元・英雄殺しがダンジョンにいるのは間違っているのか? 作:黒犬@ダクソ民
遅くなって申し訳ありません。リアルが少し立て込んでいて遅くなりました。
前回の後書きで書いた通りベートファンの方々には本当に申し訳ない内容となっております。
ああっ!お客様ものを投げないで!
では、第六話の始まりです。
乾杯をして、各々料理を楽しむバルバトス達。ベルとヘスティアは料理を楽しみながら雑談に興じていた。バルバトスは一人静かに酒を飲みながら考え事をしていた。
(なぜ、ここの店員と主人からあれほどの強者の覇気を感じるんだ…)
ジーッと店員達を眺めるバルバトスはある意味自然体ではあったが見られているほうはたまったものではなかった。
(あ、あの人。ずっと私のほうを…まさか…?)
そのひとりであるリューはとある事情により、気になって居た。
(あの金髪の女…エルフ?というものか…実力はそれなりといったところか。)
(まさか、賞金稼ぎでは…無いと思いますが一応警戒しておきましょう。)
なんとも言えない空気が二人の間に流れる。
「そこの店員。」
「は、はい?」
「おかわりを貰えるか?」
「あっ、はい。畏まりました。」
ついつい過剰に反応してしまい。リューは顔を赤くする。
(は、恥ずかしい…)
バルバトスは不思議な顔をする。
(なぜこの女は焦っているのだ…?)
なんとも不思議な雰囲気の中、酒場の時間は流れていく。そんな中再び酒場の空気が変わる。
「ミアの母ちゃん!飲みに来たでー。」
店の扉をあけながら赤髪の女神が酒場に入ってくる。その後ろにはそのファミリアの団員と思わしき者たちが続く。
「お、おい、あれロキファミリアだぜ。」
「やっぱり「剣姫」はかわいいな。俺声かけてみようかな?」
「やめておけ、お前なんか相手にされないに決まってるぜ。」
「そうだぜ、むしろそこから喧嘩吹っ掛けられでもしたらたまらないぜ。」
周りの冒険者たちが少しざわめき立つ。
「うわぁ…」
そんな中ベルは「剣姫」を見つめていた。それは完全にひとめぼれしてしまった者の目だった。
「むぅぅぅ」
ヘスティアはそんなベルを見て頬を膨らませる。
(ほう…なかなかの力量を持った面子だが…ベル程の輝きを見せてくれそうなものはいないな。)
バルバトスは少し見つめた後、興味を失くしたように食事に戻った。
「みんな遠征ごくろうさん!色々な事後処理のせいで一日遅くなってしもうたけど。今日はじゃんじゃん飲んでや。」
ロキファミリアの周りがにわかに騒がしくなる。
「そうだ、アイズ!お前のあの話を聞かせてやれよ!」
「あの話…?」
しばらくして狼人の男が騒ぎ始めて。アイズに絡み始めた。
「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろう!?そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」
「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐ集団で逃げ出したやつ?」
「それそれ!奇跡みてぇにどんどん上層に上がっていきやがってよ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたってのによ~。」
「私…倒していない…」
狼人の大声にかき消されアイズの否定の声は届かなかった。
「そんでよ居たんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえガキが!」
「抱腹もんだったぜ、兎みたいに壁際に追い込まれちまってよぉ!しかも、アイズがミノを細切れにしたからそいつ全身にくっせー牛の血浴びて…真っ赤なトマトになっちまったんだよ!」
「私…倒してない…青い人が倒した…」
だが、ヒートアップしている狼男と周りはアイズの話を聞いていなかった。大爆笑する狼人につられて何人かは笑い周りの人たちもつられて笑った。
「いい加減そのうるさい口を閉じろ、ベート。ミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったその少年に謝罪することはあれ、酒の肴にする権利などない。恥を知れ」
誇り高いハイエルフであるリヴェリアが苦言を呈す。
「おーおー、流石エルフ様、誇り高いこって。でもよ、そんな救えねえヤツを擁護してなんになるってだ?それはてめぇの失敗をてめぇで誤魔化すための、ただの自己満足だろ?」
「これ、やめえ。ベートもリヴェリアも。酒が不味くなるわ。」
さすがにこれ以上はまずいと思ったロキはやめるように言うが酒が入ってテンションが上がったベートは止まらない。
「アイズはどう思うよ?自分の目の前で震え上がるだけの情けねぇ野郎を。」
「……あの状況じゃあ、しょうがなかったと思います。」
否定しても意味がないと悟ったアイズはとりあえず当たり障りない答えを返す。
「なんだよ、いい子ちゃんぶっちまって。…じゃあ質問を変えるぜ?あのガキと俺、ツガイにするならどっちがいい?」
「ベート?君は酔っているのかい?」
流石に話の変わりように驚いてフィンが暗にやめるように言うが…
「なあ、どうなんだよアイズ?」
「私は…そんなこと言う、ベートさんとだけはごめんです。」
「無様だな」
「黙れババアッ。…じゃあ何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?」
「……っ!?」
「そんなはずねえよなぁ。自分より弱くて軟弱な雑魚野郎に、他ならないお前がそれを認めねえ」
「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」
「ベル君!?」
青年の最後の言葉にベルはいたたまれなくなったのか、椅子を飛ばして、外へ飛び出していった。
「ヘスティアよ…貴様はすぐにベルを追うといい。あいつはおそらくダンジョンに向かった。」
「えっ!?どうしてそんな…」
「あいつの目には悔しさが浮かんでいた。無力な己への憤りと一緒にな。あいつは力を求めるだろう。だがそんなものは幻想だ、一時の感情での行動する場合は碌なことにならん。道を知っているお前ならあいつより先にダンジョンの入り口に着けるだろう?」
「…わかった。でも君は?」
「ここの支払いを済ませてから行くとしよう。なに、先に帰っているといい。」
「…騒ぎは起こさないでね!」
そういってヘスティアはベルを止めるために走り出していった。
「ドチビ!?」
ロキがヘスティアに気が付いたがヘスティアはあえて無視をして走っていった。
(さて…ヘスティアにはああいったが…あいつの態度は少し目に余る…灸をすえてやる程度ならよかろう…)
そう思いながらロキファミリアのテーブルに近づいていく。
「さすがに名高いロキファミリアの幹部でも酒が入れば獣と一緒か…。」
「あぁん!?」
バルバトスが近づいてわざと聞こえるように言った一言にベートは反応した。
「あっ…青い人…」
アイズは昨日見た人物のため一目で反応した。だがベートは気にせず突っかかる。
「なんだてめぇは!?ぶっ殺されたくなければ消えな!」
「吠えるな駄犬。酔った獣など相手にする価値もないな。まあいい…今日の俺は紳士的だ運がよか……。」
バルバトスが喋っている途中でベートはキレて蹴りを放つ。酔っているとはいえLv5の力の入った蹴り。それが顔面にまともに入ったのである。それを見ていた人間は息をのんだ。死なねば安い方だと思う人、凄惨な場面を想像し人によっては顔を手で覆った。だが…
ガァン!!
聞こえてきたのは固い金属を叩いたかのような音だった。それまで結果がわかっていたかのように見ていなかった冒険者も何事かとそちらに顔を向けた。
「「「…えっ?」」」
そこには何ともないような顔で立っているバルバトスが居た。顔には傷一つなかった。そしてその顔は憤怒に染まっていた。
「獣風情が…大人しくしていればよかったものを…ぶち殺す‼」
バルバトスの手がベートの顔面を掴む、そしてそのまま店の外に連れていかれた。当然ベートは暴れるがガッチリと顔面を掴んだ手は離れることなくむしろ万力のような力で絞めつけてきた。ロキファミリアの面々が外に追いかけていくと…
「離せ!この…」
「所詮は吠えるだけの犬畜生か…少々躾けてやる」
掴んだベートをそのまま地面に叩きつけた
「かっは…」
「いつまで寝てんだ!」
そこにバルバトスの踏みつけが入る。
結果的に残ったのは地面に半分めり込むかのように気絶しているベートとその近くで立つバルバトスだった。そして、出てきた面々に気が付くとフィンに向かって話しかけた。
「貴様がこのファミリアの団長だな。今回は俺も熱くなったことは謝ろう。だが、しっかりと団員の手綱を握っておくんだな。」
「…ああ。今回はこちらに非があった。謝ろう、ところで君の名前を聞いてもいいかい?僕の名はフィン・ディムナ、ロキファミリアの団長をやっている。」
「…バルバトスだ、ヘスティアファミリアの新人だ。」
そういってバルバトスは店の中に戻りミアに話しかける。
「すまないな…店に迷惑をかけてしまって。支払いだ。」
そういってバルバトスはヴァリスの入った袋を置いていく。
「少し多くないかい?」
「迷惑料だっ取っておいてくれ。」
「分かったよ…今度来るときは騒ぎは勘弁してくれよ。」
「ふっ…了解した。」
そういってバルバトスは店から出ていく。
後には喧騒が残された…
いやー、戦闘シーンの描写は難しいですねぇ…
本当にベートファンの皆さんには申し訳ないことをしたと思っています。
次回もお楽しみに!