魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ) 作:凡庸
ナガレの蒼白の唇に呉キリカの鮮血色の唇が重なる。舌を絡める事を省き、キリカは一気に息を吸った。
魔の毒を受けたナガレの喉に溜まった血が、彼女の口内に移動する。
彼の血が舌に触れた時、キリカの眼は見開かれた。
構わず嚥下した時、彼女の背は弓なりに反った。それでも身長差ゆえに、唇は重ねたままであった。
その唇が離れた。しかし、キリカの顔の位置は動いていない。
「ぁ…はぁ…ふ…ひゅ…」
キリカの口からは空気の震える音が生じていた。
そしてぼどぼどと言う音を立て、キリカの胸や膝に緑の滴が垂れていく。
胸や膝、そして地面に触れた時、接触面から白煙が生じた。胸糞が悪くなる異臭が生じ、衣服が泡となって溶けた。
皮膚が融解し、桃色の肉が溶け崩れた。その様子は、キリカの口も同じだった。
唇が消え失せて歯茎が露出し、その歯茎や歯までもが肉色の泡を吹いて溶けていく。
毒を嚥下した下顎と喉は、更に悲惨であった。
桃色の可愛らしい舌は根元から液体と化して消失、骨を融かされた顎は自重を支えきれずに落下していた。
喉も同じく、皮膚と肉が泡となっていた。
溶けた喉は豊満な胸に滴り、胸の衣装を毒が槍のように貫いて、二つの双球を赤黒い穴だらけの肉と脂肪の塊へと変えていた。
胸の中の黄色い脂肪が焼け、毒々しくも香ばしい匂いを立てる。
赤子に乳を与える為の二つの突起も容赦なく溶かされ、乳を育み蓄える胸自体も無意味な肉の欠片となって、キリカの胴体から辛うじて垂れ下がっている。
ずるりと胴体から滑り落ちる肉が、不意に停止した。
そして映像の逆再生のように溶解した乳房が上昇し、欠損部分を新たな肉と脂肪が埋めて、美しい肉の張りとそれを覆う黒衣が蘇る。
「はひゅ…は…はぁ…はぁ…!」
喘鳴と共にキリカの喉や歯茎、その他全ての部位が修復されていく。
それでも痛みは消えずに、莫大な苦痛がキリカを苛む。
その中でキリカは、痙攣する頬を歪ませるようにして微笑んだ。
「ゆうじん…きみ……がんじょうすぎ」
キリカの発言は尤もだった。魔法少女を溶け崩させる猛毒に、ナガレは人の身で耐えているのであった。
そして、それだけではなかった。
肉体を修復させつつ、彼から得た毒を帯びた血塊を魔力で分解させたときに彼女をはそれを察した。
「きみは……このどくと……あいつと、戦ってるのか」
言葉を告げる中で、舌と歯茎が再生した。
魔の毒は精神を侵食し、元から備えている破壊力と相俟って対象の肉体と精神を破壊する。
ならばと彼は精神力で抗っていた。毒性に対しては仮初の肉体の力が頼りである。
その背後から黒い靄が立ち昇り、彼の背に触れた。
それは擬人化した牛のような姿、牛の魔女の義体であった。
その姿も毒を帯び、手や胴体、雄々しく湾曲した角も完全に形成されずに歪んでいた。
義体は彼の身体を背後から抱き、形を霧散させるや彼の皮膚を介してナガレと同化した。
本体である斧槍も、義体が運んでいたためかナガレの傍らに置かれていた。
瀕死の魔女は消滅に抗い、彼の生命力と精神に賭けるべく協力というか寄生の道を選んだらしい。
魔女も彼の体内の毒を解毒に掛かるが、毒に宿る魔力の強力な反発に合い、彼の体表から苦痛に身を捩るように黒い靄が渦を巻いた。
また毒自体は瀕死の魔女から与えられたものだが、宿る魔力は魔女ではなく、その飼い主のものである。
それは一種の呪いであり、魔女を殺しても消えはしないとキリカは思っていた。
「キリカ…分かったろ……こいつは…俺が、なんとかして」
「うるせぇ病人な友人!空気読めおバカ!女にハジをかかせるな!!」
再生させたばかりの喉でキリカは叫び、ナガレの言葉も聞かずに再度唇を重ねた。
さきほどと同じく。いや、前以上に強く啜り毒血を体内に導く。
毒を受けた肉が溶け崩れるが同時に治癒を行い、毒の受け皿としての形を保つ。
喉を伝って胃に落ちた血が胃壁を焼き、常人なら即座に狂を発する苦痛がキリカの精神を貫く。
「まけ……るかっ…!」
溶解により穴が開く寸前で、胃の内側をキリカの黒い魔力が覆った。
まるで溶鉱炉の如く様子で胃の内側が装甲され、毒血が内部で跳ねる。
魔力は溶かされつつも毒を分解し、食物のように消化し魔力へと変える。
そうして生じた魔力を用いて、キリカは自らの肉体の修復と彼への治癒魔法を行使した。
苦痛は変わらないが、肉体の損壊は一時的とはいえこれで防げるはずだった。
「だから…やめろ…って」
「おだまり!!」
離れようと彼女を突き飛ばす為に出されたナガレの右手に、キリカは左手を蛇のように絡ませる。
五指が接触した瞬間、キリカの手から光が弾けた。手を覆う白手袋が消え、素肌が彼の手に触れる。
当の彼の手は白の皮手袋で覆われていたが、それでも彼女はより近い距離を好んだらしい。
行為に及ぶのならば避妊具の着用は認めない、それを形は違えど体現したかのように。
残る左手も同じように捉え、互いの十本の指が絡み合う。
「はな…せ」
体内から滾々と滲み、喉と胃に溜まり続ける毒血を飲まれながら、唇を動かしてナガレは言った。
「い…や…だ♪」
彼による解毒を介してもなお、強力極まりない毒性を発揮する猛毒をキリカは飲み続けながら答えた。
苦痛に苛まれながらも、弾むような声だった。
キリカの再生能力を以てしても、毒が肉を融解させる速度の方が早かった。
魔力が毒の浄化と、ナガレへの治癒に傾けられているせいもある。
そして何より、毒の威力が強過ぎるのだ。
血が触れたすべての部位が苦痛を訴え、細胞の一つ一つが怨嗟と呪詛を吐いて泣き叫んでいるかのような痛みが生じる。
痛みの種類は、考えられる限りの全て。針で貫かれる鋭い痛みに熱に冷気。
鈍痛に肉が削れて齧られるような、全身に細かくびっしりと拡がるような苦痛。
吐き気に頭痛にと、脳が溶けて乱雑に掻き混ぜられるかのような苦しさも同時に彼女を襲う。
その中で、キリカは思考していた。
『ああ…友人が私の中に来る』
来る、とは血の事だろう。しかし、それは以前にも経験したことである。
彼の喉を喰い破り、彼女は大量の血を飲んでいた。
今もシチュエーションとしては近い。それに対し、彼女の想いは新たな悦びを孕んでいた。
『私の血肉も、君の中へと沈む』
毒血を飲みながら、キリカは治癒の魔力を乗せた自分の血をナガレへと送っていた。
彼女が想ったとおりに、それは肉でもあった。
毒によって溶け崩れ、赤い粘塊となった自分の血肉をキリカは彼へ与えていた。
吸って、吐く。
口を介してキリカが血が交差させる様子は、普段の呼吸も同然だった。
またこの行為は、胃に魚を溜めた親鳥が雛に餌を与える様子にも似ていた。
ナガレを見るキリカの黄水晶の眼は、子を見る母のそれだった。
そして、それだけでは無かった。
『私の中に、君の死が溜まる。毒で死滅した君の黒い血と、新たに生まれては溶ける私の赤い血肉が、互いの生死が抱いて抱かれて交わっていく』
生と死の交差を、彼女はそう評した。
苦痛の最中にありながら、キリカの顔は恍惚と輝いていた。
体内に導いた毒血を分解し、その血を用いてキリカは自分の傷を埋めていく。
防いではいても、僅かに開いた胃の穴から毒は肉体の中に滴り、彼女の内臓を無惨に破壊していく。
肝臓が、はらわたが、肉に骨がと毒の凌辱に晒される。
それらを彼から得たものを用いて治癒し、その為に毒血を浴びるように飲む。
そして更に傷付き、また彼の血を用いて治す。
幼い女体の中で、救いようのない地獄の輪廻が形成される。
『嗚呼…堪らないね、癖になる。これはあの女には勿体ない』
それを理解していながら、キリカは艶然と微笑んだ。母の慈しみと、雌の本能が美しい顔に描かれていた。
『渡すものか』
そして苦痛の裏側では、もう一つの感覚が燃え上がる。
渦巻く炎のように、魂に根差した本能と湧き上がる感情の想いに突き動かされ、呉キリカの雌の欲望が昂る。
『この苦痛は私の、私達のものだ』
毒が溜まる上半身とは真逆の位置で熱が生じ、軟らかい肉が、襞が疼いた。
『ひとしずくたりとも、貴様なんかに渡すものか』
肉は蠢き、別の肉を受け入れるべく粘液が滲む。
「…あ…ぁ…あ」
血を飲みながら、小さな喘ぎが漏れる。
キリカの体内の肉襞は収縮し、熱い液が黒いスパッツで覆われた彼女の女性を濡らしていた。
『ぅぅうううう…あぁぁあああああああっ!』
彼女は思念で叫び、身体を震わせた。
蓄積した欲望が頂点に達し、当然の結果を彼女の身体に与えた。
訪れた快感は一度だけではなく、連続で何度も何度も、波のように彼女の身体と魂に訪れた。
まだ自分の指以外のものを、それもほんの浅くしか受け入れた事のないそこで、まるで奥の奥まで。
肉の行き止まりである命の揺り篭の入り口にまで、雄を招いたかのようにキリカの腰は小刻みに震えた。
その度に熱い粘液が彼女の奥から溢れ、黒い布の受容範囲を超えて滲み、透明な糸を垂らした。
甚大な苦痛と身を焦がす快楽の中、キリカは彼の毒血をごくごくと飲み続けた。
ナガレの手と絡ませたキリカの指には、彼を絶対に離しやしまいと、その指を砕かんばかりの力が籠められていた。
仲良いわね…