ロクでなし魔術講師と赤髪の天災魔術師   作:クッペ

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何とか投稿できました・・・

後半オリジナル展開・・・かな?


第三話

 決闘の後もグレンの魔術の講義に対する態度は変わることは無く、生徒たちの方もグレンの授業=時間の無駄、という法則でも立ったと言わんばかりに、グレンの講義の時間は思い思い自習に励んでいる。グレンの方もそれをとがめることは無く、決闘から三日が経った。

 

「はーい、授業はじめまーす」

 

 そう言って講義の時間に大幅に遅刻してきた。生徒たちはそれぞれ自習に励んでいるが、それでも何かを学ぼうとしている生徒も少ないがいるのもまた事実。

 

「あ、あの・・・先生。今の説明に対して質問があるんですけど・・・」

 

「あー、なんだ。言ってみ」

 

「えっと・・・その・・・今先生が触れた呪文の訳が分からなくて・・・」

 

「これ、ルーン語辞書な。三級までのルーン語が音階順に並んでいるから。音階淳ってのは・・・」

 

 グレンが面倒そうにため息をつきながら、少女へ教卓においてあった辞書を渡す。グレンに対して不干渉を決めていたシスティーナも、さすがに黙っていられなくなり立ち上がった。

 

「無駄よ、リン。その男は魔術の崇高さを何一つ理解していないわ。あんな男は放っておいて、一緒に偉大なる魔術の深奥に至りましょう?」

 

(魔術が『崇高』で『偉大』か・・・今の兄さんに対してそんなこと言ったら、ってもう遅かったか・・・)

 

 カインがそんなことを考えながらグレンのことを見守っていると、

 

「魔術って・・・そんなに偉大で崇高なものかね?」

 

 グレンがそう口走り、その言葉にシスティーナは反論する。

 

「ふん。何を言うかと思えば。偉大で崇高なるものに決まっているわ。もっとも、あなたには理解できないでしょうけどね。」

 

(そこで反応しちゃ駄目だろ・・・)

 

 普段のグレンならば適当に流していたが、このことに関しては譲れないものでもあるのだろうか、

 

「何が偉大でどこが崇高なんだ?」

 

 今日だけは、何かが違っていた。

 

「魔術ってのは何が偉大でどこが崇高なんだ?それを聞いているんだが?知ってるなら教えてくれよ?」

 

「・・・魔術はこの世界の真理を追究する学問よ。この世界の起源、構造、支配する法則。魔術はそれらを解き明かし、人がより高次元に至る道を探す手段なの」

 

「・・・何の役に立つんだ、それ?世界の秘密を解き明かしたところで、それが何の役に立つんだよ?」

 

「だから言ってるでしょう!?より高次元の存在に近づくために・・・」

 

「より高次元の存在ってなんだよ?神様か何かか?」

 

「それは・・・」

 

 即答できないシスティーナに、グレンはさらに追い討ちをかける。

 

「そもそも魔術って、人々にどんな恩恵をもたらしている?この世の術ってつく言葉、医術、冶金術、農耕技術、建築術。これらは人々が暮らしていく上で多大な恩恵をもたらしているよな?じゃあ魔術はどうだ?同じ術という言葉を持つが、これは人々に恩恵はもたらしていない。魔術の恩恵を受けることができているのは、魔術師だけだとおもんだが、何か違うか?役に立たないのならただの趣味、違うか?」

 

「・・・・・・ッ!」

 

 システィーナは歯噛みするしかなかった。この程度の俗物的な意見すら反論できないのか、という自うん自身のふがいなさに対して。あまりの悔しさにシスティーナが唇を震わせていると、

 

「悪かった、嘘だよ。魔術はちゃーんと人の役に立ってるさ」

 

「・・・え?」

 

 突然のグレンの掌返しにシスティーナも、他の生徒たちも目を丸くしている。

 

(兄さん・・・!それ以上は・・・!)

 

 だがカインは、今のグレンを止めたくて必死だった。

 

「魔術はちゃーんと人の役に立ってるさ。・・・人殺しのな」

 

 一拍置いて淡い期待を持たせ、でもその期待をあっけなく打ち砕く。心を砕くには今のクラスの人間に対してはそれで十分だった。

 

「実際、魔術ほど人殺しに特化した技術じゃ他にないんだぜ?剣術、銃術、槍術なんかが一人の人間を殺している間に、魔術は何十人と殺せるからなぁ!魔導士の一小隊は、戦術で統率された一個師団を戦術ごと焼き尽くせる。ほら、立派に役に立つだろ?」

 

「ふざけないでッ!」

 

 流石に看過できなかった。魔術を外道に貶められることは、祖父との繋がりを貶められたも、システィーナにとっては同然であった。しかし

 

「この国の現状分かってるよな?帝国宮廷魔導士団なんて連中に、莫大な国家予算がつぎ込まれているのは何故だ?お前らが習ってる汎用魔術、なんでほとんどが攻性呪文なんだ?魔術が二百年前の『魔導大戦』、四十年前の『奉神戦争』で何をやらかした?近年、帝国で外道魔術師たちが魔術を起こって起こす凶悪犯罪の件数と、その内容を知っているよな?知らないなんて言わせねえぞ?」

 

「―――ッ!」

 

「ほら見ろ!魔術なんて、人殺しと切手は切れない腐れ縁の関係ってことが誰にだってわかるだろ?他でもない魔術ってのは、人を殺すことによって発展してきた技術に他ならないってことなんだよ!!全く俺はお前らの気が知れないね。こんな下っらねえことに時間費やすくらいなら、もっと他に――」

 

 ぱぁん、と乾いた音がクラス中に響き渡っていた。システィーナがグレンの頬を平手打ちしたのである。その後システィーナは泣きながら教室から飛び出していった。

 

「あー、今日はやる気出ねえから、自習にするわ」

 

 ため息をつきながらグレンは教室を出て行った。

 

* * * * * * * * * *

 

「やーっぱ、向いて無いのかね・・・」 

 

 放課後、屋上の鉄柵に寄り掛かりながらグレンはそう呟いた。

 

「兄さん、さすがにあれは少し言い過ぎなんじゃない?」

 

 学院でグレンに接触する気が無かったカインだったが、さすがにあれを見た以上接触せざるを得なかったようだ。

 

「うぉおおおおおお――ッ!カイン!?お前、どうしてここに!?」

 

「兄さんがちゃんと仕事してるか監視するために決まってるじゃん。休暇はちゃんとイヴから貰ってるよ?」

 

「そういうことじゃねえよ!?いや、それもそうなんだが、どうやってここに入ってきた?特別な結界が張って合って、関係者以外は入れないようになってるはずなんだが?」

 

「結界の一部を壊して誰でも入れるようにして侵入。その後結界を元に戻して光学迷彩の魔術使って、兄さんのクラスに初日から忍び込んで監視してたんだけど・・・」

 

「はぁ・・・それ完全に不法侵入なんだが。しかも教室でなんか魔力のゆらぎ感じると思ったら、お前かよ・・・しかも光学迷彩の魔術ってかなりの魔力消費するはずなのにそれを一日って・・・今更だが、やっぱりお前の魔力底無しだな・・・」

 

「他のクラスの人とかにばれてるかな?」

 

「いや、意識しないと分からないくらい微細なゆらぎだし、多分クラスの連中にはばれてねえよ」

 

「なら良かったよ。・・・で、兄さん。やっぱり、まだ魔術は嫌いなんだよね?」

 

「今日のあの光景見たならわかるだろ?俺は魔術が大っ嫌いだ」

 

「でも、あれは流石に言い過ぎなんじゃない?」

 

「そうかもしれねえな・・・やっぱ俺はここに居ねえほうがいいかもしれねえな」

 

「・・・・・・・」

 

「セリカにゃ悪いが・・・帰ったら土下座の練習だな。カイン、死にそうになったら俺を助け・・・ん?」

 

 最低な前向き宣言をしつつ、弟に対して助けを求めようとしたところで西棟のとある窓のそばで影が動いたような気がした。

 

「なぁ、カイン。あの教室、誰がいるか見てくれねえか?」

 

「え?まぁいいけど」

 

 そうやって両方の眼を閉じたカインだったが、

 

「誰かいるね。これは・・・流転の五芒の魔力円環陣?でもこれ相当下手くそだね。第七霊点は綻んでるし、水銀は流れちゃってるし・・・」

 

「そこまで具体的な回答は求めちゃいなかったが、実験室の無断使用なんだよなぁ。さぁて、どうしたものかね・・・」

 

 そう言いながらグレンの口角は少し上がっているようにも見えた

 

* * * * * * * * * *

 

「おい、実験室の個人使用は原則厳禁なはずだが?」

 

 乱暴に扉を開け放ち、仏頂面で立っているグレンがいた。

 

「グ、グレン先生!?」

 

 金髪の少女は思わず立ち上がったが

 

(!?)

 

 光学迷彩で隠れていたカインであったが、金髪の少女が目に入った途端動揺して、魔力の揺らぎが目立ってしまい、

 

「そこに誰かいるんですか?」

 

 と金髪の少女が尋ねた。

 

「・・・お前、どこかで・・・?」

 

 するとそこにはいつの間にか帝国宮廷魔導士団の制服を身に纏った、赤髪の、自分たちとあんまり変わらない年齢の少年が、いつの間にかグレンの後ろに現れていた。




中途半端ですがここまでです。

次回グレン覚醒、テロリスト乗り込んでくる。
その次にカイン君の初戦闘かな?

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