俺の霊圧は消えん!   作:粉犬

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ラストです。


New Life.

「君の憂いは、少しは晴れたかね?」

 

帰ろうとする俺の背中に、そう言葉を投げるサーゼクスさん。

 

「……ええ、感謝しています。イッセーにチャンスを与えてくれたことを」

 

「礼には及ばないさ。私の個人的欲求も含まれていたことだしね」

 

「ええ、そこら辺は本当にダメな大人だと思っています。反省すべきかと」

 

「ハッハッハ、言うじゃないか」

 

特に気にしている風にも、反省している風にも見えない。

まあ、こういう人だ。俺は一応敬語を使ってはいるが基本心の構え方としてはアザゼルとほぼ同類と思って接している。

 

「しかし、慌ただしいな。食事でもしていけばいい。そうすればグレモリー独自のルートを使って楽に帰れるだろうに」

 

「長い滞在は存在が割れる可能性を高めますからね。()()俺がこうしてあなたと交流を持っているのを知られるのはまずいでしょう」

 

それに、と言葉を続ける。

 

「最近、少し堕天使組織内で不穏な動きがあるようです。今からも冥界(こっち)に来たついでに堕天使本部に寄る予定です。……もしかしたら、しばらくこっちにも、下手をしたら学校にも顔を出せなくなるかもしれません」

 

「そうか、なら引き留めるのは止そう。学校の方は、まあこちらでどうにかしておこう。一応顔は利く」

 

そう言って、サーゼクスさんは一歩引いた。

 

「死なないよう気を付けたまえ。君は恐らく、これから先に必要な人材だ」

 

「自分がそんなに大層な人間だとは思いませんが、死ぬ気はありませんよ。まだ、俺は何もできていないので」

 

では、と軽く会釈をして、響転で空を駆ける。目的地は堕天使本部だ。

 

 

 

 

「……何もできていない、か。君はこれから何を成すんだろうな」

 

飛び去って行くチャドの背中を見ながら、サーゼクスは呟き、屋敷へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「そのような訳で私、リアス・グレモリーもこの兵藤家に住まわせていただくことになりました。不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします。お父様、お母様」

 

兵藤家、つまりは俺の家のリビングで俺の両親にそう挨拶する紅髪の美少女。

更に隣では涙目で「うぅ、お姉さん…… 私もくじけそうです……」と呟いている。お姉さんって誰だ?

 

「まあ、どうしましょう。娘が二人になるのね! 嬉しいわ!」

 

母さんはアーシアが来て以来、本当の息子である俺をそっちのけでアーシアを本当の娘であるかのように猫可愛がりしていた。そこにもう一人増えるとあってご機嫌の様だ。

父さんは、なんかもう大号泣している。

 

「うんうん、男だったら誰でも夢見るよな! 女の子が一杯ってのは。お前なら俺の夢を叶えるのかもなあ!」

 

ああ、この人は俺の親父だ。夢まで同じとは…… とりあえず早急に隣の母さんの怒りを沈めた方がいいと思う。

あの一件から数日、そこそこ色々なことがあった。

まず、部長とライザーの縁談は正式に破棄された。部長も喜んでいたし、そこら辺は一件落着って感じだ。

ライザーは初の敗北がよほど堪えたらしく寝込んでいるらしい。

なぜかライザーの妹、レイヴェルから直接手紙が来てそれを知った。

手紙を見た時、部長が若干不機嫌だったみたいだけど、なんだったんだろう。俺何かしたかな?

そして、俺のドラゴンになった左腕。

部長と朱乃さんがいろいろと調べてくれたおかげで、今は見た目だけは普通の腕に戻っている。

なんでもドラゴンの魔力を散らすことで普通の腕に戻せるらしい。なのでドラゴンの魔力が溜まったらまたもとのドラゴンの腕になってしまう。

なので定期的に魔力を散らすのだが、その方法がなんというか、とてもエロい。

グフフ、部長や朱乃さんがあんなことを…… それを考えるとこの腕もあながち悪くないかもしれない。

そして赤龍帝、ドライグ。あの決闘の後、部長とグリフォンに乗っている時に。

 

『お前はあの色黒の小僧に最大級の感謝を捧げるべきだな』

 

そう言ったっきりうんともすんとも言わなくなった。まだまだ聞きたいことはあるってのに。

色黒の小僧って、チャドだよな? もちろん感謝はしてるけど……

そうだ、チャドと言えば急に連絡が取れなくなった。

今回の報告とかお礼とか、いろいろ話したいことがあったんだけどな。

チャドだったらもしかしたらドライグが言ってた『白い奴』の事も知ってると思ったんだけど……

 

「イッセー、ご両親の許可は得たわ。これで私もこの家の住人ね。早速だけど荷解きを手伝ってくれるかしら?」

 

「あ、はい!」

 

「私もお手伝いします」

 

そう言って俺の後についてくるアーシア。

 

「うぅ、一夫多妻制しか道がない気がします…… でもでも、主の教えに背くことになるのは…… でもでも、このままだと部長さんにイッセーさんを…… ううう、お姉さんの言う通り積極的に…… はぅぅ……」

 

部長が挨拶に来てから様子のおかしいアーシア。

 

「一夫多妻制がどうした? あとさっきからお姉さんって誰の事だ?」

 

「イッセーさんには秘密です」

 

ぷいっと顔をそむけてしまう。

なんとなーく不機嫌だ。

 

「イッセー、その装飾品はそっちに置いて頂戴」

 

部長の部屋に荷物を持ってくると早速指示が飛んでくる。

 

「はい!」

 

「それから、これが終わったらお風呂に入りたいわ。……そうね、背中を流してあげる。一緒に入りましょう?」

 

「マジっすか!?」

 

うひょおおおお、がぜんやる気が出てきた! ていうか毎日でも入りたい!

 

「もうっ! 裸のお付き合いなら私もします! 仲間外れにしないでください!」

 

涙目でそう主張するアーシア。

アーシア、ダメだ! 部長と競うようなことしたら刺激が強くなっちゃうよ!

 

「アーシア、そういう訳だから。宣戦布告ってことでいいかしら?」

 

「負けません! ……まけそうですけど」

 

なんか二人の間でバチバチと火花が散っているのを幻視してしまった……

なんだなんだ。女の子はよくわからん!

こんなんでハーレムの道は開けるのか?

ただ、分かることは一つだけある。

俺の日常はどんどん賑やかになっていく様だ。

 




2巻、完! くぅつか。
戦闘とか挟まるとどうしても長くなりますよね。
ていうか今回ほぼほぼイッセーの物語となっててチャドが全くと言っていい程活躍してませんね。
まあどうしてもこの回は書くことがイッセーについて位しかないので仕方ないとは思うのですが……
さて、この後ですが3巻に入っていきたいと思います。もしかしたらまた短編が挟まるかもしれません。
3巻は因縁のあるあの人登場ですね。たぶんそろそろ原作からの乖離が激しくなることが予想されますのでお気を付けください。
では連続9話投稿という無茶にお付き合いいただきありがとうございました。
引き続き拙作をお楽しみいただけるとこれ以上の喜びはないです。

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