神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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今回の話を練り上げるのに時間が掛かり過ぎちゃいました……。

もうほんと、色々と考えに考えてコレとか、自分が情けないですよマジで。







第64話 なんで登校日ってあるんだろうね

 夏休みも前半戦とも言うべき七月が終了し、もう八月に突入した。

 んでもって、IS学園も日本全国の学校の例に漏れず、八月に登校日が存在している。

 ここって治外法権的な場所じゃなかったっけ……?

 地味に変な所は日本の法律に縛られてるんだよね。

 やっぱ、土地自体が日本に存在してるから?

 

 そして、一夏と箒の提案で、私は登校日の一日前に学園に戻る事にした。

 一夏が千冬さんに聞いたらしいけど、学生の大半が帰省をしている以上、念には念を入れて少し早めに学園に行くのはもう暗黙の了解になっているらしい。

 まぁ、遅刻をするよりはずっとマシだしね。

 学生寮があるが故に出来る事だ。

 

 で、一日早く学園に来た私達が何をやっているのかと言うと……。

 

「へぇ~。佳織の家でそんな事があったんだ~。無理をしてでも早めに戻ってきて、二人と一緒に行けばよかったかな~」

「迂闊だった……」

 

 日本に残ったメンバーである、私と一夏と箒と本音ちゃんと簪、そこにいち早く中国から戻ってきた鈴を含めた面々で真昼間から女子会的な事をやってます。

 会場は鈴の部屋。まだルームメイトが戻ってきてないから別に構わないって言ってた。

 多分、本当は寂しかったんじゃないのかな?

 鈴って意外とそんなところがあるし。

 

「にしても、まさかアタシ達以外にも佳織に幼馴染がいたとはね~」

「私自身も聞かされた時は驚いたよ。最初は冗談かと思ったけど、証拠写真もバッチリ残ってたし……」

「でも、かおりんは覚えてなかったんだよね?」

「まぁね。お互いに会ってたのは三歳ぐらいの頃みたいだし。覚えてる方が凄いでしょ」

「確かに」

 

 これに関してはお互い様だったから、変な事にはならなかったけどね。

 向こうの方が私よりも人間が圧倒的に出来ているってのもあるけど。

 

「因みに、どんな子だった?」

「う~ん……そうだな~……」

「あまり言葉で言い表すのは得意じゃないが……敢えて言うのならば……」

「「「ならば?」」」

「「お嬢様?」」

「あ、納得」

 

 ミネバさんを一言で表す最強の言葉だわ。

 つーか、もうそれ以外に思いつかない。

 

「物腰が非常に柔らかで、とても丁寧な口調だった」

「しかも、全身から『お嬢様オーラ』……とでも言えばいいのか? それっぽいのが放出されているのを感じた」

「お嬢様……」

「ねぇ~……」

 

 簪と本音ちゃん、揃って楯無さんの事を想像してるな?

 あの人も『お嬢様』ではあるだろうし。

 

「「はぁ~……」」

「ど……どうしたの? でっかい溜息なんて吐いて」

「ううん……なんでもない」

「にゃはは……」

 

 真面目な部分もあるし、普通に尊敬も出来るけど……あの無駄にテンション高い所だけは私としてもどうにかしてほしいと思う。

 アレさえなければ、マジで完璧だと思うんだけどなぁ~……。

 

「そのミネバって子ともう一人、歳下の子も一緒に来てたんだっけ? その子はどうだったの?」

「ハマーンちゃんは、今時の女の子って感じだった」

「だな。ただ少し、佳織の事を過剰にリスペクトしている感は否めなかったが」

「リスペクト? つまり、佳織のファンってこと?」

「あの熱愛っぷりはファンの一言で終わらせていいものか……」

「もうさ、あれか完全に信仰の領域になってるよね。帰り際に普通にサインを強請ってたし」

「佳織さんのサイン……今も大切に額縁に飾ってます」

「そ……そう」

 

 別に捨ててくれてもよかったのよ?

 あれは完全に私の黒歴史ランキングでぶっちぎりの一位だったんだから。

 

「佳織ももうサインとか書くようになったのね~」

「なんでしみじみしてるんだ」

「いやだって、代表候補生とかになれば、普通にサインの練習とかさせられるし」

「そうなの?」

「かんちゃんも前にしてたね~」

「もう殆どアイドル扱いになってるからね……」

 

 いやまぁ……鈴も簪も可愛いのは認めるけど、マジでサインを書かせるの?

 でも、プロスポーツ選手とかも自分達のサインを持ってるし、凄いのになればブルーインパルスのパイロットの人達でさえ独自のファンとサインを持ってたっけ。

 それなら、国家代表や代表候補生の人達がサインを書いていても不思議じゃないのか?

 

「いつの日か、雑誌やニュースでインタビューされたりして」

「やめてよ……なんかフラグ臭がするから……」

 

 うぅ……私は平凡な人生を全うしたいだけなのに……。

 それもこれも全部、あのアホ神のせいだぁ~!!

 ララァ……お願いだから、私の事を導いて……。

 主に平穏な日常を送る為に。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 もうすぐ昼の12時に差し掛かろうとしている頃、一台のロールスロイスがIS学園の正門前に駐車した。

 その後部座席から降り立ったのは、故国での仕事を終えて学園に戻ってきたセシリアだった。

 彼女もまた、他の代表候補生達の例に漏れず、非常に多忙な毎日を過ごしていたが、一刻も早く日本に戻りたい一心で頑張り、その結果としてこうしてなんとか登校日の前日に戻ってこれた。

 実家にいる両親は寂しがっていたが、同時に彼女の頑張りを見て感心もしていた。

 その頑張りの理由が想い人に早く会いたいが故だとは思ってないだろうが。

 

「噂に聞いた通り、日本の夏の日差しは強いですわね……」

「大丈夫ですか、お嬢様?」

「えぇ。この程度で根を上げていたら、佳織さんに笑われますわ」

 

 セシリアの傍で心配そうに見守っているのは、オルコット家専属の筆頭メイドであるチェルシー・ブランケット。

 18歳の若さで、オルコット家に仕えるメイド達を束ねる立場にいると同時に、幼い頃からセシリアと共にいた幼馴染でもある。

 イギリスにいた頃は、常日頃から彼女に助けられてきた。

 

「佳織さん……とは、噂に名高い仲森佳織様の事ですね?」

「勿論ですわ。誰よりも気高く美しく、戦場においてもその優美さが損なわれる事は全く無い。その上、何があっても決して諦めない不屈の精神も兼ね備えている……本当に立派なお方……」

「大絶賛ですね。私もネットなどである程度の噂などは耳にしていますが……」

 

 本人は全く知らない事だが、『赤い彗星』の異名は既に世界規模で拡散していて、IS関係者で彼女の事を知らない人間は一人として存在していない。

 佳織が知ったら間違いなくストレスで胃が痛くなる案件だろう。

 

「可能であれば、私も一目でいいからお会いしたいですが……」

「佳織さんが学園に戻って来ていれば会えるかもしれないけど、そうとは限らないし……」

 

 なんて話をしていたら、ナイスタイミングで昼食を食べに行こうとしている佳織達御一行様が近くを通りがかった。

 噂をすればなんとやら、とはよく言ったものだ。

 

「そういや、佳織の怪我ってどうなってるの? まだ所々に包帯を巻いてるけど」

「少し痛むかな~。今週もまた病院に行かないといけないし」

「かおりん……」

「佳織も大変だね」

「実際問題、最初はどんな感じだったんだ? 相当に酷い怪我をしていたが……」

「私的には全身に激痛が走って、どこがどう痛いとかよく分からなかったんだよ。でも、後でちゃんとしたお医者さんに診て貰ったら、右の二の腕と肋骨に罅が入ってたって」

「きゃ~! やめて~! 聞いてるだけで痛いから~!」

「それって~……」

 

 本音が実に気まずそうな顔をしている。

 それもそうだろう。なんせ、そんな大怪我をした佳織を押し倒してから、そのまま一緒に大人の階段を駆け上がったのだから。

 

「あれ? あそこにいるのって……」

「セシリアじゃない。あの子も帰って来てたんだ」

 

 向こうもセシリア達に気が付いて、彼女達の方に歩いてきた。

 

「こちらに来ましたね」

「えっ!? ちょ……ちょっとどうしましょうっ!? 服と髪は乱れていませんわよね? 再会の挨拶はどのようにしたら……」

「髪も服も全く問題はございません。それと、いつも通りに挨拶をなさって大丈夫だと思います」

「で……でもぉ~……」

 

 いつもは強気なセシリアが、珍しくヘタれている。

 だが、時間とは残酷なもので、彼女がどうしようか考えている内に佳織達が目の前までやって来ていた。

 

「久し振り。そして、お疲れ様」

「お……お久し振りですわ。佳織さん……」

(あ~……もう! 頭の中がグルグルして、何を話せばいいか分かりませんわ~!)

 

 佳織の他にも鈴や一夏達がいるにも拘らず、セシリアの目線は一点しか見つめていない。

 恋は盲目とはよく言うが、そのものズバリな事態に陥っていた。

 

「なによ。久し振りなのはあたし達もでしょ」

「え? あ……あぁ……鈴さん達も一緒でしたのね……お久し振りですわ」

「うわ……この扱いの差、見た?」

「いつもの事じゃん」

 

 一夏の冷静な一言。

 ある意味で諦めの境地にいるのかもしれない。

 

「この方が、あの『赤い彗星』の異名を持つ仲森佳織様……」

 

 チェルシーもまた、佳織が来た途端に彼女に対して熱烈な視線を送っていた。

 それに気が付いた佳織が、ふとセシリアに問いかける。

 

「あの……さっきから私の事を見てる、そのメイドさんは一体……」

「え? あぁ……そういえば、まだ紹介がまだでしたわね。チェルシー」

「はい、お嬢様」

「「「「お嬢様っ!?」」」」

 

 佳織と一夏と箒と鈴の一般的感覚を持つ四人が驚く中、それに全く怯まずにチェルシーが丁寧な挨拶をする。

 

「初めまして、仲森佳織様と御学友の皆様方。私はオルコット家にお仕えしているメイドのチェルシー・ブランケットと申します」

「「「「ど……どうも……」」」」

 

 ぎこちなく挨拶を返すと、眼にも止まらぬ速さで四人が声を潜めながら少し離れた場所でひそひそ話をし始める。

 

「ちょ……ちょっと! あれってマジもんのメイドさんっ!? 秋葉原とかに大量に存在しているコスプレしてる連中じゃなくて、本職の!」

「っぽいね……。前に『少しでもいいから女っぽさを勉強しろ!』って弾に無理矢理メイド喫茶に連れていかされた時に見たメイドさんとは服装も雰囲気も言葉遣いも全く違うし……」

「そんな事をしていたのか……。しかし、あの物腰はタダ者じゃないぞ。私から見ても全く隙が見当たらない。あれが真の従者なのか……」

「スカートも全く短くないし、頭の先から爪先まで『メイドさんオーラ』が溢れてるよ……。なんか、雰囲気に圧倒されそう……」

 

 四人はそれぞれに初めて見る本物のメイドに対する感想を述べていた。

 一応言っておくが、本音も立派な『本職のメイド』ではある。

 それっぽい雰囲気を醸し出していない上に、本人にその自覚が全く無いから誰も気が付かないが。

 

「ね……ねぇ……アレ……お願いしてみない?」

「え……? 怒られないかな?」

「その時はその時だ。ダメ元で言ってみればいいじゃないか」

「そ……そうだね……」

 

 覚悟が決まったのか、四人は元の場所まで戻ってきて、チェルシーにあるお願い事をした。

 

「あ……あの……ちょっといいですか?」

「なんでございますか?」

「一回だけでいいから『お帰りなさいませ、ご主人様』って言ってくれませんか!」

「それぐらいでしたら、お安い御用です」

「そ…そうですよね~。やっぱりダメ……ってっ!?」

 

 驚いている佳織を余所に、チェルシーは彼女の目の前に立ってスカートの端を抓んでから優雅に挨拶をした。

 

「お帰りなさいませ、佳織お嬢様」

「「「「………………」」」」

 

 まさかのアレンジが加わった事で、完全にフリーズしてしまった。

 何をしたいのか全く分からないセシリアと簪と本音は、完全に目が点になる。

 

「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」

「本場本職の『お帰りなさいませ』キタ―――――――――――!!!」

「やば……マジで感動してるかも……」

「う……うむ……流石はプロだな……見事な挨拶だった……」

「名前で呼ばれちゃった……」

 

 もう完全にミーハーなファンになりつつある四人。

 他の人間達からすれば、彼女達こそがそう言われるべき立場なのだが。

 

「あ…ありがとうございました。なんか素で感動しました……」

「これぐらいなら喜んで致します」

「何かお礼が出来ればいいんだけどな……」

「それでしたら」

 

 ふと思い出したように、どこからともなくチェルシーがサイン色紙とペンを取り出して佳織に差し出した。

 

「是非とも、佳織様のサインを頂けませんでしょうか?」

「わ……私のサインっ!?」

「はい。今や世界的な有名人となっている『赤い彗星』のサインを欲しいとずっと渇望しておりました。この機を逃したら一生直筆のサインを入手出来ないと思いましたので。不躾ながら、こうしてお願いした次第でございます」

「そ……そこまで言われたらしない訳にはいかないよね……」

 

 丁寧語で捲し立てられた佳織が拒絶なんて出来ようも無く、呆気なく押されてサインをする事に。

 

「こんなんでいいの……かな?」

「思ったよりも手慣れてるのね」

「……練習したから」

「あ、やっぱり?」

「アイドルのサインとかを参考にして何回も練習したよ。やってる最中、物凄く空しくなったけど」

「気持ちは分かるわ」

 

 一番最初の頃と比べたらかなり上達している。

 だが、その成長を感じた瞬間、物悲しくもなる佳織であった。

 

「あの、よろしければ『チェルシーさんへ』的な事を書いてくれると嬉しいのですが……」

「チェルシー。あまり我儘は……」

「それぐらいなら大丈夫だよ。英語でいいですか?」

「いえ、日本語で結構でございます。オルコット家に仕える者として、ちゃんと勉強はしているので」

「本当に凄いんですね……っと。出来た」

 

 書き終えたサインをチェルシーに渡すと、感動のあまり色紙を両腕で抱きしめた。

 

「あぁ……本当に感激です。お嬢様について来て正解でした」

「まさかチェルシー……この為だけに日本まで同行すると言い出したんじゃ……」

「何の事でしょうか? 私にはサッパリです」

 

 誤魔化した。この主人にして、このメイドである瞬間だった。

 

「では、お嬢様。私はお部屋にお荷物を運んでおきますので、お嬢様はどうかこのまま皆様方とご一緒に昼食でも楽しんでください」

「え……えぇ……お願いするわね」

「お任せください」

 

 ルンルン気分でセシリアの荷物を持ち上げて、そのまま寮の方に向かって行った。

 スキップに鼻歌交じりで荷物運びをするメイドの姿は、色んな意味で悪目立ちしていた。

 

「……個性的なメイドさんだね」

「チェルシーがあんなにもはしゃいでいる姿……初めて見ましたわ……」

 

 主人であるセシリアですら見た事の無かったメイドの一面を垣間見た佳織達は、なんとも言えない気持ちになったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 




久し振りでここまで書ければ上等かと。

次回は後々のイベントの布石を出しつつ、今回出てこなかったシャルロットとラウラなどを出そうと思っています。

色々と長く考えた結果、ストックだけは確保できたので、次回以降は少しペースが速くなるかもしれません。

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