神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
果たして佳織は初陣を勝利で飾れるのでしょうか?
僅かな勇気を振り絞って、自分を奮い立たせる為に格好つけて発進した私を待ち受けていたのは、優雅にステージの中央付近で専用機を纏って宙に浮いているセシリアだった。
「随分と掛かりましたわね。このまま来ないかもしれないと思いましたわ」
「そう……」
いつもなら色々と言い返したいけど、生憎と今の私のはそんな余裕はない。
(あれが…『ブルー・ティアーズ』か……)
こうして肉眼で見ると、実に美しい機体だと思う。
青い装甲に特徴的な4枚のフィンアーマー。
成る程、原作で一夏が騎士のようだと言ったのも頷ける。
流石はイギリス製のISと言う訳か。
そして、彼女の手にはその体よりも長大な光学射撃武器『スターライトMk-Ⅲ』が握られている。
レーザーの発射速度は多分、私が映像越しに見た時以上だろう。
一瞬でも遅れれば、間違いなく直撃だ。
「あら、その機体は……」
彼女がこっちのISをまじまじと見だした。
「見た感じではラファール・リヴァイヴのようですが、少し形状が違いますわね…。もしかして、改造機ですの?」
「まぁ…ね」
正確には後継機だけど、ここで律儀に答える義理は無い。
「ま、貴女の機体がなんであっても関係ありませんわ。何故なら、勝利するのはこのセシリア・オルコットなのですから」
本当に強気だよなぁ…。
自信に裏打ちされた実力があるんだろうけど、彼女はどう見ても油断している。
『獅子は兎を駆るのにも全力を尽くす』って言葉を知らないんだろうか?
こっちにとっては都合がいいけど。
「そこで、こちらから一つ提案がありますわ」
「て…提案?」
あ~…この展開は……。
「貴女だって、折角の専用機を受領したその日にボロボロにされるのは本意ではないでしょう?ですから、ここで大人しく私にクラス代表の座を譲ると言うのであれば、手加減ぐらいはしてあげてもよくってよ?」
うわ~…超上から目線だ~。
セシリアの目が細くなった。
と同時に、ISから情報が齎される。
【敵機、射撃モードに移行。武装のセーフティーロックの解除を確認】
撃つ気満々ですやん!
それが分かった途端、私の顔に汗が流れる。
くそっ……!
やってやるって心に決めたのに…どうして手が震えるんだよ!
装甲の中に手があるから周囲に気が付かれてないけど、心臓はバクバクしてるし、手は汗でびっしょり。
しかも、さっきから喉までカラカラになってきた。
もう試合開始の鐘は鳴ってるのに、どこまでも余裕をぶっこいちゃって…!
「で?お返事は?」
「………私自身は別に、クラス代表になんて興味は無いし、なりたいとも思わない」
「でしたら「でも」……ん?」
「今日までずっと、一夏や箒が私なんかの為に一緒になって頑張ってくれた。ここでその提案を飲んだら、きっと二人の気持ちを侮辱することになる。だから……」
何を思ったのか、私は彼女の事を睨み付けてしまった。
「御託並べている暇があるなら、とっととかかって来いよ……金メッキ」
「貴女……!」
うわぁ~!!何を言ってんだ私はぁ~!?
どうしてこうも見栄を張りたがるかなぁ~!?
私ってホント馬鹿……。
「いいでしょう……そこまで言うなら……」
く…くるっ!
「リクエストにお応えして差し上げますわ!!」
銃口がこちらを向き、そこから青白い閃光が走る。
「……っ!」
分かっていても、怖いものは怖い。
恐怖のあまり両腕で体を庇うようにした結果、レーザーは右肩のシールドに当たり、なんとか直撃だけは避けられた。
「なっ…!この私の攻撃を防いだ…!?」
多分今のは『反射的』に行ったから防げたんだと思う。
もしも今の動きの何らかの『思考』があったなら、間違いなく防御は遅れていただろう。
「どうやら……貴女に対する認識を改めた方がいいみたいですわね……」
なんか変に認められた!?
「ぶ…武器は……」
こっちも武器を装備して、反撃に移らないと!
咄嗟に拡張領域内に収納されている武装を確認する。
すると、そこに表示されたのは……
【IS用マシンガン】
うん、形状は完全に『ザクマシンガン』ですね。
そんでもって……
【ヒート・ホーク】
いや、どこまでザクを意識してるんだよ!
私もザクは大好きだから気持ちは痛いほど理解出来るけどさ!
「今はこれだけか……!」
まだ、このラファールⅡは完全に私の専用機になった訳じゃない。
だから、現状ではこれだけしか使えないんだろう。
ちゃんと
相手は射撃戦に特化したIS。
本当ならば機動性を活かして攻撃を回避しつつ、懐に飛び込んでの近接戦闘に持ち込むのが定石なんだろうけど、私にはそんな技量も度胸も全く無い。
だから、ここでの選択肢は必然的に一つ。
「来て……!」
私はIS用マシンガンをコールして展開、装備する。
グリップをしっかりと握りしめて、サブグリップもちゃんと持つ。
「ふふ……私が最も得意な射撃戦で挑もうだなんて、随分と見縊られたものですわね。それとも、貴女も射撃がお得意なのかしら?」
「別にどうでもいいでしょ!」
「それもそうですわね。では……」
再び相手さんが攻撃態勢に移行する。
「存分に舞い踊りなさい!この私と我が愛機『ブルー・ティアーズ』の奏でる
「余計なお世話だ!!」
レーザー攻撃にマシンガンって……。
マジでどうするよ!?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
本格的に試合が始まってから、一体どれだけの時間が経過しただろう…。
まだ一分しか経っていないようにも思えるし、もう一日以上こうしているような気さえしてくる。
それ程までに、私は肉体よりも精神の方が疲弊していた。
「ほらほら!さっきの威勢はどこに行きましたの!?」
「く…くそっ…!」
私に向かって降り注がれるレーザーの雨。
今日までの勉強やイメージトレーニングが功を奏してか、なんとかまだ直撃はしていない。
でも、それだけ。
直撃はしていなくても、装甲に攻撃が掠っている。
それが徐々に蓄積していって、結果的には結構なダメージとなっていた。
拙い動きでセシリアの動きについて行こうとしているが、代表候補生である彼女と私とでは動きが全然違う。
相手の方は本当にダンスでも踊っているかのようだが、私の方はどうだ。
まるでよちよち歩きじゃないか。
「当たれ!!」
「中々にいい狙いですが、それでは当たってはあげられませんわね!」
こっちのマシンガンは全く当たる気配が無い。
幸いな事に、拡張領域には予備のマガジンが結構な量あったので、弾切れだけは心配ない。
攻撃が当たらなければ、全く意味無いけどね。
文字通り、私はマシンガンの弾を湯水のように使っている。
「そろそろ直撃……いきますわよ!」
向こうが本格的にスコープを覗いた!
狙い撃つ気だ!
「まずは左足!」
やばい!今の私の態勢じゃ回避出来ない!!
そう思った瞬間、彼女の宣言通りにレーザーが左足に直撃し、体全体に衝撃が走った。
「きゃぁっ!?」
「ふふふ……」
くそ……このままじゃ嬲り殺しにされる…!
でも、どうしたら……!
(残りSEは……53。武器は破損してないけど……)
全く命中する気配が無いから、これを喜んでいいのかどうか……。
「試合開始から約27分…想像以上に粘った方ですわね。これは素直に評価に値しますわ」
「そう……ですか……!」
あれからまだ30分も経ってないのか…!
時間の感覚が完全に麻痺している…。
「仲森さん。貴女のその闘志に敬意を表して、『これ』で止めを刺してあげますわ」
「これ……?」
まさか……『アレ』が遂に来るのか…!
今までずっと使用してこなかった、ブルー・ティアーズの代名詞とも言うべき武装が!
「お行きなさい!ティアーズ!!」
セシリアが右腕を横に翳すと、四基のビットが本体以上の機動性とスピードで追従してきた!
全方位から襲い来るレーザー。
一つのレーザーを避けようと右に動けば、次の瞬間には上からレーザーが肩に当たる。
まさにこれはレーザーの包囲網…いや、牢獄と言った方がいいかもしれない。
「ほらほら!上手く避けないとあっという間にSEが無くなってしまいますわよ?」
くっそっ~!
ビットに攻撃を全部任せて、自分は高みの見物をしやがって~!
でも、そんな大ピンチの中、頭の片隅に冷静な私がいた。
(やっぱり……ビットを動かしている最中は自分は動けないのか……)
ここら辺は原作と同じか。
(私の記憶が正しければ、あのビットは攻撃の際に毎回毎回セシリア自身から攻撃命令を送らなければ動かすことは出来ない。そして、その制御に神経を集中させているから、彼女はビットを動かしている最中に動くことが出来ない……だったよね?)
念には念と思い、ネットで何回か彼女の試合の映像を見て、その結論に至った。
けど、だからどうしたって感じだよね。
分かるのと実際にやるのとでは大違い。
頭でイメージ出来ても、本番で出来なければ意味を成さない。
そんな考え事をしている間も攻撃は止む気配が無い。
右腕、右足、そして背中。
着々とダメージが重なっていき、とうとうSEが危険領域に入った。
「これで
な…なんだ!?ビットじゃない物がこっちに来る!?
「あれは!」
ミサイル!?しかも二基!
(ヤバい!ビットを攻撃に晒されながらの状態じゃ、絶対に避けられない!)
形状は違っても、あれも立派なビット。
所謂、ファンネルミサイルと同等の武器。
あれなら他のビットを操りながらでも別の攻撃が出来る!
ミサイルが私の眼前に迫り、もう駄目だ!っと思った時だった。
(…………え?)
突然……『世界』が停止した。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
『よう……随分と苦戦してるじゃねぇか』
この声は……私を無理矢理転生させたくそったれな神野郎!!
『おいおい……仮にも俺は『神』なんだぜ?少しは敬意を払えよ』
敬意を払うような事を少しでもしたの?
『お前を転生させたじゃねぇか』
無理矢理だけどね……!
『別にいいじゃねぇか。そんな昔の事はよ。お前だってなんかかんだ言って、第二の人生をエンジョイしてるんだし』
……それに関しては否定しないけど。
で?一体何の用?私は今、と~っても忙しいんですけど!?
『忙しいって……負けそうになってるじゃん』
うっさい!仕方ないじゃん!相手の方が色んな意味で上手なんだから!!
『そいつは仕方ねぇよな。お前はどこまで行っても唯のド素人。方や相手は今まで研鑽を重ねてきた歴戦の代表候補生。最終的な実力はともかくとして、現状のお前とじゃ月とすっぽんだな』
分かってるよ!そんな事ぐらいは!態々口に出して言うな!もっと惨めになるわ!
『あははは!そう言うなって!折角の美少女顔が台無しだぜ?か・お・りちゃん♡』
お前がそうしたくせに……!
『って、こうして時を止めてる以上、表情なんて動きようがねぇか!だははは!』
声だけで姿が見えないのが本当に腹立つ…!
ISのパワーアシストがあれば、こいつの顔面に一発パンチをお見舞いする事ぐらいは出来そうなのに~!
『何気に物騒な事を考えてんじゃねぇよ。ま、こっちの業界じゃ美少女のパンチは立派なご褒美だけどな!寧ろ、俺からお願いしたいぐらいだぜ!』
この神はまさかの変態でした!
こんな奴に私は転生させられたのか……。
とっても複雑な気分です。
で?今更だけど、私に何の用なの?
まさか、単純に様子を見に来たとかじゃないでしょうね?
『そんな訳ねぇって。俺だってそこまで暇じゃねぇよ』
どうだか…。
『実はな、お前さんに『転生特典』を与えようと思ってな』
よりにもよって今かよ!?
『あの時はこっちも忙しくて慌ててたからな。かと言って、適当に変な特典を与えても意味ねぇし』
そりゃあ……ねぇ。
『だから、あれから俺も色々と考えて、一番面白そうな特典を思いついた』
面白そう!?
今こいつ『面白そう』って言った!?
『もう分かってると思うけど、お前が今纏っているそのISも特典の一つだ』
でしょうね!
それはなんとなく予想がついてたよ!
『俺さ、MSの中じゃザクが一番好きなんだよな~。お前もだろ?』
それには同感だけど、自分の好みで特典を選んだの!?
こう言うのって普通は転生者と色々と話し合ってから決めるもんじゃないの!?
『なにそのフィクション。超ウケるんですけど』
ギャルか!
って言うか、あれってフィクションだったの!?
『いやいや…二次小説と現実をごっちゃにしちゃダメでしょ。見た目はともかく、中身は立派な大人なんだし』
うわぁ~ん!変態に正論を言われたぁ~!(泣)
『美少女の泣き声……あざーす!!』
うっさい死ね!!
『そんな訳で、今からお前に転生時に渡せなかった特典を与えるから』
いきなり話を戻したやがった!
もうなんなのこいつ!?
『受け取りな!これが
いやいやいや!ちゃんとどんな特典なのか説明してよ!!
ちょっと!聞いてますか~!?
『俺がお前に接触するのは、これで最後だ。後はお前自身の手で切り開け!人類の未来を!!さらばだ!!』
なに散り際の早乙女博士のセリフを真似てるんだよ!
ふざけるのもいい加減にしろ!
『いいじゃんか!一度でいいから言ってみたかったんだから!でも、もう二度と会う事が無いのは本当だぞ。そんじゃな~』
え?ここで去るって事は時間が動き出して、そうなるとミサイルが当たるわけで……。
『そして時は動き出す』
DIO様かよ!?
そんなツッコみを言う暇も無く、セシリアの発射したミサイルが再び動き出して私の体に直撃し、大きな爆発が起こった。
「……認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちというものを」
キリがいいので、一旦ここで切ります。
神が佳織に与えた転生特典とはなんなのでしょうか?
って、流石に分かるか。