・神楽視点
今日の夜、魔法の森奥深くの午後11時25分。狂が提示してきた日時はこれだった
そして今、私は魔法の森奥深く、すぐそこまで到達していた
足元の雑草の背丈が高くなり、硬くなっている道といえるすらわからない道を歩きながら、私は考えていた
はっきり言って、私が狂を時雨の身体から追い出せる、いい作戦などこれっぽっちも頭になかった
あるとすれば私が狂に出て行くか身を潜めるか言って、それでも抵抗してきた場合は死なない程度に叩きつけるしかないかなぁと思う程度
そもそもの話、私が狂と戦って善戦できるかどうかも
「やっと来たんだね。正直言って、遅刻気味だよ?大丈夫?」
狂が首を傾げながらそんなことを注意してくる
何が遅刻気味だ、バカ
私は
「あのな、時雨、今のままの戦いは相当ひど─────!?」
狂が私の首を下から縦に割るように切り上げてくる
なんの予備動作なしにだ、正直、今のは危なかった
これは無理かもしれない。私はきらめく月明かりに照らされながら自信を失った
「もう25分になったよ!」
逆手持ちの短刀を昇龍拳のように切り上げた手を地面に叩きつけるようにまた斬りつけようとする
私は刀に手を伸ばそうとしたものの、短刀の速度が予想以上に早かったので慌ててバックステップ
反応が遅れたためか、前腕とスネに切り傷ができていた
こりゃ死んだかもしれないと、のんきに考える自分がどうもバカらしくて、私は自嘲するよう笑みを浮かべた
私が笑ったのが狂の気に障ったのか、
ここに来て私はようやく抜刀、私の愛刀、
しかし、構えたと同時に狂が私の不懐に入り込んでしまっていた
まずい、紫炎無ではリーチが長すぎて逆に不利だと言えてしまうだろう
私は狂の横っ腹目当ての突きを身をくねらしてかわす
そして狂のみぞおちあたりに膝蹴りを放つと、私は狂のアゴを突き上げるように掌底を放った
狂の時雨と同じ軽い身体はいとも容易く宙を舞い、5〜8メートルほどの間隔が空いた
この距離が今の私にとってはベストポジションだ
念には念をと、私も小さくバックステップ、これなら急に仕掛けられても対処できる
「時雨、聞こえているか?どんなに曇った天気だっていずれは晴れるんだ。だから、時雨だって、戻ってこれるはずだろう?」
私は
狂はゆっくりと目を閉じると、ため息を一つ
「ボクとあなたたちに友情なんていらない、それが、私の出した答え。神楽の言葉に戸惑いもなければ響くものもない。君は失敗しているよ」
私の中で、ゆっくりと時雨は死んでいくのを、私は確かに感じ取った
ちなみに、オリジナル小説の方は『小説家になろう』の方でも投稿させてもらいます
気が向けばハーメルンオリジナル番外編とか小説家になろうオリジナル番外編とかも作るかもしれません