俺の霊圧は消えん!   作:粉犬

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Life.6 猫、拾いました。

俺は今現在控えめに言ってすごく困っていた。

始まりはあのコカ…… コカコーラ? コカトリス? が攻めて来た一件から二月程過ぎたある日の事だった。

アザゼルはあれから一度だけ来て準備があるからしばらくこれなくなると言い残し、正拳くんを5つほど置いて去っていった。それ以降アザゼルは姿を見せていない。

果たして正拳くんのストックが切れるまでにその準備とやらは終わるのだろうか。

そんなことを若干脳裏に浮かべつつサンドバックを只管に殴っていたある日のことである。

一通り鍛錬を終えた後、訓練場として使っている場所から帰路についていた時、どこからか猫の鳴き声がした。

不肖この茶渡泰虎、原作踏襲というわけではないが可愛いものには目がない。

俺は原作チャドと違って人形とかそっち系より、動物を直接愛でることを楽しむタイプである。

そんな動物大好きな俺だからわかる。

今の鳴き声は怪我をして痛みを訴えるために絞り出した声であると。

こうしてはいられない、早く猫を見つけ速やかに治療しあわよくばモフらせてもらわねば!

そんなちょっと邪まな想いを若干抱きつつ横道の雑木林の中に入って行って見たのは大柄な男悪魔が黒い猫へと攻撃を仕掛けようとしているところだった。

 

虚弾(バラ)

 

そんなの見たら衝動的に虚化しちゃって虚弾(バラ)撃っちゃうのも仕方ないよね?

あの一件以来アザゼルの言いつけを守らず隠れて虚化の練習して一瞬だけならリスクなしで出せるようになってるし。本当に一瞬だから虚弾(バラ)しか攻撃手段ないけど。

しかし流石虚化状態で放つ攻撃。完全に不意打ちだったのでその男を吹き飛ばした。

……だけどあいつ多分倒せてないな。手ごたえに違和感があった。

ぐったりとしている猫を、怪我を刺激しないよう抱き上げ響転を使ってその場を離脱した。

そして家に帰り猫の治療をし、じいちゃん(アブウェロ)に一言断りを入れしばらく世話をすることにした。

じいちゃん(アブウェロ)は特に動物嫌いではないので連れてきたことについて特に何も言わなかった。

 

そういう訳で俺と黒い猫の生活は幕を開けた。

そしてなぜ俺が困っているかをなんとなくで付け始めた観察日記を振り返ることで見ていこうと思う。

 

 

 

 

一日目

腐れ外道の悪魔が猫を襲っていた。

ああいう動物を迫害するやつらの気が知れない。

猫は前足と胴体に少し深めの傷があったがアザゼル謹製の塗り薬を塗り処置しておいた。

この薬はよく効くのできっと元気になるだろう。

部屋の隅に簡単な寝床を作りそこに寝かせた。

今日は目を覚まさなかった。

 

二日目

猫が目を覚ました。

混乱しているようできょろきょろとあたりを見回し、俺の事を見つけると警戒していた。

まあ猫からしてみれば180cm強の巨漢(現在成長期に付きまだまだ伸びている)はそれこそ巨人だろう。

警戒しているところに近づくのは少し悪いと思ったが少々無理に昨日巻いた包帯を代え、薬を塗った。

引っかかれでもするかと思ったが頭がいい様で暴れはしなかった。

怪我が痛かっただけかもしれないが。

 

三日目

未だに警戒されている様だ。

此方に攻撃をすることはないがじっとこっちを見てくる。

しかし撫でようとすると威嚇してくる。残念だ。

 

四日目

前足の怪我は多少良くなったようで俺の部屋の中だけではあるがちょこちょこと歩くようになった。

相変わらず撫でさせてはくれない。

 

五日目

鳴き声で何かを主張するようになってきた。

猫の鳴き声は可愛いな。

 

六日目

修行の帰りにこの間吹き飛ばした悪魔が襲ってきた。

殴り飛ばした。

 

七日目

前足の包帯が取れた。傷もなくきれいに治っていた。

良かったなと言いながら手を伸ばしたら大人しく撫でさせてくれた。

一歩前進だ。まあ撫でさせてくれたのはその時だけでその後撫でようとしたら避けられたが……

 

八日目

多少仲良くなった(と思いたい)ので名前をつけようとしたがあまり気に入らないらしい。

黒猫だから夜一さんと呼んでみたりしたがなんとなく不機嫌になりそっぽを向かれてしまった。

 

九日目

不思議な夢を見た。

和服を来た美女がその猫の名前は黒歌(くろか)というと教えてくれた。

何だったのだろうか。この黒猫の前の飼い主の念とかそう言ったものだろうか。

悪魔や天使や堕天使がいるんだからそういうことがあってもおかしくないと思う。

試しに呼んでみたら気に入ったのか鳴き声で返事をするようになった。

しかし撫でさせてはくれない。悲しい。

 

十日目

撫でさせてはくれないがあちらからはすり寄ってくるようになった。

歩いていたりするとついてきたり体を寄せてきたり、ご飯の用意をしていると足を少し引っ掻いて催促するようになった。

うちの猫がかわいすぎてつらい。

 

十一日目

この間の悪魔が仲間を3人ほど引き連れてきた。

殴り飛ばした。

 

十二日目

腹の傷も大分よくなってきたようだ。

この分なら後1週間経たずに包帯もとれるだろう。

アザゼルの薬があるとはいえだいぶ早いな。

腹の傷を見た後とても不機嫌そうに鳴く黒歌にいつも罪悪感しかないので早く治ってほしい。

 

十三日目

久々にアザゼルが来た。

黒歌を見せようと思ったがどこかに姿を隠して出てこなかった。

とりあえずアザゼルが悪そうなので修行に付き合ってもらい虚閃(セロ)を数回打ち込んでおいた。

虚化の持続時間が増えてることに関して指摘されめっちゃ怒られた。

こないだ言った準備とやらはまだ終わってないらしくあと一月ほどは来れないと言い残し帰っていった。

 

十四日目

この間の悪魔が仲間を10人ほど引きつれ以下略

流石に無傷とはいかなかったがいい修行になった。

虚化の持続時間が一気に伸びた。

黒歌が傷を心配そうになめてくれたのでまだまだ元気に戦える。

というかしつこいなあいつら。黒歌はうちの子です。

虐待する輩なんぞに渡して堪るか。次あったら巨人の一撃(エル・ディレクト)だな。

 

十五日目

感動だ。それしか言葉が出ない。

何と黒歌が大人しく撫でさせてくれたのだ。

この感動を胸に今日は眠るとする。

 

十六日目

この間の悪魔が仲間を10(ry

今回は無傷で捌けた。

なぜ今回は増えなかったのだろうか。

これ以上増やせないのか、それとも人間相手にこれ以上増員をするなど屈辱なのか。

それなら10人までOKという判断基準がよくわからないがどういうことだろう。

 

十七日目

お腹の包帯が取れた。

此方も綺麗に治っている。

回復おめでとうとめっちゃ撫でた。少し抗議の鳴き声を上げていたが大人しく撫でられていた。

ぐぅかわ。

 

十八日目

こ悪仲10(ry

無傷どころか一撃で全員片付けた。

もはやチュートリアル。レベルを上げるか仲間を増やすかして出直してこい。

そろそろ本当に怒りたい。次来たら手加減抜きで消し飛ばそう。

……いやていうか割と本気でやってるんだけどあの悪魔地味にしぶとい。

 

 

十九日目

 

 

即ち今現在。俺は困っているという冒頭の話に戻る。

 

 

「スースー」

 

「……」

 

いつだか見た夢の中の女性が俺に抱き着いて眠っていた。

俺も男だ。アホみたいに体を鍛える以外特に何も興味ないだろうと周りに見られていても男である。

しかも思春期男子なのだ。

ちょっとこの女体の柔らかさとか臭いとかもうダメだ。

チャドっぽくないとか言うな。これは、もうそういう次元の話ではないのだ。

混乱をしながらついに俺は解決策を思いつく。

今日は日曜日、すなわち!

 

「二度寝するか」

 

 

 

 

「変な人」

 

始めこそ若干の動揺を浮かべ、その様子が面白かったので寝たふりをつづけたが急に落ち着いて二度寝するかと言って本当に寝てしまった。

どういう神経をしているんだろう。理解できないにゃあ。

 

「はあ、何してるんだろう私」

 

本当は姿を見せる気なんて全くなかった。

いや、見せる気どころかこんなに居座るつもりもなかったのだ。

最初目覚めた時ああついに捕まってしまったのかと思った。けど目に映ったのはすごく大きな人間の男の子。

どうやら手当をしてくれたらしいことは自分の状態からわかった。

ただあの状況で追手が私を見逃すとは思えなかった。

つまり人間といっても三大勢力の事を知っている、そこそこ力のある人間なんだろうと思った。

けど、悪意は感じなかったから大人しく治療を受けた。まあ大人しくしていたって言っても動けなかったっていうのが本当のところだったけど。

ちょっとおっかなびっくりな手付きで治療やご飯を用意する姿は、ちょっとかわいかった。

だからとりあえず、足の怪我が治ったら出ていこう。最初はそう考えていた。

 

 

そう考えている内に足の傷はすぐに治ってしまった。

 

 

あの傷薬なんなのにゃ…… ちょっと効き目が尋常じゃ無いにゃ。

ヤストラは足が治った時嬉しそうに撫でてきた。

これまでは避けてきたけど、まあちょっとだけ、お礼のつもりで撫でさせてあげた。

中々のテクニシャンだったにゃ。それに手がすっごく大きくて包まれる感じ、嫌いじゃ無いにゃ。

でもそれ以上は簡単には撫でさせてあげない。女の子はそんなに簡単じゃないんだから。

だけど、もうちょっとだけ、いてもいいかな。

ちょっとだけ疲れちゃったから、甘えてもいいかな。そう、思ってしまった。

お腹の傷が治ったら、そう言い訳をして私はとどまった。

思えばその選択を選んだ時点で色々と決まっちゃってたんだろうにゃあ。

 

名前が無いと不便だと思ったのか名前をつけようとしてきた。

でも誰にゃ、ヨルイチさんて。明らかに他の女の事を思い浮かべてたね。そういうのはダメなんだからね!

その夜、ちょっとした術で夢に干渉して名前を教えた。

名前といえばヤストラって日本人なのかにゃ? さっきのヨルイチって名前も日本風だったし。ヴリトラとかそういう語感の名前かと思ってたけど、ハーフ? ちょっとだけ親近感がわいちゃうにゃー。

堕天使総督が来たときは焦った。

ヤストラって何者?

堕天使の気配がしたので隠れて様子をうかがっていたけどなんで総督直々に来てるにゃ。

その後修行と称してヤストラが大暴れしてた。ヤストラって強いのにゃ…… 途中アザゼル本気で墜落しかけてたにゃ。その後ガス欠が起きたのかやられてたけど。

そして、見つけちゃったんだ。あの日記。

まさかあいつら未だにここら辺をうろついてたなんて……

本格的に、出ていかなきゃと思った。思ったんだけど。

そっか、いつの間にか私ヤストラの家の子になっちゃってたんだね。

多分ヤストラは何も考えずに書いたってわかってる。

でも、ちょっと心に響いてしまった。

私の為に戦ってくれてうれしいって思っちゃった。

 

もうちょっと、もうちょっとだけ。

 

もうこの頃にはわかってた。

撫でるのも抵抗しなくなった、できなくなった。

 

「ねえ、ヤストラ」

 

ヤストラからすれば唐突だろうし、一方的に私が知ってただけだったけど。

 

「好きになっちゃった」

 

だから、だから、もうちょっとだけ。

 

「傍にいさせて?」

 

寝ている彼に、届かない願いを呟いた。

 

 

to be continued…




黒歌さん登場! メインヒロイン! メインヒロイン来た!これで勝つる!

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