『出逢い』ではなく『出遭い』です。
FGOにてシャルルマーニュ(剣)とカール大帝(裁)って実装されてるのかな…ガチャやって当たれば良いんだけどな…。
目当てにしていたサーヴァントで入手出来たのは未だに
弓 緋の釣り人
殺 巌流
だけだし…。
ヘラクレス(狂)が欲しかったけどまさかのダレイオスⅢ世(狂)がヒット。
ダレイオスを育ててみるかなぁ?
(狂)のクラスは存外強いみたいな事を聞いたけど、リスクが高いし…。
集中砲火を受けたら大惨事…。
『影の国の女王(槍)』か、『真の英雄は目で殺す!(槍)』が欲しかったがこちらもこちらで碧の釣り人(槍)も入手。
目当てのものこそなかなかに手に入らないですよね…。
さてライダー(F)はアキレウスを目指しているけれど、ライダー(M)は未定だった。
けど、折角引き当てたブーディカ女史に頼んでみるかな…?
というか(剣)のクラスが螺旋剣を引き当てた以降に一人も出ない!
Q.ウェイル君のIS学園制服ってどんな感じですか?フードが着いているらしいですけど…。
P.N.『あぶとら』さんより
A.『漆黒の雷龍』での一夏君はロングコート式でしたが、今作のウェイル君の制服は研究者じみた『白衣』です。
それに勝手にフードを取り付けています。
更に、これまた勝手に取り付けたポケットの数も沢山で、機械いじりをする際の工具とかを突っ込んでいます。
なので、軽量だった白衣が結構な重量に…本人はまるで気にしていませんが…。
ちなみに、背中に例のロゴを入れようとしたらしいですが、メルクちゃんとアリーシャ姐さんに止められたそうです。
クラス対抗戦に向け、俺はメルクの訓練相手になっている。
クラスの皆も俺と交代しながらも訓練の相手になってくれていたりするから非常に助かる。
現段階ではそんな中でもメルクは近接戦闘、対近接戦闘を研究している。
姉さんやテスターのヘキサさんも近接戦闘に長けていたけど、今のメルクはその時よりも大きくハードルの高さを上げているような気がした。
何というか、俺からは文句なんてないんだけどメルクが想定している今回の相手というのは…
「近接戦闘
勿論、射撃も織り交ぜている。
だけど、左手に
だが、気のせいだろうか…いつも以上に真剣になり過ぎているような…?
「…さて、俺も訓練に戻ろうか。
お~い、相手を代わってくれ」
「はいよ~!…あ~しんどい…」
メルクの相手を今の今までしていたのは情報通のミリーナだ。
結構息が荒くなっているのを見るに、国家代表候補生の実力をその身で覚えたといったところか。
「じゃあメルク、今度は俺が行くぜ」
「ええ、判りました…では、参ります!」
メルクは…いきなりファルコンを連結し、
野太い砲撃をギリギリで避け、俺はウラガーノを構える。
悔しいけれど、実力はメルクが遥かに上だ、模擬戦闘はイタリアにいたころから何度も繰り返しているが、俺が勝てたのは15回に1回程度。
兄の威厳なんて吹っ飛んで久しい、最低限度の沽券だけは死守しないとな。
でなければ、俺の株の暴落は目の前だ。
「だーっくそっ!…今回も負けた…」
俺とメルクの模擬戦は35分にも及んだ。
射撃戦闘も可能だったかもしれないが、生憎と今回のメルクが望んだ訓練は対近接戦闘だ。
だから俺はその要望に応え、近接戦闘のみに準じた。
その結果が35分という模擬戦闘の時間だ。
メルクは射撃をメインにしてきたが、俺はその射線をある程度は予測し、回避しながらの接近を試みる。
だがメルクとて俺の手の内は知っている、俺が武器を振るう軌道を逆算して
姉さん達の指導の賜物が現在のメルクなのだが、ここまで身に着けさせる姉と、ガンガン吸収していく妹相手に寒気がしてくる。
けどまあ、そこまでなっているメルクの相手にもならなきゃ俺としても話にならないから、これで試行錯誤を繰り返してきている。
この試合時間もその賜物といったところか。
「ウェイル君、頑張ったねぇ…ほかの皆と比べても試合時間が物凄く長かったよ?」
「は、ははは…けど、本当にしんどいぜ…」
視線を向ければ、メルクも息が上がっている。
「お兄さん、相手してくれてありがとうございます」
「おう、これでクラス対抗戦に自信は着いたか?」
「ええ、勿論!…でも…」
キュルル~…と情けない音がメルクのお腹から…。
どうやらスタミナのほとんどを使い切ったらしい。
テンペスタ・ミーティオの展開を解除したのを確認し、俺もテンペスタの展開を解除する。
リンク・システムにより、互いの経験情報が互いに共有されている筈。
これで今後の研究も大きく進むだろうと思いたい。
「食堂に行くか?」
「そうします、今日は料理は人任せで…」
俺もだ、スタミナは残っていないわけじゃないけど、料理に割くほど余裕があるわけでも無し。
クラスメイト数人に囲まれながらも、更衣室へと向かった。
けどまあ、ここで問題が一つ。
この学園は二人という例外を排除してしまえば基本は女子高だ。
着替えなんてとてもじゃないが同室で出来る筈も無い、なので、俺が使うのは別の不使用状態のアリーナの更衣室だ。
もしくは寮の部屋に戻るか、だ。
今回は後者だ、放課後にアリーナを使用する人は実際には多く居る。
不使用状態のアリーナが無い場合、疲れ切った体に鞭打ち寮に戻るのだが、一応抜け道はある。
グラウンドの隅に置いていた鞄、その中に制服を入れておいたので、それをスーツの上から着るだけだ。
スーツの上からこれを着るだけなら更衣室など不要だ、なので今後は授業があろうとなかろうと、スーツはインナーのごとく着ておかなくてはならないだろう、予備が何着かあるから構わないけど。
「さてと、行こうか」
鞄に入れておいたタオルで額に流れる汗を雑に拭う。
汗臭いのはこの際だから多少は我慢しよう、食事の後にはすぐにシャワーを浴びたい。
そのままアリーナの前に向かい、待つこと10分。
メルクを先頭に3組のクラスメイトの半分が出てきた。
今回メルクの訓練に付き合ってくれたのは、このクラスメイトの中でもこのメンツだけだ。
残り半分は、部活への見学や自習を優先させていた。借り受けられる機体の数にも都合があるのだから文句は言えない。
けど、俺に敵意を含ませた視線を向けてくるのには納得しがたいものがあるけど、こういう時代だし、こういう学園だしなぁ…。
メルクは手をつないでくるから、それに応えるように、握り返す。
後ろの女子、キャーキャー五月蠅いよ。
♪♪♪♪♪
今日の訓練は結構苛烈になったと自分でも思う。
この学園に入学してから数日経過し、一組で起きた諍いに関しての事情はミリーナさんから聞きました。
なんでも、クラス代表を決めるのにISを使った試合を執り行うというデタラメな企画。
ポッと出の新人が、軍事訓練を潜り抜けた代表候補生に勝てるわけが無い。
そう思っていましたけど、その予想は裏切られた。
男性搭乗者が、イギリス代表候補生に勝利した。
「どうなってるんだ?」
お兄さんは話を聞いただけ、私はそこからさらに映像を用意してもらってから解析に挑んだ。
さらに過去に戻り、イギリス、ロンドンに於ける受験の際の実技試験の映像も。
けど、それで疑問が氷解した。
イギリス代表候補生、セシリア・オルコットさんには致命的な欠点が存在していたのだと。
それは慢心と稼働率の低さ。
「この人、実技試験の時から何も変わってない…⁉」
実技試験の結果は、勝利。
でも、専用機所持者がその結果で終わるのは当たり前の話ではあるけれど、それは決して自慢になんてなりえない。
にも拘わらず、彼女は学園に編入してからもそれを自慢しているらしい。
「で、メルクはこの人に勝てそうか?」
「もちろんです!」
お兄さんから投げかけられた疑問には即答して見せた。
頼りになる妹として在りたかったのも確かな話。
でも、自慢をするだけして無差別に他者を見下す人になんて負けたくなかった。
今日の訓練は自分に対して厳しくした。
お兄さんも途中で自身の専用機に搭乗し、対近接戦闘訓練にも備える。
だから、1組の専用機所持者、イギリスのオルコットさんと、もう一人の男性搭乗者、『織斑』になんて負けるつもりは無かった。
「今日の夕飯はどうする?」
「できるのなら消化しやすいものが良いです」
「判ったよ、じゃあ席の確保頼むよ」
「はい!」
それから私は席の確保のために食堂全体に視線を走らせる。
ちょうどいいと思った場所は、窓から海が一望できる席だった。
早速席を確保し、ミリーナと一緒に座ってお兄さんを待つことにした。
「お、いい席確保してくれてたな」
少しだけ待っていると、お兄さんもやってきた。
両手にプレートを持っているのに、まるで重くなさそうに見せられる。
そのプレートには日替わり洋食定食が、シーフードサラダも入っているから間違いなくお兄さんの好みだと理解した。
「お兄さんは今日の訓練どうでした?」
「正直、凄く疲れたよ。
けどまあ、こういうのを幾度もメルクは乗り越えてきてるんだろ」
確かに。
代表候補になるのが第一の目標だったから、それに向けての訓練は誰よりも頑張ってきたという自負がある。
努力だってしたし、時にはケガも多少はした。
それに釣り合う地位にいるかというと…自分ではまだ少し判っていないのが事実。
お姉さんはどうだったのだろうか…?
「なら、俺も負け事なんて言ってられないさ、訓練だったら幾らでも付き合うよ」
「おお、ウェイル君ってば頑張る気満々だねぇ。
私なんて5分でギブアップしたっていうのに…男の子は違うなぁ、メモしとこ」
「おいそこ、何をメモしているんだ」
「やだなぁ、変なことはメモしてないって、それに事前に言ったでしょ、『二人の専属パパラッチになる』ってさ」
「本気だったんですか…」
パパラッチしないでもらいたいなぁ…。
とは言っても聞いてくれないんだろうなぁ…。
「で、話は変わるけど、他のクラスの事情はどうなってる?
対抗戦までに情報を仕入れて欲しいのだが…」
「そこはバッチリ!
5組はブラジル出身の一般生徒で『コロナ・ビークス』さん。
訓練機の貸し出しを予定しているってさ。
使用するのは日本製第二世代機『打鉄』だよ。
4組のクラス代表は、日本代表候補生で、打鉄をベースにして改造された純日本製第三世代機1号機になり損ねた2号機『打鉄弐式』。
仕入れた話だと結構な火力と、高機動を兼ね添えた機体なんだってさ。
んで、第三世代兵装だけど、個人で開発してるらしいのよ。
だけど製造機開発企業に何らかの圧力が発生していて機体開発計画は無期限凍結処理、並びに機体開発はその代表候補生の個人開発になっているってわけ♡
2組はまだ不透明だから以下省略!」
よくもまあここまで調べてますよね。
お兄さんが頼んだにしても妙な情報も入ってましたけども。
「最後に肝心なんだけど、1組について!
他薦によって男性搭乗者の織斑君に決定しそうになった所で、イギリス代表候補生のオルコットさんが不服申し立て。
んで、日本への侮辱と男性差別発言でクソミソに罵倒したところで織斑君も激昂してね、織斑先生の判断で試合が執り行われたのよ。
それが先日の話、第3アリーナで試合が執り行われた結果が…織斑君の勝利って訳」
専用機を貸与されている代表候補生が、訓練をまともに受けていない一般生徒に敗北。
その意味は誰しも理解は出来ている筈。
「さらに新情報!
その織斑君だけど、なんと国家から専用機の使用が認められたらしいのよ!」
「ちょっ…それって…映像に写っていた白い機体ですか⁉」
映像で見た白い機体は記憶に新しい。
お兄さんも腕を組んで何かを考えている。
「それってデータ集積の為って考えられないか?
量産機を多少いじって素人にも稼働させやすいようにしてデータを収集させる為…とか?」
「でもね、それだと説明がつかない点も存在してるんだよ」
お兄さんもそうですけど、男性IS搭乗者というのはISが世間に発表、生産、研究が始まってからというもの例の無い存在。
その存在が今になって現れたものだから、その稼働データは全世界が欲しがるもの。
でも、純粋にデータ集積というのであれば解析の行いやすいとされている量産機のほうが都合が良い筈。
それを理解したうえで専用機の貸与というのは私にも理解が出来なかった。
「なんとその織斑君に貸与された専用機、『
♪♪♪♪
その話は姉さんから聞いた事が在る。
機体が
それが稼働時間が極端に短い男性IS搭乗者の使う機体に搭載されていただと…?
「君の言っているそれが『
「誰もが知ってる初代
…は?
続く話だと1組の男子とその担任は姉弟らしい。
何それ?
「で、その能力の内容は、なんと織斑選手と完全に同じなのよ。
『自分の
より詳しく言えば、
何それ?
競技云々に於いては完全に自爆武器に近いじゃん。
しかも相手をも危険に巻き込むのを目的としているわけだから、ISに於ける安全性を覆すような仕様の能力だな。
それ以前に専用機という点も問題だらけだ。
男性搭乗者のデータの集積も目的にあるのだろうけど、それこそ素人に固有の能力を搭載した機体に搭乗させようとしたら基本的なデータも解析が難しくなってくる。
ということは、オリムラと呼ばれる男性搭乗者はデータ集積を免除されているという事だろうか?
…何のためのこの学園への編入だよ…?
あ、もしかして担任教諭らしい姉の庇護なのか?
しかも自身の機体の能力をお下がりで与える程…。
そりゃぁ周囲の教師陣から白い目を向けられるってものだろう!
「そんな危険な機体をよく国が開発、貸与なんてしたもんだな…?
あ、もしかして4組の代表候補生の専用機開発計画が無期限凍結処理されたのってそれが理由なんじゃないのか?」
「あ、そうかも」
同情するわけでもないが、日本代表候補生も可哀相なもんだな。
そんな危険な機体開発の為に、自身の機体開発計画を無期限凍結処理されるとは。
あ、今は個人で機体開発を進めているらしいな、大変そうだな…。
「ウェイル君の機体はどんな感じなの?」
「俺のは、FIATで兵装稼働試験に使用されていた試験機体を多少俺好みに調整してるだけだよ」
FIATでは常に『試験機』だの『テンペスタ試験機』と愛想も情緒も無い呼ばれ方をされていたから、俺が勝手に固有名称を着けて呼んでいたら浸透してしまっていたわけだ。
「話を戻すけど、1組の男子の機体だけど、高機動で近接格闘戦仕様みたいなのよ。
試合の途中で換装もしていなかったのも確認済み、搭載されている兵装は先程言った仕様能力を搭載させた刀剣型のブレード一振りのみよ!」
…ブレードに付与展開するのなら、接近してからの攻撃が必要になるんじゃないだろうか?
単一仕様能力なんて発動させようものなら相手が警戒して距離をとるだろうし、当てにくいぞ。
それに合わせて瞬時加速なんて使おうものなら、単一仕様能力を使いながらだから搭乗者を風圧から守るために絶対防御が発動してシールドエネルギーが消費するわけだから、二重消費という燃費のバカ食いになるだろう。
…考えれば燃費の悪いピーキーな機体になりそうだ。
どちらかというと、個人戦闘ではなく、味方にサポートをしてもらう方が良さげだな。
この情報通の情報収集能力の高さ…今後も頼った方が良いだろうな。
にしても、もう一人の男子生徒だが…姓名は『織斑』だったか…何となくだが厭な感覚がした。
関わらないでおこうか。
「んで、1組はその織斑君がクラス代表としてクラス対抗戦に出場するみたいだよ」
射撃戦闘に重きが置かれている昨今のIS開発、そのさなかに近接戦闘しか出来ない機体に、更には危険な単一仕様能力を搭載させた状態で作成するとか日本政府は何を思っての事だろうか
しかも代表候補性の機体開発計画を無期限凍結処理までさせて、バリバリの素人にそんな機体を貸与するとはな…?
「そういえば、その男子生徒…オルコットさんとの試合までにどんな訓練を積んだんですか?」
おっと、メルクのその質問にも俺としては興味が在るな。
バリバリの素人に見せかけながらもキッチリと訓練を積んだのだろうか?
だとしたら代表候補に勝利できるであろう要素も
「な~んにもしてなかったよ、クラスメイトの女子の一人と…なんて言ったっけ…?
え~っと、あ、思い出した『ケィンドゥジョウ』ていう場所で『ケィンドゥ』っていう競技の練習してたっけ」
なんでそんなのやってんの?
いや、ブレードを取り扱うのなら多少は助けになってるのかもしれないが…。
「ちなみに、専用機が貸与され始めたのは試合と同時だってさ」
…突貫工事で作成した疑いのある機体か…俺としてはそんな機体は嫌だな…。
「メルク、そんな感じの機体と対戦することになって勝てる自信はあるか?」
「勿論在ります!」
よ~し、俺もメルクの訓練相手になって頑張っていこう。
シーフードサラダの残りを味わいながらも完食し、夜色に染まる海を見ていると
「へぇ、君が二人目の男性搭乗者か。
白髪だからテッキリ爺さんかと思ったよ」
俺の軽いトラウマを遠慮も無しに突っついてくる声が背後から聞こえてきた。
この学園に来てから初めて聞く男性の声だった。
「何とか言ったらどうだ?」
交友関係を築けたらいい、だなんて考えていた過去の自分を殴ってやりたい。
「その必要性を感じなくてね、悪いけどこっちも忙しい身だ。
別の機会にしてく」
れ、とまでは言えなかった。
机上に伏す形で顔を伏せる。
ガシャガシャガチャァンッ‼
危ねぇっ!
後頭部を何かがかすめていったぞ⁉
「誰が言葉をかけてやったと思っているんだ!」
今度は起き上がる形で振り下ろされた何かを躱す。
ドガァンッ!ガチャァンッ!
おいおい正気かよ。
声の主らしい女子生徒がどこから持ち出したのか知らないが振り下ろされたそれは木製の剣だった。
「『誰か』だって?顔すら見ず、名も聞いてないのに判るわけないだろう?」
あ~あ、食器がいくつも割られて、料理も派手に飛び散ってる。
飲み物も零れて服がビショビショだ。
「いきなり何をするんですか⁉」
剣を振り回してくる女子生徒にメルクが対応するために飛び出す。
その時点で声をかけてきたらしい男の顔を確認した。
「…ッ…!」
不意に額の傷が疼き出す。
どうやら彼が1組の男子生徒、『織斑』らしい。
第一印象としては『最悪』の一言に尽きた。
「折角の食事を楽しんでいたんだけど、何の用だったんだ?」
「なぁに、同じ男子生徒同士として仲良くしてあげておこうと思っていたんだが」
肌が粟立つのが実感出来た。
こいつとは相互理解なんてしあえない。
相入れることなんて絶対に出来ない。
脅威…どころじゃない。
姿を見ただけで…奴は…俺にとって………『究極の敵』だと頭のどこかで認識していた。
「仲良く?背後から不意打ちと言わんばかりに木剣を全力で振り下ろそうとする人を放置しておきながら、どの口が言うんだ?」
今もメルクが対処しているが、周囲の生徒は慌てて逃げ出している。
それが見えているのかは知らないが、あの女子生徒はすでにいくつもの机や椅子を粉砕している。
見ればミリーナも逃げ出した後らしい、それに関しては少しだけ安心する。
「ああ、箒かい。
普段は温厚なんだけどあそこまで暴れるのは珍しいな。
悪いとは思うけど発散させてあげといてよ、学園に来る前に何か色々と在ったらしくてさ。
なあに、手加減してるだろうから大丈夫だよ」
サンドバッグになれと言っているのと同じだぞ。
それと、何処をどう見れば手加減している様子に見えるってんだ。
料理は生ゴミに、机も椅子も粗大ゴミ、観葉植物もズタズタ、鉢植えの中の土も広がり、投影ディスプレイはスクラップに。
華やかだった食堂は惨状そのものだ。
傷の疼きが強くなってくる…手が震えそうになってくるが、必死に隠す。
その分、睨むのに集中する。
こんなところで乱闘騒ぎを起こす気は…いや、既に起きているか。
メルクは周囲の人が被害を受けないように立ち回ってくれているが、それでも食堂の損壊までは防ぎきれていない。
だけどそれを止めようとする人がこの場には居ないというのが……
「そこまで!」
ドガァンッ!
木剣を振り回していた女子生徒が取り押さえられるのが目に入った。
それを確認すれば、先日部屋に来た虚さん…とか言ったっけ…?
それと生徒会長もそこに居た。
「何の騒ぎかしら、コレは?
ウェイル君、教えてくれる?」
「ああ、はい」
ざっと事の経緯を説明する。
その間、織斑は気に入らないと言わんばかりに俺を睨んでくるけど、極力無視する。
あまり良い対応をしていなかったのは自覚はしているけれど、それでも先に暴力を振るってきたのは、向こう側の女子生徒…えっと…ホウキとか言ったっけ?
その人だった。
「なるほどね、外に居た生徒の皆にも確認は出来ているけど間違いは無さそうね」
興味は無かったけど、例の女子生徒は腕を捻りあげられ、組み伏された状態で首筋にナイフを押し当てられている。
うっわ、虚さんってああいうの得意なんだ…。
初対面の瞬間には奇人変人とみなしていたことに関しては一生黙っておこう!
「織斑君、織斑先生や山田先生から言われていなかったのかしら?
極力接触しないように、と」
「だけどそんなの納得がいかな」
「君達の納得云々なんてそれこそ必要無いわ!
これは学園長が織斑先生と、織斑君と、篠ノ之さんの三人に下した
余計な手間をかけないで!」
「…く…!」
それでその場はお開きになった。
あの二人は俺達を睨んでそのまま去った。
だけど立ち去る瞬間に
「今回のケリはクラス対抗戦で付けてやるよ」
そう吐き捨てていった。
…出場するのはメルクなんだけどなぁ…。
それに関しては教えるつもりも無かったので頗るどうでもいいけど。
「あらら、料理も飲み物もグチャグチャ、食堂も机や椅子も壊されてるわね。
更に言えばウェイル君も服が大変な事になってるわね、特に…ズボンが…」
厭な感覚はしていたが…改めて見下ろしてみる。
ああ、うん…股間の部位にコーンス-プが零れてるから…その…。
良し、カバンの中に入っていた予備のズボンと着替えておこう。
「で、楯無さん」
数分後、ズボンを履き替えてから一応の確認をする事にした。
「何かしら?」
それも単刀直入に。
それを察したのか、楯無さんも珍しく真面目な顔つきになるのが判った。
「さっきの二人、誰?」
「…一人目の男性搭乗者、『織斑全輝』君と、その幼馴染みの『篠ノ之箒』さんよ」
……これが、奴との最悪の出遭いだった。
その後、部屋に戻り家族とのテレビ電話を繋げた。
二年前の事も在り、回線を繋ぐだなんてものの1分もかからない。
でも、場所的に時差が発生してしまっているから、それだけには注意しておかないといけないのが痛い所。
けど、今日も問題無く繋がった。
「うぉ…⁉」
最初に映ったのは…超弩アップのシャイニィの顔だった。
「はいはいシャイニィ、アンタはこっち」
聞きなれた姉さんの声といっしょにシャイニィが避けられ、見慣れた家族全員がそろっているのが見えた。
「ちょっと今日は遅かったな、何かあったのかな?」
父さんの問いに話が早くも一段階進むことになった。
今日の出来事とか授業内容も教えたかったけど、まあいいか。
「?」
ニコニコとしてくれている母さんには悪いとは思うけれど、先ほどの食堂での一部始終を教えることにした。
アイツとの会話の中で感じた奇妙な感覚についても。
父さんも、母さんも、姉さんも、言葉を何も返さずに全てを聞いてくれた。
俺が…奴とは絶対に理解しあえないという直感も…それどころか…俺の内の何かが、『究極の敵』だと認識している事も、だ。
「そう、そんな危険な生徒が居るのね。
何というか…酷い人間も居るものね」
「しかも大勢の人を巻き込むとは…」
母さんも父さんも、慄いているのか呆れているのか微妙だが、確かに反応に困るとは思う。
で、姉さんはといえば
「…ウェイル、アンタはその二人とは一切の関わりを持たないほうにした方がいいと思うサ」
うん、それは俺も同感。
こちらから関係を持ちたくない、それどころか避けるようにしておいたほうがいいだろう。
けど、あっちから絡んできたらどうすればいいんだろうか…?
そういうのは無いほうがいいんだけどな…。
「一先ず、学園への苦情はこちらからも出しておくサ」
「お願いします、お姉さん」
それからは気分を切り替えてから談笑に移った。
やっぱり、殺伐とした空気は苦手だし、明るく笑いあえる時間が本当に楽しかった。