IS 速星の祈り   作:レインスカイ

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第6特異点クリアァッ!
いったい何個の星晶石を放り捨てることになっただろうか…。
あ、つい先日ですがFPガチャをしてみたら、『エウリュアレ』と『ステンノ』が一緒に召喚出来ました。
我がカルデア家にはメドゥーサも居るから一気に居心地が悪くなるね!
だがメドゥーサの方がレギュラーをしていて圧倒的にレベルが高いし『怪力』のスキルも習得しているからゴリ押しでもなんとかなるかもしれないサ。
けれど彼女たち姉妹を育てるための種火も実はたっぷりと死蔵しているから力関係は元通りになるのもそう遠くはないのかもしれない…。

それはそうと、各ガチャの引きの悪さとボーナス召喚のサービスの悪さ…。
水着サーヴァントを期待してなけなしの石を投入しても、すでに持っている概念礼装だったり、イベントガチャのボーナス召喚で取得済のサーヴァント(佐々木小次郎&メドゥーサ)が出てきたりとか…。
宝具レベル向上のために使用したけど、イベントに関係してるのを出してよ…orz

それはそれとして、黒のZEROと輝剣のエクステラ・リンクの時代の彼しか知らなかったからか、第6特異点に平行して、今回のイベントを進めると、湖の騎士の実態を知ったら色々と彼のイメージが、ね…。

さて、種火を大量入荷して育成をしっかりしてから第7特異点に挑むとしようか。
現在の目標としては、各サーヴァントを最終再臨後育成完了レベルに至るくらいにまで!

現在の状況


鈴鹿御前 LV80(完)


エミヤ LV80(完)


クー・フーリン LV70(完)


メドゥーサ LV60(未)
アキレウス LV71


ナーサリー・ライム LV71


ダレイオス3世 LV70(完)


佐々木小次郎 LV60(完)
新宿のアサシン LV50(未)

(完)=最終再臨後最大レベルまで育成済
(未)=再臨可能なレベルに至りながらも素材不足につき再臨未達成


第30話 悪風 矜持と

夢を見る。

それは私にとっては日常的な話でしかなかった。

でも、夢の中で思い出すのは、後悔と悲嘆ばかりだった。

初恋の人が忽然と居なくなり、何が起きたのかもわからぬ内に、その人は死んだ事にされてしまった。

 

私は、一夏のことを深くは知らなかった。

知ったつもりになっていただけだったのだと、後に思い知らされた。

 

住んでいる場所に居場所なんてなかった

 

求めた場所は…

 

自分()知る人が誰も居ない場所

 

自分()知る人が誰も居ない場所

 

自分()示すものが何もない場所を求めていた。

 

もしかしたら、偽名を使い続けることも考えていたのかもしれない

 

そんな…そんな未来も見えない場所に自分の未来と居場所を求めていた。

 

それはどんな絶望の末の判断だったのだろう

 

どんな闇を抱えていたのだろう

 

それを知る事が出来なくて

知ろうとせず、今が続けばいいとばかり思っていた。

でも、そんな後悔はもうしないと決めた。

 

クヨクヨするのをやめた

 

 涙を流すのをやめた

 

  絶望するのをやめた

 

きっと、一夏だってそうしたと信じられるから。

居場所を求めるなんて行為は、『絶望』を抱えているからではなく、『希望』を抱いているからこそ出来る行為なんだって思えるから。

 

だから私は…此処に居る

 

 

 

「その情報、遅いわよ」

 

それは只の気まぐれだったのかもしれない。

今度のクラス対抗戦に向けての簡単な予想している声が聞こえ、ちょっとだけ盛り上げようと思ったから。

国内のゴタゴタで正式な入学が遅れた私は、学園に到着したその日に、クラスメイト兼ルームメイトの必死の懇願に負けて、クラス代表の任を承った。

どのみち、国家から貸与された第三世代型専用機『甲龍(シェンロン)』の性能を見せつけるという広告塔の役目も引き受けているから。

活躍しないといけなかった。

多少目立つのはリスクはあるけれど、メリットには充分だった。

 

「2組にも専用機所持者が入ったことを知らないみたいね。

勝つのは、私だから…⁉」

 

視線を向けた先には、あの嫌な顔が見えた。

 

最ッ悪…コイツにはもう二度と関わるものかと決めていたのに…。

 

「やぁ鈴、久しぶりじゃないか」

 

織斑 全輝(まさき)

 

織斑 千冬(初代ブリュンヒルデ)のもう一人の弟であり、一夏の兄。

でも、その醜い本性をあの女(織斑千冬)は知らない。

だけど、私は知っている。

コイツの残酷さを、醜悪さを…!

 

「がっかりだわ…興味無くした」

 

そのまま立ち去ろうとした。

 

「それと、気安く私のファーストネーム呼んでるんじゃないわよ。

アンタにそう呼ぶのを許した覚えは無いわよ」

 

「そうカリカリするなよ、幼馴染同士じゃないか」

 

相変わらず気持ちの悪い笑みに見えた。

尚更ムカつく、コイツは心底嫌いだった。

 

「私はそんな風に思ったことは一度たりとも無いわね」

 

「2組は鈴がクラス代表なのか。

1組は俺がクラス代表をしているんだ、クラス対抗戦では負けないぜ」

 

「アンタ、勝負する気じゃなくて勝てる気でいるの?

軍事訓練を欠片もしてないアンタが?」

 

「これでもイギリスの国家代表候補に勝利してるんだ。

それだけ考えれば専用機所持者の鈴と対等だと思うだろう?」

 

「思わない。

訓練もしてないアンタに代表候補が実力のすべてを出し切ると思うの?

そんな対等な相手と見てもらってると思った?

わざわざ手加減してくれてる相手に勝利したというだけで自慢できると?

頭の中お花畑もいい加減にしときなさいよ」

 

「貴様!」

 

寒気がして一歩下がる。

僅かに風切りの音が聞こえる。

飛び退ってから視線を向けると、日本人なのだろうか、ポニーテールの女子生徒が木刀(・・)を振り下ろした姿勢で居た。

 

「…ッ!」

 

木刀が直撃したらしい机は、半ば破壊されていた。

冗談じゃない、避けなければ首の骨が折られている。

何を考えてるのよ、あの女は…⁉

幸い私は傷一つなく済んでいるけど、周囲の女子生徒は騒ぎ出す。

 

「全輝を侮辱するな!」

 

「ハッ!事実を言っただけよ!」

 

マトモに相手をしてやる気なんてなかった。

とはいえ、周囲の女子生徒を巻き込まないように立ち回る必要があるのが少々難しい。

けど、それもものの5秒も経たずに終わった。

 

「やかましい!貴様等!何を騒いでいる!」

 

また一つ、大嫌いな声が響いた。

あの女(織斑 千冬)の声が…!

 

「凰、お前だったのか…」

 

「…フンッ…!」

 

この女も大嫌いだった。

助けるべき人を助けず、そのまま栄座を掴み取った。

もう一方の家族が誘拐されたと知るや否や、今度は(・・・)助けに行った。

 

そこにどんな葛藤があったのかは私は知らない、知りたくもない。

一夏を見捨てた、という言い方はもしかしたら間違っているのかもしれない。

ただ知らなかっただけなのかもしれない。

だとしても…人から言われたからというだけで(・・・・・・・・・・・・・・・)一夏の生存を諦めた事が赦せなかった。

 

「アンタ()あの頃と変わらないのね」

 

そう吐き捨てて私は1組から立ち去った。

廊下の向こう側、3組の辺りだろうか、誰かに視線を向けられた様な気がした。

まあ、アレだけ騒いだのなら無理もないだろうけど。

 

 

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

放課後、態々図書室に呼び出され、クラス代表代理の書類を受け取り、その場でサインして一緒に提出しに行った。

これで俺は正式に5組のクラス代表代理を執り行うことが決まった。

夕食時には姉さんに報告することが増えそうだった。

 

「これでヨシ、と。

どうしたんだメルク?浮かない顔をしてるみたいだけど」

 

「お兄さんと一時的にであれ敵対する事になるんだと思うと、寂しくて…」

 

「あくまで当日だけだろ、そう気に病むことはないさ」

 

今回のこのクラス対抗戦だけど、トーナメント式ではなく、勝率を競う形になる。

一番良ければ勝率100%、悪けりゃ0%だ。

最も優秀な勝率をたたき出したクラスには、景品としてデザート半年間無料パスが渡されることになる。

俺の場合は、代理として立つことになるわけだから3組が優勝しようとも5組が優勝しようとも景品を受領できる形になっている。

こんな形で優勝賞品がもらえるのも、代理というのも悪いものではないのかもしれない。

 

「とは言っても、俺はメルクに勝てないからな…。

5組のみんなには悪いけど、優勝は望み薄かな」

 

そんな事を言う自分自身に苦笑するしか出来なかった。

自分に出来る事は限られている。

なら、それをするだけだ。

おっと、6月には学年別個人トーナメントも予定されているから、全てを出し切るわけにはいかないんだったな。

 

手続きも正式に完了したのを確認し、3組の名義で貸し切っている第4アリーナでの訓練を開始することにした。

先の件もあり、数名だが5組の生徒も数名混じっている。

 

「ほへぇ、ウェイル君の機体って試作機なんだ…」

 

メルクの専用機でもある『テンペスタ・ミーティオ』を開発するうえで必要になった試作機が俺の機体として貸与されている。

多少、俺の好みにスペックを調整したうえで、兵装も変更しているが、俺はまだそれを見せていない。

いきなり全てをひけらかしたりしない様に、とは姉さんの言だ。

そんなわけで、早速ではあるが基本兵装の無銘のランスを掴み取り、メルクと切り結ぶ。

姉さんとヘキサさんに鍛えてもらっているけど、まだまだメルクには届かないらしい。

メルクが取りまわしているのはレーザーブレード『ホーク』だ。

本人の好みで刀身の形状を変化させられるらしい、そんなものを搭載しているからミーティオは第三世代機として登録されている。

 

そして俺のテンペスタはそのための試作機というわけで2.5世代機だ。

無論、本来のスタイルはまだ非公開だ。

 

「お兄さん、下がって!」

 

切り結ぶ最中、メルクの声がして俺は5m後方に跳躍後退した。

瞬間、先程まで居た場所に閃光が走る。

 

光学(レーザー)射撃⁉いったい誰が⁉」

 

「お兄さん!あそこです!」

 

メルクが指さす先は、アリーナの両端にあるピットの出入り口だった。

そこに、カタログで見た覚えのある青い機体が存在していた。

その搭乗者にも見覚えがある、あれはイギリス代表候補の…えっと…

 

「誰だっけ?」

 

「セシリア・オルコットさんですよ、お兄さん…」

 

同じ学年でもただの数日で他のクラスの生徒の顔と名前を一致させろというのは難しいもんだよ。

有名人だったとしても、俺としてはその本人よりも機体の方に興味が在るってだけでさ。

で、あの人なんで俺のことをあんなに睨んできているんだ?

 

「…………ッ!」

 

本人は黙して銃を構えるだけ。

言いたいことが何もないのならもう良いや、訓練に戻ろうか。

さてと、手の内をホイホイ見せるわけにもいかないから、引き続き基本兵装のランスを

 

「無視するんじゃありませんわよ!そこの男!」

 

そんな言葉が背後から。

はて?何を無視したと?

何一つ言葉を聞いていないのだから、対象となる言葉など存在しない筈だが?

 

首を傾げる最中に再び撃ち込まれてくる光学(レーザー)射撃。

それをメルクがレーザーブレード『ホーク』で斬り払う、凄ぇ技術だな。

あれも姉さんが仕込んだのかもしれないなぁ。

だけど気になるのはあの視線だ。

俺、あの人に何かしたっけか?

 

「よくも…よくもわたくしに!

このセシリア・オルコットに!また恥をかかせてくれましたわね!」

 

「…俺が君に何かしたか?」

 

思わず口から飛び出した心の声。

いや本当に心当たりなんて一つたりとも無いんだって、本当だよ?

 

「こ、心当たりがないって言い張りますの⁉この期に及んで!」

 

「ああ、何一つ」

 

本音だ、何一つ偽りも嘘も紛れていない本音だ。

 

「そんな訳で、八つ当たりされる要素が皆目見当たらないんだ。

教えてくれないか?」

 

「クラス代表代理の件ですわよ!

よくも…よくもわたくしを除け者にして話を勝手に決めましたわね!」

 

「またそれかよ…相互理解って難しいなぁ…」

 

しかし、それに関してはそれこそ八つ当たりだと思うのだが。

5組からは、クラス対抗戦に出場するクラス代表の代理を俺に依頼してきたというもの。

しかも名指しでの指名依頼だ。

この時点で彼女にどうこうする隙間なんて無きに等しい。

 

付け加えるなら、5組から依頼を持ってきた彼女は、オルコット女史への依頼斡旋を嫌がっていた。

その理由としては、人格的なものだったらしい。

こっちは俺が口を挟む隙間が無い。

この時点でその人の内面も外面も全く知らないから。

 

「それに関しては依頼者に言ってくれよ。

そもそも、だ。クラス代表代理の件は、依頼者と受注者、それぞれのクラス担任の了承があって成立している話だ。

君が介入できる余地は無いだろう」

 

「それを!除け者にしていると言っているんですわよ!

貴方が断って!

わたくしを推薦すれば良かったと言ってるのがまだ判りませんの!?

これだから男はぁっ!」

 

あくまで、何をせずとも自身が推薦されるのが当然と見ているらしい。

 

そしてヒステリックに叫びながらも額に青筋を立てながら滅茶苦茶に撃ってくるオルコット女史。

にも拘わらず先ほどからの射撃の照準は俺一人だ。

これを八つ当たりと言わずになんという?

とは言え、俺が口上している余裕があるのは、ひとえにメルクの御蔭である。

今夜の夕食は豪勢なものを作ってあげよう。

ここに来るまでの道中にあった購買でムール貝とか売っていたな、ペスカトーレでも作ってみようかな。

 

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

お姉さん仕込みの射撃対応で、何とかお兄さんやクラスメイトに被害を出さずに済んでいますけど、いい加減この人しつこいです!

 

「前に出てきなさい!この汚らわしい男の分際で!」

 

謂れの無い誹謗中傷をしてくる様子に、お兄さんも顔を顰めている。

なら、ここは私が

 

「そこまでにしたらどうですか、次席(・・)さん」

 

ピタリ、と射撃攻撃が止んだ。

こういうのは私としては嫌いだった、相手を言葉で貶める精神攻撃の類は。

まるで、あの人と同じだから。

 

「たった数日で、他クラスの人を把握するのは難しい話ですよ。

貴女は、自分のクラスに於けるクラス代表を決める際にも同じようなことを仕出かしていたそうですね。

それと同じことが、他のクラスなら通じると思いました?」

 

「だ、黙りなさい!」

 

「いいえ!黙りませんよ!

貴女が!他人を見境なしに見下すと言うのなら!

私は!主席の立場から!次席の貴女を見下します!」

 

このタイミングでこの放課後実習になってから初めての飛翔。

彼女の銃はお兄さんには向かず、私に向けられる。

 

「わ、わたくしがイギリス代表候補と知っていての発言ですの⁉」

 

「代表候補に言ってるんじゃありませんよ!

『貴女自身』に言っているんです!」

 

「ぶ、無礼者がぁっ!」

 

彼女もまたピットから飛び出してくる。

背面のフィンが分離し、その先端を私に向けてくる。

地上に居るお兄さんたちの姿を確認、どうやらお兄さんがクラスのみんなを観客席へと避難させてくれている。

 

「その言葉、自分が該当しないか、考えたりとかしてみないんですか?」

 

とうとう顔を真っ赤に染めて射撃攻撃をしてくる。

けれど、直線射撃ばかり。

そしてその動きは…実技試験の映像と、クラス代表争奪戦の時と何一つ変わらない。

その癖をすでに幾度も見た私からすれば致命的にも程があった。

 

『そこまで!』

 

私が攻撃に移ろうとしたタイミングでその制止の声がアリーナに響いた。

どうやら騒ぎを聞きつけたらしい先生がやってきたらしいです。

声から察するに、私達の担任であるレナ・ティエル先生…だと思う。

 

『双方、戦闘行動を直ちに中止し、所属クラスを言いなさい!』

 

「1年3組所属、クラス代表、イタリア国家代表候補、メルク・ハースです」

 

兵装を収納し、即座に名乗る。

私がしていたのは、防御と回避だけ、ログを参照にも出来るだろうけど、どうということはなかった。

けれど、彼女に関しては話は別。

生身の状態のクラスメイトも居るのも把握しながらの連続集中射撃攻撃、それはみんなも把握しているし、言い逃れなんて出来ない筈だった。

 

「1年1組、イギリス国家代表候補、セシリア・オルコットです…」

 

相手もおとなしく名乗った。

それでも、お兄さんに向けて憎悪の視線を向けるのを止めようとしなかった。

それから数分後、先生がグラウンドに訪れ、私に状況の説明を求めた。

その最中に皆を避難させていたお兄さんも合流し、情報の裏付けも行う。

勿論、お兄さんだけでなくグラウンドから観客席に避難させられていた皆も口添えをしてくれた。

 

「成る程ね、今回の事は1組担当教諭である織斑先生に抗議をしておくわ、処罰を覚悟しておきなさい」

 

「そ、そんな!わ、わたくしは…!

5組にのクラス代表代理を決める為に対戦を…!」

 

「黙りなさい!

貴女がやっているのは交渉もせずに背後から発砲して恐喝行為をするという言語道断の行い!

しかも生身の生徒が居るのを把握しながらなど以ての外!

繰り返して言うようにはなるけれど、処罰を覚悟しておきなさい!」

 

そしてこの期に及んで私やお兄さんを睨んでくるオルコットさん。

当然

 

「目を反らすな!」

 

猶のこと叱られていた。

 

 

 

オルコットさんはティエル先生にアリーナ外へ連行されていったのを見ながらも私達は訓練に戻ることになった。

とは言っても、奥の手は極力見せないようにしながらの訓練は多少難しかったですけども。

お兄さんは基本兵装のランスを取り回し、私のブレードと切り結ぶ。

それから空中へと飛翔し、上空での近接戦闘訓練にも熱が入る。

更に私は銃へと換装し、お兄さんも基本兵装の銃を展開。

円を描く軌道を作りながらの射撃への迎撃、サークルロンドへと移っていく。

最後はアリーナの外周沿いに高速で駆け抜ける高機動訓練をして、そこで切り上げた。

 

「ウェイル君って、近接戦闘が得意なの?」

 

「う…む…どちらかというとそうなるのかな」

 

「あれだけの技量があるのなら、搭乗者としても優秀な成績になれるんじゃないのかなぁ?」

 

「いや、俺はエンジニア兼メカニック志望だから、搭乗技術はただのオマケだって」

 

こんな感じでお兄さんはクラスメイトの中でもなんだか人気者になってきていた。

周囲の人に拒絶されないのは安心できますけど、ちょっとだけ気分が複雑です。

 

それからも訓練が終わってからは

 

「じゃあ、5組クラス代表代理の件、よろしくお願いします!」

 

ルーハさんの深いお辞儀で締めくくられた。

 

「ああ、判ったよ。

素人に毛が生えた程度の実力だろうけど、出来る限りやってみるよ」

 

「お兄さん、自分を過小評価し過ぎです」

 

「そうか?自惚れるよりかは遥かにマシだと思うけどな」

 

それは…そうなんですけども…。

 

それから更衣室で着替えてから食堂へ向かう道中、渡り廊下にて

 

『セシリア・オルコット

危険行為につき上記の者を1週間の自室謹慎処分とする』

 

という張り紙を見つけた。

代表候補としても、こんな早期での謹慎処分は手痛い扱いになるのは明白。

あまり関係が無いですけど。

それから一週間、私たちはみっちりと訓練を積むことになりました。

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

今日も今日とて訓練をミッチリと詰め込み、程よい疲労感を抱えながら俺達は整備室へと向かっていた。

クラス対抗戦も近いし、もうちょっと機体の調整もしておきたいからでもある。

イタリアを出る前にも細かに調整していたけれど、やはりそれ以降は詳しく調整していなかったなんて事はしたくない。

少なくとも、データ整理をするにも都合が良いしな。

リンク・システムを使えば姉さんに自動的に飛ばされているかもしれないけど、こういうのは自分の手でやっておきたい。

 

「今日はどんな調整をするんですか?」

 

「う~ん、そうだな…スラスターの出力調整をもう少しばかりやっておくか。

後は、駆動部の摩耗具合も確認しておかないと」

 

そう言いながらも目的の格納庫の前にやってくる。

到着した場所に背中から入り、ハンガーへと視線を向け…

 

「なんだ、あの機体は…?」

 

スカイブルーの機体がそこに鎮座していた。

 

「あれって…量産機じゃないみたいですよ…?」

 

メルクが言う言葉には確かに納得できる。

俺も量産機のカタログは見たことがある。

中国第二世代機『(ロン)

イギリス製第二世代機『渦潮(メイルシュトローム)

ドイツ製第二世代機『漆黒(シュヴァルツ)

日本製第二世代機『打鉄(うちがね)

そしてフランス製第二世代機『疾風の再誕(ラファール・リヴァイヴ)

などがその代表格だ。

 

この機体はその中でも近いものがあるとすれば…『打鉄』だろうか…?

だが、あの機体にはこんなパッケージは無かったと思う。

そもそも、非固定浮遊部位(アンロックユニット)などは…。

 

「第三世代機ってことか…?」

 

それだったら見覚えの無い機体が在ったとしても納得…

 

「だ、誰か居るの…⁉」

 

背後から声が聞こえた。


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