神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
福音に倒されて行方不明となった佳織を捜索する為に再び出撃した専用機持ち達。
しかし、捜索を始めようとした矢先に福音が彼女達に気が付いて待機状態から覚醒し、戦闘態勢に入る。
捜索を優先させたい彼女達は、一夏と箒と鈴の三人で福音の足止めをして、残りのメンバーで佳織の捜索をすることになった。
三人と福音との戦闘音をバックに、ラウラは必死に周辺海域をハイパーセンサーを頼りに捜索していた。
「どこだ……どこにいるんだ……佳織……!」
絞り出すように叫ぶが、一向に反応は無い。
佳織の機体であるリヴァイヴⅡの破損状況が深刻な上に、佳織自身の状態も非常に危険である為、生体反応、機体反応共に微弱になりすぎていて上手く場所を特定出来ないでいる。
「あ…あれは……」
ふと、ラウラの視界の端にある物が映り込んだ。
思わずそちらの方に移動して、海面に浮かんでいる物を見つめる。
「佳織の……」
そう。ラウラが見つけた物とは…佳織が普段から自分の髪を縛るのに使っているヘアゴムだった。
完全に千切れていて、ズタボロになっている。
「くっ……!」
涙を浮かべながらソレを海から拾い上げる。
「セシリア……シャルロット……簪……聞こえるか……?」
『どうしましたの?』
『もしかして佳織が見つかったの!?』
「そうじゃない…。そうじゃないんだが……」
『…何を見つけたの?』
「佳織の……ヘアゴムを発見した……」
『『『!!!』』』
佳織に関する物を発見する。
それが意味する事を瞬時に理解した三人は息を飲む。
「この周辺にいる可能性が高いかもしれない。出来ればこっちに来てくれないか?」
『わ…分かりましたわ!』
『急いでそっちに向かうよ!』
『ラウラさんは引き続き捜索をしてて!』
「了解だ」
通信を切って辺りを見渡す。
「本来、操縦者が身に付けている物などはシールドバリアーに守られて大丈夫な筈。それがこうして外れて焼け焦げていると言う事は……」
それだけ、佳織が凄まじい攻撃に晒されたと言うなによりの証拠だった。
「民間人を守るのが私達軍人の本分の筈なのに……私は……!」
守るべき存在に守られた。
屈辱云々以前に、己の無力さを呪わずにはいられなかった。
『くっ……!こいつ!』
『さっきよりも攻撃がより激しくなってないか!?』
『きっと、佳織と戦っていた時もこれぐらいの攻撃をしてたんでしょうね…!』
『こんな化け物とたった一人で戦っていたなんて!』
オープンチャンネルで一夏達の苦悶の声が聞こえる。
それを聞いて反射的に福音がいる方を向く。
すると、そこには……
「い…一夏!箒!鈴!」
最初に戦った時以上の光弾の雨……いや、嵐に襲われている三人の姿だった。
なんとか回避に専念して被害を抑えようとはしているが、相手の攻撃がいかんせん激しすぎる。
いくら機動力が高くても、多少の被弾は避けられなかった。
防戦一方で全く攻撃すら出来ていない始末。
確かに囮にはなっているかもしれないが、このままでは一夏達が撃墜されるのも時間の問題だった。
「やはり……先に福音をなんとかしてからの方が……」
そんな考えが頭をよぎり始めた。
だが、それがいけなかった。
なんと、福音が他のメンバーの事も発見してしまったからだ。
『センサーに反応アリ。敵機確認。これより迎撃行動に入ります』
「し…しまった!気が付かれた!」
勿論、福音の機械音は他の三人にも届いていて、即座に戦闘態勢に入る。
「ようやく手掛かりが見つかったと言うのに!」
「ここまで来て!」
「でも……こうなったらやるしかない!」
こうして、福音との本格的なリベンジバトルが始まった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「剣が……届かない!」
近接戦を得意としている一夏と箒にとって、圧倒的な射撃攻撃で攻めてくる福音は、まさに天敵とも言えた。
箒はまだいい。彼女の持つ剣には多少なりとも遠距離攻撃があるのだから。
しかし、一夏は違う。
いかに後付けで装備が出来るとは言え、やはり彼女の真骨頂は剣を使った近接戦なのだ。
己が最も得意とする領域に全く踏み込めないのは、それだけで一夏には敗北したに等しい。
「大丈夫か!一夏!」
「う…うん……なんとか……」
などと強がってはいるが、内心は焦りを感じ始めている。
ラウラ達が参戦してくれたとは言え、それでもお世辞にも戦況はいいとは言えない。
唯でさえこちらにはタイムリミットがあると言うのに、自分だけが攻撃すら出来ていない状況に、大きな歯痒さを感じている。
「接近さえ出来れば、レーザーブレードの一撃をお見舞いするのに…!」
雪片弐型の内部に設けられた高出力のレーザーブレード。
零落白夜とまではいかないが、それでも第3世代型ISが装備する武装の中では破格の攻撃力を持っている。
直撃させれば、福音とてただでは済まない筈。
「近づければいいんだね?」
「え?」
悔しさを噛み締めていた一夏の横にやって来たのは、防御用パッケージ『ガーデン・カーテン』を展開させたシャルロットだった。
「なら、僕が盾になる。それなら行けるでしょ?」
「い…いいの…?」
「今更だよ。それに……」
福音に向かって一発の砲弾が飛来して、胴体部に直撃する。
「皆も同じ気持ちだと思うよ?」
そう言って、先程の砲撃をしたラウラのの方を見ると、こちらを見て無言で頷いてくれた。
「ラウラ……」
「僕等が援護する。だから、近づいての一撃が最も得意な一夏と箒は迷わず突っ込んで!」
「……うん!」
作戦は決まった。
皮肉にもそれは、原作のような一夏による一撃離脱作戦だった。
「ちっ!来るよ!」
「分かった!」
シャルロットの合図でその場から散開する三人。
彼女達がいた場所を福音の光弾が通りすぎる。
「あ…危なかった…」
「安心してる場合じゃないよ!」
「そうだったな!」
一夏と箒は互いに剣を構えて、前傾姿勢を取る。
「二人はともかく、福音に接近する事だけを考えて!」
「背中は私達が守りますわ!」
「だから、絶対に決めないさいよ!」
「「当然!」」
再びラウラによる砲撃が撃たれる。
だが、福音も学習したのか、それを滑らかな動きで回避する。
「くっ!やはり二度目はそう簡単には命中しないか!だが!」
ラウラの目は諦めてはいなかった。
何故なら、そこには確かな勝算があったから。
「皮肉な話だが、福音は佳織との戦闘で間違いなくエネルギーをかなり消耗している筈だ!ほぼ全快に近い専用機が纏めてかかれば、いかに軍用機と言えども勝てる見込みは充分にある!」
実際、佳織との水中戦で福音はかなり追いつめられていた。
それでもまだ戦闘が可能なのは、一重に神による改変の影響である。
「「突撃!!!」」
エネルギーの節約の為に瞬時加速はしないが、それでも元々は白式も紅椿も高機動型のIS。
その速度は目を見張るものがあった。
当然、福音は真正面から突っ込んでくる二人に対して迎撃行動をとる。
翼を羽ばたかせながら斜め後ろに飛び、ラウラとセシリアの射撃を回避しながら銀の鐘の発射態勢に入る。
「またアレが来る…!けど、それの対処法はもう出来てる!」
予めデータ入力を済ませておいた簪は、打鉄弐式最大の武装である高性能誘導型8連装ミサイル『山嵐』を一斉発射する!
銀の鐘の光弾と山嵐のミサイルがぶつかり合い、凄まじい爆音を響かせ、前方が煙に包まれる。
「防いだ!」
「これだけじゃない!!」
更に追撃として、予め発射できるようにしておいた荷電粒子砲『春雷』も発射する!
青白い二本のレーザーが福音に迫る。
だが、煙の向こうでは命中したような音が聞こえない。
「手応えが無い……外した?」
山嵐を撃ち終えた簪がその場から離れて少し距離を取ろうとすると、煙がいきなり掻き消されて、そこから再び光弾が発射された。
「しまっ……!」
「させないよ!!」
急いでシャルロットが簪の前まで来てガーデン・カーテンの盾で攻撃を防ぐ。
「シャ…シャルロット!」
「お…重い……!」
盾越しでも感じる衝撃は凄かった。
「こんな攻撃を目の前で受けたんだよね……佳織は……」
出撃前に見せられた、佳織が福音に撃墜される瞬間を捕えた映像を思い出すシャルロット。
「あの時の佳織の痛みに比べれば……この程度!!」
シャルロットが簪を守りながら攻撃に耐えている間、他の面々もそれぞれに攻撃を耐え抜いていた。
「この程度の攻撃……」
迫りくる光の雨を前に、鈴は装備された甲龍の機能増幅パッケージ『崩山』を戦闘状態にする。
両肩の衝撃砲の砲口が展開するのに合わせて、増設されたもう二つの砲口が出現した。
「どうってことないのよ!!」
合計4門の砲口から紅蓮の炎を纏った衝撃砲が発射される。
大幅に威力の増したその攻撃は、福音から放たれた光弾を見事に相殺してみせた。
「まだまだぁ!!」
その勢いに乗って更に接近、一夏達がいる所まで追いついた。
「ぼさっとしてんじゃないわよ!」
「わ…分かっている!」
最初に福音と交戦した三人で接近を試みる。
一夏と箒は機動性を駆使して回避をし、鈴は熱殻拡散衝撃砲で攻撃を相殺しながら接近する。
『……戦況を不利と判断。これより現空域からの離脱を最優先事項とする』
銀の鐘を止めた福音は、全てのスラスターを全開にしてこの場からの離脱を図ろうした。
「に…逃げる!?」
「絶対に逃がすな!下手にここから逃がせば、最悪…佳織がまだ生存している事を感づかれる可能性がある!!」
「そうは……」
「させないから!!」
一夏と箒が速度を上げる。
それに伴い、福音も離脱スピードを増した。
しかし、そんな事を許さない者がいた。
「スピードならば……」
青い閃光が一夏達の横を通り過ぎた。
「今の私の方が上ですわ!!!」
強襲用高機動型パッケージ『スタライク・ガンナー』を装着したセシリアだった。
そのスピードは凄まじく、あっという間に福音の背後を取った。
それに合わせて、ラウラとシャルロット、簪も福音を狙い撃つ。
「そこっ!」
「くらえ!!」
「これなら!」
「当たって!!」
『!!!』
いきなりのバックアタックに流石の福音も一旦動きを止めて回避をする。
「動きが止まりましたわ!」
「今だ!!」
一瞬の隙をついて、一夏と箒と鈴の三人は瞬時加速で一気に近づいた。
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」
すれ違いざまに、まずは箒の持つ二本の剣による連撃が放たれた。
「次はあたしよ!!」
間髪入れずに鈴からは真紅の衝撃砲を発射しながらの双天牙月による重い一撃!
いずれの攻撃も命中して、福音はその体勢を崩した。
「今よ!!」
「やれ!一夏!!!」
雪片を両手でしっかりと握りしめて、全力で振りかぶる。
「これで……」
刀身が展開し、そこから光の刃が出現する。
「落ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
その一撃はまさに一閃。
福音の頭部にある翼を一枚切り裂きながら胴体部に直撃した!
その時、一夏の目に福音の手甲部が見えた。
白銀に輝く鋼鉄の手は真っ赤に染まり、血が滴っている。
「その手が……」
それを見た途端、一夏はキレた。
「その手が佳織を刺したのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
その場で回転しながら、遠心力を加えた更なる一撃!
それは福音のもう一枚の翼をも一刀両断し、力任せに海に叩き落とした!
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「や…やった…のか……?」
「佳織との戦闘で疲弊している上に、あんだけダメージを与えたんだから……やられない方がおかしいわよ……」
数秒しても福音が海から上がってくる様子が無い。
それを見て、全員が戦闘態勢を解除し、佳織の捜索を再開しようとする。
「かなり時間をくってしまった。一刻も早く見つけなければ……」
踵を返して佳織を探そうとすると、福音が落ちた海面が泡立ち、とてつもない光によって吹き飛ぶ。
「な…なんだっ!?」
「あれは!」
海の中からゆっくりと福音が浮かび上がる。
体中に光を纏った体躯を動かしながら、全員と同じ高度まで上がって来た。
四肢から紫電が迸り、見ただけでも力強さが増しているのが分かる。
「まさかとは思うが……これは……」
自然な動作で全員を見渡す福音。
その瞬間に一夏達はISが警告を発する前に本能的に危険を感じた。
背筋に冷たい汗が流れて、戦闘空域全体に殺気が溢れる。
一夏によって斬られた翼の切断面から、まるでスローモーションのように光の翼が生えてきた。
「矢張り……
ラウラの叫びが聞こえた瞬間、進化した福音が
「かはぁっ!?」
福音はいつの間にか一夏の完全にまで迫っていて、その腹部に強烈な蹴りをかました。
一夏は肺から空気を吐き出しながら吹き飛ぶが、その前に福音によって首を掴まれる。
「が……ぐ……!」
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
激高した箒が二刀を構えて斬りかかる!
だが、その攻撃も福音の翼によって阻まれる。
「ば…馬鹿な…!?」
そして、箒も一夏と同様にもう片方の手で首を掴まれた。
「ほ……うき……!」
「こんな……ことで……!」
なんとかして二人を救出したいと思うが、下手に撃てばフレンドリーファイアをする可能性が高い。
ラウラ達が躊躇している間に、福音の光の翼が眩しく輝く。
「に…逃げろ!!二人共!!」
必死に叫ぶラウラの声が聞こえるが、そんな事はお構いなしと言わんばかりに輝きは増していく。
「こ…高熱源反応!?」
この場にいる誰もが絶望した時……彼方から一筋の閃光が飛んできて、一夏と箒を掴んでいる福音の手を撃ち抜いた。
「ゲ…ゲホッ……ゲホッ……」
「い…今の一撃は……?」
「あ…あれを見て!!」
シャルロットが指を刺した場所にいたのは……
「「「「「「「!!!!!」」」」」」」
煙を上げる銃身をこちらに向けている、一体のズタボロな状態の赤いISだった。
「「「「「「「佳織!!!」」」」」」」
スコープを覗いている目を彼女達に向けて、佳織は美しい微笑を浮かべた。
「待たせたな」
主役は遅れてやって来る。
人はこれを『お約束』と言う。