神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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ずっと考えていた、佳織の第二の機体が登場します。

勿論、『彼』に関係する機体なのは間違いありません。

赤も好きだけど金も好き。
時々、地球にでっかい物を落としたがる、ある意味で出世魚。






第58話 黄金の『姉』

 夏休み前の最後の日曜日。

 私は千冬さんの車に乗って、倉持技研と言う場所に向かっていた。

 目的は勿論、束さんが言っていた、私のリヴァイヴの修理が完了するまでに使用する予定の代替機を受け取りに行く為だ。

 

 出かける際に、なんでか千冬さんに言われて、誰にも見つからないようにしてきたけど、なんでだろう?

 一応、本音ちゃんが少し部屋を出た隙に来たけど、大丈夫かな?

 置手紙は残してきたけど。

 

「こうして千冬さんが運転する車に乗るのって、初めてかもしれませんね」

「そうだったか?」

「はい。私達が中学に上がった辺りから千冬さん、忙しそうにしていたから」

「そうだな……。確かに、あの頃は私も忙しくて、あまりお前達と話す機会が無かった」

 

 忙しいと同時に、なんだか空気もピリピリしていたから、よく一夏は私の家に遊びに来ていた。

 きっと、一人で家にいるのが耐えられなかったんだろう。

 原作ならばいざ知らず、ここでの一夏は女の子。

 たった一人で家にいれば、否が応でも不安が心を支配していったに違いない。

 

「それにしても、白式の姉って、どんな機体なんでしょうね?」

「さぁな。幾つかの予想は立てられるが、実際にこの目で見てみない事には、何とも言えんな」

 

 高機動近接戦仕様の白式の姉妹機。

 普通に考えれば、白式と同等の機動力を持つ機体を想定するが、私の予想はちょっと違った。

 

(『白式の姉』って言葉を聞いた時から、どうも嫌な予感が拭えなかったんだよね……)

 

 私は知っている。

 自分の特典に深く関係し、尚且つ『白式』という名称に非常に酷似した名を持つ、とある機体の存在を。

 

(まさかとは思うけど……まさかね……)

 

 幾らなんでも、そこまで安直な事にはならないだろうと信じたい。

 でも、ここまで『ザクⅡ』に『ズゴック』に『ゲルググ』と来たからなぁ~……。

 ちょっとだけ『ジオング』も考えてしまったけど、流石に足が無いISは有り得ないだろう。

 パーフェクト・ジオングの可能性も無きにしに非ずだけどさ。

 

(いや……流石にパーフェクト・ジオングはチートだし、そもそもデカすぎる。常識的じゃないね)

 

 頭の中をグルグルとさせながら考えていると、目の前に研究所らしき施設が見えてきた。

 

「見えたぞ。あれが倉持技研だ」

「あれが……」

 

 生まれてこの方、研究施設なんて場所には無縁の人生を送ってきたから、少し緊張気味な私です。

 

「私が現役だった頃は、よくここにも足を運んだもんだ」

「そうなんですか?」

「あぁ。ここの主任研究員とも知り合いなのさ」

 

 流石は元日本代表。

 顔の広さも半端じゃないですな。

 

 過去に車でもここに来た事があるのか、迷う事無く空いた駐車スペースに車を停めた。

 

「では行くぞ。こっちだ」

 

 千冬さん。入り口に案内してくれるのは普通に嬉しいんですけど、だからといって手を繋ぐ必要性ってあるんですかね?

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 研究所のロビーに入ると、千冬さんは真っ直ぐに受付に向かっていった。

 手を引かれながら、私は辺りをキョロキョロと見渡す。

 

「ほぇ~……」

 

 かなり綺麗な研究所なんだな~。

 床なんか、ピカピカに磨かれた大理石で出来てるし。

 油断すれば、反射でスカートの中が見えそうになる。

 

「織斑千冬だ。既に話は来ていると思うのだが……」

「あ、はい! 窺っております! 只今お呼び致しますので、少々お待ちください!」

 

 完全に恐縮している受付嬢の人が、慌てながら内線で誰かを呼んでいる。

 

「はい……はい、そうです。この間仰られていた……はい。分かりました」

 

 受話器を置くと、作り笑いで応えてくれた。

 

「今すぐに来るとのことですので、もう少しだけお待ちください」

「分かった」

 

 出来れば具体的な時間を言ってほしかったけど、別にいいか。

 今日は日曜日。時間なら沢山あるから。

 

 数分後。ロビーの奥から一人の女性がやって来た。

 白衣にスク水と、初手からインパクト絶大な格好をした女の人。

 

「やーやー。お待たせ」

「遅いぞ。呼ばれたのならば、とっとと来い」

「久し振りに会うのに酷いな~」

「黙れ」

「はいはい」

 

 ん? この人とはお知り合い?

 もしかして、さっき車の中で言ってた知り合いの主任研究員って、この人の事?

 

「その子が、束の言ってた子?」

「そうだ」

「ふ~ん……成る程成る程……」

「な……なんですか?」

 

 こっちを舐め回すようにして、頭の先から爪先まで視線を巡らせられた。

 

「初めまして。私がこの倉持技研で主任研究員をしている『篝火ヒカルノ』だ」

「え……えっと……。仲森佳織です。初めまして」

「うんうん。中々にいい子じゃないか」

「当たり前だ」

 

 鼻息荒く自慢げに胸を張ってますね。

 お蔭で少しお胸が揺れましたよ。

 

「この子があの『白狼』の実娘であり、『赤い彗星』の異名を持つ女の子か~」

「それ……やっぱり、ここにも知れ渡ってるんですね……」

「当然。今や、ISに関わる者で『赤い彗星』の名を知らない者はモグリと言われているよ」

「そこまで………」

 

 うぅ……本気で恐縮してしまう。

 あの人と出会って、私は私だけの『赤い彗星』になると決意はしたけど、それでもまだ異名の大きさに潰れてしまいそうになる。

 それ程までに『赤い彗星』の名は絶大な効果を持つから。

 

「君の事はある程度は束から聞かされているし、データも貰ってる」

「束さんともお知り合いなんですか?」

「千冬繋がりでね。ちょっとした親友兼ライバル的な感じさ」

 

 同じ研究者同士だからか?

 束さんにも同業者で知り合いがいた事には純粋に驚きだけど。

 

「さて。ここでずっと立ち話ってのもアレだし、君の新たな相棒が待つ場所へとご案内しよう」

 

 私達二人は、ヒカルノさんの先導に従って、研究所の奥へと入っていくことに。

 なんだか探検のようでワクワクするです。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「ここが兵器開発部。んでもって、ここが機体設計部」

 

 研究所内を歩きながら、ヒカルノさんが色んな部署の簡単な説明をしてくれる。

 これから先、必要になるかは分からないけど、覚えておいて損は無いと思う。

 知識は大切な財産だからね。

 

「この先が格納庫。君の新たな相棒がいる場所だ」

 

 重厚な鉛色の巨大な扉の前に立つと、ヒカルノさんがカードキーを取り出して、カードリーダーに通す。

 その後に、なにやら素早い動きで番号を入力していった。

 

「お待たせ。ささ、ご案な~い♪」

 

 ゆっくりと開かれた格納庫の中には、見える範囲だけでも多数の機器やIS用の武装、ここで開発されたという国産の第二世代量産機である『打鉄』が何体かハンガーに固定してあった。

 そのうちの幾つかはバラした状態で置いてあり、何かの作業中であると推測できる。

 

「他の研究員はいないのか?」

「今日は日曜日だぜ? 私みたいに自ら休日出勤を望んだり、シフトの関係で仕方なく出てきた連中以外は、皆が週一の休みを満喫中さ」

「……相変わらずの仕事バカだな」

「私にとっては最高の褒め言葉だ。ありがとう」

「皮肉も通用せんのか……」

 

 仕事大好き人間か~。

 自分の仕事に生きがいを見いだせるのは、同じ女性として尊敬できる。

 これがキャリアウーマンってやつか。

 

「目的地はこっちだよ~」

 

 鉄と油の匂いが充満する格納庫の中を歩いていくと、奥の方に布が掛けられた一台のISが置いてあった。

 

「これがそうか?」

「その通り。千冬の妹ちゃんの機体の姉であり、佳織ちゃんの新しい愛機……」

 

 ヒカルノさんが布を思い切り引っ張ると、そこから眩く光り輝くISが姿を現す。

 

「百式さ!」

 

 ……………………やっぱりかよ…………(泣)

 

「機体の形状は一夏の白式と全く同じか……」

 

 千冬さんの言う通り、百式と呼ばれたこの機体は、見た目だけは白式と全てが同じ。

 違う所があるとすれば、その機体色だった。

 

「しかし……なんだ、このド派手すぎる金色は……」

 

 そう。このIS版の百式。

 簡単に言ってしまえば、黄金に光り輝く白式だった。

 トリコロールカラーである白式とは違い、白い部分は全て金色に、青い部分はダークブルーに染まっている。

 うん。見事な百式カラーですな。

 トドメに非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)であるウィング・スラスターには見事な達筆で『百』と書かれている。

 

「この色になったのは仕方がないんだよ。装甲に対ビームコーティング効果を持つ合成樹脂のエマルジョンの一種で、少し前に新たに発見された特殊な材料をベースに調合した皮膜材を施した結果、なんでか機体色が金色に染まってしまったんだよ」

「……私達にも分かりやすく説明しろ」

「つまり、通常とは違うビームコーティング処理を行った結果、自然と金色になったって事」

「意図して染めた訳じゃないんだな?」

「当たり前じゃん。何が悲しくて、こんなブルジョア全開なド派手な色にしないといけないのさ」

「それもそうだがな……」

 

 装甲に反射して、こっちの顔が見えてますよ~。

 見ているだけで目が痛くなる程の黄金ですな。

 

「機体自体は、白式の予備パーツを組み立てて完成してるの」

「ならば、性能は白式と同等なのか?」

「うんにゃ。それだと面白くないじゃん。だから、こっちは白式の時の反省点を活かして、射撃戦重視の汎用機にしてある」

「同じなのは機体の形状だけか」

「イエス。武装面もスタンダードにしてあるよ」

「見せられるのか?」

「うん。そこの壁に掛けてあるよ」

 

 ヒカルノさんの言う通り、百式の横の壁に幾つかの武装が固定されていた。

 

「ビーム・ライフルに、通常弾の他にカートリッジの交換で粘着榴弾や拡散榴弾も発射可能なクレイ・バズーカ」

「あの金色の剣は……雪片か?」

「正解。私が開発した百式専用の近接戦用の武装『雪片・改』だよ」

「白式の雪片弐型とは何が違うんだ?」

「汎用性かな。これも刀剣を展開させることは可能だけど、雪片弐型よりも出力が低い代わりに、長期戦にも耐えられるようにしてある。当たり前だけど、展開中はずっとエネルギーを消費し続けるなんて事は無いから安心して」

 

 これだけは百式の武装ってよりは、クロスボーンX-3のムラマサ・ブラスターみたいだ。

 ビームを撃つ事は出来ないみたいだけど。

 

「でも、これだけじゃどうにも攻撃力不足だと思わない?」

「そうだな。武装自体は可もなく不可もなくだが、どうも決定打に欠けるとは思う」

「でしょ~! だから、ちゃんと百式にも立派な必殺兵器を用意しておきました!

 

 なんだろう……猛烈に嫌な予感が……。

 ヒカルノさんが近くの機器を操作すると、鋼鉄製の床が開いて、そこから何かがせり上がってくる。

 

「こ……これは……!」

「百式最強のビーム射撃兵器! その名も『メガ・バズーカ・ランチャー』だ!」

 

 もう言わなくても分かると思う。

 例のアレですよ、アレ。

 標準が定まらない、武器そのものに推進器が搭載された巨大ビーム兵器。

 場合によっては、他の機体をエネルギーパック代わりにしないといけないアレですよ。

 

「幾らなんでもデカすぎだ! こんな代物、普通に考えて実戦で使えるわけないだろうが!」

「何言ってんの! 兵器に浪漫を求めるのは世の常だろうさ!」

「お前の変態染みた考えを佳織にまで押し付けるな!!」

「え~? 束にも一度見せたけど、すっごく興奮してたよ?」

「それはあいつが変態だからだ!」

「自分の親友にも容赦ないね……」

 

 でも、否定出来ないのも、また事実なのよね。

 

「大体、こんなデカい物が拡張領域に入るわけが……」

「入るよ? 他の武器の要領がそこまで大きくないし、拡張領域の広さも白式よりも増やしてるし」

「………もう何も言わん」

 

 千冬さんが根負けした……!?

 悪いとは思うけど、貴重な瞬間を目撃してしまった……。

 

「そんじゃ、コアを渡してくれる? 今から設置するから」

「は……はい」

 

 IS学園の購買部で買った巾着に入れてあるリヴァイヴのコアを取り出して、ヒカルノさんに渡すと、彼女はコアを作業アームに固定してから百式の外部装甲を展開し、コアをはめ込む場所に入れてから装甲を閉じた。

 

「よし。これで準備完了。佳織ちゃん、早速で悪いけど、百式に搭乗してくれるかな?」

「今からですか?」

「そうだよ」

 

 コアを入れたら終わりじゃないの?

 

「おいヒカルノ……まさかとは思うが、佳織に試運転をさせる気じゃあるまいな?」

「まさか。研究の鬼である私も、病み上がりの女の子を酷使させるような鬼畜じゃないよ~」

「ならば何故だ」

「本人が搭乗した状態の方が、色々と細かい調整がしやすいのさ」

「束から提供されたデータがあるだろう」

「そりゃあるよ? でも、それはあくまでも前準備の段階。コアに蓄積された、これまでの経験を利用して調整出来なくはないけど、少しでも早く終わるに越したことはないでしょ?」

「それはそうだが……」

「だべ? そうと決まれば、佳織ちゃんは早くISスーツになって。つーか持ってる? 無いなら研究所のやつを貸そうか?」

「あ、大丈夫です。念の為に、常に服の下に着る習慣づけてますから」

「それは偉い」

 

 少し離れた物陰で服を脱いで、ISスーツ姿になってから二人の元に戻り、そのまま百式に搭乗する事に。

 

「コアの情報はそのままだから、フォーマットやフィッティングをする手間が省けていいね~。す~ぐに終わるからね~」

 

 ヒカルノさんは束さん顔負けのタイピングテクを披露して、あっという間に作業を進めていく。

 まだ乗っただけなので、私の性格は変化していない。

 やっぱり、あの性格になるのは『ISでの戦闘時のみ』に限定されるんだろう。

 なんて事を考えている間に、もう作業は終了してしまった。

 

「はい終わり~!」

「早っ!」

 

 さっきよりも百式の色がより明るい金色になっていて、体にもいい感じでフィットしている。

 

「これでいつでも待機形態に出来るけど、その前に武装を全て拡張領域に収納してしまおうか」

「了解です」

 

 ハンガーから離れ、少しだけ移動してから壁にある武装に触れていく。

 次々と武装を量子化して収納していくと、最後に待ち受けているのは例のメガ・バズーカ・ランチャー。

 これ、本当に入るの……?

 

「あ」

 

 割とあっさりと収納されてしまった。

 少し確認してみると、きちんと拡張領域に入っている。

 しかも、まだ少しだけ余裕あるし。

 

「これで本当に終わり。戻してもいいよ~」

 

 戻すのはいいけど、百式の待機形態って何になるの?

 なんて思っていたら、案の定な形になった。

 

「………………」

「これは……サングラスか?」

 

 はい。劇中でクワトロ大尉がいつも付けてた、あのサングラスですね。

 これを私もつけろと?

 

「えい」

 

 試しに装着。どっかに鏡ないかな。

 

「「………………」」

 

 そこの大人二人。揃って微妙な顔をしないでよ。

 

「に……似合ってるぞ?」

 

 顔を引き攣らせながら言われても説得力皆無です。

 

「………外す」

「それがいいね。普段からサングラスなんて付けてたら、生活し辛いでしょ」

「……はい」

 

 それ以前に壊滅的に似合わないってよく分かった。

 ちょっとしたアクセサリーみたいに所持するとしよう。

 

「それと、これは百式の整備マニュアル。IS学園でも出来るようにね」

「ありがとうございます」

 

 これは……本音ちゃん辺りに渡せばいいかな?

 簡単な整備なら今の私でも出来るけど、本格的な整備となると完全にお手上げだからね。

 

「何か分からない事があれば、いつでも連絡してよ。直接ここに来るのもいいけど」

「まぁ……それは機会があれば……」

 

 一人でここに来るのは抵抗があるよ~……。

 

「試運転は、ちゃんと怪我が完治してから行うようにね。万が一にでも怪我が酷くなったら大変だし」

「それはもう……」

 

 楯無さんからも言われてるしね。

 そこら辺はちゃんと弁えてますよ。

 

「感謝するヒカルノ。世話になった」

「なんのなんの。私も噂に聞く赤い彗星ちゃんに出会えてよかったよ。前々からどんな子なのか興味はあったしね」

 

 私の知らない場所で段々と赤い彗星の名が広がっていく……。

 本物のシャアもこんな気持ちだったのかな。

 

 全ての作業が終了してからヒカルノさんに感謝の言葉と別れを告げてから、私達は倉持技研を後にした。

 帰りの途中でお昼になったので、二人でファミレスによって食事をしてから学園へと帰った。

 食事中、妙に千冬さんのテンションが高かったけど……なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




百式ゲット。

でも、そこまで出番は多くないかもです。

本命は別にありますから。

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