神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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前回登場したリヴァイヴⅡの水中戦特化型パッケージですが、多分お分かりの方も多いと思いますが、あれはシャア専用ズゴックを模した物です。
何らかの形で出したいとは思ってはいましたしね。




第48話 リベンジと先人

 花月荘にある物置部屋。

そこはIS学園から持って来た機器が設置されていて、ちょっとした格納庫のようになっていた。

そこに風花の間からいなくなった筈の束がいた。

 

彼女はずっと自分が持って来た機器と睨めっこをしていて、モニターをずっと見続けている。

 

「かおりん……私は……」

 

いつも余裕に満ちている束には珍しく、この顔は焦燥に駆られている。

佳織が福音に撃墜されたことを知って、心中穏やかではないのだろう。

 

「……クーちゃん。かおりんの位置は分かる?」

『は…はい。佳織様の場所は撃墜された場所から少しずつ離れつつあります』

 

モニターの端の方には小さな画面が表示されていて、そこには束のラボにて留守番をしているクロエが映っていた。

 

『恐らく、潮流に流されているのかと思われます』

「そう……」

『少し調べたのですが、この時期の花月荘の周辺の海の沖合はある時間帯のみ潮流が激しくなる事があるようです』

 

淡々と報告するクロエであったが、彼女も少なからず焦っていた。

束が想いを寄せる少女である佳織が撃墜された。

彼女自身も佳織に興味を持っていた為、それなりにショックは受けていたのだ。

 

「バイタルサインは?」

『非常に微弱ではありますが、まだ息はあるようです…』

「ISには操縦者の生命維持を最低限保護する機能がある。それが動いている内はまだ辛うじて大丈夫だけど……」

『あの攻撃で機体は確実にダメージレベルEはいっています。機能停止するのは時間の問題と思われます。それに……』

「下手に時間を掛ければ、潮流に流されてどこに行くか分からない…。そうなったら……」

 

束の表情が急に暗くなる。

 

「あぁ~…ダメダメ!こんなん束さんらしくない!かおりんも喜ばないよ!」

『束様……?』

 

自分の事を鼓舞するように頬を叩いて気合を入れ直す。

お蔭で頬は真っ赤に腫れていたが、束の表情は元に戻っていた。

 

「クーちゃん!かおりんの位置を捕捉しながらバイタルを見続けて!」

『束様はどうするのですか?』

「私は……」

 

ふと海の方を見る。

そこには密漁船と一緒に戻ってきた一夏と箒を初めとした専用機持ち達がいた。

 

「箒ちゃん達のISの修理と補給をする」

『……分かりました。佳織様の事はお任せください』

「お願いね」

『はい。それでは…』

 

クロエとの通信が切れた。

それと同時に立ち上がり、さっきまでいた風花の間に向けて歩き出した。

 

「それにしても……なんで密漁船なんて現れたの……?まるでいきなりその場に出現したように見えたし……」

 

歩きながら思案に耽る束。

いつもの調子を取り戻した彼女ならではの行動である。

 

「そもそも、ISはそう簡単に暴走なんてしない筈…。あり得るとすれば、単純な整備不良…?でも、軍用のISに限って整備を怠るなんてことは考えにくい…。だとすれば……」

 

ハッと顔を上げて空を見上げる。

 

「誰かが意図的に暴走させた?でも……それこそ不可能に近いでしょ…。仮にそんな事が出来るとしたら、私しかいないと思うし(・・・・・・・・・・)……」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 護衛してきた密漁船を浜辺で待機していた教師達に引き継いだ後、一夏達専用機持ち達はすぐに佳織の元に戻ろうとしたが、教師達にまずは千冬達に報告した方がいいと言われて、仕方なく作戦会議室として用意された風花の間に戻る事にした。

 

「早く報告して佳織の所に戻ろう!」

「あぁ!急がなければ!」

 

廊下は走るな。

そんなルールを完全に無視して、彼女達は部屋に急いだ。

 

全員が部屋に近づいた……その時だった。

 

「布仏!しっかりしろ!」

「あ……あぁぁ………ぁぁぁ……!」

 

明らかに様子がおかしい。

全員が顔を見合わせて、部屋の襖をあける。

 

「お…織斑先生……?」

 

部屋の中では、本音が焦点の合ってない目から涙を流しながら畳の上に座り込んでいて、それを千冬が支えている光景だった。

更にタイミングが悪い事に、一夏達が部屋に来た事に気が付いてなかった真耶が思わず呟いてしまった。

 

「……ラファール・リヴァイヴ・バリスティックの反応……完全にロスト……」

「え………?」

 

静寂に包まれた部屋に箒の小さな声が驚く程響いた。

 

「今……なんて……?」

「お…お前達……」

「皆さん……」

 

ここにきてやっと一夏達に気が付いた千冬と真耶。

だが、その顔はお世辞にも無事の帰還を喜んでいるような表情ではなかった。

 

「今なんて言ったんですか!?山田先生!」

「そ…それは……」

 

真っ先に奥まで踏み込んだ鈴の剣幕にビクッとなる真耶。

 

「……教えてください。私達が去ってから何があったんですか……?」

「織斑先生……」

 

正常な判断力を失った真耶は千冬に視線を送る。

それに千冬は無言で頷いた。

 

「……仲森さんは……たった一人で福音と戦って……途中から海中に福音を引きずり込んで…なんとか優位に立っていたんですが……」

 

次に真耶の口から言われた言葉に、少女達は打ちのめされた。

 

「福音による反撃で腹部を貫かれて……その直後に至近距離で全ての攻撃を受けて…………撃墜…されました……」

「「「「「「「!!!!!!」」」」」」」

 

一夏達の心臓が一気に跳ね上がる。

 

「嘘……ですよね……?佳織が落とされた……って……」

「そ…そうですわ……そんな事が……」

 

目の前の事実を正しく認識出来ない面々は、本音と同じような目で呟く。

だが、その言葉を千冬が冷徹に言い放つ。

 

「事実だ……」

「そ……んな………」

 

箒が思わずその場に座り込む。

 

ポタ……と、何かの水音が聞こえた。

ふと音のした方を向くと、千冬の拳から血が滲んでいた。

冷静に見えても、千冬も憤りを隠せないでいるのだ。

その怒りの対象は福音でもなければ一夏達でもない。

こんな時に共に戦う事すら出来なかった自分自身に対して怒っていた。

 

現場指揮官と言う立場上、千冬は容易に動く事を許されない。

前回の無人機の時に出撃した際も、後で学園上層部に叱咤されたのだ。

その程度で怯む程軟弱ではないが、それでも容易に喧嘩を売っていい相手ではないものまた事実。

今の千冬はまさに、IS学園の教師と言う立場と一人の人間としての気持ちに板挟みになっていた。

 

「なに落ち込んでるの!!」

 

その時だった。

束が仁王立ちで入口に立っていた。

 

「た…束……?」

「姉さん……?」

 

悲壮感の漂う室内に入り、全員を睨み付ける。

 

「姉さん……佳織が……佳織が……」

「うん…知ってるよ。かおりんが撃墜されたんだよね?」

「お前……」

「でも!撃墜されたからと言って、まだ死んだと決まった訳じゃない!」

 

束のまさかの前向き発言に全員が驚いた。

 

「本当はね……私も凄く悲しいよ。こんな事を言ってるけど、少しでも気を抜くと今にも泣きそうだし……」

「束さん……」

「でも!ここで落ち込んで!悲しんで!そんな事をしてかおりんが本当に喜ぶと思うの!?泣けばかおりんが戻ってくるの!?そうじゃないでしょ!」

 

その場にいる全員を見渡して叱咤激励する束。

 

「私は絶対に諦めないよ。かおりんはまだ大丈夫。皆も知ってるとは思うけど、ISには操縦者の生命維持をする機能がある。あの損傷だとタイムリミットはあると思うけど、それでもまだ助かる見込みはある!」

「……その時間はどれぐらいだ?」

「リヴァイヴⅡのコアが無事なら……約30分が限界だと思う」

「30分……」

 

長いようで短い時間。

それが佳織の命を繋ぐ時間だった。

 

一通り説明してから、束は跪いて本音の事を優しく抱きしめた。

 

「え……?」

「大丈夫。かおりんは無事に帰ってくる。私が保証するよ」

「篠ノ之博士……」

「私の事は束でいいよ」

「束……博士……」

 

本音の事を落ち着かせるためにそっと頭を撫でる。

人肌の温もりに包まれて安心したのか、本音は静かに目を瞑った。

 

「布仏……。山田先生、彼女を……」

「あ……はい」

 

真耶は束から本音を受け取って、そのままどこかで休ませるために部屋を後にした。

 

「それじゃあ皆……IS貸して」

「ア…ISを?」

「そう。……助けに行くんでしょ?」

「「「「「「「当然!!」」」」」」」

 

束の言葉で専用機持ち達の目は完全に生気を取り戻していた。

見る人が見れば、彼女達の瞳には炎が見えただろう。

 

「何をする気だ?」

「皆のISはさっきの戦闘で少なからず損傷してる。そんな状態じゃ仮に行ってもかおりんの二の舞になる事は明白。だったら、少しでも可能性を上げるために多少の時間のロスは覚悟の上で補給と修復をするの」

「し…しかし、7機ものISの修復と補給をそんな短時間で出来るのか?」

「出来る出来ないじゃない!やるの!!」

「!!!」

 

どこまでも束のやる気に満ちた目に、千冬も重い腰を上げた。

 

「ふっ……まさか、お前に励まされる時が来るとはな……」

「ほんと……私の事を普段からどう思っているのかじっくりと聞きたいよ…」

 

半ば呆れながらも余裕を崩さない束。

これこそが彼女の本来の姿である。

 

「私の全力で速攻で仕上げるから!箒ちゃん達は少しでも休んでて!」

「今はそうしろ。本来なら許可できんが、ここまで発破をかけられて黙っているなど、私の性に合わん」

「ちーちゃん……」

 

千冬も千冬でその目にやる気が戻っている。

それは誰もが知っている、嘗て世界の頂点に二度も君臨した世界王者の目だった。

 

「全ての責任は私が取る。好きにやれ!」

「合点!この束さんにまっかせなさい!」

 

ドンッ!と自分の胸を叩いて束は早足で部屋を出る。

 

「お前達は束による機体の修復と補給が終了し次第、すぐにでも再出撃して貰う。その際は仲m……佳織の捜索と救助を最優先に行え。もしも福音と戦闘になった場合は交戦は最低限にしろ。今は佳織の事が最優先だ」

「「「「「「「了解!」」」」」」」

 

こうして、佳織の救出と福音へのリベンジに向けた準備が始まった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「大佐。仲森佳織が福音によって撃墜されたようです」

「ふむ……」

 

大佐と呼ばれた少女が注ぎ直した茶を飲みながら外を見る。

 

「ふん……所詮は一般人の女子高生。例え『同じ』とは言え、大佐とは経験などが雲泥の差……」

「果たしてそうかな?」

「ど…どういう事でしょうか…?」

 

紫の髪の少女が困惑した顔を見せる。

 

「彼女はこれまでもずっと様々な苦難を乗り越えてきた」

「だから今回も…と?そんなご都合主義が……」

「あり得ないと?」

「お言葉ですが……はい」

「お前の言葉は理解出来るがな……」

 

湯呑の中に残った茶を一気に飲み干す。

 

「そもそも、人間の誕生自体が奇跡のようなものだ。分かるか?人間とは常に『奇跡』と共にある。いや……」

 

目を細めて紫の髪の少女を見据える。

 

「人間だけが『奇跡』を起こす事が許されている……」

「奇跡……」

「故に私は信じているのだよ。彼女は……佳織は必ず再び立ち上がり、必ずや福音を撃破すると」

 

まるで佳織の事を案じているような発言だが、その目には何も映っていない。

何処までも空虚で、自意識を感じさせない顔だった。

 

「今頃君は……どんな夢を見ているのかな?佳織……」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 その頃。

福音によって海に投げられた佳織はと言うと……

 

「…………あれ?」

 

周囲が全て真っ白な、謎の空間にポツンと立っていた。

 

「ここ……どこ?」

 

上を見ても何も無い。

下を見ても何も無い。

どこまで行っても何も無い。

かと言って、浮遊感があるわけでもなく、少なくとも佳織はその場に立っていた。

 

「そう言えば私……確か福音にやられて……それで……」

 

今の佳織は着なれた赤いISスーツ姿で、肝心のISは装備していない。

かと言って待機形態になって首からぶら下がっているわけでもない。

 

「リ…リヴァイヴが無い?どこに……」

 

思わず周囲をキョロキョロとするが、どこにも無い。

 

「って言うか、ISもそうだけど…なんで怪我が無いの!?あんな至近距離でレーザーの雨を食らったんだよ!?普通なら確実にあの世行き…。仮に死んでなくても致命傷は避けられない筈なのに…」

 

佳織の体には傷一つついていない。

実に立派な健康体だった。

 

「も…もしかして……ここがあの世か!?そういや転生した時も似たような場所に来た記憶が……」

 

なんて言っても、すぐに有無を言わさず落とされた為、記憶はかなり曖昧だが。

 

「そっか……私……死んじゃったのか……」

 

健闘空しく……か、どうかは分からないが、福音との戦闘でこうなったのは事実だった。

 

「その割には随分と達観しているのだな、君は」

「へ?」

 

いきなり別の声が空間に響く。

思わず反応して声の方を見る。

コツコツと足音を鳴らしながら現れたのは……

 

「嘘……でしょ……?」

 

赤い軍服を着た金髪の男だった。

 

「シャア………アズナブル……」

 

 

 

 

 

 

 

 




ご本人の登場。

そして、束が意外な大活躍。

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