東方魂魄恋愛談   作:魂夢

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こんにちは、魂夢です。時雨と神楽は生きてますよ?


第27話 紫が知っている事

・妖夢視点

 

爆発に巻き込まれた流楠君は胸に、ひどく大きい火傷の跡が残っていた

胸に手を当て、「ヴヴゥ〜」っと唸っている

 

「この高みから見れば、お前の自爆など、塵と同じだ!うっ」

 

流楠君が少しフラフラと歩き、民家の壁に寄りかかり、はぁはぁと息を荒げていた

そろそろ限界なのだろうか?あれだけの力を常に放出していたらこうなるのは当たり前だ

 

「血が...血がオレを呼んでいる...」

 

歯を食いしばり、強がっているように言う。本当に強がっているのか、わからない

私は計画通り、流楠君の前に立ちはだかった

 

「流楠君、かかって来てください。私があなたを切ります」

 

敢えて切りますを強めに言った

左眉毛をクイっと上げ、目を見開きつつニヤリと口元を歪め流楠君はフンっと嘲笑した

 

「愚かだな、貴様如きがこの力に挑むとはっ!」

 

逆に流楠君は力を強めに言った

今の流楠君の目を見たら普通の人なら腰を抜かしてしまうだろう、それぐらい鋭い目つきをしている

私はあの目は知っている。あの目は“人を殺せる人の目“だ

 

以前、といっても去年だが

流楠君が「奴らを殺してるってことは、俺は殺人してるのか?」と言ってた時があった

そしたら西井さんの師、すなわち博士が「いいや、コアを投入された人の想像が形を作っている、つまり人の形をしただけで、闇力の塊みたいなものだ」と言っていた

「よかったぁ〜」と、どこかマヌケに言っていた流楠君には、殺人なんて到底出来ないはず

 

それが今、殺人鬼の目、いや、“サイコパスの目“だ

殺しを、殺戮を純粋に楽しんでいる、そんな目

 

私が動いていないからか、ニヤリとした顔のまま、こちらに歩く流楠君

正直怖い、だけど計画通りに行けば...

 

「うっ」

 

目を丸くし、そのまま流楠君片膝をついた

計画通りだ、よかった

 

「フンッ!無駄な足掻きをっ!」

 

そう言うと、流楠君は後ろに傾き始めた

始めこそびっくりしたような顔をしていたものの、地面に当たるまでにゆっくりと目を閉じた

 

「ふぅ〜止めるのだけでも一苦労ね」

「止められただけでもマシですよ」

 

はははっと二人の間に愛想笑いが浮かぶ

でも愛想笑いはいつまでも続かない、愛想笑いが終わると険しく、でもどこか悟ったような、神妙な顔を二人ともした

 

・流楠視点

 

力というのはとても便利だ。何にでも使える

人を守るのにも、人を正すためにも、自己満足の為にも

 

そして“殺戮“にも...

 

俺は強くなりたかった

それは決してだけが力が欲しかったわけではない、制御できない力は破滅を招く

そんなことぐらいわかっていた...いや、わかっていたと思っていた

 

俺は救いたかった、それだけだった

呑まれ始めて気がついた、これは闇力だ、と

俺が呑まれていた間の記憶はない。きっと暴走でもしていたんだろう

心が痛い、俺は本当に何にもできない男だと、つくづく思う

 

『どうするのよ』

 

これは、霊夢の声?ぼんやりとした声ではあるが、よくわかる

 

『紫が“封印“を解かなければこんな事には...』

『でも霊夢は狩怪に対して何もできないじゃない』

 

どうやら紫もいるようだ

封印?まさか狩怪の封印を解いたのは紫?

紫は一体何を知っている?紫は幻想郷の一から十まで全てを知ってるはずだ

忘れていた、紫に全てを聞こう、俺の家族のこと、幻光刀のこと、闇力や幻力のこと

 

声もだいぶ鮮明になってきたので、俺は目をゆっくりと開けた

ここは白玉楼の自室だ、ただの俺の部屋で霊夢と紫が立ち話をしている

俺は普段寝る時のように布団をかけられていた

 

俺は起きようと上半身を動かす

 

「ゔっ!」

 

胸の部分に激痛が走る

思い出した、俺は狩怪に肋骨を握りつぶされたんだ

 

俺は激痛で上半身の力を抜いた、そのせいで布団にポンっと落ち、それでまた激痛が走る

もう踏んだり蹴ったりだ

 

でもおかしい、なぜ肋骨は治らない?

普通の幻力は強力な治癒能力がある。今何時か知らないが1週間ぐらいあれば直せるだろう

一体俺の体に何が起こっているんだ?

 

「ようやくお目覚めね」

 

俺はクイっと首だけを動かし、霊夢の方を向いた

 

「お、おはよう...」

 

申し訳なさそうに俺は言った

暴走していたから、ちょっと、いや凄く気まずい

 

「もう!止めるのに苦労したんだから」

「ご、ごめんなさい...」

 

まったくもう、とお祓い棒を肩に担いで霊夢が言う

ああ、マジですまん、反省してる

 

「なぁ紫、聞きたいことがあるんだけど」

「ん?」

 

まるで自分に話しかけられると思ってなかったような顔で紫はそう言った

 

「紫は健斗と真由美について何か知っているか?」

「...知らないわ」

 

俺は紫が一瞬戸惑った顔をしたのを見逃さなかった

何か知っているな、俺はそう確信した

 

「本当に?」

「ええ」

 

何か隠さなければいけない理由があるのだろうか

まぁいずれ、しかるべき時が来ればわかるはずだろう

それより今は他のことについて聞こう

 

「じゃあ幻光刀の前の所持者は?」

「名前は知らないわ」

 

そうか、と俺は小さく呟いた

幻想郷を作った張本人が何にも知らないとか、もう笑うしかない

 

「幻力と闇力について教えてくれ」

 

俺がそう言うと、紫は床に正座し、語り始めた

 

「知ってのとうり、幻力と闇力は対をなしているわ。特殊能力としては、幻力は強力な治癒能力を、闇力は脳内麻薬の分泌と強烈な破壊衝動が現れると聞いているわ」

 

俺はまた、そうか、と呟いた

狩怪ついてや、謎の場所についても聞こうと思ったが、まぁどうせわからないだろう

 

ああそうだ、俺が暴走した時のことを教えてもらおう

 

「俺が暴走した時、俺はどうなった?」

「それはね...」

 

霊夢も床に座り込み全てを話し始めた

狩怪を食べたこと、妖夢を殺そうとしたこと、血を求めていたこと

 

俺は最初うんうん、と聞いていたが、終盤に行くにつれ聞くのが辛くなっていった

そして最後まで聴くと、血の気が引いていくのがわかった




そろそろクリスマスの番外編のシナリオ作らないと...

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