神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
そう思うと、なんだか妙に感慨深いような、そうでないような……。
ま、令和になっても頑張り続けますけどね!
学園入り口付近にある門でセシリアと合流をした私達は、そのままの足で食堂まで向かって、既に昼食を食べていたシャルロット&ラウラの二人と一緒のテーブルについた。
「ってな訳で、セシリアんとこの本職のメイドさんにサインを書いてあげたでござる……」
「少し遅いと思っていたら、そんな事になっていたのか」
「ゴザルって……」
冗談でも言わないとやってられないのでごわすよ。
「本当に申し訳ないですわ……佳織さん」
「いや、あまり気しないでよ。皆じゃないけどさ、私も最近はこの手の事は割り切り始めてるし」
「佳織もすっかり有名人になってるわよね~」
「ファンクラブとかがあるだけでなく、ゲームにも登場するぐらいだしね」
「ゲームに登場っ!?」
「『赤い彗星』の異名は留まるところを知らないんだな……」
私もさ、この異名がどれだけ凄くて偉大なのかって事は物凄く理解しているけど、私自身はごく普通の家庭に生まれた、ごく普通の女子高生なんだよ?
転生者って部分を除いては……だけど。
「鈴達にはもう聞いたんだけどさ、セシリアやシャルロット、ラウラも似たような事ってした事はあるの?」
「そうですわね……。私の場合は、代表候補生と言うよりは、オルコット家当主として矢面に立つ事が多いですわね」
「成る程」
そういや、セシリアにはISとは別の部分で有名なところがあるんだった。
こうして一緒に学生をしているから、普段は全く意識してなかった。
「僕も似たようなものかな? ほら、自分で言うのもアレだけど、デュノア社ってかなり有名だから、そこの社長の一人娘ってだけで色んな雑誌の取材を受けたりするのに、おまけに代表候補生でもあるからね。つい昨日までは気疲れするような仕事ばかりだったよ……」
社長令嬢も大変なんだな……。
でも、原作みたいに険悪であるよりかは相当にマシなのかな。
「私はあくまで軍人だから、そう言った事は少ないが……」
「何かあるの?」
「うむ。時折、市民を招いてのイベントなどが開催される事があるのだが、その時によく記念写真を要求される事があるな。何が嬉しいのかサッパリ理解出来んが」
「あ~……」
幾ら凛々しくしていても、ラウラは可愛いからね。
男女問わず、可愛い子と一緒に写真を撮りたいって気持ちはあるもんだ。
多分、本人が知らないだけで彼女のファンクラブとかもあるんじゃないの?
「ねぇ……前々から聞こうとは思ってたんだけどさ」
「何?」
「私……ってよりは、『赤い彗星』の名ってどれぐらい広まってるの?」
「それは……」
「世界中よ」
「ふぇ?」
いきなり後ろから声が聞こえたと思ったら、いつの間にか楯無さんがいつものように扇子を持った格好で立っていた。
「楯無さん」
「久し振りね、佳織ちゃん。その様子から見ると、怪我の治り具合はいいみたいね」
「はい。まだ大きく体を動かす運動とかは無理ですけど、軽いランニング程度なら問題無いって病院の先生からも言われました。夏休みが終わる直前には間違いなく全快するって太鼓判を押されました」
「それはよかったわ」
けど、それって言いかえれば私の怪我が全治一か月だったって事なんだよね。
まさか、自分がそんな重傷を負うとは思わなかったよ。
「かいちょ~。せかいじゅ~ってどーゆーこと?」
「そのまんまの意味よ、本音ちゃん。『赤い彗星』の名は今や、世界中のIS関係者に知れ渡っている。特にフランスやイギリス、中国やドイツ。私の所属しているロシアにも知れ渡ってるし。噂じゃイタリアは本気で佳織ちゃんを日本から引き抜こうと画策してるって聞いてるわ」
「それって、佳織をイタリアの代表候補生にするって事ですか?」
「多分ね。まだ噂程度の情報なんだけど」
ふひゃ~……。
あ、思わず変な声が出ちゃった。
「特に凄いのがアメリカね」
「それって……やっぱり例の事件と関係が?」
「えぇ……」
周囲をキョロキョロと見渡した後、楯無さんは近くから椅子を引っ張ってきて私達の傍に座り、顔を近づけて小さな声で話し出した。
「暴走事故を起こしてしまった自国のISを最悪の状況になる前に食い止めてくれた最大の功労者って事で、米国は佳織ちゃんの事を非常に高く評価してるの。今はまだ各国との関係があるから沈黙を保ってるけど、何らかの形でその均衡が少しでも崩れたりしたら……」
「手段を選ばずに佳織を自分達の元に置こうとする……だろう?」
「御明察。流石ね、ラウラちゃん」
………あれ? もしかしなくても私の立場ってかなり危うい場所にあったり?
そんな事を言われると、急に胃が痛くなってくるよ……!
「ISに触れてまだ一年も経過していない女の子が、あれだけの戦績を残してるんだもの。そりゃ、上の連中からすれば喉から手が出る程に欲しい金の卵に見えるでしょうね。下手したら、篠ノ之博士の時以上に世界各国が佳織ちゃんを得る為の競争をし出す可能性もあるわ」
「姉さんの時以上……だと……!?」
束さんの時も相当に凄かったって聞いてるけどね。
なんせ、ISを生み出した張本人であり、ISコアを製作可能な唯一無二の人間なんだから。
ISが世界の中心になりつつある現状では、あの人を得た国こそがトップに立つと言っても過言じゃないだろうし。
「佳織……」
「大丈夫だよ。私は皆の前からいきなり姿を消したりしないって」
「本当だな……」
「約束だからね。ゆびきりげんまんだからね」
「破ったら~針千本なんだからね~」
「それだけは勘弁だなぁ~……」
聞いてるだけでも痛そうだし。
「……なんだか私のせいで変な空気になっちゃったわね。ごめんなさい」
「気にしないでくださいまし。遅かれ早かれ、この問題にはいずれぶつかる日が来るのですから」
「セシリアの言う通りです。その時に対する心構えが出来たと思えば、決して無意味な話じゃなかったと思います」
「そうだな。私は佳織がそう簡単に他国などに靡くとは思っていないがな」
「私も。変な言い方かもしれないけどさ、どこかに所属するってのは……なんか『赤い彗星』っぽくない」
「一夏……」
そうかもしれないね。
本当の赤い彗星は軍に所属していたけど、時代が移り変わるごとに彼の立場は大きく変化していった。
それに、彼は自分の事を『宇宙を駆ける騎士』と言っていた。
宇宙空間を自由自在に飛翔する彼が、何かに縛られるのはおかしい。
実際には色んなしがらみに縛られてたけど。
「佳織には最後まで『自由』でいて欲しいかな」
「そうだね。私もそうありたいと思うよ」
自由……か。
私自身がそう思っても、この『世界』がどこまでそれを許してくれるかな……。
「変な話をしちゃったお詫びに、私がデザートを御馳走するわ。何がいい?」
「黒蜜団子とか食べたいです!」
「佳織ちゃん……意外と渋いチョイスするのね……」
そう? 和菓子は日本人の魂じゃない?
おはぎにみたらし団子、女の子は甘いお菓子は大好物なんじゃないの?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
昼食を食べた後、皆は揃って寮の自室に帰る事にした。
夏真っ盛りの陽気は女の子のデリケートなお肌には大敵だからね。
日焼け止めも塗らずに外出するような猛者はここにはいなかった。
と言っても、ラウラだけは例外的に気にしてなかったけど。
でも、シャルロットが必死に説得して、彼女はなんとか納得してくれた。
んで、私は寮に戻る前に少しトイレに寄って手を洗っている最中なんだけど……。
「思ったよりも手がベタついちゃったわね。ちゃんと手を洗っておかないと」
鈴も一緒に手を洗っていますのです。
楯無さんの奢ってくれた食後のデザート。
鈴は私と同じ黒蜜団子を選んで食べた。
別にそれ自体はいいんだけどさ、微塵も迷った素振りが無かったよね。
「ふ~……綺麗になった」
手を振って水分を落として、後はハンカチで拭き拭きと。
前世ではこんな事、全くしてこなかったな~。
トイレで手を洗ったら、すぐに自分の服で拭いてたし。
心が体に惹かれて、完全な意味で女になりつつあるって事なのだろうか。
「ところで佳織」
「ん~?」
「今度の土曜日って何か予定ってある?」
「土曜日? そ~だな~……」
皆と違って、今の私ってマジで暇人まっしぐら状態だし。
仮に予定があるとすれば、病院に行くぐらいかな?
「土曜は病院の日でも無いし、大丈夫だと思うよ」
「そ……そう」
ん? 何をそんなに安心してるんだ?
「実は……さ。あたし、こんな物を持ってるんだけど……」
照れながら鈴がポケットから取り出したのは、二枚のチケットだった。
「ウォーターワールド?」
「そ。今月出来たばかりの場所で、前売り券は今月分が全て完売らしいわ」
「それだけ期待されてるって事か。ん? それじゃあ、このチケットは?」
「あたしが買ったの。勿論、自腹で」
「スゲ~……」
「これってかなりのレア物なのよ? なんせ、当日券に至っては開場二時間前に並ばないと買う事すら出来ないぐらいだし」
「テーマパークって、どこもかしこも似たようなもんなんだね……」
どこぞの夢の国だってそうだし、夏休みに突入しているこの時期は、更に倍率が上がっている事だろう。
それをゲットした鈴には純粋に驚嘆しかない。
「よければさ、一緒に行かない?」
「けど、私は怪我人だよ? そりゃ、前よりかは相当によくなってるけど」
「ダメ……かしら?」
そんな目で見ないでくださいな。
まるで私が悪いみたいじゃないか。
「そこまで動く事は出来ないけど、それでもよかったら一緒に行くよ。ずっと家に引きこもりっぱなしってのもアレだと思ってたし」
「ホントっ!? やった!!」
そこまで喜ばれると、なんかこっちも照れくさいね……。
でも、鈴と二人きりで遊びに行くとか、かなり久し振りかも。
中学の時は一夏や弾がいつも一緒だったし。
(臨海学校でいつの間にか本音が大きくリードしてたし、このまま黙って敗北するアタシじゃないって事を、ここで教えてあげるわ! この夏で佳織と一気に近づいて、そしてそのまま……♡)
「うへへへ……」
り……鈴……ちょっと笑い声が怖いよ?
その後、待ち合わせ場所を決めてから話は終わった。
けど、私達は知らなかった。
この時、物陰から密かに私達の話を聞いていた人物がいた事に。
「抜け駆けは許しませんわよ……鈴さん……!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「なに? ウォーターワールド?」
「はい! 偶には息抜きでもしたらいかがと思いまして!」
「ふむ……」
格納庫で自身のISの調整をしていたフロンタルは、アンジェロ直属の『フロンタル親衛隊』に所属している女性から一枚のチケットを渡された。
「本当は私が行こうと思ったんですけど、その予定の日にアンジェロ隊長から任務を言い渡されてしまって……」
「そうか。だが、諸君が任務に励んでいる時に私だけ寛ぐというのもな……」
「何を仰います! 大佐は常日頃から私達以上に頑張っていらっしゃるじゃないですか! 時には心と体のリフレッシュでもしないと身が持ちませんよ!」
「そ……そうか」
凄い剣幕で迫ってくる女性隊員に、思わず後ずさりをしてしまうフロンタル。
だが、驚いている一方で、彼女の行っている事も一理あると思っていた。
「だが……そうだな。お前達に休息を促しておきながら、肝心な私が休まないのは論外か」
「そうです! 休息もまた立派な任務ですよ!」
「確かにな。わかった。このチケットは有難く頂戴しよう。感謝する」
「はい!」
女性隊員から貰ったチケットをポケットに仕舞いながら、フロンタルはある事を失念していた事に気が付いた。
(しまった……。私は水着なんて持ってないぞ……)
だがしかし、行くと決めた以上は引き下がれない。
仕方がないので、明日にでも水着を買いに行こうと思ったフロンタルであった。
こうして、またもや妙なフラグが立ったのであった。
夏休み中は、割と頻繁に佳織達とフロンタルやアンジェロを絡ませていこうと思います。
中途半端に仲良くしていれば、後々が面白くなりますから。