魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

361 / 455
第60話 訪れた平和③

 夜になった。

 日課となった下着洗濯を終え、ナガレは床に付いていた。

 ヤンデレ魔法少女三人組は、「ちょっとヤボ用がある」と言って上のフロアへと移動していた。

 これも普段の事なので、ナガレは「やり過ぎんなよ」とだけ伝えて横になった。

 寝床のソファの枕元には漫画が山と積まれている。

 現在第三部目が連載中の格闘漫画をナガレは読んでいた。

 元々空手家であることもあって、架空とは言え技などは気になるようだ。

 

 特に弾丸滑りという技には感心していた。

 魔法少女や魔女戦でよく行うダメージカットによる防御との類似点を見出していたのだった。

 漫画の描写されるとイメージが湧きやすく、しばし塾講するといい感じに魔法の使い方を思い描けた。

 早速今度使ってみようと、ナガレは思った。

 流石に胸から入った弾丸を心臓の表面で滑らせてダメージを大幅に下げるといった芸当は難しそうだが。

 

 

「ねぇナガレ」

 

「ん?」

 

 

 少し離れた場所に置かれたベッドに横たわるかずみがナガレに声を掛けた。

 基本的に誰かと添い寝がしたいかずみではあったが、性別による分別は付けているようだ。

 三人の雌餓鬼たちも見習ってほしいものである。

 

 

「最新刊で元ラスボスしてた人が動物園のゴリラに喧嘩を売って、しかも負けたんだけど…これって私が見てる幻覚なのかな」

 

「反応に困るな…」

 

「だよねぇ…。私はクローン人間みたいだけど、これは造った時のバグだったらよかったのにと思ってる」

 

 

 あんなに強かったのに…とかずみは続けた。

 反応に困る、という思いが再びナガレへと去来した。

 

 

「辛いか?」

 

「辛い。年取ったのは分かるけど、おじさんの扱いが酷い」

 

「いや、そうじゃなくてだな」

 

「あー、私の事なら心配いらないよ。寧ろ私が何者か分かったから今は気が楽」

 

「そう…なのか」

 

 

 彼をしても、かずみの態度には驚きを隠せなかった。

 彼女の様子が演技ではなく、本心からのものであると察せた所も拍車を掛けた。

 一方である程度の理解もしていた。

 自分がどういった存在かを知れたことは、決心が付く切っ掛けでもある。

 少なくとも自分はそうだった。

 存在するだけで災厄を招き、並行世界で数多の宇宙を滅ぼしてきた存在であると自らを知った時、彼が選んだのは永劫の戦いの道であった。

 行く場所とやるべき事を悟った時は、確かに多少気分が楽になったものだった。

 地獄へ向かう事を決めて安らぎを得るなど、彼ぐらいのものだろうが。

 

 

「てなわけで、そろそろお休みぃー!」

 

「ああ、お休み」

 

 

 闇の中、手を振る気配と空気の震えが伝わった。

 程なくしてかずみは寝息を立て始めた。

 安心しきっている様子に、改めてかずみは自分の現状を受け入れている事が察せた。

 強い奴だと彼は思った。

 もう少し漫画を読んでから寝ようと決めた。

 読んでいる巻では、闇堕ちした主人公が前作主人公の父親であり恩師でもあるキャラクターに闇討ちを仕掛けていた。

 度し難い行動と展開に、彼は首を傾げつつも読み耽っていた。

 独特の魅力がある作品だなと、彼は内心で感想を述べた。

 

 その時ふと、上フロアからの音に気付いた。

 魔法を使って遮音していても僅かに漏れる戦闘音ではない。

 それは、話し声だった。

 

 

 

 

 

「その案は悪くないけど、良くも無い。アルティメットドラゴンやジェノサイダーがいい例だ」

 

「アルティメットは知ってるけど、なんだその炭酸飲料みたいな名前は。新手の怪獣か?」

 

 

 キリカと杏子の声だった。

 珍しく会話が成立している。

 ちょっとした奇跡に、ナガレは夜空を見上げた時に偶々落ちてきた流れ星を見たような気分になった。

 

 

「まぁそんな感じだね。そうそう佐倉杏子、折角だからついでに君もジェノサイダーと融合するといい。頭の角の辺りから角代わりに生えてると見栄えがいいぞ。イメージ的にはラーと融合してる六歳児みたいな感じに」

 

「なんでそういう話になるんだろうなぁ。そっか、頭腐ってるんだったな」

 

「そして不死鳥モードやろうとして赤熱化して無意味に自爆するといいよ。或いは球体になってサイドデッキに入れられて、増G使っても引けずに制圧盤面されて負けるといい。あと不死鳥は手札に組んな。墓地で寝ててくれ」

 

「キリカ。テメェ、変なクスリでもやってんのか?」

 

 

 会話にならない会話を続ける二人、ナガレとしては平和だなぁという気分である。

 

 

「貴様らは真面目に会話が出来ないのか?ああ、無理だったな。すまない」

 

 

 麻衣が口を挟む。口調には呆れの成分しか含有されていない。

 怒りと殺意が無いのが驚きだった。

 これが奇跡か、とナガレは感動さえ覚えた。

 

 

「それはそうと海外新規で神々は強化されるな。ラー玉サーチ可能になるとは、いやはや」

 

 

 なんだかんだで麻衣も会話に乗っていた。

 安心したのでナガレも眼を閉じた。

 その日は何時にも増して熟睡できた。

 尤も、彼の場合数分でも熟睡に至り疲労の大半は取れるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 














短いけれど、投稿ペースを取り戻したい

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。