【THE TRANSCEND-MEN】 -超越せし者達-   作:タツマゲドン

8 / 27
21世紀

 西暦2000年。

 

「貴方達に集まってもらったのは他でも無い。人類は、地球は今、様々な危機に直面している。しかし人類は気付いていない。自分達が自らを滅ぼしている事を。だから我々の様な存在が必要なのだ。基礎理論から先端技術まで、分野・国籍を問わずあらゆる専門家を集めたのはその為だ。人類を救うには人類より優れた存在が必要なのだ。今ここに、「世界救済組織」を設立する」

 

 「世界救済組織」は当事者達以外からは一切秘密裏にされ、国際社会の裏で暗躍し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦2045年。

 

「教授、始めましょう」

「うむ、観測開始だ」

 

 目の前にあるのは巨大で厳重そうなパイプらしき円筒形のものが横たわっており、よく見れば僅かにカーブを描いている。その直径は20メートルにも達するだろう。

 

「量子加速器稼働開始」

 

 ゴウン、と低音が辺り一帯に響いた。研究者達は驚きもせず、暫くは待っていた。

 

「何か変化はないか?」

「今の所はただ加速中の素粒子によるエネルギー反応だけですね。まだこれからでしょう」

「ああ、ちと気が短かったかもしれんな」

 

 何十分と時間が経ったが、研究者たちは依然として持ち場に着いたまま変化が起こるのを待っていた。

 

「……来ました! 例の反応です!」

「おおっ!」

 

 研究者達が一斉にモニターを見る。

 

「やはり同じです。素粒子が存在するのは観測されている筈なのに、質量・弱い相互作用・電磁気・強い相互作用、どの力も検出されません」

「ではこれに信号パターンエネルギーを与えろ」

 

 操作盤の前に座る研究者が指示通りにコンピューターを操作する。

 

 今度は待つ必要が無かった。

 

「素粒子の存在が消失! 代わりに熱エネルギーが検出されました!」

「よし、今回はこれで終了だ。皆良くやったぞ。今日は私の奢りだ」

 

 轟音は止み、研究者達はそれぞれの持ち場から離れた。

 

「あとは検証を重ねて結果を確かめるだけですね」

「そうだな……それ自体は存在するのに何も「無い」、だがさっきの様に少なくとも熱エネルギーには変化する事は確かめられた。もしこれが他のエネルギーにも変化するのならば、きっと人類に繁栄をもたらしてくれるに違いない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦2050年。

 

「「エネリオン」が検出されました」

「では測定しろ」

 

 画面を見る科学者やオペレーター達。彼らが見ているのは地表から数十万キロメートルも離れた地中から送られてくる映像だ。

 

「測定完了。間違いありません、火星で発見された球体と同じ構造をしています」

「やはり地球にも存在したのか」

「しかし非常に微量です。これを集めて精練するにはどれ程手間とエネルギーが必要になる事でしょうね……」

「これが将来人類にとって膨大な利益を生み出してくれるとは思いもしないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦2060年。

 

「テストを行います」

 

 研究者たちが観察するのは周囲をコンクリートと強化ガラスで囲んだ部屋の中に居る1人の男。

 

 その人物は正面にあった一辺2メートルのコンクリート塊へ歩み寄る。次の瞬間、コンクリート塊は破壊音がすると同時にその半分の体積が粉々に砕けた。

 

 対照的にコンクリートより遥かに軟らかいタンパク質で出来ている筈の拳には異常が見られなかった。

 

 次は高速ライフルの様な発砲音がし、それとほぼ同時にその人物の身体が大きく横へスライドした。

 

 男に傷は無かった。代わりに男の後方にある壁に銃弾がめり込んでいた。

 

 今度は人物の前にレーザーガンらしき装置が現れ、案の定レーザーが発射された。発射口の直線上に居た人物に命中する。

 

 しかし、人体どころかあらゆる物質を切断する筈のレーザーは、男の体に穴を開けるどころか火傷痕さえ作れなかった。

 

「攻撃、速度、防御、エネルギー量、知覚処理、全て予想以上です」

 

 もはや「彼ら」に喜びなどなかった。「目的」の為、結果を出す、それだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦2060年、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン島。

 

 突如謎の大爆発が起き、当時ニューヨーク市の人口1200万人に対し実に600万人が死亡した。

 

 何者の仕業かは不明。また核反応による放射線や対消滅によるニュートリノも検出されず、質量のエネルギー転換によるものだと結論付けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦2070年。

 

「以上の結果から「トランセンド・マン」の能力行使におけるエネルギー源は「エネリオン」と判明、また「ユニバーシウム」の構成物質や「エネリオン」を含む全ての素粒子やダークエネルギー、ダークマターは「インフォーミオン」によって構成されていると考えます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦2100年。

 

「必要な条件は揃った。国家に代わって我々が人類を管理する時が来た。我々が所謂神という存在、いや、我々こそが人間や神を超える存在なのだ。人類を絶対に破滅させてはならない。必ずその時が来るまで。ここに「地球管理組織」を設立する」

 

 「第三次世界大戦」で滅びた諸国家に代わって「地球管理組織」が人類の統制を行いはじめた。また翌年から西暦を廃止し、「地球暦」を開始した。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。