その後グレンはシスティと呼ばれていたにあれやこれや言われ、授業を始めたのだが
(兄さん、これはさすがに適当過ぎるでしょ・・・)
グレンが行った授業はおよそ授業と呼べる代物ではなかった。教科書に掛かれていることを気だるげに説明(?)し、要点を黒板に書いていき(ミミズがのたくったような、おおよそ文字と呼べるか怪しいもので)、図を適当に(形が歪んでいる)書いていた。そんな授業でも一応受けている学生はいるようで
「あの・・・先生・・・質問があるんですけど・・・」
眼鏡をかけた小動物的雰囲気を持つ少女がおずおずと手を上げていた。
「どうした?言ってみな」
「先ほど説明して下さったルーン語の呪文の一例なんですが・・・これの共通語訳が分からないんですけど・・・」
「ふっ、俺にも分からん。すまんな自分で調べてくれ」
堂々と講師の役目を放棄していた。しかし、カインはそのことに関しては特に何も思っていなかった
「待ってください、先生。生徒の質問に対してのその対応、講師としていかがなものかと」
システィと呼ばれていた少女がグレンを糾弾していたが
「だーから、分からんて言ったろ?分からないものをどうやって教えればいいんだよ?」
「それならば後日調べてきて次回の講義で改めて取り上げるのが、講師としての役目だと思うのですが?」
「ふーん、やっぱり自分で調べたほうが早くねえか?」
「そういう問題ではなく、私が言いたいのは―――」
「ひょっとしてお前ら、ルーン語辞典の引き方わからねえの?あー、はいはい、それなら仕方ねえわ。しょうがないから次回までに俺が調べてきてやるよ。めんどくせえな・・・仕事増えちまったぜ・・・」
「―――!もういいです!辞書の引き方くらい自分で分かります!」
少女は肩を震わせながら着席した。
(兄さん、このままで大丈夫かな・・・)
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次の時間の錬金術の授業はグレンが女子の更衣室に侵入し、2-2の女子生徒によるグレンへの粛清の結果、錬金術の授業は中止。
お昼になるとやがて学生は食堂に移動したが、カインは一日朝夕の二食しか食べないので、光学迷彩を維持しつつ、校内の敷地に生えていた『シロッテの枝』を加えながらとある考え事をしていた。
(やっぱり兄さん、まだ魔術が嫌いなんだよね・・・今日の授業はそれが顕著に表れてたし、恐らくこのまま行くとあの銀髪の子がきっと何かの行動を起こすよな。でもこの学園に侵入してることは誰にもばれるわけにはいかないし、どうしたものかな・・・)
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その後のグレンの授業もありていに言って酷いという一言で済まされる。
最初のうちはまだ一応説明をしていたが、日に日に状況は悪くなって行く一方で、教科書を丸写しする。教科書を黒板にくぎで打ち付けると悪化していった。
今日は教科書のページを引きちぎり、黒板に打ち付けようとしたところで
「いい加減にしてください!」
と、システィと呼ばれていた少女が、グレンに詰め寄っていた。
その後少女が自分の家の権限を使って、グレンを首にすることを脅していたが、グレンはそれにあやかろうとしていた。
(兄さん・・・それは流石に・・・)
そう考えていると、その少女が左手の手袋をグレンに投げつけていた。
(・・・は?)
カインはそう思わずにはいられなかった。
「ダメ、システィ!早く先生に誤って・・・!」
金髪の娘がそう言いうが彼の少女はそれを聞かずに
「いいぜ、その決闘受けてやる。ただし使う魔術は【ショック・ボルト】、この攻性魔獣のみだ。お前に怪我させるわけにも行かねえしな。」
(なんでそんなルール設定にしたんだよ?そのルールだと兄さん殆ど勝ち目ねえだろ)
カインがそんなことを考えているとクラスに人間は中庭に移動していたため、カインも光学迷彩を保ちながら、気配を遮断して移動を開始した。
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決闘の結果はシスティーナの圧勝に終わった。
システィーナがショック・ボルトを≪雷精の紫電よ≫という一節詠唱が可能なのに対し、グレンは≪雷精よ・紫電の衝撃もって・打ち倒せ≫という三節にわたって詠唱しなければ、魔術を発動できない。魔術決闘においては先に魔術を発動させた方の勝ちはほとんど確定のため、一節詠唱ができないグレンにそもそも勝ち目などなかった。
(なんでわざわざ自分が勝てないようなルールに設定するのかなぁ・・・)
なんて思ってたらグレンは魔術師同士の決闘の約束を反故にして、逃げ去っていった。そのためグレンのこうしてとしての評価は学院内で地に落ちていた。
カインの魔術戦闘は天の智慧研究会が学院に乗り込んできてからのため、もう少し先です。
そのあたりからカイン君のチートっぷりを発揮していきたいと思ってるので、もう少しお付き合いください。
駄文で申し訳ないです・・・