神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
束さんに並ぶ形で本音ちゃんが立って、改めて紅椿の設定作業が始まった。
その間に箒は紅椿のコクピットに搭乗した。
「あれ?これ……しののんのデータが……」
「やっぱり分かっちゃう?そうだよ。箒ちゃんの戦闘データはある程度先に入力してあるから、後は現在の箒ちゃんのデータを見ながら最新の状態にアップデートするだけなんだよ」
一から全部する訳じゃないんだ。
それなら早く終わりそうだ。
束さんはコンソールを開いて操作を開始し、それと同時に空中投影型のディスプレイを6枚ぐらい出すと、すぐに非常に多くのデータに目を配らせていく。
「ほっちゃんはこっちを使ってね」
「は~い」
本音ちゃんは束さんに用意された空中投影型のキーボードで作業のアシストをしていく。
改めて見ると、本当に本音ちゃんは凄いって実感する。
だって、たった一枚とは言え、作業スピードは束さんに匹敵してるし。
「お?やるねぇ~」
「えへへ~」
なんて事を言っている束さんも、本音ちゃんと同じタイプのキーボードを6枚同時に叩いていってるし。
やっぱこの人は規格外だ。
「このISって基本的に近接対応型なんだね~」
「おぉ~!そこまで分かっちゃう?正確には近接戦闘を主軸に万能型に調整してあるんだよね~。きっとすぐに馴染むんじゃない?念の為に自動支援装備も装備しておいたから」
「ほぇ~…凄いね~」
「でしょでしょ~?」
この二人……雰囲気がそっくりだ!
束さんと本音ちゃんの周囲だけ、まるで漫画で使われるキラキラのトーンが見えるようだよ…。
「そう言えば……ほっちゃん。君って前にかおりんのおっぱいを揉んだ事があるよね…?」
「な…なんでそれを……?」
「むふふ~♡束さんはなんでも知っているのだよ~」
なんかコソコソと話し出したけど、何を話してるんだ?
「で?どんな感じだった?」
「どんな……?」
「ほら、感触とか匂いとか…」
「ん~……一言で言っちゃえば~…」
「言っちゃえば?」
「プニポニョ~ン……かな?」
「プ…プニポニョ~ン…!」
つーか、話しながらあんなにも早く作業が出来るって……どんだけ。
「いいなぁ~…私もかおりんのおっぱいを揉みたいなぁ~…」
「いつかきっとできますよぉ~」
「ほっちゃんはいい子だねぇ~」
今回の事で、この二人が少しでも仲良くなってくれれば、個人的には嬉しいな。
もう少し束さんはコミュニティーを築くべきだと思うんだよ。
そうすれば人生がもっと華やかになって楽しいだろうに。
「「プニポニョ~ン♡プニポニョ~ン♡」」
「か…佳織ぃ~!一夏ぁ~!なんか姉さんと本音が謎の呪文を唱えながら作業をしていて怖いんだけどぉ~!?」
「な…謎の呪文?」
「さっきから口を揃えてプニポニョ~ンって言ってる…」
「なんじゃそりゃ」
どーゆー意味だよ。つーか、どこの言葉?
何を言い表してるの?
「そうそう。この紅椿は従来のISを超えるスペックになる……予定だったんだけどな~…」
「予定だった?それはどういう意味ですか?」
「まだまだ未熟なお前にいきなりオーバースペックな機体を渡してもISの性能に振り回されるのがオチだ。だから、私から性能をデチューンするように言ったんだ」
千冬さんが言ったんだ…。
冷静に考えると当然だよね。
いきなり性能が高いISを渡されても、一番困るのは操縦する本人だし。
「この紅椿ってIS……しののんの成長に合わせて色んな機能や機体性能が向上するようになってるんですね~」
「ほぅ…?そこまで理解していたか」
ほ…本音ちゃん?しれっと今、君の凄まじい才能の片鱗を見た気がするんだけど…?
もしかして本音ちゃんって…私が思っている以上の天才だったりするの?
「よし!これで終~わりっと!ほっちゃんのお蔭で予想よりも早く終わったよ~。ありがとね」
「私もいい勉強になったから、お相子ですよ~」
そして意外と勤勉と。
実は本音ちゃんって各教科の成績がかなり良かったんだよね…。
時々、私の方が勉強を教えて貰ってるぐらいだし。
けど、機体性能が制限されているって言ってたけど……どれぐらいなんだろう?
「今の紅椿は大体、第3世代初期機ぐらいに抑えてあるよ。これなら今の箒ちゃんでも問題無く扱えると思うよ」
「わ…分かりました」
それって……つまり、今の紅椿の性能はラファールよりも少し上ぐらいって事か。
それなら確かに扱いやすいだろう。
「「「「………………」」」」
複数の視線を感じたので後ろを向いてみると、他の生徒達が作業の手を止めてこっちをじ~っと見ていた。
「おやおや~?てっきり嫉妬の一つでもするかと思ったけど、意外と何も言わないんだね~?」
そりゃ、あそこまで懇切丁寧に説明すればね。
文句を言う前に論破されたに等しいわけだし。
「そんな君達に天才束さんからありがたい一言をプレゼントしよう」
あ~…多分アレを言う気でしょ。
「この世界は往々にして不平等に出来てるんだよ。私やちーちゃん、かおりんのように生まれつき天才的な才能を持つ者。生まれた家によって金に困らずに裕福な生活をする者。他にも例を挙げればキリが無い。分かる?真の平等なんてどこにも存在しない。ここに揃っている代表候補生達も、そして箒ちゃんやいっちゃんも、その不平等故に専用機を手に入れたに等しいんだから」
……なんだか随分と長々と語ったな…。
言ってる事は文句のつけようがないぐらいに真理なんだよな。
かく言う私自信だって転生なんてズルをしている。
これも偏に不平等であるが故の結果だろう。
「あ、後は自動処理に任せておけばパーソナライズも終了するよ。そうだ。ついでだからかおりんのラファールⅡも見てあげるよ。前から一回見てみたかったんだ」
「別にいいですよ」
全てのキーボードとディスプレイを収納し、こっちを向く束さん。
それに合わせて本音ちゃんもこっちに戻ってきた。
いつものように私がシャア様のエンブレムを模したペンダントの形をした待機形態を握りしめて集中する。
すると、私の体を光の粒子が覆い尽くして、愛機であるバリスティック・リヴァイヴが展開された。
「ほぇ~。こうして近くで見ると、隅から隅まで真っ赤なんだね~。んじゃ、少し見せて貰おうかなっと」
束さんがラファールの装甲の隙間にある専用のコネクターにコードを刺す。
すると、さっきみたいに空中にディスプレイが表示される。
「ほうほぅ…。流石はほっちゃん。本当によく整備してあるね」
「かおりんの専用機ですから~」
「だよね~!分かるわ~」
この短い間ですっかり仲良くなったな…この二人。
雰囲気が似てるからか?
「あれ?機体名が変わってる?」
「あぁ…。実は、新しい装備を装着したら、それに伴って名前が変わったんですよ」
「ふ~ん…。にしても、『ラファール・リヴァイヴ・バリスティック』って無駄に長いね…」
「私もそう思い、普段は『バリスティック・リヴァイヴ』と略しています」
「それが妥当だね」
語呂もいいしね。
(にしても、本当にISを纏ったらかおりんの雰囲気が一変するんだな…。可愛いかおりんも大好きだけど、凛々しくてカッコいいかおりんもまた……♡)
束さんが恋する乙女の瞳でこっちを見るんですけど。
「まるでISのお手本のように武装のバランスがいいねぇ~。でも、機動性と運動性がずば抜けて高過ぎ。各部スラスターのリミッターが解除されただけで、ここまで強化されるもんかね?」
「それに関しては私も同感だ。こっちでは通常のラファールⅡの3倍のスピードを観測している」
「3倍…。でも、このスペックじゃ精々1.35倍ぐらいが限界なのに…」
「多分だが、この速度は佳織の技量の成せる技じゃないかと思っている」
「操縦者の技量で機体スペック以上の性能を発揮するのは珍しくはないけど……」
千冬さんと束さんが真剣な顔で話している…。
こんな二人を見る事になるなんて…。
私的にはかなりレアな光景です。
「そこの子。確かデュノア社から出向してたよね?会社から何か届いてたりしてるの?」
「え?ぼ…僕?」
「そうだよ。何か無いの?」
「こ…ここにリストが……」
「どれどれ?」
シャルロットが恐る恐る、手に持っていたタブレットを束さんに手渡した。
「遠距離戦特化型に機雷散布?なにこれ?この高機動特化型は分かるけど…」
久々の再会ではあるけど、今日は昔見られなかった束さんの意外な一面が見られて新鮮な気分だな。
少なくとも、私は束さんの愉快な部分しか知らないし。
「使用する現実的な装備としては、この遠距離特化型と高機動特化型だね。流石に同時装着は難しそうだけど。それでも一部分に特化しているのはいいと思うよ。やるべき事がハッキリとしているからね」
「あ…ありがとうございます…」
また束さんが他人を褒めた!?
「た…束……もしかして熱があるんじゃないか?」
「体調が悪いのなら、あまり無理しないでくださいね。姉さん」
「薬取ってこようか?」
「なんで素直に褒めただけで、ここまで言われないといけないの?」
「「「普段の自分の言動を顧みろ(ください)」」」
集中砲火だ……。
私も三人の意見には同感だけど。
「これなら私が何か手を加える必要はなさそうだね。この機体に関してはほっちゃんに一任した方がいいかも」
「それは私も賛成だ。今や、このラファールⅡの事を一番知っているのは布仏だからな」
「べた褒めだな。本音」
「にゃはは~…照れるにゃ~♡」
一度調子が戻ると、絶対にぶれないのが本音ちゃんだよね。
もう完全にデフォルメになってる。
「あ、もうそろそろパーソナライズも終わるよ。準備はいいかな?箒ちゃん」
「はい。待っている間に心の準備も出来ましたし」
「よしよし。それじゃあ飛んでみてよ。箒ちゃんの思った通りに動く筈だよ」
「了解です。では、やってみます」
箒が精神集中をする為に少しだけ目を閉じると、次の瞬間にはかなりのスピードで紅椿が大空へと飛翔した。
確かに速いけど、速過ぎはしない。
本当にリミッターが掛けられているようだ。
「中々のスピードだな」
「本来のスピードには程遠いけどね」
「今はそれでいいんだ」
ラファールのハイパーセンサーで見てみると、紅椿を纏った箒は上空200メートルぐらいでストップしていた。
「どんな感じ~?」
『今まで使用してきた打鉄より軽く感じます」
「機動性が違うからね~。箒ちゃんのデータも入力されてるし」
オープンチャンネルで話してるけど、束さんも通信機でも装備してるのかしらん?
「今の状態で使える武装は、今右にある『雨月』と左にある『空裂』の二振りの剣だよ。武装データは今から送信するね」
右手人差し指をピンと立てて何かを押すような仕草をすると、なんだか軽やかな音が聞こえた。向こうにデータが送られたんだろう。
「んじゃ、実際に使ってみよ~。まずは右の雨月ね。これは一対一で戦闘する時に有効な武装で、剣として使えるのは勿論、打突の動きに合わせて刀身からエネルギーの斬撃を放てるんだよ。威力はあるけど、射程距離がアサルトライフル程度で、お世辞にも遠距離戦闘には向かないね。機動性で撹乱しながら接近すれば問題無いかもしれないけど、基本的には近~中距離戦で使用する武器だと思っていればいいよ」
説明の後、箒は実際に右の腰に装着してあった赤い剣…雨月を装備した。
そして、全力で突きを放つ。すると、剣の周囲に赤い光球が出現し、それがマシンガンのように撃ち出されて近くの雲が蜂の巣になった。
「お次は空裂だね。これは一対多数の特化した武器で、斬撃に合わせて帯のようなエネルギーの刃を放つんだよ。振った範囲に自動で展開するから便利だと思うよ。試しに今から出すミサイルを迎撃してみて」
「はい」
言うが早いが、束さんはISの展開技術の応用と思われるやり方で16連装のミサイルポッドを呼びだし、同時に一斉射撃。
『……来るか!』
箒は急いで左手に空裂を装備、構えてからの流れるような動作で横に一回転するように動き、その刀身から説明通りに帯状のエネルギー波が放たれ、全てのミサイルを迎撃した。
「ほぅ……」
思わず呟いてしまった。
ミサイルが爆発した影響で生じた爆煙が消えると、太陽光に輝く紅椿が雄々しき姿を見せていた。
その武器の性能に皆が驚きを隠せないでいた。
「威力はあるけど、射程は短いみたいね…」
「多分、射程が短いのは紅椿の高い機動性を前提としているからだろうね」
「多少の射程距離の短さは機体の性能と篠ノ之さん自身の技量で幾らでもカバーできる」
「これから腕を磨いていけば、次第に射程距離など意味を成さなくなるだろう」
「私のティアーズのような遠距離が得意な機体とは微妙に相性が悪そうですわ」
代表候補生の皆も、それぞれに紅椿の性能を分析しているみたい。
さっきまで揃って静かだったのは、それだけ集中していた証拠だろう。
「おい……」
「な~に~?ちゃんと
「誰が言葉遊びをしろと言った」
「私はきちんと約束を守ったもん!」
もん!って……今年で束さん…何歳だっけ?
いや…考えるのはよそう…。
「まるで絵に描いたような浪漫武装だな~…。あれじゃ私、ちょっと不利かも」
「でも、機動性とかはいっちゃんの白式の方が上だよ?」
「そうなんですか?」
「うん。確かに紅椿の武器は個性的だけど、シンプルに攻撃力が高くて、しかも他の武装も詰める白式の方が汎用性は高いと思うな~」
「そんな風に言われちゃったら何にも言えなくなる…」
はい論破。
ま、私から見ても白式の方が使い勝手はよさそうだけどね。
束さんの何回になるか分からない説明を聞いている間に箒が降りてきた。
「おつかれ~、しののん~」
「いい動きだった。これからが楽しみだな」
「そ…そうか?佳織に言われると……なんだか嬉しいな……」
最後の方がよく聞こえなかったけど、喜んで貰えてなにより。
今日からは箒も専用機持ちになるのか。
今年の一年生って専用機持ち多すぎじゃね?
「た…大変です~!!織斑先生~!!」
「山田先生?」
いきなり慌てて走って来た山田先生。
いつにも増して慌てていて、本当にヤバい事態である事を思わせる。
(とうとう……やって来たか)
間違いなく、専用機を持っている私達は駆り出されるだろう。
果たして私は……ちゃんと帰れるのだろうか…。
今まで考えないようにしていたけど、いざ直面すると…緊張するな…。
「佳織?急にどうしたの?」
「え?」
「かおりん……顔色が悪いよ?」
「そ…そうか?潮風でも浴び過ぎたかな…?」
適当に誤魔化したけど、一夏は鋭いから勘付かれている可能性は高いだろうな…。
「急にどうした?」
「まずはこれを見てください!」
山田先生が千冬さんに小型の端末を見せる。
すると、その途端に千冬さんの表情が強張った。
「特命任務レベルA……現時刻より対策を……」
「それがですね……実はハワイ沖で……」
「静かに。生徒達に機密事項が漏洩する」
「す…すいませんでした……」
「専用機持ちは……揃っているな」
「はい」
さっきから途切れ途切れに会話が聞こえてくる。
途中からはハンドシグナルで話しているけど。
多分、私達以外にも生徒達が二人の様子がおかしい事に気が付き始めたからだろう。
「では、私は他の先生方に知らせてきます!」
「頼んだぞ。全員注目!!」
山田先生が走り去ってから、千冬さんが手を叩いて自分に視線を注目させる。
「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移行を開始する。よって、本日の稼働テストは中止とする。各班ごとにISや道具を片付けた後に速やかに旅館に戻り、連絡があるまで自室にて待機するように!以上!解散!!」
急な事態に困惑を隠しきれない皆。
私達でさえそうなんだから、他の子達の混乱具合は半端じゃない。
「ど…どういう事?」
「ちゅ…中止って……」
「本気で意味不明なんですけど……」
皆揃ってオロオロとしまくってる。
無理も無いけど、ここは大人しく指示に従った方が身の為だと思うよ?
そうじゃないと……
「何をぼさっとしている!!とっとと片付けて戻れ!!これから許可無く室外に出た者は問答無用で拘束する!分かったら返事をしろ!!」
「「「「「は…はい!!」」」」」
こうなるから。
千冬さんの鶴の一声でようやく皆が動き始め、撤収準備が始まった。
「専用機持ちは全員集合だ。織斑にオルコット、凰にデュノアにボーデヴィッヒ、更識と仲森…それと篠ノ之も来い!」
「は…はい!」
少し戸惑いながら返事をする箒。
多分、自分も頭数に入っている事に戸惑っているんだろう。
「布仏。お前は他の連中を手伝ってやれ。それからは自室待機だ。いいな?」
「は…はい……」
完全に怯えきっている本音ちゃん。
こんな時は……
「大丈夫だ」
「かおりん……」
「例え何があっても、私全員で頑張ればきっとなんとかなる。これまでだってそうだっただろう?」
「分かってる……けど……」
「けど…?どうした?」
「なんだか……凄く嫌な予感がするの……」
……鋭いな……本音ちゃんは。
「ならば、私達が早々に片付けて、君の嫌な予感が気のせいであったと証明しよう」
「え……?」
「だから、君は作戦の成功をここで祈っていてほしい」
「かおりん……」
ISを収納してから、本音ちゃんを頭を優しく撫でる。
「じゃ、行ってくるね」
「いってらっしゃい……」
他の皆は先に行っているっぽい。
私も急がないと!
「お願い……皆無事に帰ってきて……」
こうして、今まで最大の死闘の幕が上がろうとしていた。
本音ちゃんではないが、実は私も先程から嫌な予感が胸中を渦巻いていた。
これが杞憂である事を今は祈るばかりだ…。
まさかの7000文字。
週末だからって気合を入れた結果がこれか……。