなければ、ボーデヴィッヒに対しての勝算なんて言えるものは無かったからだ。

接近戦闘はそれこそ自殺行為、ボーデヴィッヒは近接戦闘を好んでいた節があったから距離を開けるのには苦労させられた。

更に厄介なのは、支援射撃を行うであろうシャルロットだ。

彼女の射撃能力があればミネルヴァを大量に撃ち落されていた可能性が濃厚だった。

だからボーデヴィッヒにミネルヴァを使う前にシャルロットの撃破が必要となり、そっちは一旦ティナに任せることにした。

 

後は、どれだけボーデヴィッヒの虚を突いて、付かず離れずの距離をとるかが問題だったわけだが、ティナによる音響手榴弾での支援ありきの戦いだった。

…ティナがいなければ詰んでたな、間違いなく…。

 

2対1でもようやくだったかもしれない。

だからといって、1600対1は大人気無さ過ぎたかもしれないな…。

 

だが、これでこの兵装の臨床試験は完了だ。

たとえ相手が軍勢でも、強力な兵装だろうと、ミネルヴァは立ち向かえるどころか圧倒出来る!

 

「…いや、ちょっと待て」

 

ボーデヴィッヒの様子がおかしい。

あれは、何だ…!?

張り付いたミネルヴァの隙間から…泥のような何かが…!?

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

「凄いわね、ミネルヴァって…」

 

「あれも、お兄さんが考案したものです。

かつて、テロリストが起こした騒ぎに巻き込まれ、殺されそうになったことがあって、その無力化の方法をずっと探していたんだと思います」

 

ウェイルがテロに巻き込まれた、か。

今も生きているのは一つの奇跡かもしれない。

無力な子供が巻き込まれ、生き残る可能性なんて、あってないようなものだから。

 

「私もその場に居ました。

目の前で、何人もの人が無力に殺されていくのを目撃したんです。

建物の中に逃げ込めましたけど、それまでに、何人も…」

 

兄妹揃って酷い過去を経験したのね…。

でも、その経験あって、この兵装か…。

まったく、アイツは自分を『劣等生』だなんて言っていたけど、どこを見ればそう言えるんだか。

間違いない、アイツは新しい可能性を作り出せる存在だ。

だからって訳じゃないけど…それを排除したがっている奴らを見逃す気は無い。

観客席では全輝と篠ノ之が忌々しそうにウェイルを見ているけど、あんな奴らこそ居なくなればいいとさえ思ってしまう。

 

「何にしても、また凄い手札を用意したものね、アンタ達兄妹は」

 

ここまで色々と見せられた。

『ウラガーノ』『アルボーレ』『アウル』『クラン』そして今回の『ミネルヴァ』。

手を変え品を変え、立ち向かう相手の欠点を突き続ける切り札を用意してくるなんてね。

アンタは奇術師か!とでも叫びたい気持ちだわ。

 

「だけど、兵装一つを犠牲にしてまで、相手を捕縛する兵装、か。

どんな考えをしてたら思いつくんだか」

 

「飛行機の翼、だそうですよ」

 

いや、そういうことを訊いてるんじゃなくて…。

そもそも私としては別の話を聞き出そうと思っていたのに、明確なまでに境界線を作られて聞け出せなくなってる。

答えるつもりも無さそうだし、ヘキサって人に聞いてみようかと思えば、来賓席に案内されていて会えないし…。

行き当たりばったりの出たとこ勝負をするつもりは無かったけど、思うように事が運べなくて苛立ちが溜まるわね…。

なんか…うまく誘導されてる気がしないでもない。

でも、先のやり取りは何かを掴めそうな気がしていた。

メルクは…何かを知っていて、それを執拗に隠そうとしている。

 

「どうしました?」

 

「いや、何でもない…」

 

視線を咄嗟に反らす。

私が何を聞き出そうとしているのかも、たぶんメルクは察している。

だけど、先に境界線を作られてしまった以上は容易に踏み込めない。

力ずくの手段に走ろうとすれば、ラウラの二の舞のごとくミイラにでもされ…

 

「ねぇ、メルク、アレ、何…!?」

 

「…アレは…!」

 

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

虚を突かれた

 

 

認めよう

 

 

私の情報を事前に分析されていた

 

 

それも認めよう

 

 

翻弄され続けた

 

 

悔しいが、それも認めよう

 

 

だが…簡単に敗北だけは認めたくない!

 

 

「動け…!」

 

左腕…飛来物が張り付き、マニピュレーターすべてが動かない…!

右腕は…肘から先は拘束され、プラズマブレードすら覆われ、枷を填められたかのように持ちげることすら難しい…!

足は…飛来物が張り付き、それ同士が吸盤でも持っているかのようにくっついて、一歩も動かない!

スラスターも覆われ、ワイヤーブレードの半分は飛来物が絡みついて動かせない。

残り半分は射出口自体を塞がれ、放つ事すら出来ない…!

AICは…手を向けなければ発動が出来ないことも向こうは理解していたのだろう。

だから、手を向ける先を特定出来ないほどの数で視界を覆いつくした。

 

「動け…!」

 

残る兵装、リボルバーカノンは弾倉部位が固定され、次弾の装填すら出来なくなってしまっている…!

 

「動け…!」

 

バシィッ!

 

「グゥッ!?」

 

左腕の装甲に新たに張り付き続け、更に重みを増す。

捕縛に重きを置いたとは良く言ったものだ、これは確かに枷になる。

莫大な数を用意すれば、並の人間どころか、IS搭乗者でも太刀打ちすら出来なくなってしまうだろう。

だが…!

 

「私をそんなものと同じだと思うな…!」

 

どれだけの屈辱を刻まれてきたと思う…!

どれだけの努力を積み重ねてきたと思う…!

這い上がり…!やっと今いる場所にまで辿り着いた…!

あの人に近づきたかった…!

だから歩む事を辞めなかった!

 

だが!現実はどうだ(・・・・・・)

その真実はどうだった(・・・・・・・・・・)!?

 

結局あの人(織斑 千冬)は私を一人の人間として見ていなかった!

いや、もっとタチが悪い!

あの女(織斑 千冬)は私を傀儡にした!

この地獄はなんだ!

そうでなくても…私を鍛えたのは…!

失った誰かの代わりにしたかっただけなのか!

 

willst du macht?(汝、力を望むか?)

 

ああ、欲しい!

あの女と、袂を分かつために!

完全に訣別するために、繋がりを残さず切り裂く力が!!!

 

Auch wenn du verschwindest?(貴様が消えうせようとも?)

 

元よりあの女の目には私など映っていなかった!

ウェイルのように、まっすぐに私を見ていなかった。

私の後ろに居るであろう誰かを重ねて見ていたんだ!

あんな…

 

「あんな奴のようになってたまるものかぁっ!」

 

Ich habe die Form, die du wolltest(貴様の望んだ形を掴んだぞ)

 

まて、私に問いかけ続けた声は…誰だ、この声は…!?

 

モニターが勝手に展開される。

 

<ruby><rb>Valkyrie trace system activation</rb><rp>(</rp><rt>ヴァルキリートレースシステム 起動</rt><rp>)</rp></ruby>

 

禁忌が記されていた。

知らない…私はこんなもの知らない…!

 

「が…!?」

 

突如として激痛が全身に襲ってくる。

視線を下に向ける

 

「なん、だ、コレは…!」

 

シュルツェア・レーゲンが…溶け、て…!

 

「が…アアアアァァァァァァァァァァァァァァッッ!

嫌だ、辞めろ、来るなぁぁぁぁっっっ!」

 

そして、泥が私の視界をも埋め尽くし…

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

「お姉ちゃん、アレ、何…!?」

 

来賓席に案内した先で、簪ちゃんがラウラちゃんの変容していく姿を見て叫びをあげる。

私も視線を向けずにはいられなかった。

まさか、禁忌とされていたソレが、ここに現れるだなんて思わなかった。

 

「VTシステム…正式名称はヴァルキリートレースシステム。

モンド・グロッソに於ける…」

 

「部門受賞者の動きを再現させる禁忌のシステムよ」

 

私の返答をつないだのは、たった一人の来賓、ヘキサ・アイリーンさんだった。

 

「一度起動すれば、類稀なる戦闘能力を発揮する殺戮人形と化すわ。

ただし、並の搭乗者には扱いきれないわ。その理由は知っているわよね、生徒会長さん?」

 

ええ、知っている。

並の搭乗者に扱いきれない、ではなく…正しくは『耐えられない』から。

 

「搭乗者による制御は出来ず、外部からの指示に従う事例すら存在せず、その攻撃対象に見境が無い。

それだけでなく、搭乗者の命を失わせる可能性が高い。そうでなくとも廃人と化す、でしょう?」

 

「そんな…!じゃあ、ボーデヴィッヒさんは…」

 

「このまま放置すればそう長くもない時間で…敵も、味方も殺しつくして、最後は搭乗者も死ぬか廃人となるかの二つに一つ。

それでいてその結果に至る時間もまちまちで、周囲の人間を相手に見境の無い殺戮を繰り広げる危険がある。

だからこそVTシステムはデータ提供、研究、再現、搭載、使用、起動、その全てが禁忌とされているわ、納得できたかしらお嬢さん?」

 

簪ちゃんの顔はもう真っ青だった。

かくいう私も同じようなことになっている自信があった。

けど、固まってなんかいられない。

内線をつかみ、管制室へとすぐに繋げた。

 

「ティエル先生!アリーナグラウンドの全ての防護シェルター展開!

生徒達の避難を!」

 

『もう始めているわ!来賓席の人も早く避難させなさい!』

 

「承知しました!ヘキサさん!すぐに退避を!」

 

「見なさい、VTシステムが変容を終えたわ。

あの姿は…見覚えがあるのではなくて?」

 

言われ、視線をグラウンドに戻した。

VTシステムは人の姿に至っていた、その姿は…

 

「嘘…でしょ…アレって…千冬さん…?」

 

一人の女性…間違いなく織斑千冬その人の姿に見えた。

VTシステムだとしても…最悪のケースだ…よりにもよって、世界最強と言われた人物のデータが再現されているだなんて…。

 

「ここでもう一つ教授しておくわねお嬢さん達。

VTシステムで再現される動きは、映像を解析してそれを再構築しただけでは完成しないとされているわ。

それこそ、本人の稼働実績データ(・・・・・・・・・・)が必要なのよ。

でなければ、再現不可能とされているわ」

 

…悔しいけど、事実だわ。

映像だけではデータが不足しているからこそ、実の本人のデータが要求される。

あの人は…!自分のデータをVTシステムの開発者側に明け渡したことになる!

明らかなまでに…国際条約違反(・・・・・・)だった。




例のシステムに関しては、原作では曖昧にされがちですが、映像データだけで実戦投入出来るものにまで仕上げられるかが、どうにも判明していないんですよね。
なのでこの辺りは原作改変になってるかも?

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