ロクでなし魔術講師と赤髪の天災魔術師   作:クッペ

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これが終わったら、設定上げます

イズカの見た目はFE暁の女神のイズカです


第五話

 カインが軍の人間だということを理解したクラスの面々だったが、不安は全くなかったかと言えばそんなことは無かった。まず一つとしては、カインの戦闘力が未知数というのが大きかった。先ほどのチンピラ風の男が放った【ライトニング・ピアス】の事を考えると、目の前のイズカという男が少なく見積もってもチンピラ風の男よりもずっと弱い、と見積もるのは楽観視し過ぎであるためである。そして最大の理由は、あの三節詠唱しかできない講師の義理とはいえ弟であるということが大きかった。

 

「だぁあああああーーーー!もうマジでめんどくせえなお前の使い魔!!どんだけの数がいるんだよ!!」

 

 先ほどからイズカという男が行っていることは、使い魔の召喚であった。しかし彼の呼び出す使い魔がかなり厄介で、薬物による強化がされた魔獣(主に猫、トラ、烏、鷹)で、先ほどから拳銃形態の魔導器で威力をかなり抑えた(それでも常人の放つ威力の二倍近く)【ライトニング・ピアス】で50匹近く倒しているのだが、使い魔がいなくなる気配は一向にない。本来なら【ブレイブ・バースト】などの広範囲を攻撃する魔術で一気に片付けたいのだが、カインが気にしていることは少し常人とは外れていた。

 

(広範囲一気に吹き飛ばしたいんだけど、そうすると教室吹き飛ぶしなぁ・・・)

 

 先ほどから【ライトニング・ピアス】で応戦している理由は、広範囲を魔術で攻撃すると、教室の方に少なくない被害が出てしまい、それを元に戻す彼の固有魔術は軍事機密指定されている魔術なのだ。一般人の前でおいそれと使える者ではないため、仕方なく【ライトニング・ピアス】で一匹ずつ倒しているのだが、

 

(こりゃあ切りがないな・・・早く兄さんの方にも向かいたいし・・・)

 

 さらにカインが魔術を制限している理由はグレンをここから援護しているためであった。彼の固有魔術で得た副産物の視力によって、カインはグレンとセリカを視力の25%の力を使って常に見守っている。今回はグレンはダークコートの男と戦闘中で、かなりピンチなためその視力の50%の力を使って時節ダークコートの男の魔術を無効化しながら戦っているため、目の前の敵に集中しきれていないのだ。

 グレンを援護しながら、教室の被害状況を考え、さらにいつまでも出てくる使い魔との戦っていたカインはやがて切れる。

 

「うがぁあああああああーーーー!もうめんどい!全部ぶっ飛ばす!おい、お前ら!」

 

 使い魔を倒しながらカインは後ろにいるクラスの人間たちに向けてこう言い放つ。

 

「今からこの教室ぶっ飛ばしてあいつを消し飛ばす!その後にこの教室直してやるが、その魔術は軍事機密指定されてる魔術だから、絶対に口外するなよ?」

 

 そう叫び、彼らに拳銃形態の魔導器を向けて引き金を引く。その様子に彼らは目を見開いてぎょっとしていたが自分たちに掛けられた魔術【グラビディ・コントロール】だった。彼らを一つの塊と定義して重力軽減の魔術をかけたのである。そして一番前にいた生徒を乱暴に蹴り飛ばし、教室の後ろまで移動させていた。そうして自分も教室の後ろへ移動するととある魔術の詠唱を始めていた。

 

「≪我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知るもの―――・・・」

 

「何!?その魔術は!?」

 

 魔術を妨害しようとイズカが使い間を次々と召喚するが、カインが右手に持っていた、先ほどとは違う拳銃形態の魔導器の引き金を引くことによって、使い魔たちは次々と消滅していった。

 

「多重起動!?しかも、その魔術を唱えながらだと!?」

 

 驚くのも無理はない。まず魔術を右手で起動していることがそもそもおかしいのだが、これは拳銃形態の魔導器を使っているから可能なことである。もう一つの驚くことが、カインが今から使おうとしてる魔術は、セリカが過去に邪心を殺すために編み出した、ほぼオリジナルに近い固有魔術を発動していることにあった。その魔術と右手による魔術起動、これで驚かないほうが無理もない。イズカが逃げようと教室を出ようとするが、教室の扉は開かない。いつの間にか、カインが開かないように細工をしてあったためだ。

 

「―――其は摂理への円環へと帰還せよ・五素よりなりしものは五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ神羅の万象は須らくここに散滅せよ・遥かな虚無の果てに≫―――ッ!黒魔改【イクスティンクション・レイ】―――ッ!」

 

 カインの左手から巨大な光の波動が走り、この教室の全てを吹き飛ばしていた。彼の後ろにいた生徒たちは無事だったが、彼の前方に見えるのは外の景色だけである。

 

「・・・はぁ、久しぶりに呪文唱えてみたが、やっぱりこうなるのか・・・やっぱりこれ使わないとどうも威力が出過ぎて困る・・・」

 

「・・・・・・」

 

 クラスの人間は何も言えずに絶句していた。この規模の魔術を見たのが初めてであるということが一番大きな理由であった。

 するとカインが先ほどイズカの使い魔に向けていた拳銃形態の魔導器をクラスの人間に向けて、引き金を引いた。すると【マジックロープ】は分解され、【スペル・シール】は効力を失っていた。

 

「おい、お前ら」

 

 カインが声を発するとクラスの人間は一瞬硬直し、

 

「な、なんだ?」

 

 先ほどの蹴られた体格のいい少年が尋ねる。

 

「連れていかれた二人、なんで連れていかれたか心当たりのある奴はいるか?」

 

 そう尋ねられるが、全員が首を横に振って、知らないことを伝える。

 

「そうか。じゃあその二人の救出は、俺がやるからお前らはここに居ろよ?良いな?それと伝え忘れていたが、兄さんは生きてるから安心しろ」

 

 そう言って壊れた教室の壁に向けて拳銃形態の魔導器の引き金を引くと教室はまるで壊れた形跡がなかったかのように元に戻り、彼は教室から出て行った。教室に残っていた面々はその光景に呆気にとられていた。

 

* * * * * * * * * * 

 

 カインがグレンの所にたどり着いたのはダークコートの男との戦闘が終わった後だった。グレンはダークコートの男に勝ったようだが、傷は浅くなく全身が血だらけの状態で倒れていた。システィーナが【ライフ・アップ】の魔術をグレンに行使していたが、傷が塞がる気配は殆どなかった。

 

「先生・・・!先生・・・ッ!」

 

 夢中で魔術を行使してるシスティーナは近くに来ていたカインの気配に気が付かず、無我夢中で魔術を行使していたが、

 

「・・・おい」

 

 傍によってカインはシスティーナに声をかけた。するとシスティーナは驚き一瞬硬直していたが、自分たちと同じくらいの年の少年だったのと、教室に乗り込んできた一味の中にいない人間であったため、敵ではないと判断したのか、カインが誰か尋ねていた。

 

「・・・あなたは?」

 

「宮廷魔導士団のカイン=レーダス。そこで倒れてるグレン=レーダスの弟だよ。血は繋がってないけど。今まで兄さんと一緒に行動してたんだよね?今までありがとう。少し離れてもらえるかな?」

 

 なぜ宮廷魔導士団の人間がここにいるのかを尋ねたかったが、今はそれどころではないと理解していた。グレンから少し離れて彼が何をするのか注意深く観察していた。するとカインは懐から拳銃形態の魔導器を出して、グレンに対して銃口を向けていた。それが魔導器だと知らないシスティーナは声を荒げていた。

 

「あなた!?いったい何を――」

 

「これから俺が使う魔術は俺の固有魔術なんだけど、軍事機密指定されている魔術だから、この魔術については絶対に口外するなよ?」

 

 システィーナの抗議を黙認し、躊躇なく引き金を引いた。銃弾が発射されると思っていたシスティーナは反射的に目を閉じてしまったが、銃弾が発射された音が聞こえてくることは無く、恐る恐る目を開くとそこには傷が全くなく、出血も全くしていないグレンの姿があった。

 

「・・・今のは・・・?あなた、いったい何をしたの?」

 

「固有魔術【再成】。全てのものを二十四時間以内に限り復元させる俺の固有魔術。兄さんの今までの負傷は全くなかったことになってるから安心して」

 

「・・・・・・」

 

 そんな出鱈目な固有魔術に絶句していたが、カインがそんな様子を気にすることなく尋ねてきた。

 

「君っていつもルミアと一緒にいた子だよね?何でルミアが連れていかれたのか心当たりってある?」

 

 カインはシスティーナに尋ねてみたが答えはクラスメイト達と同じだった。

 

「いいえ、なんで彼女が連れていかれたか分からないの・・・」

 

 彼女でもわからないと益々ルミアが誘拐された原因が分からなくなってきた。

 

「ふぅん・・・なるほど分かった。いや、別に何もわかってないんだけど心当たりがない事だけは分かったよ。とりあえず、ルミアって子は俺が助け出すから安心して。君は兄さんと一緒に教室に戻ってもらえるかな?それと兄さん目を覚まして今の状況の説明を求められたら、俺の名前出せば多分全部わかるはずだから」

 

 そう言ってカインはその場を去っていった。いろいろと聞きたいことは山ほどあったが、あとでグレンに聞けばわかることだろうと思い、グレンが目を覚ますのを待っていた。

 

* * * * * * * * * *

 

(・・・ここか)

 

 カインは現在転送塔に来ていた。システィーナと別れた後グレンに向けていた知覚を元に戻し、今使える50%の知覚能力を学園の敷地にそれぞれ向けたのである。するとこの転送塔に二つの生体反応があったため、彼はここに向かったのである。するとガーディアン・ゴーレムと呼ばれるゴーレムがカインが転送塔に来た途端に沸き出したため、ここにルミアがいるとみて間違いなかった。

 

(周りに人は居ないよな・・・)

 

 カインは知覚を広げ、自分を監視できる範囲に人がいないことを確認すると、拳銃形態の魔導器を抜きガーディアン・ゴーレムたちを次々と消滅させていた。

 転送塔の螺旋階段を上っていると、最上階に到着したのか閉ざされていた扉があった。そこを開けると転送方陣の上で白魔儀【サクリファイス】に閉じ込められているルミアと、糸目の青年がいた。

 

「・・・カイン君?」

 

 ルミアは彼がここに来たのが信じられないような驚き半分、カインが来てくれたことの安堵半分が入り混じった表情でこちらを見ていた。

 

「よぉ、助けに来たぜ?」

 

 カインは気軽にそう応じていると

 

「・・・なぜ宮廷魔導士団の人間がここにいるのでしょうか?学院の結界は、まだ破られてはいないはずなのですが?」

 

「まぁたこの説明しないといけないのかよ・・・もういい加減飽きたぜ。というか朝から居たんだがな。結界の一部を吹き飛ばして侵入、その後結界を修復して光学迷彩の魔術でずっと教室にいたんだよ。というか、あんた誰?」

 

「・・・・・・不法侵入とは軍人の風上にも置けませんね。私はヒューイ・ルイセン。2-2の担当講師をしていた者です」

 

「ふーん、まぁいいや。で、何でルミアを誘拐した?目的は何だ?」

 

「言うと思いますか?」

 

 するといつの間にか抜いていたのか、拳銃形態の魔導器を一つヒューイに向けており、もう一つはルミアに向けられていた。ルミアに向けられている魔導器の引き金を引くと、五層あったサクリファイスの一層目が消失していた。

 

「いやーすまんすまん。本当は全部ぶっ飛ばそうと思っていたんだけど間違えて一層だけぶっ飛ばしちゃった。で、もう一回聞くな?何でルミアを誘拐したんだ?お前たち、天の智慧研究会の目的は何だ?」

 

「・・・彼女は異能者なのです。感応増幅者なんですよ。そんな彼女を、我が組織はとても興味を持っている」

 

 そういうとルミアは表情を附してしまったが、カインはそんなことに構わず質問を続けていた。

 

「本当にそれだけか?感応増幅者は他にもいるだろ?なぜこのタイミングでルミアっていう感応増幅者を狙ったんだよ。それだけじゃ説明は付けられない」

 

「・・・彼女は今は無きアルザーノの王女殿下、エルミアナ=イェル=ケル=アルザーノ殿下です。病死したはずの、いないはずの王女殿下、そこに利用価値があるのでしょう。」

 

 ヒューイがそういうとカインはルミアに向けた魔導器の引き金を引く。するとサクリファイスの第二、三層めが吹き飛んだ。

 

「お前は一体なんだ?なぜ少し前まで講師をしていた人間が、今回の事件の黒幕なんだよ?」

 

「僕は爆弾なんですよ。十年前に、いずれ入学してくるかもしれない一生徒のために、組織によって使わされていました。今日この日の為にね。このまま時間までサクリファイスが解除されなかったら、その転送方陣によってルミアさんは組織のもとへと飛ばされ、僕は自爆してこの学園を吹き飛ばす。そんな計画だったのですが、あなたのせいで全てが狂わされてしまった。」

 

「あぁ、そうだな」

 

 そういうとカインは再び引き金を引いてサクリファイスの残りの層を吹き飛ばした。このことによってルミアは解放され、ヒューイは嘆息しながら上を向いていた。

 

「僕はどうすればよかったんでしょうね・・・このまま組織に使いつぶされるか、今日のような結末を迎えるか。でもね、彼女が解放されてほっとしている自分が確かにここにいるんですよ。」

 

「あっそ。知らねえよ」

 

 そう言ってカインはヒューイに向けて引き金を引く。すると肩の付け根、脚の付け根に小さな穴が穿たれていた。神経を鑢で削られたような激痛によりヒューイは気絶した。

 

「カイン君・・・その・・・助けてくれてありがとう。」

 

「別に、大したことはしてねえよ。それよりもさっきの話、あれって本当か?」

 

「・・・うん、全部本当。私は異能者で、アリシア女王陛下によって追放された王女、エルミアナ。それが私の正体なの・・・」

 

「ふぅん・・・そうか。じゃあとりあえずみんなの所に帰るか?兄さんもシスティーナも、クラスの連中もみんな無事だ。そこで寝てるやつは・・・あとで軍の連中に処理は任せるか。」

 

 そう言ってルミアの手を引いて教室に戻るように促す。話を聞く前とまるで変化ないカインの態度に疑問を抱えつつも感謝しつつ、ルミアは手を引かれるままみんなが待つ教室へと向かうのであった。

 

* * * * * * * * * *

 

 後日、グレンとシスティーナは今回のテロ事件の解決功労者として、政府のお偉いさんに呼び出されてルミアの正体について話されていた。軍の徹底的な情報統制により今回のテロ事件が明るみに出ることは無く、また一人の少年軍人がいたことも無かったことになっている。話を聞いた後もシスティーナのルミアへの態度は変わることは無く、二人はまた、いつもの日常へと戻っていく。

 

 ルミアは一ヶ月の休学をしていたが、やがてまた学院に姿を見せていた。

 グレンは何の気紛れか魔術講師を続けるらしい。二人の少女の行く末が気になるとかなんとか。

 

 そして現在カインは特務分室の室長室で正座をしていた。

 

「今回のテロ事件、報告書を読ませてもらったが、私が何を言いたいか分かるよな?」

 

 そこにはたいそうお怒りのイヴが仁王立ちしており、かなりの迫力を放っていた。

 

「・・・独断専行したことも悪いし、何よりも軍の許可なく軍事機密指定されている固有魔術連発したことについて・・・ですよね・・・はぁ」

 

「一般市民を守るためとはいえ、勝手に固有魔術使われると困るのはお前だぞ?一応見た人間に対しては軍事機密だと伝えてはいるようだが・・・情報漏洩したらどうするんだよ・・・」

 

「・・・いや・・・本当にすいませんでした・・・」

 

「まぁこの話はこれでお終いとして、もう一つの報告であった王女について、これは本当か?」

 

「本人に確認を取ったところ、本当だと認めました。本当だという前提で動いたほうがいいかと・・・」

 

「はぁ・・・いろいろ厄介ごとの種が増えたな・・・さぁて、これからどうしていこうかね」

 

 これから起こるであろうことに対して、溜息を吐かざるを得ないような状況に辟易しながら、これからも日常は続いていく。




正直言ってオリジナルの所が駄文過ぎて辛い…

このあと設定を上げて、二巻のプロローグを上げたいと思います。

いつも読んでくださってる方々には深い感謝を!そしてこれからも続くので、どうかよろしくお願いします。

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