東方魂魄恋愛談   作:魂夢

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こんにちは魂夢です。今回は謎の回収を行います。あと一週間も時間が空いてしまい申し訳ありませんでした!小説のうまい書き方などを勉強したり、つじつま合わせなどを行なっていたため遅くなりましたが、ボリュームは大きいですよ!


第21話 流楠のトラウマ

俺は病室で目覚めた

3年前と同じようにあの永遠亭で

前とは違ってミイラのように包帯でグルグル巻きだが

血がたくさんついた包帯が気持ち悪い

 

「大丈夫ですか?」

 

隣で見守ってくれていたのだろうか?妖夢が優しく言う

しばらく妖夢に見とれていたが、我に返り返事をする

 

「まぁ、なんとか」

 

出来るだけ安心させるように言う

逆に俺は聞き慣れた妖夢の声に、すごく落ち着く

妖夢の柔らかく、可愛らしい声は俺の心の傷を癒すには十分過ぎる

 

「流楠君はどうして、いつも自分を犠牲にするんですか?」

 

やっぱり気になるよな

俺は毎回異変が起きるたびに、自分を犠牲にしてみんなを守って来た

これには俺の過去が大きく関わっている。本当は最後まで話したくはなかった

けれど、この件を話すことになるのはなんとなく、薄々気づいていた

だからこそ全てを話すことにした

 

「わかった。話すよ、俺の過去を、俺のトラウマを」

 

ー流楠の過去ー

 

これは俺がまだ小学生の頃だ

 

小学生の頃の俺は、自分で言うのもなんだが、人気者だった

登校すればみんなに挨拶され、クラスに入れば俺を中心に輪が出来た

 

その時の俺の不安といえば両親のことしか無かったかな?

 

俺の両親は見た目は普通の夫婦なのだが、いつも兄ばかり優遇していた

おやつも兄の方が多かったし、兄だけ自分の部屋があった

兄は小太りで、わがままで自分の意見がとうらないとキレるような人だ

 

俺は両親も兄も嫌いだった

だから高校生で一人暮らしを始めた

自分だけの部屋を手に入れた時は清々しい気分だったよ

 

俺は小学生の時に受験に成功して、中高一貫校に入学した

だけどこれが間違いだった

中学一年の時、まだ学校が始まったばかりの頃

俺は人助けに興味を持ち、ある国のボランティアに参加してしまった

その国は紛争が絶えない国だったのだが

俺がボランティアに来た時、運悪くそこで戦闘が始まった

 

激しい動きを見せる防弾ジョッキを着た男たち

辺りに銃声や爆発音が鳴り響く

 

俺と他数人は瓦礫の後ろに隠れていた

 

たまたま手榴弾が建物の下に落ち、大きな爆発が起きた

建物が倒壊し、建物の下にいた少女が瓦礫に挟まれる

俺に向けて手を伸ばす少女を見て、俺は助けないといけない使命感に駆られた

 

「この国に来たのは人を助けるためだ!」

 

そう言って自分を奮い立たせ、少女のもとに急ぐ

あと少し、あと少しで辿りこうとした時

''もう一つの手榴弾''が少女の元に落ちた

 

そして手榴弾爆発し、少女の姿は閃光と爆音に包まれた

閃光と爆音が収まった時にはもう、少女の姿は無かった

 

「あ.....あぁ....」

 

目の前の惨劇に絶句する俺

膝から崩れ落ち、その場から動けなくなった

 

「おい!何してるんだ!?死ぬぞ!」

 

同じくボランティアに来ていたガタイのいい男が、俺を瓦礫の裏まで引っ張ってくれた

 

その後のことは、あまり覚えていない

気がついた時には、もうすでに飛行機に乗っていた

 

〜病室〜

 

俺の涙が包帯にポツリ、ポツリと滴り落ちる

涙をぬぐいながら俺は言った

 

「俺は伸ばした手を掴めなかったんだよ。俺はダメなやつさ」

 

妖夢が俺の手をぎゅっと握りながら言った

 

「流楠君はダメなやつではありません。いつも私たちを救ってくれた人を、私はダメな奴だとは思いません」

「...ありがとう...」

 

俺は何とも言えない幸福感に包まれた

 

俺を褒めてくれる人がいる、俺を理解してくれる

それだけで俺はもう何もいらないほど嬉しいのだ

 

ー流楠の生活ー

 

話を戻そう

俺は中学生になり、中学校に行った

いつも通り、席に着いた、人が来たので挨拶でもするのかななんて思っていたのだが

俺は度肝を抜かれた

 

「この人殺し!」

 

俺は予想外の出来事のせいで、一人海放り出されたように唖然としてしまった

そしてなぜかはわからないが、俺のボランティアの件が学校中に広まっていたのだった

 

「死んだ少女が生きた方がよっぽどよかっただろうよ」

 

俺はうつむきながら話を聞いていた

歯を食いしばりながら、じっと耐えた。耐えて耐えて耐え続けた

 

「みんなぁ!コイツは少女を囮にして逃げたんだぜ!人間のクズだよな」

「それは違う!!」

 

みんなの前俺のことをクズと叫んだのは厄介者の谷澤星空だ

俺は否定した

必死になって、違うと言い続けた

 

けれどもいくら言っても意味がなかった

無駄なあがきを続ける俺に対して星空は口元に微かな微笑を浮かべた

 

それを見て俺の中で少しづつ、怒りがたまっていくのがわかった

目が飛び出るほど目を見開きながら、俺は訴えた

 

「俺は助けようとしたっ!」

「人殺しで嘘つきとか、なんで生きてるかすらわからなくなるよなww」

 

そして怒りはいずれ、悲しみえと変わって言った

心がズキズキと痛い、心が苦しい

ナイフで刺されたように痛み、心を直接掴まれたように全身がぎゅっと苦しくなる

 

そこで俺は気付いた

ここは俺が知っているような、楽しい学校じゃない

 

ここは地獄だ。俺は今、地獄にいるのだ

これから爪を剥がされ、手と足を千切られて、身動きが取れないまま、身体中を針で刺されて

苦しみに包まれた状態でゆっくりと存在が消える(死ぬ)のだということを悟った

 

そして、イジメは少しずつ人殺しへの制裁から、ただの理由の無いイジメに変わっていった

更にイジメはだんだんとひどくなっていった

自分のせいだと思っていたのだけど、もう何が何だかわからなくなってしまった

 

耐えきれなくなった俺は自殺しようと、ビルの端にある鉄格子に登った

俺は、怖気付いた?いや、少し違う感情を抱いた

 

【俺が俺で無くなってしまう】

 

これが感情なのか心の声かはわからない

ただ死の恐怖とは違う何かに、俺は使命感を感じた

この気持ちのお陰で俺は麻薬も違法もしなかった

不思議ではあるが、今となってはこの気持ちに感謝している

 

そして俺が俺でいるためには耐えればいいと考えようになった

それから高校2年まで耐えていた

 

〜病室〜

 

「まぁこんな感じかな?長々とごめんね」

 

俯いていた俺は、妖夢の方にふっと振り返った

俺は妖夢の方を向いて、いい意味でびっくりした

 

「流楠君に.....そんなことが...あったんですね」

「流楠は、よく頑張ったと思うぜ」

「アンタも良くやったじゃない」

「そのお気持ち、よくわかります」

 

そこにはみんないた

妖夢の他に、霊夢や魔理沙、咲夜やレミリアまでいた

 

「みんな...ありがとう!」

 

みんな泣いてて、気づくと俺も泣いていて

本当に、本当に良かった

 

幻想郷に来る選択をして、よかった!

 




霊夢達はお見舞いに来た時にたまたま話を聞いていた設定です

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