神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
ここで、忘れられているかもしれないので一言。
この作品の主人公である仲森佳織こと『かおりん』の容姿は、グラマーになった艦これの吹雪です。
それと、近い内に全ての話にサブタイを付けようと考えています。
決意を固めた私は、放課後になってすぐに生徒会室へと向かった。
その目的は唯一つ。
「失礼します。楯無さんはいますか?」
「佳織ちゃん?」
ちゃんとノックをしてから入室すると、いきなりの来訪に驚いた様子の楯無さんが書類片手に紅茶を飲んでいた。
「お仕事中でしたか?」
「ううん。ちょっと書類を見てただけ。別に大丈夫よ」
「そうですか」
「ささ。遠慮せずに座って。虚ちゃん、紅茶をお願い出来る?」
「もう用意してます」
「早っ!?」
「私はお嬢様とは違って、ちゃんと先を読んで行動してますから」
「それって、遠回しに私の事をどんくさいって言ってない?」
「遠回しにじゃなくて、そう言ってるんですけど?」
「うぁぁぁぁんっ! 佳織ちゃぁ~ん!!」
「そこで私に泣きつかれても困るんですけど」
普段の行いが原因でしょうに。
これに懲りたら、もう少し生徒会の仕事を頑張りましょう。
呆れながらも、虚さんが淹れてくれた紅茶を一口。
うん、いつ飲んでも美味しい。
「ぐすっ……。にしても、佳織ちゃんが一人でここに来るなんて珍しいわね」
「そうですっけ?」
「うん。いつもは他の候補生の子達や本音ちゃんと一緒だし」
言われてみれば。
常に周囲に原作ヒロインがいる状態って、あたかも原作一夏のような状態だ。
でもまぁ、高校時代の友達付き合いなんてそんなもんでしょ?
よく覚えてないけどさ。
「その貴女が一人で生徒会室に来るなんて、よっぽどの事なんでしょ? 何があったの?」
「………………」
この人は暗部の長をしているから、変に腹芸で勝負しない方がいいだろう。
ここはストレートに自分の考えをぶつけた方がいい。
「実は、生徒会長でありロシア代表である楯無さんを見込んで、お願いがあるんです」
「……何かしら?」
「私を……鍛えてください!!」
テーブルに両手をつき、思いっきり頭を下げた。
「……今でも十分に佳織ちゃんは強いと思うけど?」
「いえ……そんな事は決して……」
私が今まで戦ってこれたのは、間違いなく転生特典による恩恵が強い。
伝説の『赤い彗星』を模倣する能力は確かに強大だが、今の私は完全にソレに依存しきっている。
自分の今の境遇を鑑みて、私は思った事がある。
(まるで私は、原作の一夏と同じような状態だ……)
自分が望んだわけでもないのに、いきなり強大な力を与えられて、それによってなんとか幾多の戦いを乗り越えられた。
でも、それももう限界だ。
これから先も今のような状態を維持していたら、絶対に近い将来に取り返しのつかない失敗を犯してしまう。
そうならない為にも、私は全てを一から学び直す必要がある。
「どうして私の頼むの? 佳織ちゃんの周りにはコーチに相応しい人間が沢山いるでしょ?」
「それは………」
的確な指摘を突かれて黙り込んでしまう。
それは分かっている。分かっているつもりなんだけど……。
「……ごめんなさい。意地悪な質問だったわね」
「いえ……」
「佳織ちゃんがそんな風に思ったのって、例の福音の暴走事件が切っ掛け?」
「知ってるんですか?」
「勿論。生徒会長である以上は、現場にいなくてもちゃんと情報は送られてくるから」
そうなのかー。
IS学園自体が普通じゃない以上、その生徒会も普通じゃないって事か。
「あの事件で佳織ちゃんが最大の功労者なのは聞かされてるわ。相当に無茶したみたいね?」
「無茶をしなくちゃ勝てない相手でしたから……」
「それは分かりますが、だからと言って皆を悲しませていい理由にはなりませんよ?」
「虚さん……」
あくまでも穏やかな口調で虚さんが諭しながら、私の頭を優しく撫でてくれた。
「私も本音から聞かされました。佳織さん、本当に命が危なかったそうですね」
「みたいです……。少し記憶が曖昧なんですけど」
あの時見た『夢』の内容と戦っている最中の記憶はあるんだけど、その前後が少し微妙な感じ。
気を失っていたからかもしれないけど。
「簪ちゃんも本当に泣きそうにしてたわよ? 佳織ちゃんが優しい子なのは知ってるけど、その優しさの方向を間違えるのはダメよ?」
「はい……」
自分でも、色んな事を一人で背負いすぎたのは自覚がある。
一歩間違えば、私はこうしてここにはいなかったかもしれないのだから。
自分が死ねば、悲しむ人たちが沢山いるのは分かっている筈なのに……。
「いいわ。佳織ちゃんのコーチをする話、受けてあげる」
「本当ですかっ!?」
「えぇ。そんな思いつめた顔をした後輩を無下に扱うほど、私は酷い人間じゃないわよ」
それは知ってる。
なんだかんだ言っても、根っこの部分はとても優しい人なのが楯無さんだ。
「それに、生徒会長として頼ってきた生徒を放ってはおけないでしょ?」
「書類は放置しますけどね」
「余計な事は言わないで!」
ここで虚さんの茶々で、少しだけ空気が和んだ。
こんな風に話せるのも、二人が長い付き合いだからなんだろう。
「でも、今の佳織ちゃんって専用機が無いでしょ?」
「報告によれば、福音との戦いで相当にボロボロにされたとか」
「はい。ダメージレベルEだったそうです」
「文字通り、完膚なきまでにやられてますね……」
「だから、コアだけを私に渡して、束さんが機体の修復を受け持ってくれました」
「あの篠ノ之博士が?」
「あの方なら確かに適任でしょうけど……」
二人がそんな風な反応をするのも無理はない。
世間にも、あの人が身内以外の他者を完全に見下しているのは有名だから。
「しかも、既に倉持技研に話を通して、バリスティック・リヴァイヴが修理されるまでの間の代替機を用意しているみたいなんです」
「代替機っ!?」
「なんとまぁ……」
絶句するよね。私も聞かされた時は驚いた。
「しかも、その機体は白式の『姉』であると言ってました」
「白式って、織斑先生の妹さんの専用機よね?」
「そうです」
「あの機体の姉妹機となると、その機体も近接戦に特化しているんでしょうか?」
「まだ何とも言えないわね。逆に射撃戦に特化しているかも。白式とコンビを組む事を前提として」
有り得そうなことだけど、白式の相棒は紅椿で確定している。
だから、どんな機体なのか全く予想が立てられない。
「一応、夏休みに入る前の休みの日にでも織斑先生に付き添って貰ってから、機体を見に行くことになってます」
「それがいいわね。まだ佳織ちゃんは全快したわけじゃないんだし」
「そうなると、特訓は夏休み明けにした方がいいですね」
「肝心の佳織ちゃんが万全じゃないと、鍛えようがないものね」
正直、私としては今すぐにでも鍛えて欲しかったけど、そうは問屋が卸さないか。
まだ体には包帯が巻かれてるし、動くだけで痛みが走る事もあるし。
体調ちゃんと整えないと意味がない……か。
「だから、代替機を受領した後は、体を癒す事に集中なさい。勿論、夏休みの間も訓練の類は禁止よ?」
「は~い……」
「素直でよろしい」
約束を破って特訓をして貰えなくなったら困るし。
ここは大人しく怪我を治癒することに専念しよう。
「取り敢えず、折角だから今日は生徒会室でゆっくりしていくといいわ。すぐに本音ちゃんも来るだろうし」
「では、佳織さんにはとっておきのショートケーキを御馳走しましょうか」
「あれ? 私は?」
「いるんですか?」
「いるわよ!?」
楯無さんって完全に虚さんの尻に敷かれてるよね……。
いや、虚さんの方が年上だから、当たり前と言えばそうなんだけどさ。
一応、楯無さんが主人で虚さんが従者の立場なんでしょ?
これも一つの友情の形なのかな?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「フ……フロンタル! 貴様は自分が何をしているのか理解しているのかっ!?」
「していますよ。した上で私は行動を起こしている」
広い会議室のような部屋に大きな円卓が置かれ、そこには明らかに『その手』の人間と思わしき老人達が腰を掛けているが、自分達に向けられた銃口を前に、焦燥を隠しきれずに腰を上げていた。
その銃口を向けているのはフル・フロンタル。
佳織と同じ顔を持つ謎多き少女だ。
「お前は! 拾ってやった恩を仇で返す気か!!」
「貴方方には感謝していますよ。研究所で造られ、失敗作の烙印を押されて死ぬしか選択肢の無かった私とアンジェロを拾い、生きるチャンスを与えてくれた。だが……」
フロンタルが銃を持っていいない方の手で仮面を取る。
そこには、穏やかな笑みを浮かべた彼女の顔があった。
「私達が何も考えずに大人しくお前達の人形に成り下がると、本当に思っていたのか?」
「フロンタル……!」
「私達はずっとこの時を待ち続けた。全ての準備が整う瞬間をな」
「我々は利用されていたのか……」
「理解したか。お前達は我々を駒として使っていたかもしれないが、本当はお前達こそが我々の踏み台だったのさ」
フロンタルが老人達の一人に標準を定めると、焦りが酷くなり、死に物狂いで叫びだす。
「フロンタルが反乱を起こしたぞ! この小娘を今すぐに殺せ!!」
だが、その叫びに答える者は誰もおらず、部下は一人もやってこなかった。
「な……何故だ……! 何故誰も来ない!?」
「残念だが、既に貴公達の部下達は懐柔済みだ」
「なんだとっ!?」
「だ……だが、奴等は一人一人が歴戦の者達。賄賂や拷問などで簡単に寝返るような連中では……」
「知っているかね? 人間は痛みや苦しみには幾らでも耐えられるが、快楽には逆らえないと」
「快楽だと……まさかっ!?」
想像もしたくない事が頭をよぎる。
だが、それを肯定するかのようにフロンタルが笑みを深くする。
「お前達の部下は実に容易かった。よもや、娼婦を宛がっただけで簡単に尻尾を振るとは思わなかったよ。どうやら、ここの連中は相当に女に飢えていたと見える」
「おのれ……!」
フロンタルが指を鳴らすと、彼女に寝返った嘗ての部下達がマシンガンを手にやってきて、それぞれに狙いを定める。
「う……くぅ……!」
「そ……そうだ! スコールとオータムはどうした!? あの二人ならば……」
「その二人ならば……」
そこでアンジェロが入室。敬礼の後に報告を始めた。
「ご報告します。大佐の御命令通り、スコールとオータムは生かして逃亡させました」
「よくやった。ご苦労だったな」
アンジェロの話を聞いた途端、全員の顔が絶望に包まれる。
「Mはどうした?」
「今はまだ調整槽にいるかと」
「そうか」
ここでアンジェロも懐から銃を取り出し、老人達に向けた。
「貴様等の命運もここまでだ。醜い老害共が。大佐の大いなる計画の礎になれる事を光栄に思いながら、地獄に行け」
「やれ」
全員の銃が火を吹き、逃げ出そうとした老人達を一人残らず撃ち抜く。
鮮血が飛び散り、悲鳴が響き渡る。
だがそれでも、一方的な殺戮は収まる事は無い。
「止め」
約1分ほどに渡って斉射してから銃声が止まる。
硝煙の匂いが鼻を突くが、そんな物はここにいる者達にとっては女の匂い以上に嗅ぎ慣れている匂いだった。
全員が完全に死に絶えたかと思いきや、奇跡的にまだ辛うじて生きている老人が一人だけいた。
それを見つけたフロンタルは、高級な絨毯の上に横たわる老人達の死体を蹴り飛ばしながら彼に近づいていった。
「頼む……助け……」
「悪いが、それは出来かねるな」
少しでも足掻こうとする老人の頭に、無情にも銃口を突きつける。
「私は意思は即ち人々の総意。つまり……」
引き金が引かれ、脳漿を飛び散らせながら、最後の一人が死に絶えた。
「お前達がここで死ぬのもまた、人々が望んだ事なのだ」
銃を仕舞いこんだ後、フロンタルは部屋を後にしながら寝返った部下達に命令を下す。
「悪いが、お前達にはゴミ処理を頼みたい。足がつかなければ手段は問わない」
「はっ! 了解しました!」
「アンジェロ、行くぞ」
「はっ! 大佐!」
フロンタルの背後を守るようにアンジェロが後ろを歩く。
こうして、裏社会で最も力のある組織の一つが密かに壊滅し、新たな指導者を迎える事となった。
その者の名は『フル・フロンタル』
この世に存在する、もう一人の『赤い彗星』である。
久々の更新で早速、佳織の強化フラグが立ちました。
ついでにフロンタルも本格始動。
次回は恐らく、佳織の繋ぎの専用機が登場すると思います。