状況説明のような一話。
そして約一名がキャラ崩壊しています・・・。
追記
誤字修正しました!
いつもありがとうございます!
本当に、とても助かっています。
[神野編2.5]
最初に会ったのは、あのUSJ襲撃の時だ。
黒い炎を出すだけの個性の二重人格者、俺の計画を潰した気に食わないチート野郎。
次に見たのは、テレビの中だ。
オールマイトから声をかけられ、まるで自分が世界の中心に居るかのように有るその姿になんとも言えない苛立ちが湧いた。
だから、会いに行った。
あの日、あのチート野郎はオールマイトが原点だって言った時はやっぱり、って思った。
オールマイトが居るからコイツが出てきただけなんだ、やっぱりオールマイトが悪いから――――今の俺があるんだって。
満足して、納得して、腹の中がぐちゃぐちゃになって。
そこで終われば、今の俺は違う俺としてだったかも知れない。
オールマイトが居たから浮き出てきただけの端役であるアイツは、目の前で銃で撃たれた。
それ自体はどうでも良い。
死のうがどうなろうが知るか。
重要なのは、飲み込めなかったのはあの銃弾を仕向けたのは先生だって事だ。
俺の知る限り、先生は常に姿を隠していた。
特別だから。オールマイト同様に特別で、世界の裏のさらに中心。
その先生が、あの端役のために証拠が残る手を使った。
それも、殺すためじゃない。まるで成長を助けるように打ったその一手で、あのチート野郎はマスキュラーを潰すだけの力を手に入れた。
おかしいじゃないか。
オールマイトと先生に、世界の中心に手をかけられているアレはなんだ。
プロヒーローすら潰す俺のヴィラン連合に単身乗り込んできて半壊に追い込む?なんだそれ。
アイツはなんだ。
ゲームの主役か?チート野郎か?漫画の主人公か?
違う。そんなボケた捉え方じゃぁ見られない。
アイツはなんだ。
緑谷出久とは誰だ。
緑谷エドモンとは誰だ。
ギジジジジジッ!!!
複数のパイプを無理やり取りつけたような歪なマスクの男の手が、空間に爪を立てるように指先を滑らせる。
それだけで、男の五本の指先から飛び出した黒い刃がアスファルトを切り裂き、ビルの一部を削り取る。
少年たちの戦場から5km。工場とビルがそびえ立っていたこの場所はしかし、すでに瓦礫の山に変わりかけていた。
ラグドールのサーチにより彼女が遭遇した脳無の一体の居場所はすぐに割れた。
対して、浚われた少女の居場所はサーチでは絞れず何らかの妨害が成されていた。
当然、これは罠だと誰もが理解していたが数少ない手がかりを潰すという選択肢は無かった。
何より彼が、止まる訳もなかった―――――
「―――――DETROIT SMASH!!!!」
音すら置き去りにして、巨大な拳が黒い刃へと突き進む。
アスファルトすら容易く切り裂くその刃はしかし、僅かに切り傷を残し砕け散っていく。
刃を突き抜け、折り砕き、つまりは最短ルートで拳はマスクの男――――オール・フォー・ワンを捉える。
「少し急ぎ過ぎだよオールマイト。そんなに、さっきの連絡が気になるかい?」
『衝撃反転』
拳がその腹部を撃つ―――その瞬間、ザワリと背中を襲った嫌な感覚にオールマイトは拳を止めようとする。
だが僅かに、勢いは殺しきれなかった。
成人男性程度であれば吹き飛ばすであろうその拳は、オール・フォー・ワンの腹へと突き刺さり――――果たして、まるで壁に肉を叩きつけたような音と共にはじき返されたのはオールマイトの拳の方だった。
「ッ!!・・・そうでもないさ。いや、もちろん彼らが無茶をしないかは心配さッ」
ビリビリと痺れる右腕を振りながら大きく距離をとったオールマイトは、まるで見当はずれの事を言われたとばかりに口元にいつもの笑顔を浮かべる。
(彼のサイドキック用の通信装置に連絡が入った時は驚いたけど、この状況を目の前にして彼があんなことを言うなんて。・・・私が思い出していたのはそれだよ、オール・フォー・ワン)
「少し前の私なら、分からなかったのかもしれない。この場に来て、貴様を前にして溢れてやまない気持ちがある」
脳無を追い、工場に他のヒーロー達と共に乗り込んだ彼はすでにいつもと違っていた。
まるでこちらを敵視するようなギラギラと燃やしつくすようなあの視線ではなく、冷静にこちらを見定めるようなあの視線。
そして、彼が残した言葉。
『俺が追いつくまで無様な姿は見せるな。俺はお前に出来ない事をやりに行く』
彼が自分の背中を追いかけていた事は知っている。
ある時から、その顔から熱が消えうせ――――彼が別の方向を向いてしまったことにも気づいてしまった。
隣を走っているつもりでも、トップヒーローを名乗っていた自分がそんなことを言ったところで意味がない事はわかっていた。
思い返せばあの体育祭からだ、彼は変わった。
顔面を氷漬けにされたまま出勤したなんて話も聞いた。
あの仕事など休んだことも無い男が謎の弁当を食べ、胃洗浄をしたなんて話も聞いた。
氷漬けにされたままどこかの病院に引きずられていく姿を見た、なんて話も聞いた。
いつの間にか、退院された奥方とまた暮らし始めたと聞いた。
(見えないところで、変わっている。私も彼らから学んでいる。友達を救おうと、自分たちの事は二の次で、全力で今も動いている少年少女たちから学び――――)
『膂力増強』
眼前のオール・フォー・ワンの腕が膨張する。
『
まるで力を溜めこみ、いまにも咲き誇ろうとする醜悪な花弁のように肩から蠢くように生えた6本の腕が絡まりオールマイトへと向けられる。
『瞬発力』×4『肥大化』
だが終わらない。彼の個性で得た他者の個性のストックは、並みの破壊を生み出すだけでは許されない。
花弁はより大きく肥大化し、歪な砲身へと姿を変える。
「ぁぁ・・・とても不愉快だが、僕も君も同じことを考えているようだ。ここで終わることで彼に巣立ちを教えようかと計画を練っていたんだが、最近の彼を見て少し気が変わった」
『空気を押し出す』
本来ならそれほどの威力も無い、それこそ実際の砲弾と比べてしまえばおもちゃのような威力の個性。
それが、オール・フォー・ワンの腕から撃ち出される。
まず、撃ち出した彼の眼前の地面が押しつぶされ、押しのけられ大きな穴へと変わっていく。
見えない砲弾は瓦礫を砕き、しかし一瞬でオールマイトへと迫る。
「私は――――」
「僕は――――」
その背後の瓦礫の山の中で、動く人たちが居る。
可能な限りの避難誘導を行いそれでも、オール・フォー・ワンの力量を見誤りこのテロに巻き込んでしまった者。
この異常な惨状を作り出した敵に背を向け、そして彼に背中を預け救助者を助けるために動くヒーロー。
その光景の重さにオールマイトは笑う。
その光景の軽さにオール・フォー・ワンは笑う。
「――――彼ら『彼』の目指す先にまだ立っていたい」
風の砲弾とオールマイトの拳が重なり合う。
突き破ろうとする拳に対し、砲弾はその圧倒的な質量で押しつぶそうとする。
地を削り、押しのけられていく体。
(・・・・押されッ・・・るが・・・それがどうしたッ)
オールマイトは―――――
「・・・・・どく、・・・鋭く・・、重くッ!!」
押しつぶされないよう何とか、姿勢を深く腰を据える。
歯を食いしばり、腰を据えたからこそ得られた安定性から、足首、膝、腰を回転させていく。
見よう見まね。
トップヒーローらしからぬその動きは――――確かに左腕へと力を伝えた。
「――――激しく行くよッ‼」
下から、突き上げるように左拳が打ち上げられる。
正面からの一点突破を読んでいた砲撃はしかし、切り裂くように打ち上げられたアッパーに切り裂かれ、かき乱される。
霧散していく砲弾。
その軌跡をたどり、オール・フォー・ワンが迫る。
本来なら風の砲弾により姿勢を大きく崩した所を突き抜く、そのつもりで用意した左腕。
『エアウォーク』『膂力増強』『
槍。絡み合った無数の腕と、浮きだした鉱物のような何かがオール・フォー・ワンの体よりも巨大な拳であり、槍を形作っている。
(彼を完成させるために、彼が必要なんだよオールマイト。対等の存在が必要なんだ、彼はまだ学ぶ者だからね。――――だから、君という火種はもういらない)
拳が、そこから生えた槍がオールマイトの心臓を捉える。
確実に、一呼吸で貫く距離に迫る。
コマ送りの視界の中で、オール・フォー・ワンは眼前の男の右拳が再度握られていくのを久しく前に失った視力の代わりに『赤外線』で確認する。
間に合う。間に合ってしまう。
彼の拳は、オール・フォー・ワンの拳を突き破り槍を折り砕くだろう。
トップヒーローの拳が振るわれる――――
『衝撃反転』
(間に合うさ。君はそういう男だ、知っている。良く知っている。だからこそ――――)
自らの振るう拳で、オールマイトの腕が四散する。
その確定した未来をすでに存在しないまぶたの裏で幻視した彼は
前ではなく、真横にゆっくりと振るわれた拳その動きを、『赤外線』で感知
オールマイトの腕がしなやかに巨大な拳へと添えられる。
衝撃を反転していたオール・フォー・ワンはその感触にすら気付けず、『彼』の動きをとっさに再現しただけのオールマイトは力任せに押しのけようとした結果。
グンッと腕ごと巨大な拳の真横へ体を押しのけられる。
(HAHAHA!手の平で払う受け流しは得意なんだよ!?でも・・・腕での受け流しは初めてだ)
左の拳を握る。
(はは・・・今度、教えてもらおう。動物や虫たちがどんなことを話しているのかとか、お菓子作りとかも・・・音楽も、スポーツも・・・色んなことを)
だから。
体内で、制限時間を告げるアラートが鳴り響いているがそれで止まれる状態じゃない。
止まりたくない、前に進みたい。
今も進み続ける彼らの目印となるために。
先へ――――
「
拳が、仮面を砕いていく。
オール・フォー・ワンはここにきて自らの失策に気付く。
だが、その頬へ確かに――――拳がとどく。
音も、風圧も一瞬遅れそれよりも先にオール・フォー・ワンの体は地面へと叩きつけられる。
だが終わらない。
ドッ!!!と地面が一瞬で抉れ、彼の体は沈み込む。
拳圧により巻き起こる突風が漂った粉塵を一瞬で掻き消し、空へと噴き上げていく。
突風が穿った厚い雲の間から、日が差す。
その下で、いつものように彼は負ける事無く立ち続けていた。
ひろあか・????ふぁみりー
????「ワタシはワタシだから。ただそれだけ、分かってくれないなら一人で暮らす。お母さんも良いって言っていた」
????「なッ・・・なにを突然言っている!?それに母、だと?お前いつの間にアレと――――」
????「あと洗濯物はもう一緒に洗わないで欲しい、汗臭いから」
????「なぁ!?・・・・あ、せ・・だと?」
????「ネットで有名。No.2ヒーローは暑苦しいから汗臭いって」
????「・・・・」
????「実戦も交えてお前の炎を鍛える良い機会だ、インターンならうちに来い」
????「断る。イズクのインターン先から遠い」
????「ッ、・・・お前、彼と付き合っているのか?」
????「もう、キスは済ませた。一生近くに居てくれるってプロポーズももらう予定だ」
????「・・・少し、早いんじゃないか。いずれは個性婚をさせるつもりだったが、結婚できる年まで俺も待つつもりだった」
????「ワタシの邪魔をするの?ねぇ、なんで?前はあんなに結婚させたがってたのに?ねぇ?――――ねぇ?」
????「ッな・・・まて、やめッ」
????「俺の女ってプロポーズもらったから、お母さんに報告しに行こう」
????「・・・・・・」
????「少し加減を間違えて口まで凍ってるからよく分からないけど。・・・クソおや・・・お父さんも嬉しそうでよかった」
????「・・・・・・」
????「・・・ワタシも嬉しいよ。また、三人で仲良くできる時間が来るなんて思わなかった」
????「ッ・・・やっと溶けたか。・・・俺もお前の顔の価値を下げた事と、お前の教育についてアレと話さねばならん。だから、この氷を」
????「クソおや・・・お父さん。バスが出るみたいだ、早く行こう」
????「待て!氷を――――ガッ!?」
????「お弁当、作ってみたんだけど食べる?」
????「いら・・・」
????「・・・・」
????「また暴れられても困る。早くよこせ」
????「・・・うんっ。ありがとう・・お父さん」
????「ふん・・・こんなもの」
????「ご・・・ぁ・・・ぁ・・、おぶぇっ・・・・・・ど、く・・・ッ」
????「お父さん、洗濯物あったら出して。お母さんと花嫁修業するから」
????「・・・・俺の洗濯物は隔離すると言っていただろう、あれはどうした」
????「もういいの。それより早くして、終わったらお菓子作りがあるから」
????「お前の気まぐれに振り回されるのは・・・待て、お菓子・・だと?」
????「ふふ、お父さんの分もあるから心配はいらない。ほら、ジャージ脱いで・・・ランニングも」
????「いらん!いらんぞ、お前の菓子など・・・かし・・・」
????「・・・・ぅ」
????「・・・あなた、どういうつもりかしら・・?」
????「ッ、お前は何も知らないから――――」
????「・・・・」
????「・・・・ありったけ作って持って来い、午後の鍛錬に糖分が欲しかったところだ」
????「ッ、誰だこんな時にッ!?サイドキックなら全員、避難誘導に――――」
????「おとう、さん!おとうさん!!」
????「今はお前と話す暇は無いッ!!遊びでこんなことを――――」
????「っ、カツキが・・・!大変なの・・・たすけて、たすけて・・・おとうさん・・・!」
????「・・・聞くに堪えない情けない声を出すな、お前も俺の娘ならわきまえろ。・・・手早く要点を話せ、インターンで教えた筈だ」