神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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分の悪い賭けは嫌いじゃない。







第47話 撃墜

 戦闘海域に突如として入って来た謎の船(恐らく密漁船)を護衛しながら後退した皆を見送った後、私は満身創痍の状態でまだまだ元気満々な状態の福音と対峙していた。

 

福音は何故か動く様子が無く、まるでこっちの動きを窺っているかのように見えた。

見れば見る程、暴走しているISには見えない。

それに、私の事を最優先攻撃目標に指定していた事も気にかかる…。

 

「いや……それを考えるのは後だ」

 

今はどうやって福音を倒すかを考える方が先決だ。

 

(一体どうする…?マシンガンの弾はもう無いし、ハンドガンでは威力に欠ける…。かと言って、ビームバズーカは威力はあっても撃つまでに時間が掛かりすぎる。実弾の方のバズーカは弾速が遅いから仮に撃っても命中する確率は低いだろう…。この状態で誘導兵器であるファンネルを射出しても、いい的になるだけ……)

 

やっぱり……一人で戦うには何とかして近接戦に持ち込むしかないのか…?

私が密かに覚悟を決めようとしていると、ふと拡張領域内に見た事のない装備群があるのを見た。

 

「これは……!」

 

束さんに預けるまではこんな装備は無かった筈…。

なら、これを入れたのは束さんなのか…?

確かに、私宛に送られてきた装備にはこれらも含まれていたけど……。

 

「ははは……貴女と言う人はどこまで……」

 

ある意味、私以上に先を読みまくってるじゃんか……。

全く……敵わないなぁ~…。

 

「だが……もうこれしかないか……?」

 

奴の主武装は光学兵器オンリー。

地上戦や空中戦では無類の強さを発揮するが、どんな存在にも弱点は存在する。

一人になって頭が冷えて、ようやくこの考えに至るなんてね…。

 

「『あそこ』なら……やれるかもしれない……」

 

けど、確固たる確証があるわけじゃない。

もしかしたら、何らかの対策をしている可能性も……。

 

「……いや。もうそんな事を考えている余裕は無いか」

 

死なばもろとも。

やれるだけの事をやってやる!

 

「残りSEはあと44。換装パーツ確認……選択。装備換装タイミングは着水時に限定。その際のタイムラグは約5秒…。ふっ……これではまるで博打だよ……」

 

だが、もうこれしかない!

 

『最優先攻撃目標が再び戦闘態勢に移行。これより攻撃を開始します』

「いいだろう……!ならば来い!!!」

 

私は福音の遥か上空に飛び上がり、そのまま真っ直ぐに降下した!

勿論、福音はそんな私を迎撃する為に銀の鐘(シルバー・ベル)を発射する!

 

「そうだ……よく狙うがいい!!福音!!!」

 

己の目に全神経を集中させて、全力で回避に専念する!

こっちのエネルギーはあと僅か……少しの被弾が命取りになる!!

 

「見えるぞ……私にも敵の動きが見える!!!」

 

これなら……いける!!

 

最小限の動きで光弾を躱しながら、私は福音の体にしがみ付いた!

 

「私と共に……暗き海の底へと落ちるがいい!!!!!」

 

そのまま真っ直ぐに海底へとダイブ!!

その瞬間にリヴァイヴが光を放ち装備が換装された!

 

福音を蹴り飛ばし、少しだけ間合いを開ける。

 

「成功したか……!」

 

まさかこんな装備を作っているなんてね…。

リヴァイヴⅡ専用の水中戦特化パッケージ『ダイバーマリン』。

 

ブースターを全て水流エンジンへと換装し、脚部も分厚い装甲になり、その内部にはバラストタンクやハイドロジェットを増設。しかも、装備すると同時に機体全体に一瞬で防水用のシーリングが施される。

さらに、腕部はズゴックの腕部パーツに似た物に変わっている。

勿論、あの特徴的なクローと水中で使用可能な特殊なビーム砲もついている。

そして、私の口には小型のボンベが銜えられていて、酸素供給も問題無し。

 

(本来は宇宙での活動を前提としているだけはある…。水中でも問題は無いようだ。シールドバリアーのお蔭で動きがそこまで阻害されない)

 

本来なら戦場での直接換装なんて不可能に近いが、このリヴァイヴにはいつの間にか空中換装が出来るシステムが入っていた。

これもきっと束さんの仕業に違いない。

こんなシステムを作ってしまうなんて……どこまでチートなんですか?

 

福音を見ると、私の予想通り水中では思うように動けないようで、予想外の事態にどうするか考えているように見えた。

 

(すぐに攻撃に移らない所を見ると、やっぱり水中では典型的な光学兵器である【銀の鐘】は使えないみたいだな)

 

でも、福音だってすぐに水上に戻ろうとする筈。

アイツをここから逃がしたら、本当に勝ち目が無くなる!

ここで勝負を決めないと!

 

装備換装したお蔭かSEも少しだけ回復したし、やるなら今しかない!

 

(いくぞ!!)

 

本格的に動き出す前に一気に突撃し、クローで斬りつける!

 

(よし!)

 

さっきまでの動きが嘘のように鈍くなってる!

活動領域を限定して性能を上げた故の弊害ってヤツか!

 

福音をその場に釘付けにする為に、何回も周囲を周りながらクローで攻撃を繰り返す!

離れた時はビーム砲で牽制をし続けて、その場から逃がさないようにする。

 

こうなったら私の独壇場で、一気に牽制逆転した。

どれぐらいかは知らないけど、着実にダメージは蓄積している筈!

塵も積もればなんとやら、油断せずに攻撃を続けろ!

 

(な…なんだ…?)

 

福音の手が淡く光っている…?

あれは一体……?

 

(いや……今は余計な事を考えるな!攻撃だけに集中しろ!私!)

 

だが、その福音の行動を疑わなかった事が……私の命運を分けた。

 

(もう碌に動かなくなってきた…。もしかして、もうSEが無くなりかけているの?)

 

全力で福音に突貫し、クローを装甲に突き立ててからのゼロ距離のビーム砲!

 

(これでトドメだ!!…………え?)

 

攻撃を仕掛けたと同時に、自分のお腹に違和感を感じた。

 

(これって……まさか……!)

 

福音の手が手刀のようになって、私のお腹を突き刺している……!

この光は……本来なら銀の鐘に使うはずの余剰エネルギーを手甲部に一点集中で集めて……威力と貫通力を高めたのか……!

こんな事を即席で思いつくなんて……!

 

「ごほぁ……!」

 

しまった…!思わずボンベを口から離してしまった……!

息が……出来ない……!

 

私の動きが止まった直後、福音は待ってましたと言わんばかりに海上に浮かびあがって、もう片方の手で私の首を絞めやがった…!

 

「ぐ……ぁ……!」

 

さっきから動こうとしなかったのは……攻撃のタイミングを計ると同時に……少しでも自分のエネルギーを節約する為だったのか……!

暴走ISの癖に……狡猾すぎるだろ……!

 

お腹から……血が止まらない……。

吐血もして……。

 

「なっ………!」

 

嘘……でしょ……?

 

「この状態で……ソレを使うか……!」

 

確かに福音の主武装である銀の鐘は両手が塞がっていても使えるけど……。

白銀に輝く機械の翼に眩い光が収束していく。

 

「……………すまない」

 

次の瞬間、私の全身を凄まじいまでの衝撃とダメージが襲い、リヴァイヴⅡが文字通りズタボロにされる。

その攻撃が5秒ほど続いた後、飽きたかのように私の体を放り投げた。

 

(後は………お願い………)

 

落下していく感覚を感じながら、強烈な眠気と共に意識が深い闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 旅館内にある風花の間。

そこでは千冬と真耶、本音が佳織達の事を案じながら吉報を待っていた。

先程まで束も一緒にいたが、数分前に退出してどこかに行ってしまった。

 

「え……?通信?プライベート・チャンネル!?」

「何!?誰からだ!」

「これは……ボーデヴィッヒさんからです!」

「オープンチャンネルにして通信を繋げ!」

「了解です!」

 

真耶が機器を操作し、若干ノイズ交じりではあったが声が聞こえてきた。

 

『こちらラウラ……聞こえますか!?応答願います!』

「聞こえるぞ!一体どうした!?」

『きょ…教官!?』

「私の事は織斑先生と……まぁいい。今は許す。それで、どうした?福音は倒したのか?」

『それが……』

 

いつもはハッキリと言うラウラの歯切れが悪い事に若干の違和感を感じる千冬。

 

「本当にどうした?」

『………福音との戦闘中に所属不明の密漁船が戦闘海域に侵入。福音がそれを狙ったため、私達は船の護衛をしながら旅館に向けて後退中です……』

「な…なんだと!?密漁船!?」

「そんな……!あの周辺はちゃんと封鎖している筈なのに!」

 

持ってきている訓練機を総動員しての包囲網。

どこにも侵入する場所など無い筈だった。

 

「ま…まぁいい…。それについては後から船員に話を聞けばいいだけだ」

「そうですね…。それよりも今は……」

「かおりんは!?かおりんは無事なの!?」

『か…佳織は……』

 

本音の泣きそうな叫び声に対し、ラウラの声量が小さくなる。

 

「おい……なんで何も言わない?全員で後退したんじゃないのか?」

『………原因は不明ですが…福音の最優先攻撃目標に佳織が設定されており……私達を逃がすために一人で残って……』

「「「なっ……!?」」」

 

佳織がたった一人で殿を務めた。

余りにも衝撃的な事実に、三人共が言葉を失った。

 

『自分も一緒に逃げれば旅館に福音を引きつけてしまうと言って……それで……』

「か…佳織……」

「なんで福音が仲森さんを……」

「あ……あぁ…ぁ……」

 

思わず両手で口を覆って目を見開く本音。

そして、絶句してしまう千冬と真耶。

 

『もうすぐそちらに到着します……。船の受け入れの準備をお願いします……』

「りょ…了解しました……。人員をそちらに回すように手配します……」

『ありがとうございます……』

 

ラウラとの通信が切れた。

途端に重苦しい空気が風花の間を覆い尽くした。

 

「モニターは……?」

「通信状態が悪くて………あ!」

「今度はなんだ!?」

「モニターが回復しました!正面に出します!」

 

真耶の叫びと共に正面モニターに戦闘海域の光景が映し出された。

 

「あ…あれは!」

 

そこには、佳織が福音と共に海底に潜り込もうとしている瞬間が映った。

 

「佳織の奴……考えたな。光学兵器主体の福音は、海中ではその力を十全に発揮出来ない」

「で…でも、仲森さんのリヴァイヴⅡも不利になるんじゃ……」

「それなら……だいじょーぶだと思います……」

「布仏さん?」

「それはどういう意味だ?」

 

涙をこらえながらも二人を見る本音。

その顔からは今にも泣きだしたいのに、頑張って気丈に振る舞っているのが見え見えだった。

だが、二人は敢えて何も言わない。

それこそが今は正しいと思ったから。

 

「えっと……送られてきたリヴァイヴⅡのパッケージの中には水中戦専用に特化している物もあって……篠ノ之博士が密かにインストールしているのを見たから……」

「あいつめ……」

 

束の先を読んだ行動に、苦笑いを隠せない千冬だった。

 

「流石に海中の様子はモニタリングは出来ないか……」

「ですね……。一応、反応は確認出来るんですけど……」

「リヴァイヴⅡの残りSEはどれぐらいだ?」

「先程までは44しかありませんでしたけど、換装に成功したのか、若干ではありますけど回復してます」

「そうか……」

 

それだけしか言わなかったが、千冬の顔は安堵に包まれている。

 

「けど、戦闘中の装備換装だなんて…可能なんですか?」

「普通は不可能だろうな。だが、あの束の事だ。その不可能を可能にするプログラムでもインストールしているかもしれんな」

「あはは……」

 

普通なら一笑に伏す所だが、束ならば本当にやりかねないので、一概に否定できない真耶だった。

 

「かおりん……」

「大丈夫だ」

「織斑先生……?」

「アイツが……佳織が今まで一度でも私達の期待を裏切った事があったか?」

 

今までに見せた事が無い慈愛に満ちた顔で本音を頭を優しく撫でる千冬。

目をパチクリとさせながら彼女を見上げる本音。

 

「す…凄いです…!レーダーだけでしか分かりませんが、凄い動きで福音を攻撃してます!これならもしかして……!」

 

レーダー上で佳織の反応を示す点が福音を示す点と何回も交差して、追いつめていく様子が分かる。

だが……突然、真耶の表情が凍りつく。

 

「え………?」

「なんだ?もう倒したのか?」

「な…仲森さんの……」

「山田先生……?」

 

様子がおかしい真耶に、二人とも怪訝な顔になる。

 

「仲森さんのバイタルが急速に低下していきます!」

「なんだって!?」

「かおりんが!?」

 

モニターには佳織の体をその手で貫いた福音が海中から浮き上がってきた。

 

「佳織!!!」

「かおりん!!!」

「佳織さん!!!」

 

三人の叫びなど聞こえる筈も無く、モニターの向こうでは福音の翼が眩く光り輝き……そして……

 

「や……やめ……」

 

ほぼゼロ距離に等しい場所で全ての光弾が佳織の体に降り注いだ。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

光で福音と佳織の姿が視認出来なくなる程にレーザーが放たれ、それが止んだ時には……

 

「い……い……」

 

佳織の体と、その体に纏われていたリヴァイヴⅡが無残な姿を晒していた。

特にリヴァイヴⅡは原型が分からなくなる程に破壊されている。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」

 

本音の叫びと共に、モニターに映っている福音が変わり果てた姿になった佳織を海に投げ捨てた。

 

その時…他の小型のモニターに佳織以外の専用機持ち達が浜辺に到着した姿が映し出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




絶望の果てに希望がある。

その逆も然り。

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