神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
本格的な活躍はかなり先でしょうけど。
「そんな訳で、昨日の休みは倉持技研に行ってました」
次の日の朝の教室。
いつものメンバーが揃って、私が昨日学園にいなかった理由を問いただしてきた。
ある程度は予想してたけど、こうも一斉に来られると、かなりの迫力がある。
「昨日は本当に驚いたよ~。部屋に戻るとかおりんがいなくなってるんだから~」
「ホントにゴメン。なんでか千冬さんに『皆に見つからないように』って言われてたから」
今思い返しても、マジで謎のミッションだったよね。
スネークさんも?マークを浮かべるよ。
「おのれ千冬さん……!」
「なんて巧妙な罠を……!」
「油断出来ないね……流石は姉さん……!」
ここで皆がジョジョ顔になって戦慄する理由が不明です。
私の目には『ゴゴゴ……』って効果音が見えるような気がする。
「ところで、佳織さんの受領した代替機とはどんな機体なんですの?」
「確かに気になるわね。直に見たんでしょ?」
「まぁ……ね」
恥ずかしくて服の中に隠している、紐に繋がった百式の待機形態であるサングラスを出す事に。
無くさないようにと、首から下げられるように私なりに工夫してみました。
「サングラス?」
「これが佳織の新しい機体の待機形態なの?」
「うん。機体名は『百式』。白式の姉妹機らしいよ」
「白式の姉妹機っ!?」
いきなり一夏がテンション高くなったし。
自分の機体の系列機なのが珍しいのだろうか。
「ど……どんな機体なの?」
「簡単に言えば、金色の白式だよ。機体の形状は白式と全く同じで、パッと見で違うのは色だけ」
「パッと見ではとは?」
「中身や武装は全く違うの。詳しくは試運転の時をお楽しみに」
ここで全部話してら面白みに欠けるからね。
楽しみは後に取っておくがいいのでありんす。
「見た目が一緒って事は、私と佳織でお揃いの機体を……ウフフ……♡」
うん。一夏がさっきから変な事になってますね。
怪しい笑みが普通に気味悪いです。
「実際に動かすのはいつになるのだ?」
「多分、夏休み明けになると思う。ほら、まだ私って包帯取れてないじゃない? だから、暫くの間は体を休ませることに専念しろって色んな人に言われちった」
「それは当たり前。佳織さんは無理をし過ぎるきらいがあるから。少しは自分を労わる事をしてほしい」
「そう……だね。うん。これからは気を付けるよ」
福音の一件で、嫌と言うほどに思い知ったからね。
今後もあんな事があれば、皆も私も悲しい気持ちになる。
だからこそ、私は楯無さんに特訓をお願いしたんだけど。
「その怪我はまだ痛むの?」
「少しね。日常生活には支障はないけど、運動とかは無理っぽい。体が鈍るから、本当は少しでも動きたいんだけど」
私はいつから、こんな体育会系の思想に染まってしまったのだろうか。
ISに本格的に関わったせいか?
「何かあれば、いつでも言いなさいよ。そうじゃなくても、アンタはいっつも自分で抱え込みがちなんだから」
「あはは……その時は遠慮無く相談するよ。ありがと、鈴」
「そ……そーゆーストレートなお礼は反則よ……」
なんで?
「あ、予鈴が鳴った」
「んじゃ、私達は自分達のクラスに戻るわね」
「また後で」
「ん。またね」
鈴と簪がそれぞれに戻って行ってから、私達は自分達の席に着いた。
タイミングよく、その直後に千冬さんと山田先生が教室へと入ってきた。
少しでも遅れたら、即座にあの出席簿が振り下ろされるからね~。
だが、朝のSHRで初めての期末試験の話題になると、教室のあちこちで阿鼻叫喚。
普段からキチンと勉強をしていれば、こんな事にならずに済むのにね。
その証拠に、セシリアとシャルロットはいつも通りにしてるでしょ?
一夏は少し緊張してるっぽいけど、私の知ってる一夏はちゃんと予習と復習をしてるから、そこまで問題無いだろう。
なんだかんだいって、本番には強いからね。実戦だけじゃなくてテストも。
本音ちゃんに至っては、余裕の表情を全く崩していない。
何気に凄く頭はいいからね。
でも、問題はあの二人。
「ど……どうするどうする……! 英語が全く自信が無い……!」
「い……今からでも間に合うのだろうか……。まだ古文で分からない問題が多々あるのだが……」
そう。箒とラウラの二人。
箒は英語が、ラウラは古文が苦手科目となっている。
授業でも、当てられた時は目も当てられない程に動揺しまくるし。
別に何もしていない訳じゃなくて、普段から苦手を克服しようと、私達に問題の解き方などを聞きに来てるんだけど、それでもそう簡単にはいかないみたい。
(放課後にでも、また勉強を見てあげようか……)
どうせ、今の私はやる事が無くて暇な身だし。それぐらいの余裕はありまくるのですよ。
自分の勉強は夜中にすればいいだけだしね。
一学期最後の期末テストに向けて、教室中が色んな意味で騒ぎ出す。
千冬さんの鶴の一声ですぐに静かになるんだけど。
さぁて。久し振りに学生らしい生活に勤しみますか。
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デュノア社 大会議室
そこには、欧州連合の統合防衛計画イグニッション・プランに参加している各国の重鎮が一堂に会していた。
そこには、シャルロットの父親であるアルベール・デュノアも出席している。
「例のラファールの再設計機。かなり好評のようですな」
「えぇ。各国に送った試作機が非常にいい働きをしましたからね。お蔭で、最高のデータが取れた。これでまた『あの二機』の完成が近づいた」
アルベールが傍にある機器を操作すると、大会議室に映し出されていた映像が切り替わる。
そこには、全身装甲型の二体のISの設計図が表示されている。
「イグニッション・プランの集大成となるIS。ようやくここまで来ましたな」
「えぇ。本当に長かった……」
それぞれに感慨深く設計図を見渡す。
それだけ、彼等の苦労が窺えた。
「火力重視のビット兵器搭載機である、形式番号AIS-123X『バルギル』。そして、超高機動型である形式番号ISN-06S『シナンジュ・スタイン』」
「対照的な二体ではあるが、その機体性能は既存のISを完全に凌駕している。少なくとも、完成した暁にはどちらも第三世代機の枠には留まらないだろう」
「では、例の第四世代機に該当すると?」
「性能だけで言えばな」
手元にあるパンフレットをパラパラと捲るドイツの代表。
そこには、見慣れない単語が書かれていた。
「この『サイコフレーム』とか言う構造材……。これが無ければ、バルギルとシナンジュ・スタインは形にすらならなかったでしょうな」
「組み込まれたチップ単体では実効的な効果は見出せないが、コアとなる高出力のメイン・プロセッサを配置する事により、非常に高効率かつ高密度な脳波コントロールシステムとして機能する。これをISに採用した場合、マシンの構造自体にビット兵器のような脳波コントロールの機能を持たせることになる為、従来のような専用スペースを確保する必要性が無くなり、同時に単純なプロセッサ搭載量が増加する事から、今までのようなビット兵器よりも受信許容量や速度が大幅に向上し、更には機器自体の安定性も高まる結果となった……でしたな」
「本当に、よくもまぁ……このような画期的な代物を開発出来たもんです」
「全くですな。通常なら考えも及ばないような技術。素晴らしいの一言に尽きますが……」
「アルベール殿。このサイコフレームは貴殿によって齎された物ですが、これをどうやって開発したのですか?」
「そう……ですね。その事についても話そうと思っていました」
アルベールの顔が強張っていく。
それを見て、要人達も姿勢を正した。
「サイコフレームを生み出したのはデュノア社ではありません。この技術は、ある人物から齎された物なのです」
「その『ある人物』とは、前々から言っていた『善意の協力者』とやらですか?」
「その通りです。つい先程、ここに御到着されたようなので、ご紹介しましょう」
大会議室の扉が開き、そこから一人の女性が入室してきた。
紫の髪に眼鏡を掛け、緑のスーツの上に白衣を纏っている。
「ま……まさか彼女はっ!?」
「その通り。ISの生みの親であり、世界的な天才科学者でもある『篠ノ之束』博士です!」
まさか、束本人が自分達に協力していたとは予想もしていなかった面々は、思わず立ち上がって驚いた。
「初めまして。各国の皆々様。私が篠ノ之束です。以後、お見知りおきを」
「「「「「………………」」」」」
束が他者を見下すのは誰もが知っていたが、その彼女が物腰丁寧な口調で話したので、どう反応していいのか分からなくなっている。
「無理もありません。私も最初はそうでしたから」
「で……では、貴方は前から篠ノ之博士と交流していたと……?」
「はい。何を隠そう、ラファールの再設計を提案したのも、この篠ノ之博士なのです」
「なんとっ!? それは本当かっ!?」
「はい。アルベール社長の仰る通りです」
ラファールⅡの基本構造が生まれたのは、今から一年ほど前。
そんな前から世界的有名人と知り合っていたとは。
誰もが驚愕を隠せない。
そんな彼らを見ながら、彼女は心の中でほくそ笑んだ。
(ククク……上手く潜入出来た。今までずっと
このセリフから分かるだろうが、彼女は束本人ではない。
では誰なのか? それはすぐに分かる事になる。
(大佐。このアンジェロ・ザウパー。必ずや任務を全うしてみせます。どうか、御安心ください)
束……もとい、アンジェロは映し出されている設計図に目をやる。
目が細くなり、怪しく笑みを浮かべた。
(この機体が貴様等の手に渡る事は決してない。全ては大佐の掌の上……)
少ししてから全員の心が落ち着いたところで、別の話題に切り替わった。
「バルギル・シナンジュ共に性能は申し分ないが、問題は誰を操縦者にするかだな」
「矢張り、我等の国の国家代表から選出するのが妥当か?」
「それがいいでしょうな。各国の代表を集めるのには苦労するでしょうが、どうにかして機会を見つけて……」
話が纏まりかけたところで、アンジェロが手を上げて遮った。
「少しいいでしょうか」
「なにかな? 篠ノ之博士」
「シナンジュはともかく、バルギルの方は既に私の方でパイロットを見つけてあります」
「ほぅ……それは?」
「『赤い彗星』……と言えば、御理解頂けるかと」
その単語を言った途端、またまた全員の顔色が変わった。
「赤い彗星と言えば、IS学園に在学中である、あの……」
「白狼『シン・マツナガ』の娘か……」
「噂では、入学してまだ少ししか経過していないにも関わらず、華々しい結果を出しているとか」
「例の『福音』の暴走を食い止めたのも彼女だそうです」
「ぐ……軍用機を試作量産機で食い止めたのかっ!?」
「信じられん……が……」
「あの『白狼』の娘ならば納得も出来る……」
「彼と同じ時代を生きた者達は、いずれもが一騎当千の強さを誇っていた」
「
「間違いなく、彼女も彼等と並ぶ勇士になるでしょうな」
「ふむ……若い才能に最新鋭機を任せてみるのも一興か」
話が別方向に纏まり始めた。
アンジェロの計画通り。
「彼女は、我が社のラファールⅡの試作一号機のパイロットも務めていました。試作機のパイロット達の中でも最高の稼働率を記録しています」
「一応、聞いておくが……何%だ?」
「89.9%です」
「はぁっ!?」
「たった数ヶ月で90%近くの数値を叩きだしているだとっ!?」
「まさか……彼女はブリュンヒルデ以上の逸材なのか……!?」
常識的には絶対に有り得ない数値。
それを実際に出した少女の存在を知り、またもや顎が外れそうに驚く面々。
「これは……決まりですな」
「えぇ。なにより、篠ノ之博士の推薦となれば無下には出来んでしょう」
「では、そのように」
こうして、本人の知らない所で重大な事が決定している事に、佳織自身は全く知らない。
全てはフロンタルとアンジェロの計画の通りに。
とてつもない先のフラグが立ちました。
チートVSチートの決戦になるかも?