魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ) 作:凡庸
月光の下、廃教会の屋上にて粘液が絡み合う音が響く。
ナガレの唇を、女豹が餌食を喰らうように貪り続ける。
熱い舌が彼の歯と歯茎を舐め廻し、淫猥な蛭のように蠢く。
「何しやがる」
「シたくなったから、シたいコトをシてんだよ」
思念で問い、思念で返す。
紅い眼を淫らな色で輝かせた杏子は、彼の舌を追い掛け蛇のように絡ませる。
治癒魔法の応用か、彼女の舌は通常の倍ほどに伸びていた。
「それにあんた、言ったよな」
身体を擦り付けながら杏子は言う。
赤いドレスの下には下着はなく、尖った胸の突起が衣装を押し上げ、短いスカートから覗く太腿には淫らな体液が下方に向けて流れていた。
スカートの中に夜風が入り剥き出しの女を舐め、淫らな香りを孕んで通り過ぎていく。
快感にぶるっと震える杏子。耐えるように彼の身体を強く抱き、舌が彼の口内で暴れ回る。
「こう、いう、欲望ってのは…本能で…だから…あたしが、生きてる証拠…だってさ」
「痛いとこ突きやがるな」
焼き肉屋でのやり取りを思い出す彼であった。
自分は生きた死体であると告げた杏子に、欲望は生きてるから生じていると彼は言ったのだった。
また杏子は、この時少しかちんと来ていた。
彼から感じる命の鼓動と異性の匂い、触れ合う舌の感触から快楽を見出していると云うのに、相手である彼は特に様子を変化させていない事に。
快楽の波をかき分けるように、屈辱感がさざ波となって波紋を広げる。
反撃しよう、と杏子は思った。
「ざぁこ」
愛撫の最中、杏子はそう言った。
舌と唇を絡め、彼の口の中に言葉を押し込む様に。
杏子の言葉に、彼は首を引きつらせたようにぴくりと反応した。
その様子に、杏子は満足そうな笑みを浮かべた。小悪魔のような貌だった。
「ざぁこ。ざぁこ」
「………」
舌を絡め、彼の唾液を啜って自分の唾液を彼に送りながら、欲情を帯びた嘲弄の表情で杏子は言い続ける。
口内を舐め廻す杏子の舌は、彼の喉の奥で小さく生じた獣のような唸り声の震えを感じた。
ぞくりと背筋を恐怖が這うが、肉体を絡める快感と彼の反応を愉しむ欲望の方が強かった。
「なんだ、それ」
昏い洞の奥から噴く、不吉な禍つ風を思わせる声だった。
怯えを糊塗するように、杏子は嗤った。男を弄ぶ娼婦の笑顔で。
「いやぁね。事実を言ってる迄さ」
「事実」
更に闇を帯びた声。
恐怖によって、杏子は体内の肉の袋が疼いたのを感じた。
生命の危機を感じ、彼女の本能は命を繋ごうと蠢動したのだった。
それに彼女は少しの驚きと、嬉しさと嫌悪感を覚えた。こんな自分が命を宿そうなどと。
「事実って、なんだよ」
彼女の内なる思いを断ち切るように問い掛けを放つ。
現実に向き合おうと杏子は思った。
「あんた。あたしにここ最近なすがままだろ?あたしらに欲情しねぇってのは分かるけど、無抵抗ってのはどうなのかなぁって」
「…成程な。一応聞くけどよ、ざぁこってのは雑魚ってコトだよな」
「そうだよ。ざぁこ」
「…」
「ざぁこ、ざぁこ、ざぁぁぁぁぁこ☆」
彼の顔の前で口を大きく開き、彼の頬を舐め上げて杏子は言う。
男とは思えない木目細かい肌の感触は、それだけで杏子を欲情させた。性癖破壊兵器と呼ばれるだけはある。
そして嘲弄の眼に鋭さを宿して彼を見る。彼の外見の中、魂に潜む者の姿を見透かすような視線であった。
その視線に、彼の眼差しが重なる。
黒々と渦巻く、坩堝のような眼だった。
「なんだよ、その眼は」
「何時もの眼だよ」
「何してんのさ」
「お前を、佐倉杏子を見てる」
「改めて言うなよ。あとそんなじっと見つめんなよ。あたしは腐れゴキブリや孕み願望紫髪と違って色気違いじゃねえんだぞ」
そう言うや、離していた唇を重ねる。
全くの自然な動作、呼吸に等しい動きであった。
舌の蠢きを再開し、彼の口内を蹂躙しに掛かる。
「んな事より、ざこらしくこれでも触ってな」
しゃぶる様に彼の口内を舌で這い廻らせながら思念を送る。
杏子は両手で彼の手首を掴むと、自分の両胸へと彼の掌を導いた。
薄い隆起が彼の手に吸い付くように重ねられる。
興奮によって硬くなった二つの頂点が彼の手に触れたとき、彼女は軽く達していた。
彼との戦闘で胸を殴打され、蹴りを叩き込まれて切り刻まれた事は幾度となくある。
骨が見えるのは日常茶飯事で、心臓が肉片、骨が白い欠片になって吹き飛ぶのも全く以て珍しくない。
生じる苦痛は自分に生を感じさせ、尚且つ背負うべき業罰の片鱗として彼女の心に苦痛を刻む。
その破壊と苦痛を齎す手が、自分の胸に触れている。
揉むでもなく撫でる訳でもなく、ただ触れているだけであるが、少し力を入れれば根こそぎ胸を抉り抜く力を秘めた彼の手に触れられることは背徳感も相俟って強い刺激を彼女に与えた。
「あふぅ……」
杏子は吐息とも喘ぎともつかぬ声を出してしまう。
「どうした?」
彼は尋ねる。何の喘ぎかは分かっている。
彼の内心に、それに対する性欲はない。
ただ、別の感情が渦巻いていた。
「なんでもないっ……わけ、ねぇだろっ!!」
快感の痺れに酔いながらも杏子は思念で叫ぶ。
「あたしは、何でもなくなんか無いんだよぉ……!もっと強く、もっと乱暴にしていいんだよ……!」
口を離し、杏子は荒い息を吐きながら語り始めた。
「さっさと…あたしを……犯せよぉぉおおおおおお!!!」
本能に心を焦がされ、身を持て余した獣のような叫び。
今の杏子と発情しきった雌の獣との差は、言葉を話すか否か程度の違いであった。
「ならよ、どうして欲しいのか言ってみろよ」
「だからぁ……!」
「言えよ」
彼の眼には、怒りがあった。
黒い炎か、怨念のような意思の渦か。
「俺に何をして欲しいんだ?はっきり言いな」
その言い回しに、杏子は自分の中で何かが切れたのを感じた。
「このっ!!だから!!ざこらしくあたしをぐちゃぐちゃにレイプしろって言ってんだよ!!分かってんだろうがこのざこ野郎!!」
意味不明だと、彼女の理性は認識していた。
しかし怒りと欲情に滾った本能がそれを覆い隠している。
叫ぶ彼女の脳裏には、自分が彼に組み敷かれる様子が映っていた。
馬乗りになった彼が自分の服を引き千切り、裂かれた衣服が風見野の夜に花吹雪のように舞い散る。
そして裸にした小さな乳房に彼が噛み付き、突起を貪る様を思い浮かべる。
スカートを捲られ、下着を纏っていないが為に秘所を露わにされた自分は、そこから熱く甘い蜜を垂らしながら彼を迎え入れる。
そして激しく腰を打ち付けられる度に身を捩じらせて悲鳴を上げ、涙を流して懇願する。
もっと酷く、もっと激しくしておくれ。
後ろから覆い被さって、結合部と菊座を手で開いて、内臓の内側を剥き出しにして凝視して罵りながら犯してくれと。
自分が上げる嬌声や悲鳴を無視して、ただ獰悪な衝動を以て犯し尽くして欲しい。
それが叶わなければ死んでしまいそうなほどに、苦しくて仕方がない。
そうして、自分を壊しておくれ。
そんな様子が、彼女には鮮明に見えていた。
荒い息遣いや、雄と結合する自分の雌が放った淫らな香りや、快感の叫びを上げながら振り回される赤い髪が振り撒く汗の匂いも鮮明に感じられた。
陵辱される自分の様子に、彼女は浅ましい欲望と、人間性を放棄して破滅へと向かう事への願望を感じていた。
「これが、お前の望みかよ」
その光景の奥から、ナガレの声がした。
呆れている訳でも、欲情している訳でもない。
何時も通りの彼の声である。
ただそこに、彼女は彼の怒りを感じた。
「それとさっきから雑魚雑魚雑魚って、好き勝手に愚弄しやがって」
彼の怒りの理由に、杏子は思わずぽかんとなった。
これまでのあたしのアプローチを差し置いて、気にするところがそこなのかよ、と。
しかし一方で、危機感を覚えていた。
彼と自分の意識に入り込んでの幻惑魔法によって表現される、架空の彼による自分の凌辱劇。
それを貫いて自分に届く、実体の彼から発せられる怒気は尋常ではなくなっていた。
「攻守交代だ。覚悟しな」
彼はそう言った。
そして幻惑を貫いて、彼の手が杏子の肩に触れた。
その瞬間、佐倉杏子は悲鳴を上げていた。
風見野の夜に、恐怖と嬌声が綯い交ぜになった、真紅の雌餓鬼の叫びが木霊する。
恐らくは今年の書き納めであります
(この不健全な内容で書き納めとか。いいんスかそれ…)