神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
既に組み合わせは決まってるんですけど。
ウォーターワールド内にある喫茶店に入り、店員さんに空いている席へと案内された私達。
丁度、狙っていた席だったので四人仲良く並んで座る事が出来た。
取り敢えず、適当にドリンクでも注文してしまいましょうか。
「私はオレンジジュースで」
「ならば、私はアイスコーヒーを頼もうか」
「んじゃ、あたしはアイスココアをお願い」
「では、私はアイスティーを」
うん。分かってはいたけど見事なまでに皆バラバラですね。
注文をメモして奥に消えた店員さんには同情しよう。
「にしても、こうして離れた場所から改めてみると、本当にどこもかしこも人ヒトひとで一杯よね」
「時期が時期なだけに……と言ってしまえばそれまでですけど、それでもこの人の量は異常ですわ……」
「まぁ、ある意味で日本の都会の原風景みたいなもんだし?」
「ふむ……誰もが考えることは一緒……ということか」
本来、プールって涼を取るために来る場所の筈なのに、これじゃあ全く寛げないでしょ。
冗談抜きで本末転倒な事態だと思う。
あ~…ほら。プールサイドで待機している監視員の人達も忙しそうに東奔西走してるし~。
「今日みたいな日だと、スタッフの人達も休む暇がないだろうね」
「これじゃ、客よりも先にスタッフの方がダウンしそうよね」
なんとも世知辛い世の中を女子高生の身で嘆いていると、店員さんが注文の品を持ってきてくれた。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか」
「はい」
「では、ごゆっくり」
この状況ではゆっくりしたくても出来ないだろうに……。
定型文だと分かっていても、ツッコまずにはいられない。
「あ~…生き返るわ~……」
「まだ何もしてませんけどね」
「でも、この陽気だと何もしなくても体力は奪われていくよね」
「確かにな。油断せずに水分と塩分の補給は怠らないように心掛けなくては」
フロンタルの言う通り。水分だけじゃなくて塩分もちゃんと取らないと、本気で熱射病で倒れかねない。
屋外では当然だけど、この季節は室内でも油断は禁物だ。
暫くこうしてのんびりする空気が流れ始めた時、各所に設置されたスピーカーからいきなり園内放送が聞こえてきた。
『これより! 本日のメインイベントである水上ペア障害物レースの受付を開始します!』
「「「「は?」」」」
水上ペア障害物レースとな……?
これって原作ではセシリアと鈴が参加したイベントだったような気が……。
『イベント開始は午後の一時から! 参加希望の方々は十二時までにフロントまで来て参加受付を済ませてください!』
これだけを聞けば、明らかに客引きの為のイベントだと思うが、スタッフ側はこれだけでは終わらせなかった。
『猶、優勝したペアには沖縄五泊六日の旅へとペアでご招待致します!!』
「「え?」」
あ。今、セシリアと鈴の耳がピクンってなった。
どう考えてもさっきの『沖縄旅行』って単語に反応しましたね。
「沖縄……」
「旅行……」
「「しかもペアで……」」
い…嫌な予感がする……。
「佳織」
「佳織さん」
「「行きましょう(わよ)!」」
「だと思ったよ……」
二人揃って私の肩を掴んで目を光らせてるんだもん。
原作一夏でもない限り、絶対に二人の考えている事が分かるよ……。
「ふむ……ペアで出場か……面白い……!」
ふぇ? ま……まさか……フロンタル……? 冗談だよね……?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「「なんでこうなった……」」
あの後、私は三人によって受付まで強制連行されて、そのままの流れで一緒にレースに参加する事に。
んで、その際にくじ引きでペア決めをしたんだけど、その結果が……。
「フッ……。私と佳織のペアならば優勝は間違いあるまいよ」
「ソーデスネー」
鈴とセシリアのペアと、私とフロンタルのペアに分かれた。
鈴達はともかく、私とフロンタルは瓜二つの顔なんだから、こうして並ぶと本当の双子みたいだ。
でも、不思議と嫌な感じはしないんだよね。
それどころか、なんだか落ち着きさえ感じる。
「それでは! 第一回ウォーターワールド水上ペア障害物レースの開催です!!」
司会のお姉さんがジャンプしながら叫ぶと、それだけで観客席から歓声があがる。
特に男連中が鼻の下をだらしなく伸ばしている。
あ~……男のあんな姿を見た時って、女はこんな気持ちになるんだな~……。
つーか、どうして参加選手の全員が女性なんだよ。
ここは男も参加しろよって言ったかったけど、どうも男の人達は大会の空気を読んで自ら参加を辞退したようだ。
なんかそれっぽい事を観客席で言ってるのが聞こえた。
「皆さん! 参加者の女性陣に今一度、惜しみの無い拍手を!!」
しなくていい。
うぅ……ISの試合である程度は慣れたとはいえ、流石に水着姿の状態でこんな大衆に晒されるのはかなり恥ずかしいよ~!
「心配は無用だ」
「フロンタル?」
「他でもない、私達二人が組むのだぞ? 結果は既に確定しているも同然だ」
「そう……だね。うん!」
「いい顔だ。では、準備運動でもしておこう」
屈伸に数回のスクワット……っと。
後は腕とかも伸ばしておかないとね。
「もうご存知かと思いますが、優勝賞品は常夏の楽園である沖縄旅行五泊六日の旅! 皆さん、気合を入れて頑張ってくださいね!」
勿論。やると決めたからには全力で行くよ。
私は病み上がりだけど、こんな時ぐらいは本気出してもいいよね?
私達の隣にいる同級生コンビは特に要注意だし。
だって、さっきから髪が逆立ちそうな勢いで気合入ってるもん。
「再度のルール確認です! レースの舞台となるのはこの50×50メートルの巨大プール! その中央に設置してある島へといち早く渡り、そこに設置してあるフラッグを取ったペアが優勝となります! コース自体はご覧の通りに円を描くような形で中央の島へと続いています。その道中に設置された数々のトラップは、基本的にペアでなければ突破不可能な仕組みとなっております! つまり、このレースでは足の速さや運動能力以上にペアとなった二人の相性と友情が試されるわけですね!」
友情ね~。
私とフロンタルはまだ出会って間もないけど、それでも彼女とは不思議な縁がある。
それに、絆の深さは一緒にいた時間の長さとは比例しない。
「どうして中々……。あの中央の島が最も厄介と見た」
「だね。あれだけ空中に浮いてるし」
正確には上からワイヤーで吊り下げられてるんだけど、どっちにしても難しいのには変わりがない。
ゴールこそが最大の難関とは、このレースを考えた人はいい性格をしてるよ……。
「厄介ではあるが、我々の前では児戯に等しい」
「少なくとも、私達は『普通』じゃないしね……」
鈴とセシリアはちゃんとした訓練を受けた代表候補生で、私は特典を授かった転生者。
フロンタルの正体は未だに不明だけど、アンジェロを従えて『大佐』なんて呼ばれている時点で大体の察しはつく。
「さぁ! いよいよレースの開始です!! 位置についてよ~い……」
私達を含めた全員がそれぞれに走り出す体勢になる。
そして、競技用のピストルの音が空高く鳴り響いた瞬間、私達は一斉に走り出した。
目指すは天空に浮かぶゴール。ただそれだけだ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
レース開始直後、いきなり前方を防いできたペアの股の下をスライディングのように潜り抜けてから全力ダッシュ。
私達と同様に別のペアに足を掛けられそうになったセシリア&鈴ペアも、それをジャンプして難無く突破。
実はこのレース、ルール上で他の選手の妨害が許されていたりする。
一体何処のレースゲームだっつー話ですよ。
バナナの皮や赤い亀の甲羅とか投げてこないだろうな?
「行くぞ佳織!!」
「うん!!」
「こっちもダッシュよ! セシリア!」
「分かってますわ!!」
まだレースも序盤だというのに、既に参加選手は二つのグループに分かれていた。
一つは只管に走って逃げ切る事を考えた真面目組と、相手の妨害をする事ばかりをしている過激組に。
勿論、私達と鈴達は真面目組だ。っていうか、私だけしかいないって言った方が正しいか。
後ろはもう完全に乱闘騒ぎになってるし。
「これはさっきのお返しよ!」
「とくと受け取りなさいな!」
「「キャァァァァァァァァッ!?」」
り…鈴とセシリア組がさっき足を掛けようとしてきたペアを蹴ってプールに落とした……。
何気にあのコンビって息ピッタリじゃね?
「では、君達にもご退場願おうか」
「え~い!」
「「うそぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」」
私達も、再び仕掛けてきたさっきの妨害コンビへ向かってのツインキック!
二人仲良く水の中へとドボンしてしまいましたとさ。
「ちょ…ちょっと待って! 鈴とセシリアも!」
「む? どうした?」
「佳織さん?」
「あ……佳織が言いたい事が分かったかも……」
生き残った他の参加者達の視線が全て私達に集中してる……。
間違いない……私達が最優先排除目標に設定されてしまった!?
「私達は参加者達の中で明らかに最年少だしな。それが最も活躍しているのが我慢ならないのだろう」
「冷静に言ってる場合か! 来るわよ!!」
鈴の叫びと同時に、全員が一斉に襲い掛かって来た!
その目は完全にバーサーカーになってる。
って言うか、約数名はもう完全に人語を失ってるし!?
「佳織! フロンタル! ここは一時休戦して協力して迎え撃つわよ!」
「妥当な案だ。佳織、いいな?」
「無論だ」
ありゃ。ちょっとだけ私も『赤い彗星モード』になってるや。
もうISを展開しなくてもなっちゃうのね……。
「私達四人に!」
「そのような妨害は!」
「通用しないと!」
「思って頂きますわ!」
次から次へと襲い掛かってくる暴走した選手たちを投げたり落としたりして、少しずつ数を減らしていく。
その際、しれっと彼女達に正気を取り戻させる為の工作も忘れない。
「「イヤァァアァアァアァァァァァッ!?」」
「フッ……。これで少しは頭が冷えただろう」
「少し……頭を冷やそうか……?」
私とフロンタルの手には、妨害してきた女性達の水着のブラが握られている。
攻撃を仕掛けながら水着をはぎ取り、彼女達の動きを完全に封じると共に正気を取り戻させた。
同じ事はセシリア達も考えていたようで、二人の手にも水着のブラが握られていた。
「おぉ~っと!! フル・フロンタル&仲森佳織ペアとセシリア・オルコット&凰鈴音ペア、最年少ながらも一騎当千の大活躍~!! あの二つのペアにより、殆どの選手が失格となってしまった~!!」
どんなもんだい! 伊達に死の淵から蘇ってないんだよ!
え? そんな事は何の自慢にもならないって?
「これで邪魔者は消えたわね……」
「そうだな。では、ここからは……」
「純粋な勝負といきましょうか!」
「負けないからね!」
ここで思った以上に時間を使ってしまったから、先頭グループとは差が開いてしまった。
けど、私達ならば今からでも十分に逆転は可能な筈!!
改めて、私達は目の前にある第一関門である一つ目の小島へと向かって行くのだった。
このネタでまさかの前後編。
次回も水着美少女達が舞い踊る?