魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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第73話 魔獣竜

 暗黒の世界を紅の閃光が駆けていく。

 空間を切り刻むような、稲妻のような飛行であった。

 それは無限に等しい距離を一気に詰め、その頂点へと舞い上がった。

 

 光は深紅の戦鬼の形をしていた。

 太い腕や足を逞しい胴体が束ね、その頂点には猫科動物に似た造形の頭角を生やした鉄仮面を思わせる貌があった。

 顔に配置された緑色のガラスの内側で、更に濃い緑が輝いた。

 巨体の中に、何かが宿っているかのような。生命の息吹と、腐敗の汚濁を思わせる輝きだった。

 

 その輝きは二つあった。

 一つは深紅の戦鬼。

 

 そして戦鬼の前に広がるのは、一つの宇宙に匹敵する巨体。

 皇帝の名を冠された、頂点たる存在。

 

 

 戦鬼、数多の寄せ集めで造られたゲッターロボ

 

 皇帝、ゲッターエンペラー

 

 

 その二体の腹部と頭部が同時に輝いた。

 真紅の色に。

 

 そして。

 

 

 

ゲッタァァァアアアアアアビィィィィイイイイイイイイイム!!!!!!!!!!

 

 

 

 青年の咆哮と共に、深紅の戦鬼の腹部から熱線が放たれた。

 それと同種且つ更に巨大な閃光が、エンペラーの額からも放出される。

 比較対象にならないサイズ差は、例えるならば大海に一本の針を刺したに等しかった。

 されど、針が水を貫く様に戦鬼の熱線は皇帝の閃光を貫いた。

 

 神話にある、引き裂ける大海の如く様相を呈して、閃光は二つに裂けた。

 そして閃光を引き裂いた熱線はエンペラーの額へと着弾し、深紅の炎の花を咲かせた。

 宇宙という土壌に根を張り、そして咲き誇った光の花だった。

 

 その炎の花を突き破り、巨大質量が寄せ集めのゲッターへと迫る。

 それを、戦鬼は両手の斧で受け止めた。

 

 

『流石に早ぇな!!』

 

 

 竜馬の叫びの通りに、それはいつ抜刀したとも思えないほどの超高速で振り下ろされた超巨大な戦斧だった。

 これもまた、比較対象にもならない質量と大きさの差がある。

 それを掲げた剛腕の先で握った二本の手斧で、戦鬼は受け止めていた。

 戦鬼の性能も凄まじいが、一つの宇宙に匹敵する存在を避けもせずに真っ向から受け止めるなど、青年は常軌を逸した精神の持ち主であった。

 

 

『だがな、俺を殺るには力が足りてねぇんだよ!!』

 

 

 竜馬は叫び、戦鬼は腕を払った。

 すると信じられない事に、超々巨大な、それだけで一つの宇宙に相当する大きさの斧が軽々とかち上げられたのである。

 それが霞んだ、いや、それは消失に等しかった。そして巨大な戦斧は、再び戦鬼へと振り下ろされていた。

 

 巨体ゆえの動作から生じるタイムラグなど全く無い。

 皇帝、ゲッターエンペラーの動きは万物に存在する筈の時間や物理的な制約さえも超越していた。

 そして、それを戦鬼は再び受け止めた。その瞬間、青年の眼は自らに迫る無数の斬撃を見た。

 エンペラーが繰り出した斧は一撃ではなく、空間を埋め尽くすほどの超高密度の斬撃であった。

 

 

『上等ォ!!』

 

 

 人の声で叫び、魔獣の咆哮を上げる流竜馬。

 無限に等しい質量と、誇張無しの文字通りの無数に達する斬撃を戦鬼が剣戟で迎え撃つ。

 超振動が宇宙を、次元を、世界を揺るがし空間が溶けた鏡のように歪んでいく。

 

 

『ううううおおおおおおおおりゃああああああああああああああああ!!!!!!』

 

 

 咆哮を上げる竜馬。

 そして剣風の嵐と化して、迫る斬撃を切り刻む戦鬼。

 人機一体の修羅が光を超えた速度で飛翔しながら、皇帝たる存在と切り結んでいく。

 その斬撃がふと止んだ。

 見上げた戦鬼とその主の目の前に、無数の機影が浮かんでいた。

 

 形は大別して三つ。

 戦鬼と似た特徴を備えたもの、腕にドリルを生やした細身のもの、そして重厚な装甲で覆われた巨体のもの。

 ゲッターエンペラーの体表から、無数のゲッターロボが発生していた。

 その三様の存在達は、全てが戦鬼の十数倍の大きさを誇り、凄まじい速度で以て戦鬼を包囲していた。

 そして携えた武具の切っ先を戦鬼へと向け、あらゆる包囲から戦鬼へと迫った。

 

 

『へっ、ゾロゾロと出てきやがって……いい機会だな。飛焔のガキ共から預かったあいつを試してみるか』

 

 

 その様子に、竜馬は実に愉しそうな笑みを浮かべた。

 言うまでも無く、恐れなど微塵も無い。

 

 

『やるぞ…出て来やがれ!!』

 

 

 叫ぶ竜馬。直後、戦鬼の姿は完全に覆い隠された。

 寸前、戦鬼の外套が大きく靡いていた。

 その深紅で覆われた闇の中で、何かが蠢く。

 そして深紅の闇の中から、それが姿を顕した。

 

 戦斧が振り下ろされ、ドリルと拳が突き出される。

 それらは全て空を切った。

 回避されたのではない。

 それを繰り出した者達同様に、腕や獲物が千々と砕けて空を舞っていた。

 

 砕け散る巨体の破片の奥から、それらよりも更に巨大な物体が飛翔した。

 それは巨大な胴体を蛇行させながら、逆向きの激流のように舞い上がった。

 その姿を捉えようと、ゲッター達が一斉に顔を向けた。

 

 それらの鉄仮面然とした顔に、無数の雷光が迸った。

 青白い雷光が鋼の顔面を貫き、胴体を焼き尽くした。

 光は超広範囲に広がり、稲妻が触れたゲッターを媒介としてさらに拡大していく。

 

 破壊は熱量だけに留まらず、数百メートルを超える巨体が一瞬にして人間の拳程度の大きさにまで潰される。

 稲妻は超重力の力を孕み、対象の硬度を無視した力で破壊していた。

 

 その青白い光の根源には、巨大な口が開いていた。

 肉食魚のような長い口吻、その中に生え揃った鋭い牙。

 三日月を思わせる歪曲した白い頭部も、びっしりと牙のような鋭角が生え揃っている。

 それとは対照的な黒く長い胴体は蛇を思わせる造形をしていた。

 

 無数のゲッターロボを一撃の下で葬ったのは、機械の蛇。または竜と呼べる存在だった。

 眼に当る部分には長いラインを描かれた菱形が象眼され、その内側では不吉な血色の線がクロスしていた。

 それは機械の無感情を湛えていながら、殺戮の歓喜に彩られているようにも見えた。

 

 

『随分とご機嫌だな。伝説の魔獣って奴ぁ、伊達じゃねぇな』

 

 

 掛け値なしの感嘆の意を込めながら竜馬は言った。

 魔獣と呼ばれた存在は、彼への従順を示すように、その愛機を中心に全長にして1キロメートル近い巨体を曲げて渦巻いていた。 

 

 鋼の骸が無数に浮かぶその周囲を、更に数を増した巨体達が包囲していた。

 新しい獲物の出現に、竜馬は牙を見せて嗤った。

 

 

 

『ったく、いつもながら遊び相手に不足はしねえな。思う存分暴れな!!ウザーラ!!

 

 

 

 彼の叫びに呼応し、白と黒の鋼の蛇竜は殺戮に飢えた咆哮を挙げた。


















書いてる身でアレですが、まさかの御登壇
アークでの強さも圧倒的でありました
今回の場合は飼い主との色的にドラグレッダーというかドラグブラッカーというか

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