神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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今回は作中オリジナル設定で『あの機体』のご登場です。

個人的には大好きな機体だったりします。






第60話 夏直前と紫の薔薇

 夏休み直前となる本日。

 地獄の期末試験が終了し、結果が帰ってきた私達は教室にて一喜一憂していた。

 

「よっし! 思ってるよりもいい点数だったわ!」

「私も、ちゃんと勉強をした甲斐がありましたわ」

「僕はそれなりかな。平均点越えはしてるけどね」

 

 普段からちゃんと真面目に勉強を怠らない鈴とセシリアとシャルは、きちんと点数が取れたみたい。

 

「意外と余裕だった。でも、少しケアレスミスがあったかな」

 

 簪は言わずもがな。

 確実に学年トップクラスの点数を取っているに違いない。

 問題は、この三人だった。

 

「矢張り……英語の点数が足を引っ張ってしまったか……!」

「このような無様な点数を晒すとは……不覚……!」

「超ギリギリだったけど、平均点を超える事は出来たよ~……」

 

 古文が苦手なラウラ。英語が苦手な箒。これと言った苦手科目は無いけど、最近は訓練のし過ぎで少し勉強不足だった一夏。

 赤点は流石に取ってないけど、今回は少し点数が伸び悩んだみたい。

 

「私は割といい点数だったよ~。かおりんは?」

「今回は勉強する時間が沢山取れたから、高校最初のテストとしてはいい滑りだしな点数が取れたと思う」

 

 これが怪我の功名ってやつか。

 皮肉なもんだよ。大怪我をした結果として、明らかに中学の時よりもいい点数が取れちゃったんだから。

 これをこれから維持していくのは大変だな~。

 

「追試が無いだけマシだと思いたいが、これは夏の間に弱点を克服しておくべきか……?」

「箒がまるで受験生みたいなことを言ってるし」

 

 まだ私達は一年生だよ?

 苦手な科目を克服するって意気込みは素晴らしいけど、あまり根を詰めない方がいいんじゃない?

 

「はぁ~……。今日で一学期も終わりなんだよね……」

「いきなりどうしたんだ? シャルロット」

「いやね。暫くの間、皆に会えないと思うと……ね」

 

 シャルロットが黄昏ながら窓の方を見る。

 代表候補生の皆は、夏休みだからと言って遊んでばかりはいられないのか。

 なんせ、国旗を背負ってるんだもんね。仕方ないか。

 

「お前達も大変なんだな」

「まぁね。多分、あたしだけじゃないと思うけど、夏休みには現状報告と称して一時帰国をしろって言われてるのよね」

「鈴もか。私も司令官に一度戻って色々と報告をしろと言われている」

「あまり長居をせずに、すぐ戻って来るつもりではありますけど……」

「向こうに戻っても、ゆっくりと休む事は難しいだろうなぁ~……」

 

 代表候補生としての仕事って奴か。

 異名だけ独り歩きしている私とは大違いだな。

 

「あれ? でも簪は日本の代表候補生だから……」

「ブイ。私はどこにも行かない。いつでも皆や佳織さんに会える」

 

 言われてみれば確かに。

 忙しい事には違いないかもだけど、日本だからどこか遠くに行く必要は無いのか。

 それはちょっといい情報を聞いた。

 

「本音ちゃんは夏休みは何か予定があるの?」

「ん~っと……一応はお姉ちゃんと実家に顔を出さなきゃだけど~、それが終わったら暇かな~」

「そっか。なら、本音ちゃんと一緒に遊べそうだね」

「うん!」

 

 この夏休み、基本的に私って暇なのよね。

 だからこそ、遊び相手が欲しくて仕方がないのです。

 

「わ……私も暇してるぞ佳織!」

「私も! 別に何かする予定とか無いし!」

 

 そういや、一夏と箒もコッチ側の人間だったね。

 二人共専用機持ちだから、すっかり忘れてた。

 

「少し向こうでの予定を繰り上げようかしら……」

「逆にやる気が出てきましたわ……!」

「急いで仕事を済ませて戻ってこなくては!」

「ぼ……僕は別に……。でも、ちょっとぐらいなら早めに戻っても……」

 

 いや。別に無理して仕事を急がなくてもいいんだよ?

 

「でも、代表候補生の皆でそこまで忙しそうにするのなら、国家代表の楯無さんはもっと大変なんだろうね」

「夏のお姉ちゃんに休みは無い」

「………マジで?」

「うん。虚さんがマネージャーみたいに予定を管理して、最も忙しい時は秒単位で動いてる」

 

 もう殆ど芸能人扱いじゃん!

 やべ~……『赤い彗星』関連で私にも何か言ってきたりとかしないよね……?

 もう夏休みは怪我の療養に費やすって決めてるんだから!

 お仕事なんて真っ平御免なんだからね!

 

「楯無さん……ちゃんと二学期を無事に迎えられるの?」

「別にずっと忙しいって訳じゃないから。一段落すればのんびり出来るよ」

「それもそっか。じゃないと過労で倒れちゃうしね」

「高校生が過労で倒れるって……」

 

 それはそれで哀れ過ぎる。

 因みに、この『過労』って言葉は日本にだけ存在しているみたい。

 海外の人は仕事と休みをちゃんと両立してるから、過労とは無縁なんだって。

 だから、過労で死ぬ日本人が信じられないそうだよ。

 

 その後、千冬さんと山田先生がやってきて、一学期最後のSHRが始まった。

 千冬さんらしい短くも厳格な注意事項を言ってから、高校生活最初の一学期は幕を閉じた。

 この瞬間から、夏休みの始まりだ~!

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 某研究施設。

 白衣を着たアンジェロがハンガーに固定されている一体のISと向き合って、なにやら作業を行っていた。

 

「これで……」

 

 相当に集中しているのか、周りにいる他の作業員の事なんて全く目に入ってないようだ。

 そこに、彼女が最も信望する人物がやって来た。

 

「順調のようだな。アンジェロ」

「た……大佐! ようこそいらっしゃいました!」

 

 他の人間には目もくれないのに、フロンタルが来た時だけはすぐに分かる。

 ここまで来ると、もう呆れを通り越して感心すら覚える。

 

「お前のギラ・ズールを改修した全身装甲型(フル・スキンタイプ)の専用機。見事な出来だ」

「お褒めに預かり光栄の極みです」

 

 作業を一時的に中断し、背筋を伸ばしながらフロンタルと向き合う。

 二人はお互いに幼馴染と言っても差し支えない仲なのだが、アンジェロの方が一方的にフロンタルを持ち上げた結果、このような関係性になってしまった。

 

「YAIS-132ローゼン・ズール。両手のマニュピレーターを意図的に排除し、その代わりに切断能力に特化した三つ又のクローと、三連装のビーム砲。更には疑似誘導兵器であるインコムを内蔵した複合兵装となっています」

「あのバックパックはなんだ?」

「あそこには対ビット兵器用兵装である『サイコ・ジャマー』が搭載されております」

「説明を頼む」

「了解しました。サイコ・ジャマーはビット兵器を封じるビット兵器であり、射出後に八面体の特殊フィールドを形成、その中に封印したビット兵器に類する全ての武装を無力化するものとなっております」

「成る程。ビット兵器搭載型のISは、その殆どがビット兵器を運用する事を前提とした設計思想となっている。その最大の特徴であり切り札を封じる事が出来るということか」

「その通りです」

「素晴らしい。見事の一言に尽きる」

「ありがとうございます」

 

 フロンタルの腹心であり、一流のパイロットでもあり、同時に束に比肩する科学者であるアンジェロ。

 彼女がいなかったら、フロンタルの『計画』すら生まれなかっただろう。

 

「で、例の二機のISはどうなっている?」

「はい。私が入手した情報によりますと、シナンジュ・スタインとバルギル、共に順調な仕上がりとなっている模様です」

「そうか。それはなによりだ」

 

 吉報を聞いて、フロンタルに笑みがこぼれる。

 まるで、新しい玩具を買って貰った子供のように。

 

「ですが、本当によろしいのですか?」

「何がだ?」

「大佐のみならず、仲森佳織にも施しをなさるとは……。何故、敵に塩を送るような事を考えるのです?」

 

 アンジェロが抱く当然の疑問。

 それを聞いて、フロンタルはローゼン・ズールを見上げながら話し出した。

 

「私と佳織は互いに対になる存在であり、高め合う仲なのだ」

「高め合う……?」

「そうだ。私が『力』を手にしたならば、彼女も『力』を手にするのは当然の事なのだ。それに……」

 

 徐に仮面を取り、アンジェロの目を真っ直ぐに見据えた。

 

「佳織がつまらないISに乗って私が勝っても、面白くないだろう?」

「大佐……」

 

 フロンタルは本気だ。本気で佳織の事を倒す気でいる。

 しかも、普通に倒すのではない。お互いに対等の条件で戦い、その上で勝利を収めようとしている。

 その時こそ、自分が佳織よりも上なのだと証明出来ると思っているかのように。

 

「佳織は福音との戦いの際に負った怪我がまだ治っていないようだ。だから、この夏は佳織達にはゆっくりと休んでいて貰おう」

「それが奴等にとって最後の休息となるのですね」

「そうなるな。その間に私達は、この世界を少しでもサッパリさせるとしよう」

「と、申しますと?」

「このローゼン・ズールの試運転も兼ねて、前々から目障りだった女性権利団体の本部を潰す。徹底的にな」

「大佐はどうなさるので?」

「今回は私も参加する。私のラファールはどうなっている?」

「はっ! 既に整備は完了しており、いつでも出撃出来ます!」

「そうか。それを聞いて安心した」

 

 ここで一息入れる意味を込めて、フロンタルがアンジェロにドリンクを渡す。

 それをまるで聖杯のように慎重に受け取り感動する。

 流石のフロンタルも、それを見て少し引いた。

 

「そうだ。大佐、実はご相談したい事が」

「なんだ?」

「実は、Mの機体を仕上げるのに、どうしてもビット兵器のデータが足りません。ローゼン・ズールのはあくまで支援用のビットなので、そこまで詳しいデータは必要ありませんでしたが、やはり攻撃特化型ビットとなると、きちんとした稼働データが無いと……」

「お前の腕を持ってしても難しいのか?」

「別に普通の機体ならば問題は無いのですが、Mの専用機ともなると話は違ってきます。我等の中で一番のビット適性を持つ奴の能力を存分に発揮させるには、M自身にビットを動かして貰い、そこから得られたデータを用いてOSを製作した方が確実なのです」

「そうなのか……」

 

 顎に手を当てて少し考え込む。

 数秒で何かを思い付いたのか、いきなり端末で情報を確認しだした。

 

「どうなされました?」

「いやな。以前に入手した情報によると、イギリスにはまだ使用者が決まっていないティアーズ型の二号機が存在しているのを思い出してな」

「それがどうかなされ……まさか?」

「そのまさかだ。この二号機を強奪しよう。タイミングは例の計画と同じでいいだろう。良い陽動にもなる」

「二ヵ国を同時に襲撃……となると、かなりの準備が必要となりますね。人員も補充しなくては……」

「その辺りはアンジェロに任せる。私は計画の若干の練り直しを行うとしよう」

「了解しました」

 

 再び仮面を付けて、フロンタルは一気にドリンクを飲み干して容器を潰す。

 

「今年の夏の終わり。そこから全てが始まる。その時まで一時の平穏を楽しむといい。もう一人の私よ」

 

 光があるから闇があり、闇があるから光がある。

 人知れず、世界は確実に動き出そうとしていた。

 その時、少女達は何を見るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一応言っておくと、フロンタルはある意味でもう一人の主人公です。

だから、これから先は佳織の代わりにフロンタルが活躍するシーンがあるかもしれません。

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