魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ) 作:凡庸
『魔神っつっても、流石にそいつ相手は荷が重いかよ。ええ?マジンガーZEROさんよ。いっそZに変わったらどうだ?』
『だろうな。言っとくがよ、暴走して閉じた世界ってやらをまた創るんじゃねえぞ』
『だといいけどな。もしやらかしやがったら、てめぇ、アンパンていうか餡子を顔面にぶつけ…いや、もったいねえな。んじゃ、パイルダーん中に居座って十個くらいアンパンとか喰ってやら』
『ハハハハハ!今んとこ正気みてぇだな。安心したぜ』
『てめぇ、こんな時に何ワケの分からねぇコト言ってやがる。真面目にやりやがれ』
『ああ。ハジをかいて堪るかよ』
『何だ、そりゃ』
『だから、何だよ』
『正真正銘の魔神にそれやられても嬉しくねぇし、不吉なだけだろうが』
『てめぇ、ホントワケ分からねぇな。会話が通じねえぞ』
『なんていうかな。こっから先も俺の旅は続くんだろうがよ、てめぇほど意味不明で理不尽な奴とは会えないだろうからちょっと安心だぜ。退屈でもあるけどよ』
『どうだかな。てめえよりワケ分からねぇ奴がそこら中にゴロゴロといて堪るかってんだ』
既知の言葉で、理解の及ばない内容を声と光の言葉で投げ合う魔神と青年。
その様子を、佐倉杏子は見上げていた。
そして真紅の瞳があるものを捉えた。
機械仕掛けの魔神が背負う異形の翼の背後で、深紅の巨体が聳えていた。
距離的には背中合わせに近い状態だが、その実生じている距離は無限、ないしは別次元の隔たりがある。
彼女はそう認識した。
魔神の背に、陽炎か幻影のように深紅の戦鬼がいた。
この時彼女の認識は、全てがそちらに向いた。
そして彼女は見た。
ディテールこそ異なっていたが、二本の頭角といい角ばった頭部といい、太い装甲を施された手足に胸部。
それは記憶の中で彼が駆っていた機械の戦鬼と同種の存在である事が分かった。
両肩から伸びていた翼は、今は深紅の外套となって巨体の背で靡いている。
「見つけたぞ……!」
何かが滴る様な声で杏子は言った。それは血潮か毒か、それとも…憎悪か。
「流…竜」
何かの感情を込めて、人間が持ってはならないような想いを込めて、杏子は残りの一語を呪いのように呟くつもりだった。
だがそれは、そこで途絶えていた。
その言葉の矛先である、深紅の戦鬼の姿が消え去った為に。
「な…」
それは、銀色の存在だった。
それに果てはなく、何処までも続き杏子の視界の全てを覆っている。
「何が」
そう疑問を抱いたとき、視界は更に開けた。そして一瞬にして、それが何かを彼女は認識した。
「ッ!?」
咄嗟に口を押さえた。悲鳴を堪えたのである。
湾曲した幅広の両刃の刃。それを支える真紅の装甲が施された強固な長い柄。
それは、巨大と言うにも憚られるサイズの斧だった。
それだけでも一つの世界、一つの宇宙に等しい存在であると彼女は認識した。
それが深紅の戦鬼の、流竜馬のいた場所に振り下ろされていた。
振り下ろされた。
そうである。
斧の柄にはこれも巨大な手が絡みつき、その先には更に巨大な剛腕が続いた。
手も腕も、岩肌のような質感を見せた深紅で彩られていた。あの戦鬼と、同じ色だった。
絶句しながら、杏子は更に先を見た。
横に広がる、緑のラインが入った胸部が見えた。
重厚な鎧を思わせる外見の上にはーーーー。
「…ゲッ………ター……?」
姿を見た杏子は、そう呟いた。
その時であった。
無限に等しいサイズと質量を持ったそれが、高々と跳ね上げられたのは。
天の果てまで届きそうなほどに、両刃の斧は切っ先を掲げていた。
その刃の一部にある異変を、彼女は見た。
極限まで研ぎ澄まされた刃の一部が、無惨に砕けてるのを。
『ハッ!笑えねぇ冗談だな!!』
脳内に、怒気を孕んだ青年の声が木霊する。
『何が進化だ!そのザマで何をほざいてやがる!!!』
青年が、流竜馬は感情を剝き出しにして叫んでいた。
怒りと憎悪と、そしてやるせなさが滲む声だった。
『俺から見たら、てめぇなんざ取り込まれただけの!!成れの果てでしかねぇんだよ!!』
理解の及ばぬ存在に、青年は平然と傲岸不遜に叫びを挙げた。
『そのてめぇに…俺が引導を渡してやらあ!!!』
その根源には、小振りながら鋭い刃の生えた斧を両手で握った戦鬼がいた。
となると、つまり……あの超巨大な斧はその持ち主が手を引いたのではなく……。
『行くぜ!!』
鉄仮面を思わせる貌、頭頂から怒髪天を突いたように伸びた頭角を基準とし、左右に二本ずつ、計五本の長く太い角が生えていた。
その姿は、彼女が認識した異界の殺戮兵器と似ていた。
佐倉杏子の前に顕現したそれは、まるでそれらを束ねる存在のような圧倒的な威圧感を備えていた。
そう、例えば、その存在を評するならばーーー。
『【ゲッターエンペラー】!!!』
皇たる姿をしたその存在---【ゲッターエンペラー】へ向け、流竜馬は獰悪な魔獣の咆哮を上げて深紅の戦鬼を飛翔させた。
相手が何であれ、彼にとっては立ちはだかる者の全ては獲物である事に違いない。
これまでもそうであり、これからもそうなのだろう。
恐らくは、未来永劫に。
圧倒的な存在に向けて猛然と飛翔する深紅の姿を、佐倉杏子は歯を食い縛りながら睨むように見つめていた。
それがまるで、自身の最後の正気を保つ為であるかのように。
短いですが、前の話同様書いててホント疲れました
そしてまぁ……その理不尽で意味不明な存在とは彼は後々、作中時間で一週間、リアルタイムで二か月半ほど色々とやらかされる訳で…
魔神相手には好き勝手言える癖に魔法少女にはデバフでも掛かるのかやりにくそうになって好き勝手にされる男
人生とは分からないものであります
またこんな冗談でも言っていないと、これら超存在を描いた反動で心が虚無りそうになるのであります
追加の駄文を失礼いたしました