神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

9 / 72
最近、天気予報が当てになりません。

晴れろとは言わないから、せめて雨だけは勘弁してほしいかな。

湿度のせいで偏頭痛が酷いから。






第7話 赤い彗星

「想像以上に頑張りますね……仲森さん」

 

真耶の呟きがピット内に響く。

 

私達は今、ピット内にあるリアルタイムモニターで試合の光景を見ている。

 

確かに、代表候補生相手に起動が二回目とは思えないほどの健闘ぶりだ。

あんなにも闘志に溢れた佳織の目を見るのは初めてかもしれない。だが……

 

「あいつは……緊張しているな」

「「「「え?」」」」

 

その場にいた全員が一斉にこっちを向く。

 

「ど…どうしてそんな事が分かるんですか?」

「さっきから佳織は何度も唾を飲んでいる。あいつは昔から緊張すると頻繁に唾を飲む癖がある」

 

少なくとも、私が知る限りではそうだ。

私と佳織が初めて会った時も、丁度あんな感じだった。

 

「そんな癖があったのか……」

「私も初めて知ったよ……。なんで知ってるの?」

「ほえ~……かおりんの意外な一面を発見~」

 

ふふ……私は佳織の事をよ~く見ているからな。

それこそ、体の隅から隅までずずず~いとな。

 

「なんで仲森さんの癖を織斑先生が……」

「愛する者の癖ぐらい知っていて当然だろう」

「「「「はっ!?」」」」

 

む……つい調子に乗って言ってしまったか。

まぁ、別に気にしないがな。

 

「み…見た感じだと、一進一退って感じですけど……」

「そうだろうな。だが、まだお互いに決定打を与えていない」

 

真耶め……話を逸らしたな。

 

「佳織の武装は……」

「マシンガン……か。相手とは明らかに火力に違いがあるね…」

「かおりん……」

 

上手く急所を狙えれば、ここからの逆転もあり得るだろうが、今の佳織の技量では困難だろう。

 

確かに佳織は適性値が高い上に才能もあるだろう。

だが、それはあくまで将来的な話に過ぎない。

今の佳織は紛れも無くISの初心者。

仮にここで敗北しても、誰も責めたりはしないだろう。

寧ろ、代表候補生相手にここまで操縦時間が30分にも満たないアイツがここまで粘った事を褒めるべきだと思う。

 

「あっ!」

 

一夏の叫びが聞こえてモニターに目を移すと、そこにはオルコットのレーザーによって左足を狙撃された佳織が映っていた。

 

「ヤバイ……足をやられた!」

 

しかも、そこからオルコットは更に追い打ちをかけるように、アイツの機体の第3世代兵装であるビット兵器を射出し、レーザーの包囲網を作り上げた。

 

「かおりん!」

「そんな……このままじゃ佳織が……!」

「くそっ…!」

 

今のままでは佳織の敗北は必至。

だが、どういう訳か、私には佳織がここで終わるようには思えなかった。

なんと言うか……経験者故の直観のようなものを感じるのだ。

 

「かおりん!前!!」

 

布仏が叫ぶと、モニターの向こうの佳織の眼前にミサイルが飛来していた。

ビットの攻撃によって身動きが取れない佳織には回避する術が無い。

万事休すか。

多分、私も含めて、この場にいる全員が同じ事を思っただろう。

だが、それは最良の形で裏切られた。

 

「あれ……?ブザーが鳴らない…?」

 

試合終了のブザーがいつまで経っても鳴らない。

と言う事は……

 

「ふっ……やはりお前はそうでなくてはな」

 

爆発によって生じた黒煙が晴れると、そこから出現したのは……

 

「赤……?」

 

真っ赤に染まったラファールⅡの真の姿があった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 セシリアは、今目の前で起きている事象が正しく認識出来なかった。

 

ミサイルが直撃し勝負が決したと思った次の瞬間、煙の中から声色の変わった佳織の声が聞こえてきたのだから。

 

「……認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちと言うものを」

「な…何を言ってますの…?」

 

先程までの焦りと臆病風に吹かれていた少女はそこにはいなかった。

今の佳織の全身から、今までとは比べ物にならない程の『何か』が発せられている。

 

「いくら私が素人だからと言って、大切な友と恩師の目の前で、このような無様を晒すとは……」

 

煙の向こうで佳織が何か操作をしている。

それはすぐに終わり、すぐに高周波な金属音と共に真紅の光が彼女の体を包み込む。

何度も光が消えては光りを繰り返し、少しずつラファールが『変化』していく。

その光が収束し、そこから出現したのは……

 

「なっ……!?」

 

先程までの戦闘のダメージが全て消え、真っ赤に染まったラファールⅡの姿だった。

 

ラファールの純正の色だった緑から打って変わって、まるで佳織の中にある情熱を表すかのように眩い赤。

スラスターや胸部にある装甲、左肩にあるスパイクアーマーにはアルファベットの『A』に鳥の絵が描かれたエンブレムが刻まれている。

更に、頭に装着してあるセンサーの頭頂部からは一本のブレードアンテナが屹立している。

 

ラファールであってラファールではない。

 

そんな言葉が浮かび上がるような機体に変貌していた。

 

「ふっ……。脳内に直接データを送り込まれるとは……面白い」

「その姿は…もしや……一次移行(ファースト・シフト)!?貴女は今までずっと、初期設定のままで戦っていたと言うんですの!?」

「その通りだが、それがどうかしたかね?」

「どうかしたか……ですって……?」

 

わなわなとセシリアの肩が震える。

 

「分かっていますの!?初期設定のままで戦うと言う事は、全身に鉛の重りを付けて動く事と同義!明らかな自殺行為ですわ!!」

「だが、私はこうしてここに立っている」

「それは……!」

 

思わず唇を噛む。

余裕に満ちた佳織の態度が気に食わないと言うのもあったが、それ以上に自分が舐められたような気がしたからだ。

 

「さて、ではここからは私のターンと行こうか」

「え……?」

 

全ての工程が終了した事で武装が増えたのか、佳織は今まで使用していたマシンガンを収納し、代わりにIS用バズーカA2型を装備した。

 

「改めて見せて貰おうか……イギリスの代表候補生の実力とやらを!!」

「の…望むところですわ!!」

 

セシリアの周囲で滞空していたビットが再び佳織に襲い掛かる。

レーザーの雨が文字通り佳織に降り注ぐ……が。

 

「そんなっ!?」

 

その全てを佳織は見事なマニューバで回避して見せた。

装甲には掠り傷一つついていない。

 

「こんな事……こんな事あり得ませんわ!!彼女の動きが見えないなんて!!」

 

佳織の回避運動がセシリアの精神に僅かな動揺を生んだ。

それがビットの動きに直結し、明らかに動きが悪くなっていった。

 

「どうした?ビットの動きが単調になっているぞ。それでは私のいい的だ」

「なんですって!?」

「その証拠に……」

 

高機動を繰り広げながら佳織がバズーカを両手で握りしめてスコープを覗く。

そのままトリガーを引くと、バズーカから発射された弾がビットに直撃し、破壊された。

 

「私のビットが!?」

「君自身が気が付いているかどうかは知らないが、君は相手の死角から攻撃する頻度が非常に高いようだ。だが、それさえ分かれば君の攻撃を避ける事など造作も無い」

 

説明をしながらも、佳織はステージ上に赤い軌跡を残しながら一基、また一基とバズーカでビットを落としていく。

 

「確かにISの全方位視界接続は完璧と言えよう。だが、それを使用するのはあくまでも人間だ。背後や直上など、普段からあまり向かない方角を見ようとすれば必然的に直感で『見る』ことは不可能。送られてくる情報を脳内で整理する時間が生じる為、ほんの僅かではあるがタイムラグが発生する。君はそこを狙っているのだろう?」

「……!?」

 

自分の考えが全て読まれているかのように、セシリアの戦法が白日の下に曝される。

 

「逆を言えばそれは、こちらから意図的に隙さえ作れば、君の動きをある程度は誘導可能になる…と言う事にもなる。いかに鋭い攻撃でも、来る場所が予め分かっていれば、私のような素人でも回避するのは容易だ」

 

素人と言ってはいるが、今の佳織の動きは明らかに素人のそれを上回っている。

セシリアの動き……正確には目を見ながら佳織は空になったバズーカのマガジンを取り出し、拡張領域内から予備のマガジンを装着した。

 

「後はこのように攻撃すれば……」

 

最後のビットがバズーカに撃たれて撃破される。

 

「この通りだ」

 

完全に試合の流れは佳織の方に向いている。

絶体絶命のピンチからの、まさかの逆転。

まるで少年漫画の王道のような展開に、アリーナに試合を見に来ていた生徒達は一気に湧き上がった。

 

バズーカをセシリアの方にロックする。

それを見て焦ったのか、彼女は慌ててミサイルで迎撃しようとした。

 

「あり得ませんわ……こんな事!絶対に有り得ませんわ!!」

「ほぅ…?虎の子であるビットを全機撃墜されても、まだ諦めないとは…。見た目とは裏腹に存外、闘志はあるようだ。だが!」

 

バズーカを収納し、再びマシンガンをコールする。それでミサイルを迎撃した。

今までとは比べ物にならない程の精密な射撃を受けて、ミサイルは佳織に命中する事なく爆砕。

 

アリーナの中央付近が先程のように黒煙に包まれる。

 

「ど…どこですの!?」

 

ハイパーセンサーは全ての方位を確保するが、流石に視界が物理的に遮断されては手も足も出ない。

何処から敵が来るか分からない恐怖に、無意識の内に力強くスターライトMk-Ⅲを握りしめる。

 

その時、ブルー・ティアーズのセンサーが熱反応を捕えた。

 

「そこですわ!!」

 

迷わずセシリアはその反応に向かって射撃。

だが、全く手応えが無かった。

 

「甘いな」

「はっ!?」

 

それは背後から聞こえてきた。

 

煙を突き抜けるかのようにして佳織がセシリアに接近。

勿論、彼女とて黙って棒立ちにはならない。

瞬時に振り返って攻撃に移ろうとするが、そのライフルの銃身は佳織の手に掴まれて動かなかった。

 

そして、いつの間にか装備していたヒート・ホークでスターライトMk-Ⅲを一刀両断。

そこから更に追撃と言わんばかりに、セシリアの腹部に向かってキックが炸裂。

 

「キャァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

そのままセシリアは地面へと落下、アリーナの壁に激突した。

 

「うぅぅ……」

 

完全に立場が逆転していた。

ブルー・ティアーズのSEは風前の灯。

それに比べ、佳織のラファール・リヴァイヴⅡのSEは完全回復してほぼ無傷。

どう見ても勝敗は決していた。

 

地面にゆっくりと降りたった佳織は、壁に背中を預けながら地面に座っているセシリアに近づいていく。

その間にヒート・ホークを仕舞い、またマシンガンを取り出す。

 

「これで王手(チェックメイト)だ、お嬢さん(フロイライン)

 

マシンガンの銃口がセシリアの眼前に向けられる。

それを見て彼女の顔が青褪める。

 

「さて……どうする?このまま潔く敗北を認めるか、それとも……」

 

佳織の指がトリガーにかけられる。

 

いかに自尊心が強いセシリアでも、武装の殆どを失い、エネルギーさえも底を突こうとしているこの状況で逆転が狙えると思うような楽観的な考えは持ち合わせていなかった。

 

ブルー・ティアーズには最後の武器として近接用のショートブレードである『インターセプター』があるが、それ一本で今の佳織には到底太刀打ち出来ない事は、セシリア自身がよく分かっている。

 

「………降参……しますわ……」

「それでいい。時には引く事も、また勇気だ」

 

マシンガンを下して収納、そのまま後ろを向く。

 

【試合終了!勝者……仲森佳織!!】

 

終了のアナウンスとブザーを聞いた後、佳織は静かにピットへと戻っていく。

 

「ま…待ってください!」

 

去り行く佳織の背中に向かってセシリアが立ち上がって叫ぶ。

佳織も反射的に彼女の方を振り向いた。

 

「ん?なにかな?」

「貴女は……貴女は何者なんですの!?」

「何者……とは?」

「今まで碌にISに搭乗した事も無いにも拘らず、あれ程の動きをして見せる……普通では到底考えられませんわ!!」

「そう言われてもな……」

 

佳織の顔に僅かに笑みがこぼれる。

 

「私は仲森佳織。それ以上でもそれ以下でもないよ」

「答えになってませんわ!」

 

また前を向いて歩きだす佳織。

セシリアに背を向けながら、その口を開いた。

 

「最後に一言だけ言わせてもらおう」

「なんですの……?」

「ISの性能の差が、戦力の決定的差ではない。それをよく肝に銘じておきたまえ」

「………!」

 

それだけを言い残して、佳織はピットに戻った。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 モニターを見ながら、皆が目を丸くしていた。

勿論、私も。

 

「あ…あれが本当に佳織なの…?」

「明らかに常人の動きじゃない…。いや、素人の動きじゃない…!」

 

おりむーとしののんも冷や汗を掻きながら呆然としている。

 

「これは流石に予想外だ…。何か切っ掛けがあれば化けるとは思っていたが、ここまでになるとは……」

 

織斑先生も驚きを隠せないみたい。

 

ピットの中が静かになっていると、いきなり山田先生が叫びだした。

 

「お…織斑先生!!」

「どうした?」

「その……仲森さんの戦闘時のスピードなんですけど……」

「スピードがどうした?」

 

唇が震えていて、絞り出すように山田先生が話し出した。

 

「こちらに提供されたラファールⅡのスペック上の速度の三倍を計測してるんです!!」

「何っ!?」

「「「さ…三倍!?」」」

 

凄いスピードだったけど、三倍って……。

 

「こんな事ってあり得るんでしょうか……」

「分からん…。これは一度、機体を診てみる必要があるな…」

 

かおりん……大丈夫かな……?

 

「にしても、なんか途中から佳織の口調が急に変わったよね…。あれってなんだろう?」

「さぁな…。いつもの佳織からは想像も出来ないほどに自信に満ちていたが…」

 

それは私も思っていた。

まるでかおりんが別人になったような……そんな感じがした。

 

「それに関しては、仲森自身から直接聞くしかないだろう」

「そうですね…」

 

でも…なんでだろう。

試合中のかおりんを思い出すと、胸が苦しくなる…。

キュッってなって、ドキドキして……。

 

「こんな気持ち……初めて……」

 

私……どうしちゃったのかな……?

 

「本音ちゃん?大丈夫?」

「顔が赤いぞ?熱でもあるのか?」

「な…なななななんでもないよ!?」

 

うぅ~……なんか恥ずかしいよ~!

 

(((あぁ……これは堕ちたな)))

 

皆が生暖かい目でこっちを見てるし……。

 

「あ、佳織が戻ってきた」

 

どうしよう……かおりんの顔…ちゃんと見られるかな…。

はぅ~……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう言っても大丈夫だと思うので言っちゃいます。

この赤ルートの正式名称は『赤い彗星ルート』と言います。
その意味は……分かりますよね?

そして、没案となった青ルートの正式名称は『蒼い死神ルート』です。
これを予想してた方もいらしたようですね。
このルートに行った場合はEXAMを巡っての超シリアスルートになります。
進むにつれて原作から離れていって、オリジナルキャラも追加。
機体は同じようにラファールを元にしたブルー・ディスティニーになります。
そして、対になる機体として打鉄を元にしたイフリート改も登場。
もう、なにがなにやら…って感じになってました。
一応、数話分はプロットもあったんです。
でも、赤のほうが評判がよさそうなので、このルートで確定します。
青の方も見てみたいとリクエストがあれば、ダイジェスト方式でやろうと思います。
リクエストがあれば……ですけど。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。