魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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第二部プロローグ⑤ 蠢動

「唐突だけどさ」

 

「あん?」

 

「あんた、このアニメのキャラで誰が好き?」

 

「レヴィ」

 

「だと思ったよ。確か他にはクインシィとか、あとはお決まりの惣流とかの赤いカラーで気が強い女が好きなんだったね」

 

「ああいう連中は見てて飽きねぇからな。あと赤って色は最高だな」

 

「そういうトコだぞ」

 

「何が?」

 

「自分で考えな。無自覚シチュ野郎め」

 

 

 廃教会の中、言葉が交わされる。

 時刻は朝七半時。朝の支度はとうに終え、一日の始まりに向けて人々が動き出している時刻である。

 この社会不適合者なストリートチルドレンもどきな二人は、帰宅早々にテレビを付けてアニメ鑑賞に勤しんでいる。

 

 画面の中では黒のタンクトップに際どく切り込んだホットパンツを穿いた、赤みがかった茶褐色髪の美女が二丁拳銃を振り回しながら、実に愉しそうに殺戮に勤しんでいる。

 廃教会内は被害者の悲鳴や銃弾の音で満ちていた。

 

 架空の存在であるその女の外見に、現実の存在への似た部分を感じた。

 考えろとはそう言う事かと彼は思った。

 確かに、そろそろ現実に対応すべき時だった。

 

 

「それでなんだけどよぉ…そろそろ退いてくれねぇかな」

 

 

 彼はそう言った。彼の顔の前に、赤髪を生やした後頭部が見えた。普段のリボンは外されていたが、画面の半分くらいが赤髪で埋まっている。

 そして彼への被害はそれだけでは無かった。

 ノーブラの状態での黒タンクトップ、更には足の付け根近くまで切り込んだホットパンツ。

 画面内で邪悪に笑いながら小気味良く低俗な冗談を投げ続ける女と似た姿で、佐倉杏子はソファに腰掛けた彼の腹に尻を置いていた。

 

 色々と際どい位置だった。

 客観的に見れば、背面座位で励んでいるように見える。

 

 最初は疲れてるからという事で許容したが、座らせた瞬間に別に疲れてるから人の腹の上に座る理由は無いなと彼は気付いた。

 その頃にはもう遅く、杏子の小さな尻が置かれていた。

 それから約二時間。そろそろ限界だった。

 性欲ではなく、屈辱感が重なってきている。

 

 

「あー、身体痛ぇ。繁殖願望持ちの腐れ紫髪に殴り蹴られたあたしのコブクロが、マグマを注がれたみてぇに熱くて痛ぇ」

 

 

 先手を打って、杏子はそう言った。言いながら、下腹部に両手を添えて撫でている。

 男である彼は黙るしかなかった。

「手を出すなよ」と彼女から言われていたとはいえ、自分はあの行為を止めなかったという自責が多少なりとも彼にはあった。

 そしてこれは、そんな彼の思考を計算に入れての杏子の発言である。中々に小悪魔じみていた。

 

 

「ていか、なんでああなったんだろな。最初はファミレスにいたってのに」

 

「そりゃお前」

 

 

 思い出しつつ彼も言葉を重ねる。

 息をするたびに杏子の髪の匂いがした。

 あとでさり気なくネカフェ行くのを提案しとこと彼は思った。

 

 

「会話になんなかったからな。あの場の雰囲気は俺でも思い出したくねぇ」

 

「よく言うよ。ガツガツとパスタ食ってたくせに。ご丁寧にアサリとムール貝の貝殻まで全部食いやがって。しかも三杯くらいお代わりしてたよな」

 

「いやぁ。歯ごたえが楽しくて、つい」

 

「パスタの感想じゃねえよ、それ。まぁ、あの雰囲気は…うん、興味深くはあったな」

 

 

 そう言って二人は思い返す。

 深夜のイタリアンレストランなファミレス。

 並び合って座る佐倉杏子と朱音麻衣。この時点で最悪だった。

 

 麻衣は腕を組んで杏子を冷ややかに見つめ、杏子はそれを完全に無視して肉料理を喰い漁る。

 彼の貝殻喰いを指摘していたが、彼女も彼女で骨の類は全て食べ尽くしていた。

 

 ナガレの対面には人見リナがいた。リナはイタリアンな固めのプリンを食べながらドリンクバーを往復しつつ、持ち込んでいた新聞紙を読んでいる。

 定食屋ならともかく、ファミレスしかも深夜で女子中学生がそうしているのは中々奇妙過ぎる光景だった。

 何で呼ばれたんだろ、と思いながらナガレはパスタを食べていた。

 

 

「友人、これあげるよ」

 

 

 と、彼の隣に座った呉キリカが時々貝殻や鳥の骨を彼に差し出した。

 普通なら嫌がらせとしか思えないその行為を。「ああ、サンキュ」と言って彼は平然と受け取り噛み砕いて食べていた。

 こんな感じで一時間が過ぎた頃、

 

 

「本題に入りましょう」

 

 

 とリナは言った。その瞬間、杏子と麻衣は揃って店を出た。

 自分の食べたものの料金をテーブルの上に置いていたのが、妙に常識出来だった。

 が、店に出た瞬間に両者が行ったのは殴り合いだった。

 

 罵声を放ちながら相手の顔を殴り、髪を引っ張り駐車場内を転げまわる。

 駐車場でたむろしていた連中は、酒が入っていたこともありそれを煽った。

 しかし、胸倉を掴み合う二人に睨まれた瞬間、そいつらは悲鳴を上げた。

 

 新しい獲物を見つけた肉食獣のように口を開き、血と唾液を滴らせて嗤う顔をその二人はしていたからだ。

 急ぎ後を追って駐車場に行き、おなじみとなった異界へと追放して先の死闘となった訳である。

 思い返していて、ナガレは意味不明だと思った。

 最初からレストランでテイクアウトをしてから、異界に直で行った方が時間を無駄にしなかったのにという考えを彼はしていた。

 焦点がズレているという自覚は、恐らく彼には無いのだろう。

 

 

「それで、終わった後も殴り合ったんだよな。あの紫髪女、しつこいったらありゃしねえ。こっちはあいつの名前も知らねぇってのにさ」

 

 噛み合わせた歯を軋ませつつ、忌々しそうに杏子は言う。顔に着いた青痣はそう云う訳である。

 素の身体能力は不健康な生活を続ける杏子よりも日ごろから鍛えている麻衣の方が遥かに上であったが、杏子は異常な闘争心で麻衣に喰らい付いていった。

 素手の麻衣に対しコンクリブロックや鉄パイプまで使用し、杏子は襲い掛かっていた。

 

 流石にストップが入り、ある程度やり合ってから引き離された。

 因みにキリカは「眠いから帰る。ばいばい友人」と手を振って帰宅した。彼も手を振って別れを交わしていた。

 それを杏子と麻衣は睨んでたが、何故睨まれるのか彼には分からなかった。

 

 また彼が見た限りでは、武器を持っても麻衣の方が強かった。

 適当に切り上げたのは、素の状態の杏子が弱すぎて弱い者いじめになっていると麻衣が身を引いた為だった。

 それを杏子も自覚しており、杏子の口調は苦々しさで満ちていた。

 

 

「朱音麻衣だ」

 

「お仲がよろしい事で」

 

 

 そう憮然と言って杏子は背中を、というか尻を彼に押し付ける。

 勘弁してくれよと彼は思った。少女の尻の感触を振り払うように、彼は会話を続けることにした。

 

 

「あとなんだけどよ。俺らは試されたな」

 

「殺されかけたの間違いだろ」

 

 

 二人の認識は、リナが放った極大の雷撃に突いてで一致していた。

 ナガレは重傷、キリカと杏子もそれより幾らかは軽いが全身を焼かれた。

 それでいて、麻衣は無傷。

 

 範囲を精密に絞った、しかも彼が魔法少女全員を庇う事も計算に入れての魔法操作である事が伺えた。

 威力といい魔法の使い方といい、自警団のトップであるだけはあるという事である。

 そこで杏子に疑問が湧いた。

 

 

「にしてもあいつ、どこであんなに強くなりやがったんだろな」

 

 

 前回の遭遇の際、実際に彼女とやり合った為、余計に不思議なのである。

 

 

「なんかいい刺激でもあったんじゃねえのか?」

 

「あたしみてぇにかい?」

 

 

 笑いながら杏子は言った。皮肉であるが、確かに数日前の大暴れからの精神世界でのバトル以降、彼女の調子は上がっていた。

 

 

「お前らはほんと強いな。切っ掛けがあれば天井知らずに強くなりやがる」

 

「あんたにそう言われるとはね。ああ、そうそう」

 

 

 認められることが嬉しいらしく、杏子の表情が緩む。

 それが淫らな色を帯びた。

 自然に垂れていた彼の両手に、杏子の手が重ねられた。

 

 

「お褒めいただいたついでに、ちょっと魔法少女の役に立ちな」

 

 

 そう言って、杏子は自分の下腹部に彼の両手を乗せた。

 くびれを描いた腹の、へそより下の部分。

 女の器の少し手前の位置である。

 

 

「さっきも言ったけど、ここが痛くて熱くて堪らねぇ。悪いけどちょっと撫でてくれよ」

 

 

 彼は息を呑んだ。

 ここ最近、杏子の態度が、というか距離感が近すぎる。

 拒みたくて仕方ないが、相手は生きた時限爆弾に近い性質を持つ存在で、更に少し前に性への関心を肯定したばかりだった。

 つまり、逃げ場はないのである。

 何時もの事だなと、彼は思考を切り替えて従った。

 

 

「ひぅっ!?」

 

 

 肉と皮を隔てて、命を育む袋の上を軽く撫でた瞬間、杏子の身体が跳ねた。

 背中が反って長い髪が揺れ、尻が更に腹に押し付けられる。

 さっさと済ませようと、丁寧な手つきで彼は動きを速めた。

 

 

「ひきゃ!あくぅ!ひぎ!くぁ!くふっ!」

 

 

 熱と甘さを交えた声が続き、杏子の身体が蠢動する。

 一週間前の彼女の様子からは想像も出来ない変化であった。

 性的な快感に震える少女の、その快感の片棒を担がされている事について、ナガレは精神的な虚無を感じていた。

 

 虚無の中、一つの考えが思い浮かんだ。

 心なしか腹に触れる布地が湿り気を帯びてきた気がしていた。

 流石に現状が辛くなってきたので、この昂りを鎮めてやろうと彼は思った。

 

 

「あー…悪いんだけどよ」

 

 

 止めようとは思いつつ、手の撫で廻しは止めてはいない。

 律儀な男である。

 

 

「見たから分かっと思うけど、本当の俺はこんな可愛らしいガキじゃなくて」

 

「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

 

 萎えさせよう、そう思っての言葉の最中に杏子は叫び、そして身体をしならせた。

 細い腰はガクガクと震え、体の動きと共に汗が跳ねた。

 萎えるどころか、彼女は快楽の頂点へと達していた。

 

 荒い息を吐き続ける杏子。

 何かに察しがついたナガレ。

 その表情は、どんな顔をしていいか迷っているように思えた。

 

 

「…ああ。だから、今の、お前で、我慢、してんだよ」

 

 

 息の合間に途切れ途切れになりながら、後ろを軽く振り返り杏子はサディスティックに笑いつつそう言った。

 

 

「なぁ…竜馬」

 

 

 彼の外見ではなく、中身を見透かすように杏子は告げる。

 以前、波風立ってるのは悪くないと言った覚えはあるが、これは含んでいいのかね、と彼は思った。

 妙に冷静に見えるのは、キリカに鍛えさせられたせいだろう。

 

 













ひぇっ…

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