魔法少女きょうこ☆マギカ 流れ者達の平凡な日常(魔法少女まどか☆マギカシリーズ×新ゲッターロボ)   作:凡庸

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番外編 流狼と錐花⑳

 ナガレが異界の事柄をキリカに話し始めてから、数時間が経過した。

 キリカの部屋は無音となっていた。テレビやゲームの電源、照明は落とされ室内を闇が包んでいる。

 闇の中、四角い机の上では会話に用いられていた糸電話が重ねられていた。

 糸は紙コップに丁寧に結ばれ、再び使われる時を待っている。

 

 カチャリと言う音が鳴り、部屋の扉が開かれた。直後に照明が灯され、室内と侵入者の姿を照らし出す。

 侵入者は緑色の寝間着姿に身を包んだ、黒髪の少年であった。

 美少女のような顔は僅かに赤く染まり、黒髪の末端は湿り気を帯びていた。風呂に入っていたらしい。

 

 扉を閉めて、ナガレは室内を見渡す。

 いくつかの変化を発見した。

 布団の整えられたキリカのベッドの上に、もう一つの枕が増えて並んでいた。

 

 これはまだいい。予期出来た事である。

 問題は机の上にあった。立てられた糸電話の隣に、銀色の小さな箱が置かれていた。

 箱の表面には『0.01』との記載があった。

 

 ナガレは無言でそれに手を伸ばし、手に持つと箱の中身を取り出した。

 銀色の袋パックの中に、Oの字を描いた何かが入っている。

 黒い眼でそれをよく見た時、彼の喉は小さく唸っていた。

 地の底から響くような、悪霊の嘆きのような音が生じた。

 

 彼の眼は、袋の表面に生じた複数の小さな穴を認めた。

 狂気を感じながら、彼はそれを部屋の隅に畳んであるジャケットのポケットへと仕舞った。

 少女の部屋のゴミ箱にこれを捨てることに抵抗を覚えたのだろう。

 

 ベッドの上の枕を一つ拝借して地面に置き、牛の魔女を呼び出して彼女の内部に仕舞ってある布団一式を取り出して部屋の隅に敷く。

 外出や魔女の追跡で野外に出る事も多い為、魔女の内部には簡単な生活用品を入れてるのだった。

 まるでどこぞの未来ロボットのポケットみたいな使い方だが、ある意味魔法の正しい使い方かもしれない。

 その後は布団の上で寝転びながら、キリカの部屋にあった小説を読んでいた。

 

 彼が読み耽る文中では、液体金属の身体を持つ異形の触手により主人公の教え子が目の前で強姦され、人外の赤子を強制出産される様子が事細かに描かれていた。

 

「うえっ」

 

 彼も思わず呻き、それでいて紙コップに注いだジュースを飲みながら読んでいた。

 次の場面では異形の子を産んだ絶望に囚われた母親が、胎内から這い出てくる赤子に向けて、自分の肉も切り裂きながら何度も何度も短剣を突き立てる場面が展開されていた。

 

「すげぇなこの本。グロ過ぎんだろ」

 

 自分たちの生活を棚に上げて小学生並みの感想を漏らしていた。

 彼は口が寂しくなり、魔女をまた呼び出して菓子類を出させた。

 机の上に広げ、その中からポッキーを取り出してポリポリとやりながら読み耽る。

 

 無造作なように見え、一片の欠片も落とさない丁寧な食べ方だった。無駄に器用な男である。

 文中ではなおも地獄のような場面が続き、彼も夢中になって読んでいたあたりで部屋の扉が開いた。

 誰かは分かっていたが、顔をそちらに向ける。

 

「お待たせ」

 

 美しい黒髪をタオルで拭きながら、部屋の主たる呉キリカが室内を歩きベッドの上に腰かける。

 湯場の温もりを肌から立ち昇らせるその姿に纏われていたのは、相も変わらず白いシャツとピンクのスカートだった。

 衣服の張りからすると型は同じであるが別の衣装らしく、流石に手袋や太腿のベルトは外されていた。

 

「んー、気持ちよかった」

 

 背を伸ばしながら言うキリカ。それにより衣服が肌に寄り、美しい女体の形を鮮明に表す。

 シャツのボタン同士の隙間から見える肌色とも相俟って、キリカはまだ下着を着用していない事が分かった。

 上もそうだとすると、下もそうだろうなと彼は思った。

 

「じゃ、友人。これ頼むよ」

 

 激烈に嫌な予感がし、それでもナガレはキリカを見た。

 彼に見せつける様に、いや、キリカは誇らしげに見せつけていた。

 両手の人差し指と親指は新品の純白ショーツの端を掴み、彼に突き付ける様に両腕が伸ばされていた。

 当然のように彼は絶句していた。何を要求しているのかは考えるまでも無い。

 

「はりー・あっぷ、まい・さん兼まい・ベイビーな友人。これは休憩料金と思いたまへ」

 

 宿泊ではなく休憩と言うあたりに、彼女のイノセントなマリスが伺える。

 ひどく緩慢な動きで、彼はキリカに歩み寄った。

 彼女がぱっと離した柔らかい布を空中で掴み、同じように広げベッドの近くに、正確にはベッドに腰かけるキリカの正面に正座する。

 何も思うな感じるな。彼はそう思いながら作業を開始した。

 

「友人」

 

 キリカの呼びかけに応じ、美しい足先に向けていた視線を上に上げる。

 にっこりと朗らかに笑うキリカの顔がそこにあった。

 

「ただ呼んでみただけだよ。じゃ、お願いね」

 

 無言で頷く。歯は歯茎に減り込まんばかりに食い縛られていた。

 可憐な爪先を上げさせ、下着を両脚へと通す。そして柔らかな肌で覆われた細い脚の上を、ゆっくりと這い上らせていく。

 膝に達し、キリカを立たせて太腿に通す。

 跪いた態勢が屈辱的で我慢できなかった為に、膝に下着を通したあたりで彼は立ち上がっていた。

 

「中々にエモい光景だね」

 

 その表現の意味するところを彼は知らなかったが、本来の用途なら悪くない事なのだろうなと思っていた。

 両手は上昇し、ショーツの奥が引っ掛かりを見せた。キリカの尻に触れたのである。

 

「ん…」

 

 キリカが小さく声を漏らした。迂回するように引き上げ、先に尻を布で覆う。

 

「テクニシャンだね。自分で履くより気持ち良いよ」

 

「うるさい」

 

「うわぁ、照れてるよこの子。素直じゃないねぇ」

 

「黙ってて。キリカさん、お願いだから黙ってて」

 

 ここに至り、漸くナガレが口を開いた。キャラ崩壊した口調ももう慣れたものである。

 そして次は前をと力を落として上に上げた。布の表面と湿り気を帯びた薄い体毛が擦れるささやかな感触が、布越しに彼の指に伝う。

 

「くぅ…ふぅ…」

 

 デリケートな部位に布が触れた際、キリカはそう呻いた。

 こいつがガキじゃなけりゃなと、ナガレは思った。

 性的関心は抱かないが、同じ目線だったらさぞかし魅力的だったろうにという感覚はあるらしい。

 

 そしてこの屈辱を終わらせるべく、腰まで上げようとした時、背後で扉が開く音が鳴った。

 室内を歩く音が静かに生じる。彼も動きを止めていた。

 というよりも止めさせられていた。キリカの速度低下魔法である。

 

 赤いシャツに青いジーンズと落ち着いた服装且つ、キリカより少し高い背丈。

 髪をポニーテールに結わえた美しい女が、四角テーブルの上に飲み物を置いていった。

 外見年齢的には二十代半ば。

 実年齢は三十になったばかりらしい、キリカの母である。

 

 ベッドを背後に、娘のスカートの中に手を入れている少年の姿を一瞥すると、女は優しく微笑み無言で会釈した。

 そして静かな足取りで部屋の扉の前に行くと、再び会釈して丁寧に扉を閉じて去っていった。

 その瞬間速度低下は消え、ショーツは完全に彼女のスカートの中を覆った。

 ナガレは即座にスカートの中から手を引いた。

 その様子を、キリカは朗らかな笑顔で見つめていた。

 

「お疲れ様、褒めて遣わすよ。んじゃ、次は上ね」

 

 言うが早いか、シャツがするりと肌から滑り落ちる。

 体型に反して豊かに過ぎる膨らみと、その曲線の中央に位置する朱鷺色の突起が惜しげも無く晒される。

 

「ほい」

 

 どこに隠していたか、平然と白いブラを彼に手渡しキリカはくるりと振り返って、彼に背中を見せて両腕を水平に伸ばした。

 やれることは一つしかなく、彼はブラを彼女の身体に通して位置を調整し、背中のホックを繋ぎに掛かった。

 その時、彼は背後に視線と気配を感じた。その二つの感覚は、今彼の目の前にいる存在とよく似ていた。

 

「ほらほら友人。母さんの視線に欲情してないで、今は私に向き合っておくれよ」

 

 キリカは念話でそう告げた。この台詞からして、前以て示し合わせていたのだろうと察しがついた。

 ナガレは背筋に何かが走るのを感じた。

 

 この感覚は彼にとっては馴染みでもあった。

 佐倉杏子や呉キリカとの戦闘時に、自らの命に届く殺意の軌跡を有して飛来する魔槍・魔爪を前に、背筋が訴える危機感に。

 それを彼は呉家の女たちに感じていた。

 振り払うように、彼はキリカのブラのホックを繋ぐ。どんな振り払い方だと彼も自分の行動に突っ込んでいた。

 

「ん。上出来だね、ご苦労さん」

 

 そう言ってキリカは彼の方を向き、下着で覆われた胸を見せた。白い肌が赤みを帯びているのは、風呂の熱の残滓か彼女の興奮ゆえか。

 キリカはベッドに放っていたシャツを再び着用して肌を覆った。

 どうやらこの姿で寝るらしい。或いは、寝る積りが無いのか。

 疲弊勘に囚われる彼を尻目に室内を歩き、棚の中から複数のディスクケースを取り出す。

 そしてテレビの前にしゃがみ、ディスクをセットした。

 

 再びベッドの前へ戻って腰掛けると、未だ苦悩の中にいるナガレの手を引いた。

 

「ホラホラ、突っ立ってないで座りなよ。そろそろ始まるから一緒に観よう」

 

「ああ」

 

 そうだなと彼は気分を切り替えた。重い体重の彼ではあるが、特殊な体捌き故にベッドが軋む事は無かった。

 両者はベッドの上で隣同士で仲良く座る。

 先程までの苦悩は何処へやら、自分の知らない物語の開幕を待つ彼は外見の年相応に微笑んでいた。

 その様子をキリカは面白そうに眺めている。

 そして物語が始まった。

 

 開始されたのは、底知れぬ深淵へと挑む少女と機械少年の物語だった。

 

 

 

 










彼が読んでいたのはガガガ版され竜4巻ですな
あの場面はほんっとヤバい

それに反して、自作にしては珍しく平和な回でありました

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