ロクでなし魔術講師と赤髪の天災魔術師   作:クッペ

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原作二巻分です


第二巻
プロローグ


 帝国宮廷魔導士団特務分室室長室にて

 

「イヴ。いったい何の用?」

 

「来たか。カイン、以前のテロ事件覚えているよな?」

 

「そりゃあもちろん。公式の記録には残っていないけど、一応当事者だし」

 

「エルミアナ王女、彼女がまた天の智慧研究会に狙われないとは限らない、それも理解してるな?」

 

「あぁ、元王女で感応増幅者。ヒューイって人の言うことが正しければ、今後も狙われる可能性があるだろうね。」

 

「そういうことだ。そこでなんだが、これは軍務として扱ってもらうぞ。アルザーノ魔術学院2-2への編入、及びエルミアナ王女の護衛。長期間になるが、お前にはこの任務にあたってもらう」

 

「学院側には俺が軍人ってことばれてるけど、そのことは構わないの?」

 

「特務分室から現状その任務に回せるのがお前とリィエルの二人しかいない。どっちが良いかなんて、考えるまでもないだろう?」

 

「・・・ハハハ、そうでしたね。つまりあのクラスには軍務だということを知らせて黙らせておけばいいってことだね?」

 

「そういうことだ。任務の名目としては王女護衛だが、そのクラスに伝えるとしたら、クラスそのものの護衛と言っておけば問題無いはずだ。編入手続きはすでに済ませてある。明日から、頼んだぞ」

 

「了解」

 

 敬礼の後カインは部屋を後にした。

 そのころグレンは、ギャンブルによって給料をすべて吹き飛ばしていた。

 

* * * * * * * * * * 

 

 今日からアルザーノ魔術学院生としての生活が始まる。初日のため学院長に挨拶をしてから教室へ向かう手筈だったので学院長室に向かっていた。学院長室にノックして入室の許可をもらうと、そこには何故か黒焦げになったグレンの姿としかめっ面でグレンを睨めつけているセリカ、、調度品が吹っ飛んでいた学院長室の酷い惨状が広がっていた。

「・・・この惨状は一体何なんですか?」

 

 何が起きたのかの確認を取るためにこの場で一番落ち着いていた学院長に話を聞いてみた。

 

「給料の前借りに来たグレン君に向けてセリカ君が爆裂魔術をぶっ放したところなんじゃよ・・・」

 

 ため息交じりに学院長がそういうと、カインの方もため息交じりに拳銃形態の魔導器を抜き元に戻そうとしていたがそこでふと思い当たる。

 

(一応軍事機密指定の魔術なんだけど使っても大丈夫かな?)

 

「学院長。この惨状元に戻したほうがいいと思うので戻そうと思うのですが、今から使う魔術って軍事機密指定されている魔術なんですよ。今から起こったことについては、口外禁止の方向でお願いできますか?」

 

「まぁ・・・構わんが、本当に元に戻せるのかね?」

 

 そう尋ねた学院長に首肯することで返事をすると魔導器の引き金を引く。すると学院長室の惨状が無かったかのように元に戻っていた。彼の固有魔術の【再成】の効果である。

 

「で、なんで兄さんはなんで給料日後なのにすでに食費がピンチになってるのさ?」

 

「ふっ・・・それは未来への投資。明日という無限の可能性のために、そして予知多くの希望をつかむために――」

 

「要するにギャンブルでスったのか。本当にもう死ねよ、お前」

 

「人がかっこつけてるところに、水を差すの辞めてくれる?」

 

 セリカの言い草にグレンは講義するが、それは聞き入れてもらえなかった。

 

「というわけでお助け下さいお三方!」

 

 なぜか今来たばかりのカインにまでこの被害は飛び火してきた。確かにカインは軍人のため同世代の中では稼ぎは比べるまでもないのだが、弟に養ってもらう兄というのは如何なものなのだろうか?と考えていた。

 

「しかしなぁ・・・規則として給料の先払いはできない事のなっておるのだよ。しかし、特別給与なら出すことはできるかもしれんなぁ・・・」

 

「特別給与!?学院長、それって一体!?」

 

 目先の金をどうにかしなければならないグレンにとって、この言葉に喰いつくのは速かった。

 

「ほら、もうすぐ魔術競技祭があるじゃろう?そこで優勝したクラスの担当講師には、特別給与が出ることになっておるんじゃ。」

 

「なんと!?そんな素晴らしいイベントがあるだなんて!」

 

「今度の魔術競技祭は二年次生の部、つまり君の担当学年じゃ。そこで優勝すれば、特別給与は出そう。頑張ってみてはいかがかね?」

 

「はい!頑張らせていただきます!そうと決まれば!あいつらまだ残ってるといいんだが」

 

 そう言ってグレンは教室の方へ走っていった。

 

「母さ・・・いや、アルフォネア教授って呼んだほうがいいのかな?」

 

「いや、お前の好きなように呼ぶといいさ。お前は私の息子も同然なのだからな」

 

「わかったよ母さん。で、さっき言ってた魔術競技祭って何なの?」

 

「ふむ、お前魔術競技祭知らないのか?」

 

「そりゃずっと軍にいたわけだし、この学院でやってることなんてほとんど知らないよ」

 

「・・・すまん、そうだったな。魔術競技祭っていうのは年に三回開かれる、学生同士による魔術の腕の競い合いだよ。今回は二年次生が開かれるからな。・・・ところで、なぜおまえが魔術学院の制服に袖を通してるんだ?」

 

「今更!?・・・軍務だよ。2-2のルミアの護衛。表向きはあのクラスの護衛ってことになってるけど、本当の任務は彼女の護衛だよ」

 

 最近一人見守らなければならない人が増えたカインが残った知覚を最大限広げ、学院長室の周りに人がいないことを確認しながらそう話した。

 

「ほう、つまりお前、2-2に所属するわけだ。・・・魔術競技祭、出てみたいか?」

 

「まぁ気にはなるけど、俺の相手になるようなやつってこの学院にいないでしょ?」

 

「そう言ってやるなよ。お前が出たいか出たくないか、どっちなんだ?」

 

「・・・出てみたい・・・かな。初めての学院だし、せっかくイベントがあるなら出てみたいかな」

 

「とはいえ、お前が全競技に参加なんてしようものなら盛り上がりに欠けるだろうからなぁ・・・お前が出れる競技は一競技とかになりそうだが、構わないか?」

 

 セリカは学院長とカイン、二人に許可を求めた。

 

「わしは構わないよ」

 

「俺もそれでいいよ」

 

「決まりだな。じゃあ早速クラスの方へ行ってこい」

 

「わかった。では改めまして。学院長。これから2-2に所属するカイン=レーダスです。たまに軍の任務で休学などをすることになってしまうかもしれませんが、よろしくお願いします」

 

 そう言ってお辞儀をして学院長室を後にした。

 教室にカインが入ると、そこには魔術競技祭の出場競技について頭をひねってるグレンと、それを見守るクラスメイト達がいたが、

 

「「「あ――ッ!」」」

 

「ん?」

 

 カインの姿を見て声を上げるクラスメイトと、それを不思議に思って小首をかしげるカインの姿があった。


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