ロクでなし魔術講師と赤髪の天災魔術師   作:クッペ

10 / 11
まさか評価10貰えるとは全く思ってませんでした


第一話

「皆さんお久しぶりです。テロ以来ですね。とある軍務でこのクラスに在籍することのなりました、カイン=レーダスです。クラスメイトとしてよろしくね」

 

 唖然としているクラスメイトに向かってカインはマイペースに自己紹介をしていた。

 

「カインじゃん。何で制服着てここにいるんだ?」

 

 今まで競技祭の出場選手で頭をひねっていたグレンだったが、ようやくカインに気が付いたのか、ここにいる理由について尋ねていた。

 

「今言ったばっかじゃん!?この前このクラスがテロリストの標的になったでしょ?軍上層部がまた狙われないとも限らないから、このクラスの護衛やれってさ。・・・それに特務分室でここに来れるのって俺とリィエル位だろ?考えるまでもなく俺にお鉢が回ってきたわけ」

 

 最後の部分をグレンに耳打ちして伝えていた。

 

「それで、今何してるの?」

 

「おぉ、そうだった。魔術競技祭の出場選手決めてたんだが、お前って出られるの?」

 

「出られるけど、条件がある――」

 

「よぉし、発表していくぞ。まず決闘戦、これは白猫、ギイブル、そして今来たカイン。次に暗号早解き、これはウェンディ一択だな。飛行競争はロッドとカイ。精神防御は・・・ルミア一択だな」

 

 カインの話を最後まで聞かずに勝手に競技出場者を発表していくグレン。そのまま出場者を言っていくがなんとクラスの全員が一回は出場できるように編成されていた。成績上位者で固めるという近年の定石を完全に無視した編成なのであった。

 するとこの競技編成に異議があるらしい眼鏡をかけた少年、ギイブルが抗議をしていた。

 

「あの、先生。本当にその編成で優勝しようと思ってるんですか?」

 

「なんだギイブル。これ以上に勝てる編成なんてあるのかよ?あるなら言ってみ」

 

「・・・本気で言ってます?そんなの、成績上位者だけで出場競技者を固めるんですよ。例年そうするのが定石ですしね」

 

(・・・マジで?被りってありなのかよ?それが例年なんだーふぅーん?)

 

 自分の餓死がかかってるグレンはその時点で成績上位者で出場者を固めようと決心していた。

 

(つまり、白猫とかギイブルとかカインとか使いまわしていいんだよな・・・?)

 

「兄さんが何考えてるのかは大体わかるんだけどさ、俺一競技しか出してもらえないからね?それが母さんとの競技祭に出る約束だし」

 

 このカインの申し出にグレンは固まった。

 

「・・・マジで?」

 

「うん、マジ」

 

 早速カインを使いまわそうとしていたグレンだったが、そのカインによって出ばなが挫かれたしまった。そこでどう使いまわすか考えていたところにシスティーナがギイブルに向かって抗議していた。

 

「何を言ってるのギイブル!せっかく先生が考えてくれた編成にケチ付ける気!?皆見て!先生の考えてくれたこの編成を!みんなの得手不得手をきちんと考えて、みんなが活躍できるようにしてくれてるのよ!?」

 

 システィーナの言葉にクラスのみんなが説得されている。

 

(ちょ・・・お前ら・・・説得されんな頼むから・・・)

 

「先生がここまで考えてくれたのにみんな、まだ尻込みするの!?女王陛下の前で無様な姿晒したくないとか、それこそ無様じゃない!」

 

(無様でも顔向けできなくてもいいから、余計なこと言うんじゃねぇ!)

 

 自分の餓死がかかってるグレンはそれはもう内心穏やかではなかった。

 

「大体、成績上位者だけに競わせて何の意味があるっていうの!?先生は全力で勝ちに行く、俺がこのクラスを勝利に導いてやるって言ったわ!それはみんなでやるからこそ意味があるのよ!」

 

 もうほとんど決定的であった。この言葉によってクラスのほとんどは、魔術競技祭に向けてやる気になっていた。

 そして演説をしていたシスティーナは、珍しく険の取れた朗らかな笑顔をグレンに向けてこう言い放つ。

 

「ですよね?先生?」

 

「お、おう」

 

 としかグレンは言いようがない。ここでそれを否定するのはただの極悪人である。

 こうなると頼みの綱はギイブルしかいない

 

(頑張れ負けるなギイブル君!白猫なんぞ論破してしまえー!!)

 

 グレンはそう思わずにはいられなかったが、ギイブルは皮肉気に冷笑しながら着席してしまった。

 

(てめぇふざけんなよこの草食系男子がー!!)

 

「あはは、よかったですね。先生の目論見通りいきそうですよ?」

 

(こいつ嘲笑いやがった、この俺を!しかも痛烈な皮肉の追い討ちまでしやがって。もしかしてこっちの企みを察してわざと?だとしたら性格悪すぎだろ!!)

 

「まぁ珍しくやる気になってるみたいだから、私たちも精いっぱい頑張ってあげるわ。先生?」

 

「お、おう・・・任せたぞ・・・」

 

 引きつった笑みを浮かべながらそんなことしか言えないグレン

 当然グレンのやる気になっていた理由を知ってるカインは呆れたようにため息をつくしかないし、ルミアは苦笑いを浮かべていた。

 

* * * * * * * * * *

 

 決闘戦に選ばれたカインだったが、魔術競技祭に向けてやるべきことはそんなにない。精々やることと言ったら魔術の威力を出し過ぎないように、魔導器の調整をする程度だった。つまり放課後のクラスが練習している中、彼は特にやることが無く暇を持て余していた。クラスメイトも達も、先日のテロ事件の際に彼が使った魔術の【イクスティンクション・レイ】を見て、その後に吹き飛んだ教室を元に戻したあの魔術に恐れを抱いて、彼に積極的に話しかける者もいなかった。カインもそれが分かっているのか、彼から積極的に話しかけるようなこともしなかった。そうして暇を持て余していたところ、中庭が何やら騒がしかった。どうやら練習場所について、一組と二組が揉めている様だった。気になったカインは念のため光学迷彩の魔術を使って、そこに向かっていく。その揉め事にグレンも気が付いたようで仲裁を行っていたが、一組の担当講師のハーレイがやってきた。

 

「何をしている、クライス!さっさと場所を取っておけと言ったろう!まだ空かないのか!?」

 

「あ、ユーレイ先輩。ちーっす」

 

「ハーレイだ、ハーレイ!ハーレイ=アストレイだ!貴様、何度名前を間違えれば気が生むのだ!?ってか貴様、私お名前覚える気、全ッ然無いだろう!?」

 

「・・・でええと、ハー・・・何とか先輩のクラスも今から競技祭の練習っすか?」

 

「・・・貴様、そこまで覚えたくないか、私の名前・・・ふん、まぁいい。競技祭の練習と言ったな?当然だ。今年の優勝も私のクラスがいただく。私が指導する以上、優勝以外は許さん!今年は女王陛下が直々に御尊来になり、優勝クラスに勲章を賜るのだ。その栄誉を授かるに相応しいのは私だ!」

 

「あっはっは!うわー、すごい熱血ですねー、頑張ってください、先輩!」

 

 道化じみたグレンの態度に、ハーレイは忌々しそうに舌打ちをした。

 

「それよりもグレン=レーダス、聞いたぞ?貴様は今回の競技祭、クラス全員を何らかの競技種目に参加させるつもりだとな?」

 

「え?あぁ、うん、まぁ、はい、そうなっちゃったみたいっすね・・・不本意ですけど・・・」

 

「はっ!戦う前から勝負を捨てたか?負けた時の言い訳づくりか?それとも私が指導するクラスに恐れをなしたか?」

 

「いやぁ、そうかもしれませんねー、何せハー・・・何とか先輩のクラスには学年でも上位の生徒たちが特に寄り集まっていますからねー。いやー、もう、優勝は先輩のとこで決まりかも知れないっすねー。」

 

 道化を演じ続けるグレンに対して、ハーレイは苛立ったように歯噛みする。

 

「ちっ・・・腑抜けが。まぁいい、さっさと練習場所を開けろ」

 

「あー、はいはい、今すぐ。ええと、あの木の辺りまでければ充分ですかね?」

 

「何を言っている。お前たち二組のクラスは全員、とっととこの中庭から出て行けと言っているのだよ」

 

 そんなハーレイの物言いに、その場にいた二組の生徒は凍り付き、光学迷彩の魔術で隠れて聞いていたカインは苛立っていた?

 

(・・・何言ってるんだあいつ?)

 

 流石にグレンが獣面でこめかみを押さえ、抗議する。

 

「先輩…流石にそりゃ通らんでしょ・・・横暴ってやつですよ」

 

 その言葉にハーレイが吐き捨てるように言い放つ。

 

「何が横暴なものか?もし貴様の本当にやる気があるのならば、練習の場所も公平に分けてやってもいいだろう。だが、貴様には全くやる気がないではないか!何しろ、そのような成績下位者達・・・足手まといどもを使っているくらいなんだからな。」

 

「――ッ!?」

 

「勝つ気のないクラスが、使えない雑魚同士で群れ集まって場所を占有するなど迷惑千万だ!分かったならとっとと――」

 

 言い終わる前に、いつの間にか目の前に現れていたカインの左手の手袋がハーレイに投げつけられていた。




次回、ハーレイ対カイン!

固有魔術は使いませんよ?術式解体は軍事機密されてません、とだけ伝えておきます。

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