魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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第14話 夜風の下で

 風が吹いた。それが熱く火照った身体を撫で、彼の身体と感覚に心地よさを与えた。

 それを契機に彼は目覚めた。薄い黒布のように映えた雲が夜空を彩り、欠けた月に従うように夜空を流れていく。

 仰向けに倒れているナガレは、顔を左に倒した。

 既に背中に触れている芝生が彼の頬にも触れた。そして彼は、隣にいる少女の顔を見た。

 

 

「よぉ、相棒」

 

 

 紅い眼の少女はそう言った。言うまでも無く佐倉杏子である。

 

 

「よぉ、杏子」

 

 

 彼もそう返した。普段よりもゆっくりとした発声から、拭いきれない疲労感の蓄積が伺えた。

『シャインスパーク』と呼ばれる技は機体のエネルギーを相当に喰うが、魔法を使っての疑似再現でもそれは変わらないんだなと彼は思った。

 首を傾けるだけでもかなり疲れ、全身には熱が纏わりついている。

 

 

「ほい。返すよ、それ」

 

 

 杏子は立ち上がり、背に羽織っていたものを剥ぎ取って彼に掛けた。

 月によって切り取られる彼女の輪郭が、一気に細さを増した。

 ナガレに返したのは、彼から借りていたジャケットだった。

 

 彼が全裸の杏子に掛けたものだった。当然の結果として、杏子は生まれたままの姿となった。

 痩せぎすで、肋骨の浮いた薄い胸と筋肉の形が肌の下に透けた腹筋。

 ろくに筋肉の付いていない手足、そして薄い陰りが生えた女の器を月光が青い光で染めていた。

 

 闇の中だが、彼の眼はその程度では曇りもしない。

 それを分かっていても、いや、分かっているからなのか、杏子は自らの裸体を彼に晒していた。

 恥じらう様子は、見た限りでは外見には表れていない。

 

 その様子を彼は見ている。見たいわけではなく、顔を背けるのさえ億劫なのだった。

 そもそも杏子というか未成年の肉体には欲情しない。また今までも変身の度に裸体を晒していたので珍しくも無い。

 しかしながら、少女の身体にはやはり慣れない。複製魔法少女を屠る事同様に、慣れてはいけない事柄だろう。

 

 そして彼は無言で右手を掲げた。その瞬間、手に斧槍が握られていた。

 口を僅かに開閉させると、斧槍は中央に開いた孔から何かを放出した。

 それは緑がかったパーカーと青いホットパンツ、黒シャツと白いショーツ、そして長尺のブーツであった。

 要は、佐倉杏子の普段着である。役目を終えると斧槍は消え失せ、彼の手も地に落ちた。

 

 

「便利だねぇ、ほんと」

 

 

 放り投げられたショーツを取り、杏子は白い下着を穿いた。

 穿く様子がゆっくりだったことは、言うまでも無いか。

 

 

「なぁ」

 

「なにさ。もう一回見てぇのかい?」

 

 

 下着の裾を右手で掴んで伸ばし、鼠径部をちらりと見せながら杏子は嘲笑いの顔で言った。

 手がもう少し下がれば、彼女の女に生えた陰りが夜風に触れる。

 まるで童貞を嘲笑う、熟練の娼婦か淫魔である。

 まぁ、当の杏子自身は処女であるのだが。

 

 

「物陰で着替えるとか、そういう考えはねぇのか?」

 

 

 横になっていて少し回復したのか、ナガレの声には力が戻り掛けていた。

 尤もな問い掛けを、杏子は鼻で笑った。

 

 

「真夜中に、自然公園の草原で裸のメスガキが一人きり」

 

 

 朗読するように杏子は言う。

 ここが何処か教えてくれたことを、彼は「こいつって妙に親切だよな」と思っていた。

 状況を考えると、神浜のミラーズで模擬シャインスパークを放った後に魔女が気を遣ったのか安全な場所にとこの場所に空間を繋いだのだろうと判断した。

 もしかしたら、魔女にとっては嘗ての餌場だったのかもしれないとも彼は考えた。

 

 

「そいつが物陰でのろのろと服を着てる。そこに迫るのは群れるのが大好きで、群れねぇと何も出来ねぇDQNども」

 

 

 演技がかった言い回しが妙にサマになっていた。

 なんかキリカに似てきたな、と彼は思った。

 

 

「憐れなメスガキはとっ捕まって、抵抗したせいでボッコボコにされる。腹を殴られて両手を折られて足首も砕かれて芋虫みてぇに転がされる」

 

 

 そういえばこんな感じに謎妄想を言われたことがある。だからこの後に何を言われるかは検討が着いた。

 

 

「それでもそいつは…あたしは抵抗を続ける。でも無力で何も出来ねぇ。そんなあたしの股に、そいつらは雄を突っ込む。狭すぎるから膜どころか肉も裂けて血だらけになって、あたしは泣き叫ぶ。そいつらは面白がって笑う。そんでもって、ケツにも無理矢理突っ込む。こっちも裂けて血塗れになる。そして血と体液が掻き混ぜられて結合部がグチャグチャになるまで犯されて、当然だけど中に出される。白くてどろっとしたのがあたしの穴から溢れる。それを出した肉を、あたしは舐めさせられて口にも出される。周りの奴らはあたしの身体に自分のを擦りつけて、この髪も竿に巻き付けて扱いたりしてあたしの身体にぶっ掛ける」

 

 

 淡々とした、それでいて生々しい言い方で彼女は続ける。そのせいで、彼が場面を想像するのは容易かった。

 

 

「で、佐倉杏子さん16歳はあんたに抱かれる前に中古になりましたとさ、と。でもってあたしは駅前にでも手首と足首を縛られて股を開いた体勢の全身白濁まみれの状態で捨てられて、朝通りがかった通行人とかに動画取られてネットに流されて、半永久的に晒し者兼夜のお楽しみの総菜にされるんだろうよ」

 

 

 最悪の上に最悪を重ねる杏子。

 自分の災禍を楽しそうに語っている彼女の心境やいかに。

 

 

「とまぁ…こうなったらあんたのせいになるけど、それでいいの?」

 

 

 トドメと言わんばかりに彼女は告げた。

 息が荒く、少し疲れた様子だった。

 心がというより、一気に捲し上げたせいだろう。

 本来の体力の無さが、ここに表れていた。

 

 

「くだらねぇコト言ってねぇで、さっさと着ろ」

 

 

 歯を軋ませながら彼は言った。

 魔法少女から受ける大抵の暴虐を何だかんだで赦す彼だが、何物にも限度はあるらしい。

 当然のことであるのだが。

 

 その彼の様子に、杏子は「ハイハイ、分かりましたよっと」笑いながら言い、鼻唄交じりに残りの服を着始めた。

 今回のレスバは自分が勝った、とでも思っているらしい。

 また彼も彼とて敗北感を覚えていた。

 

 その一方で、苛立ちの奥から滲むのは安堵の感覚。

 何はともあれ、杏子が無事で何よりといった想いであった。

 













久々の不健全会話

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