アクエリオンEVOL ~光の系譜~   作:シエロティエラ

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最近ふと思い立って、もう一度アクエリオンEVOLを見たとき、このネタを思いつきました。
留学直前に書いたため次の話がいつになるかわかりませんが、温かい心でお待ちいただけると幸いです。





Prologue

 

 

 

 空も地面もない、真っ白な空間にその者はいた。全身を銀、青、赤に染めた人型が立っていた。胸の真ん中ではクリスタル体を赤く点滅させており、肩で息をついている。点滅と共に鳴り響く音は、まるで緊急事態を知らせる警報の様。

 

 

『……コォォォォォォォォォォォ』

 

 

 見た目とは裏腹に若い声で吐かれる息。全身の筋肉の付き方や精悍な顔つきに似合わず、実年齢は若いのかもしれない。

 

 

「……ォォォォオオ、シェアッ!!」

 

 

 銀の人型一度大きく息をつき一つ喝を入れるように声を出すと、クリスタル体の周りの紅に輝く別のクリスタル体を輝かせ、白い空間からいなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天使学園。そこはアクエリアパイロット、エレメント候補生をを育成する各園である。男女別学となっているこの学園の女子等では、生徒たちが歌を歌っていた。

 

 

「次元ゲートの彼方よりくるアブダクター。人を攫い、年を破壊する彼らの目的は未だ分かってません」

 

 

 ピアノを演奏していた女性は立ち上がり、歌っていた生徒を見渡した。

 

 

「ゼシカさん!!」

 

 

 女性が一人の生徒の名を呼ぶ。呼ばれた生徒、ゼシカは女性に目を向け、他の生徒はゼシカに注目する。

 

 

「貴方は四度、出撃によりアクエリア合体を経験しました。聖なる守り手に選ばれし喜びを、皆さんに教えてください」

 

「んーそうですね。まぁ気持ちよかったかな。でも女の子同士じゃなくて男と合体すればもっと刺激的かも」

 

 

 何気なく呟かれた彼女の言葉に生徒たちは一様に反応し、女性はその発言を破廉恥であると叱った。

 

 

「天空の乙女はグイゼ・ストーンによって純潔を守られています!! 男女の合体などありえません!!」

 

 

 女性の言葉にゼシカは呆れた表情を浮かべる。その時別の生徒から女性に質問が投げかけられた。

 

 

「そういえばスオミ先生。以前本を読んだ時に書いてあったことなんですが」

 

「何でしょう?」

 

「アクエリア以外にも戦った光の巨人がいたということですが」

 

 

 生徒の質問にしばし考え込み、女性、スオミは口を開いた。

 

 

「神話の中の話ですが、その光の巨人は強い輝きと共に現れ、守るべき人々を背に戦い抜いたと言われています。また赤、青、そしてその二つと銀色の混ざった形態に変化し、それぞれに適応した能力で戦っていたと。」

 

「またその巨人以外にも、胸に輪っか状のクリスタルを着け、剣で戦った巨人。白銀に輝く鎧を身に纏った二本角の巨人の話などもありますね。私たちはその巨人の戦士たちを過去の人々と同じように、畏れと感謝、憧れの意を込めて『ウルトラマン』と呼んでいます。そしてその存在のどれもが、アクエリアの戦い以後、一万二千年の間に確認されたとのことです」

 

「仮にその『ウルトラマン』が現れたとすれば、アブダクターに勝てるのでしょうか?」

 

「神話によると、"ウルトラマン"はアクエリアと同等以上の力を持っていると言われています。神話によれば、『夢を信じられる限り、光はそこにある』と、また『光は絆であり、誰かに受け継がれて再び輝く』と書かれています。恐らく人類が自らの力で苦難に立ち向かい、それでもどうしようもなかった時に、『光を受け継ぐもの』が現れるのではないかと私は考えています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "アクエリアに舞う空"。

 それは今の世より十年以上前に作成され、放映された映画である。感動のラストを迎えてエンドロールが流れるが、客席はガラガラ、数えるほどしかいなかった。

 

 

「今日も客は少ない」

 

 

 ぼやく青年にこの映画館に館長と思しき男性が近寄った。

 

 

「そりゃ仕方ねーよ。アブダクター襲来に合わせて上映したら儲かるかと思ったが、まぁ見当外れだったな」

 

 

 ため息をつきながら男は客席を見渡す。客席にはゴミが彼方こちらと散らかっていた。青年もその様子を見てため息を一つついた。まぁどうせ今日の上映はこれで最後、ごみを片付けたら今日の仕事は終わりのため、青年は道具を手に取って掃除を始めた。

 

 

「ったく、ごみぐらい片付けろよ……ん?」

 

 

 青年はそこで、一人の人影に気付いた。女性は映画に感動していたのか。涙を流したまま未だ椅子に座っている。観てくれるのは嬉しいのだが、流石に閉館時間過ぎるまでいては困るし、彼女の家族もしんぱいするだろう。そう考えた青年は少女に近づいた。

 

 

「あの……」

 

「ッ!? はい」

 

「えっと……もう終わりですが」

 

「あ、はい。それじゃあ」

 

 

 女性はそう言うと立ち上がり、そこから去っていった。青年はそのまま掃除を続けようとすると、少女が座っていた椅子に財布が落ちていた。恐らく少女が落としていったのだろう。

 

 

「……まだ間に合うか。ちょうどこの席で終わりだし」

 

 

 手早く掃除を終わらせた青年は外に出て、比較的高い建物の屋上に跳躍した。人間離れした跳躍力で飛び上がった青年は、建物の屋上に立ち上がって通りを行く人を眺めていた。

 

 

「……見つけた」

 

 

 ボソリと呟いた青年は一度地上に降り、そのまま走って少女を追いかけた。既に上からだいたいの位置を把握していたため、直ぐに向く敵の人物を見つけることが出来た。

 

 

「すみません」

 

 

 呼びかけられた少女は振り向き、自身を呼び止めた青年を見て驚いた顔をしていた。

 

 

「これ、落してました」

 

「え? あっ!?」

 

 

 持ち物を確認し、財布を落としたことにようやく気付いた少女は、青年から財布を受け取った後、礼をしたいと言いだした。しかし青年は仕事として行った行為と考えているため受け取ろうとしない。

 それでも礼がしたいと食い下がる彼女に、ついに青年が折れた。

 

 

「……わかった。そのお礼受け取ろう」

 

「ありがとうございます!!」

 

 

 背年の言葉を聞くと、少女は笑顔を浮かべた。不覚にもその笑顔に、青年の顔は少し染まった。

 

 

「私、ミコノ・スズシロと言います。あなたのお名前は?」

 

「アマタ。俺はアマタ・ソラだ」

 

 

 一人の青年と一人の少女が巡り会うとき、運命の歯車が回り始める。

 

 

 

 






◎アマタ・ソラ
主人公。原作通り真面目で礼儀正しいが、都市不相応の落ち着きを持っている。服装は原作と異なり、黒の薄手のロングコートや、革ジャンをよく来ている。シャツからズボン、靴まで黒いのは、昔子供の頃に出会った男の影響を受けたため。
エレメント能力は原作同様重力干渉。それによって浮遊することが出来るが、滅多なことで使うことはない。両手中指には、それぞれ赤と青の石がはまる指輪をしている。
女性の笑顔に弱い。


◎ミコノ・スズシロ
原作通り。


◎ゼシカ・ウォン
原作通り。


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