お待たせしました。それでは最新話更新します。
それでまどうぞごゆっくり。
「あれはグビラ。この星の歴とした生命体だ」
混乱する室内に、アマタの言葉が静かに響き渡る。そばにいたカイエンやミコノは勿論、せわしなく動き回っていた人たちも動きを止め、アマタに目を向けた。その中には不動総司令の姿もある。皆が皆怪訝な視線をアマタに向ける中、不動が代表してアマタに口を開いた。
「君は知っているのか? アレの正体を」
不動の言うアレとは、画面に映っているグビラの姿。その目は真っ赤に染まっており、背中からは何度も潮吹きが成されている。幸いにしてか、グビラが出現したのは人のいない場所、今は死傷者がいないが、それも時間の問題である。
総司令の問いかけにアマタは首肯で応じた。
「教えてくれ、アレは一体なんなのだ」
「アレはグビラ。深海怪獣にカテゴリされる、この星の生き物です。神話にも何度か出ている鼻がドリルの巨大生物とはアレのこと。尤も、本来はあのような狂暴な生き物ではありません。あの目の妖しい光様からして操られている、若しくは怒っていると考えられるでしょう」
「ということは、アレを鎮めれば自然に住処に帰るというのか?」
「ええ、そのはずです」
アマタのその知識は何処から来たのか、何故誰ひとり知らない怪獣の情報を知っており、且つ見ただけで怪獣がわかるのかと疑問は尽きない。だがミコノとカイエン、アンディに加え、ドナールと司令、そして不動はどこか納得している表情を浮かべた。
しかし他はそうもいかない。スオミや他の者達、特に事情を知らないMIXやゼシカらパイロットは、今にもアマタに掴みがからんばかりの雰囲気を醸し出していた。
「ベクター出撃。パイロットはカイエン、アンディ、そしてゼシカだ」
この雰囲気を打破するかのように総司令の声が響いた。そしてそれ以外の人員は各自待機という命令が下るも、アマタは不動によって別室に連れていかれた。
「お前に聞く。アクエリオンで対処出来ると思うか?」
「無理ですね。アブダクターは機械だったからまだしも、あれは生き物。機械よりも更に動きが不規則で、あの子らの意志もある」
「主に武装で固まったアクエリオンでは難しいと?」
「武装のない合体が出来たのなら可能性はありますが」
「そうか」
そこで会話を途切ると、不動とアマタはモニターへと目を移した。既に到着したアクエリオンが何とかグビラを誘導しようとしているが、逆にグビラは気を荒立たせている。このままでは暴れだし、最寄りの都市が被害を受けるだろう。
「アマタ・ソラ。君はこの状況を打破できるか?」
「あるいはできるかと」
「その場合、アレを殺すのか?」
「そのほうが簡単でしょうが、オレは無駄な殺生は嫌いです」
そう答えたアマタに、不動は満足そうな笑みを浮かべて扉を開いた。
「ここから出るといい。被害が出ないように好きにやれ」
「はい」
指定された場所を通り、暫く通路を行くと、アマタは学園の外にいた。そして周りには人がおらず、ここで変身しても誰にもバレることはない。すぐに等身大に変身したアマタは空に飛び、雲に紛れて巨大化しながらグビラの許に向かった。
◆
そのころアクエリオンは、グビラを攻撃しないようにしつつ、都市部から離そうと四苦八苦していた。
「それにしても、攻撃したらいけないのがこんなにきついとは」
「疲れるわ、いい加減大人しくならないかしら」
「同感だけどもう少しの辛抱じゃないか?」
「どういうことよ?」
アンディの言葉にゼシカが疑問を呈するが、カイエンはどこか納得したような表情を浮かべた。彼の視線の示す先、巨大な熱源反応が高速でこちらに向かっているのが分かっていた。そしてそれが思た通りの者であることも。
「こういう時は本当に頼もしいな」
「その通りだ」
「一体何の話よ……。ん? 何よこの反応!?」
「頼もしい増援さ」
アンディがそう言うや否や、グビラのそばに輝く巨人が降りてきた。グビラはその衝撃で軽く後退り、アクエリオン搭乗者たちはその眩しさに一瞬目を細めた。
グビラは一瞬怯んだものの、すぐに臨戦態勢に入ってウルトラマンに襲い掛かった。鼻のドリルを回転させて突進してくるが、ウルトラマンは頭と顎下に手を入れ、突進を止める。そしてそのまま合気道の様に突進の力を利用し、グビラを都市とは逆方向に投げ飛ばした。
「私たちも加勢しよう」
「そうだな」
アクエリオンは武器を収めたままウルトラマンのそばに降り立つ。しかしウルトラマンはアクエリオンの前に立ち、首を横に振った。
「!? まさか、一人やるつもりか?」
「ちょっと、なんでよ?」
「分からん。だが奴の様子を見る限り……」
カイエンらパイロットはウルトラマンを見た。無言でこちらを見つめる光る双眼は、こちらの手出しを望んでいないことを告げていた。そしてその真意を、カイエンとアンディはわずかながら読み取った。それは曲がりなりにも彼の巨人の正体を知り、彼の気質もわずかながら理解しているゆえである。
「……任せていいのだな?」
「……シェア!!」
「わかった、信じるぜ」
「なんなのよ、もう」
カイエンとアンディはそう応えると、アクエリオンの合体を解除し、三機のベクターに戻った。が、やはりというべきかその場に滞空し、事の成り行きを見守ることにしたようだ。
「司令、これよりベクターは待機状態に移行する。緊急時は即時合体し対応します」
『了解した。各機滞空したまま事に当たれ』
「「「了解」」」
司令の許可も下りたところで、ベクターはウルトラマンの邪魔にならない場所で滞空した。ついでにカイエンはコックピットにてこの戦いを記録し始めた。
ウルトラマンはベクターが離れたことを確認すると、グビラに向き直った。投げられたグビラは態勢を立て直し、もう一度突進してきていた。次も投げ飛ばそうとウルトラマンは身構える。しかしグビラは突進ではなく途中で上体を起こし、一気にウルトラマンにのしかかってきた。流石のウルトラマンもこれを交わしきれず、まともにのしかかりを受けてしまう。
「ガアアアアアアアアアア!!」
「ンウウ!? シェエア!!」
のしかかったまま足踏みするグビラだが、渾身の力を込めたウルトラマンに再び投げ飛ばされた。投げられたグビラは態勢を治そうと暴れているが、中々立ち上がれない。
「コォォォォォォォォォォォ……」
立ち上がったウルトラマンは一度息をつくと、長く息を吸い込み始めた。気のせいだろうか、彼の左腕のブレスレットと額の宝玉が、うっすらと青い輝きを放っている。
「……ォォォォオオ、シェアッ!!」
吸い込み切った息を吐き出すように力を入れたウルトラマンは、左手首を額に当てる。すると辺りは眩い青色の光に包まれた。光が止むと、先ほどまで打って変わって青と銀のみで体を染めたウルトラマンが立っていた。右腕のブレスレットはなく、透明だった額の宝玉は真っ青に染まっている。
「ハァァァァァァァアアア……」
蒼く姿を変えたウルトラマンは右手から肘にかけてエネルギーをため始める。右拳を握りしめて腰の位置に置き、左手でその拳を包み込む。それでも抑えられない輝きが指の隙間から漏れ出す。
「ガアアアアアアアアアア!!」
ようやく立ち上がったグビラは再びウルトラマンのほうを向き、鼻のドリルを回転させた。
「『レリーヴィング・ストリーム』……シェア!!」
一際強い輝きを讃えた右手をグウルトラマンがビラに突き出すと、輝きとは趣の異なる柔らかな光の波が幾筋も発せられ、グビラを包み込んだ。光に包まれたグビラはしばらくもがいていたが次第におとなしくなり、ついには蹲って動かなくなった。一瞬グビラは死んだのかと思われたが、光が止むとそこには鼾をかいて寝ているグビラの姿があった。
「怪獣の鎮静化を確認。これよりベクター各機は帰投する」
『了解、周囲の警戒を怠らず帰還せよ』
「「「了解」」」
鎮静化を確認したパイロットたちは、それぞれ船首を学園のほうに向けた。それを見たウルトラマンはベクターに向かって頷くと、グビラの頭を一度撫でて、両手で持ち上げたままどこかへと飛び去って行った。
「なんつーか光線とか出すから怖いイメージがあったけど」
「結構優しいのね、あの巨人」
「……そうだな」
カイエンたちは各々今回の感想を言い合う。しかしカイエンはウルトラマン、アマタが取った手法がいかに難しいかを理解していた。恐らく彼がこの方法を取れるようになるまで、膨大な時間がかかったのだろう。その間、殺したくなくとも何匹もの怪獣を倒してきたのだろう。性根が優しいアマタのことだ、表面上は平気そうにしても、その心はその度に泣き崩れ、擦り減らしていたのだろう。彼の過去を考えると、素直に喜びの声をあげることが出来ないカイエンだった。
はい、今回はここまでです。
次回はこの小説におけるキャラ設定をもう少し細かく書いていきます。
そしてハリポタですが、もう少しお待ちください。何分年末やらクリスマスやらで親戚菅家のことが忙しものでして。
それでは皆様、またいずれかの小説で。