アクエリオンEVOL ~光の系譜~   作:シエロティエラ

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カナダでは動画を観れないので話の確認が記憶頼りになるんですよね。
では更新します。





闇の巨人

 

 

 

 

 分解されたアクエリオンは、それぞれベクターに戻った。だがアマタは気絶し、ミコノはベクターを扱ったことがない。仕方がなくミコノとアマタはカイエンが機体に乗せ、彼らが乗っていた機体は元の搭乗者が回収することになった。

 そして次の日の学園の集中治療室、アマタは沢山の医療機器に繋がれて寝かされていた。内臓を傷つけていた原因となった骨折は手術で摘出、再接着され、その他の裂傷、刺傷、切傷の縫合は済まされている。しかし彼は未だ目を覚まさず、寧ろ現在彼の周りをせわしなく人が動き回っている。彼の対イオンは通常の人では考えられないほど高い値、87°を示しており、全身から異常なほどの汗を流している。そして心なしか、彼の体は赤く発光しているようにも見て取れる。

 

 集中治療室の外では、ミコノが手を組みながら座っていた。その隣には、若干の距離を置きながらもカイエンが座っていた。彼も彼なりに思うところがあり、アマタの身を案じていた。軍人としては失格だろう、だが巻き込んでしまったとはいえ、ミコノの話では彼はカイエンの妹であるミコノを避難させようと東奔西走していたそうだ。ならば感謝こそすれ、咎めるのは筋違いではないだろうか。だがアマタが禁断の名前を知っていたことも事実であり、怪しいということには変わりない。

 

 

「……こんなときにか」

 

 

 昨日の襲来があったのに、再び襲来するアブダクター。こちら側のことなどお構いなしと言わんばかりの事態に、カイエンは軽く舌打ちをする。しかしこの場に留まるわけにもいかないため、椅子から立ち上がった。

 

 

「カイエン……」

 

「お前はそこにいろ」

 

 

 一言だけ妹に言い、カイエンは出撃していった。

 病室の前には、ミコノだけが佇んでいる。もはやアマタに出来ることはないのか、医療スタッフは一人を残して場を離れてしまった。寝かされているアマタの体温は未だ80°を超えたままだ。普通の人間ならすでに死んでいるが、彼がまだ生きているのは彼が特別であるが故だろう。

 

 

「もし神様がいるのであれば、どうか……」

 

 

 無心にアマタの回復を祈るミコノ。先ほどからアブダクターと戦っているのか、地面が揺れている。現場から離れているのだろうが、学園も例外ではなかった。

 とそのとき、治療室で大きな音がした。ミコノが顔を上げると、そこにはよろよろと歩くアマタと、それを必死に押しとどめる医療スタッフの姿だった。驚きを通り越して焦ったミコノは、咄嗟に医務室に入った。

 

 

「アマタ君、何してるの!?」

 

「……いかないと……奴が」

 

「これ以上戦ったらだめ!! まだ治ってないのに」

 

「この子の言う通りです!! 貴方は安静にしないと」

 

 

 スタッフとミコノの二人掛かりでアマタを抑えるが、そんなものないかのように廊下を突き進むアマタ。外への出口がわかっているかのように進む姿は、先ほどまで病床についていた人間とは思えない。

 途中で力尽きたスタッフを置いたまま、アマタとミコノは外へ出た。襲撃を受けていた地区には複数のアブダクターがおり、その上空には……

 

 

「え? ……巨人?」

 

 

 アマタとはまた別の、もう一人の巨人がいた。しかしアマタとは異なり、その目とカラータイマーは漆黒に染まっていた。また綺麗な銀色だった肉体は黒と赤のツートーンカラーに染められ、その様子が不気味さを一層際立たせる。

 

 

「あいつは……あのビジョンの……」

 

「え? カイエンの?」

 

「ああ、あのあと映った巨大な影が……」

 

 

 巨人は浮遊して少しずつ前進しながら、時折光弾を発射して建物を壊していた。見た限り建物を壊して人を出すことによって、アブダクターに女性を捕獲させているようである。

 

 

「まさか……アマタ君、行かないよね」

 

「……」

 

 

 ミコノは聞くが、アマタは応えない。無言でジッと巨人を見つめている。おもむろにアマタはミコノから離れると、ミコノの制止を聞かずに再び変身した。

 対を為すように現れたウルトラマンは、強い光を纏いながらもう一人の巨人を蹴り飛ばした。黒い巨人の倒れた先は既に破壊されており、幸い人もいなかった。が、上空から落下したため、その衝撃で戦闘中だったアクエリアもアブダクターも、地上にいるものは一様に態勢を崩された。

 

 

「ちょッなに!?」

 

「またウルトラマンか!?」

 

「どうもあの闇の巨人の相手をするらしいが……」

 

 

 向かい合う二人の巨人を取り囲むように並ぶアクエリアとアブダクター。それらを無視するかのように向かい合う巨人。しばらく睨みあいが続く中、ウルトラマンの方だった。

 昨日と同様、右手にエネルギーを集めると、アブダクター各機に伸ばし、被害者たちを残忍救出した。だがやはり万全ではなかったのか、その動きだけで彼のカラータイマーが鳴りだした。

 

 

「パイロットたちに通達します。ただいまよりウルトラマンと共同戦線を張ってください」

 

「アブダクター掃討後、各機ウルトラマンを援護せよ!! 女に負けるなよ」

 

「「「了解!!」」」

 

 

 司令室より指示を出されたそれぞれのアクエリアは、周りにいるアブダクターに攻撃を開始した。闇の巨人もそれに合わせるように、ウルトラマンとの戦闘を開始した。

 アブダクターとアクエリアの戦闘は、数がアブダクターのほうが多いために五分、ウルトラマンと闇の巨人の闘いは、先にエネルギーの切れたほうの負けである。互いに小さな光弾で牽制し、空中で拳をぶつけ合い、腹や背中を蹴る。

 

 

「オラァ!!」

 

「ヤァァァァアア!!」

 

 

 男女各アクエリオンは順調にアブダクターを屠っていく。しかしウルトラマン同士の闘いは一進一退を繰り返しており、時折流れ弾がアブダクターやアクエリオンをかすめていく。

 

 

「ちょっと!! 昨日はこんなんじゃなかったじゃない!!」

 

「知らん!! 昨日はそもそも巨人がいなかっただろう!!」

 

「それにしたって、キャッ!? 限度があるでしょう!?」

 

 

 アブダクターは確実に減っているが、アクエリアも流れ弾によって負傷していく。現在ウルトラマンと闇の巨人は地上におり、互いに睨みあっている状況である。ウルトラマンのカラータイマーは激しく高い音を鳴らし、闇の巨人も自分のタイマーを蒼く点滅させている。どうやら互いにエネルギーは残されていないらしい。

 

 

『お前は……誰なんだ』

 

『……それは手前ェが一番わかってるだろう』

 

『何だと?』

 

 

 睨みあう中で何やら話始める二人の巨人。それは互いの、そして周囲でちょうど戦闘を終わらせたアクエリア搭乗者たちの頭の中に響くように声が聞こえた。そしてその声はミコノにも聞こえていた。アマタが変身していると分かっているミコノは兎も角、搭乗者たちや司令室の人間は、ウルトラマンの声の若さに驚いた。

 

 

「ウルトラマンって、男だったの?」

 

「なぁにMIX、今更男だから助けないとでもいうの?」

 

「オレ達とあまり変わらないんじゃねぇの?」

 

(……この声、どこかで聞いたことが)

 

 

 聞こえてきた声に対し、カイエンはある疑念を持った。ウルトラマンの声は、つい昨日禁断の合体をした相手、アマタ・ソラという青年の声に似ていた。似ているというより、彼の声そのままだった。

 昨日巨人が消えたのは、降ろされたベクター及びミコノのそば。巨人は昨日動けない自分以外のベクターに攻撃がいかないように立ちまわっていたため、何度も攻撃を受けていた。そしてミコノを護ったというアマタ・ソラ。彼は大怪我を負っていた状態で自分たちの前に現れた。そういえば彼が怪我をした場所は、ウルトラマンが攻撃を受けた場所と同じだった気がする。

 極めつけは縫合をした後の傷の治り。異常なほどに早く治ったかと思えば、通常では死ぬかもしれない高熱を出す始末。彼が普通ではないことは明らかである。

 

 

(……まさかな)

 

 

 一旦思考を終わらせ、目の前の戦いに意識を移す。今目の前の二人の巨人は、それぞれ右腕に強烈なエネルギーをため始めた。互いのエネルギーの余波がぶつかり合い、空気が振動している。

 

 

『消えな、デュア!!』

 

『受けろ、シェア!!』

 

「ッ!? みんな、衝撃に備えろ!!」

 

 

 ただならぬ雰囲気を察したカイエンは、合体している男女ベクター各機に通達した。その直後、二人の巨人は両の手をL字にくみ、縦に構えた右腕からウルトラマンは水色の光線を、闇の巨人は紫の光線を発射し、それが二人の中央でぶつかった。

 ぶつかった場所で大きな爆発が起こり、宙に浮いていたアクエリアは大きく吹き飛ばされ、瓦礫は舞い上がり、壊れかけた屋根は吹き飛ばされた。ミコノの立っていた場所にも暴風が押し寄せ、その位置からは眩い光が見えていた。

 暫くぶつかり合っていた光線は、最後に大きく爆発を起こし、皆の視界を白く染めた。視界が元に戻ったミコノが初めに見たのは、互いに膝をつく巨人の姿だった。二人とも最早攻撃をする力が遺されていないのだろう。

 

 

『手前ぇ……名は?』

 

『……シエロだ。お前は』

 

『光ある限り闇がある。覚えておけ、俺は闇、ティエラだ』

 

 

 最後に二人は名乗ると闇の巨人、ティエラは空高くへと飛び去った。シエロは立ち上がると、左手にエネルギーをため始めた。

 

 

「……何をするつもりだ」

 

 

 司令室のドナールはいぶかし気に呟く。他の者は声を発さないが、同じような表情を浮かべていた。ウルトラマンは左手を一度大きく輝かせると、壊れた街に向かって伸ばした。左手から発せられた光は粒子となり、壊れた街に振りかけられていく。すると不思議なことに、町は映像を巻き戻すかのように元通りなっていく。

 

 

「コォォォォォォ……」

 

 

 全ての修復を終えたウルトラマンは霞となって消えていく。同時にミコノのそばには柔らかな光が集まり、それはアマタの形を形成した。戻ってきたアマタは体のあちこちに青痣を作っており、肩で息をして膝をついていた。

 その様子にミコノは何もできなかった。自分にはエレメントも発現してないし、アマタの様な特別な力もない。でも何かをしたいと考えたミコノは、アマタを正面からそっと抱いた。"お疲れ様"の言葉と共に。

 

 

 






ティエラはスペイン語で大地、シエロはスペイン語で大空です。ティエラのデザインは後日載せます。
ではまた。


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