神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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二日目に突入すると思った?
残念!今回は佳織サイドの話だよ!






第42話 もう一人の私

 千冬さんの部屋から出て来た私は、言われた通りに二回目の温泉へと向かっていた。

 

「みんな……大丈夫かなぁ~…」

 

今の千冬さん、完全に酔っぱらってるからなぁ~…。

下手に絡まれてなきゃいいけど…。

 

「にしても、一日に二回も温泉を楽しめるなんて、まるで貴族のお風呂みたいだにゃ~♡」

 

皆には悪いけど、私だけもっとお肌をスベスベにしてきまぁ~す♡

 

「あ…あれ?仲森さん?」

「なんでここに?」

「ん~?」

 

誰だ?私の事を呼ぶのは?

 

「岸原さんに夜竹さん?」

 

前からやって来たのは、私と同じ一組の生徒である岸原理子さんと夜竹さゆかさん。

勿論、二人とも浴衣を着ている。

 

「ほら、やっぱり気のせいだったんだよ」

「ん~…でもぉ~…」

「どうしたの?」

「あ…実はね、さゆかが仲森さんが温泉に行くところを見たって言ってて…」

「だって~、実際に見たんだもん!」

「でも、本人は目の前にいるじゃない」

「それは……」

 

ふむ……話の内容からすると、どうやら私のそっくりさんを偶然にも見かけたようだ。

 

「それって多分、夜竹さんが見かけた人が私にそっくりだっただけなんじゃないのかな?」

「そ…そうかな…?」

「世の中には自分と似た人が三人はいるって言うし」

「そうだよ!それに、さゆかが見かけた子って金髪だったんでしょ?」

「う…うん。なんて言うか…仲森さんがまんま金髪になった感じだった」

「金髪の私……」

 

う~ん……想像出来ん。

 

「ところで、仲森さんは今からどこに行くの?」

「温泉。ちょっと汗掻いちゃって」

「汗?またなんで?」

「少し体を動かしてたら……ね」

「「体を動かす……」」

 

んん?急に奥の方を見てどうした?

 

「こっちって先生達の部屋がある方だよね?」

「うん」

「もしかして、さっきまで誰かの部屋にいたの?」

「ちふy……織斑先生の部屋にさっき呼ばれてさ。そこで色々と話したりして、その後にマッサーj「「織斑先生!?」」…はい?」

 

こっちの話を急に遮らないでよ。

ビックリするじゃん。

 

「お…織斑先生の部屋に呼ばれて……」

「体を動かした……!」

「お…お~い…?」

 

どうして『体を動かした』の部分に着目するの?

 

「織斑先生って確か……」

「一人部屋……」

「聞いてますか~?」

 

……聞こえてない。

 

「「キャ~♡」」

「ひっ!?」

 

い…いきなりどうした!?

 

「これはもう……」

「完全に……」

「「千冬×佳織確定!!!」」

「おいこらそこ!?何を言ってる!?」

「急いで皆に伝えなきゃ!!」

「こ…これは本当にえらいこっちゃ…!」

「あっ!どこに行くの!?」

 

私の静止を完全無視して二人は走り去っていってしまった…。

 

「……どうしよう……」

 

まぁ…いざとなったら千冬さんから直々に雷が落ちるだろうけど。

 

「……温泉行こ」

 

もうすぐ一日も終わるのに、何が悲しくてまた(精神的に)疲れなきゃいけないのさ…。

 

「……なんでさ」

 

これを言うようになったら、私も末期だな……。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「はぁ~…」

 

溜息を吐きながら私は再び温泉に隣接している更衣室の扉を開く。

そのまま、真っ直ぐに先程使った籠と同じ場所に行く。

すると、私の隣の籠に浴衣が綺麗に折りたたまれた状態で入っていた。

 

「あれ?」

 

誰か先客がいるのかな?

一応、ここはIS学園の完全な貸切じゃないから、一般のお客さんがいても不思議じゃないけど…。

 

「見た感じ、他にはいないっぽいな…」

 

うぅ……知らない人と二人っきりか…。

この時間帯なら私一人で温泉を独占できるって思ったけど、甘い考えだったな…。

 

「まぁ…私みたいな庶民には、これがお似合いか」

 

下手に贅沢な事を考えちゃいけないな。うん。

 

「時間も限られてるし、早く入ろっと」

 

素早く浴衣と下着を脱いで、籠にシュートイン!

そして、温泉へと再びGO!

 

「し…失礼しまぁ~す……?」

「ん?」

 

視界の先には、タオルで髪を纏めた女性の姿が見えた。

隙間から金色の髪が見え隠れしている。

海外から来た人かな?

 

「ほぅ…?これは……」

「え……?」

 

私の気配に気が付いたのか、ゆっくりとこっちを向いた彼女の顔は……

 

「これはまた……随分と可愛らしいお客さんだ」

 

私の顔と瓜二つの女の子だった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「……………」

「ふぅ……」

 

き…緊張する…!全然リラックスなんて出来ない…!

 

「どうしたのかな?先程からずっと黙っているが……」

「あ……いえ……お気になさらず……」

 

まさか、さっき言ってた私のそっくりさんと本当に鉢合せになるなんて~!

……そういや、温泉に行くところを見たって言ってたっけ…。

んじゃ、ここで遭遇するのは必然だった…?

 

(偶然の一言で片付けていい事じゃねぇ~ぞ!)

 

私もタオルで髪を纏めているため、第三者目線で見たら完全に同じ顔の人間が揃って温泉に入っているようにしか見えないだろう。

……まさかとは思うけど、ドッペルゲンガーじゃないだろうな?

私死んじゃうの!?

 

「…………(チラッ)」

「本当にいい湯だな……」

 

肌綺麗過ぎだろ!!

私なんかとは大違いだよ!!

そっくりなのは顔だけだよ!!

 

「見た所、君は学生のようだが……もしや、今ここに臨海学校で宿泊しているIS学園の生徒かな?」

「あ……そう…です……って、なんでIS学園が臨海学校に来ている事を…?」

「普通に書いてあったが?『IS学園様御一行』と」

 

そうでした。

旅館って団体客の予約とかがあると表に書いてたりするよね。

そりゃ分かって当然だ。

 

「海は楽しかったかね?」

「は…はい。久し振りに楽しく遊べました。そこまで知ってるんですね…」

「部屋から浜辺が見渡せるからね。楽しそうな声がここまで聞こえてきたよ」

「あはは……」

 

は…恥ずかしぃ~!!

まさか見られていたなんて~!

 

にしても……凄く大人びてる子だな…。

見た目的には私と同い年ぐらいに見えるのに…。

 

「どうした?」

「あ…すいません。なんか…綺麗だなって思って……」

「ふふ……ありがとう。そう言う君も十分に美しいと思うが?」

「そ…そんなことないですよ…。私なんてまだまだ子供だし……」

「…遠慮深いのは美徳ではあるが、余り自分を卑下するのはいただけないな」

「え?」

「自信を持ちたまえ。君はとても美しい」

「ありがとう……ございましゅ……」

 

美しいのはアンタの方だよ!!

そんな笑顔で言われたら、こっちの方がドキドキするじゃんか!

 

「そ…そちらはなんでここに……?」

「私か……」

 

ヤベ。もしかして聞いちゃいけなかった?

 

「私は仕事でこっちに来ていてね」

「お…お仕事ですか…」

「おかしいかね?」

「そ…そんな事は無いです!今時、あなた位の若さで企業や研究所とかに所属している子は沢山いますし!全然おかしくは無いです!」

「ふふ……ははは…。そこまで必死に言い訳をしなくてもいいよ。私は別に怒ってなどいない」

 

わ…笑われた…。

微笑む姿は優美で、普通に笑う姿はとても可愛らしい。

 

「ところで、この後君は何か予定でもあるかな?」

「い…いえ……特には……。ここを出た後は部屋に戻って寝るだけだと思います」

「ならば、少しだけ付き合ってくれないか?」

「つ…付き合う?」

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「悪いな。このような事につき合わせてしまって」

「い…いえ……大丈夫です…」

 

私と彼女は、温泉を出た後に揃って土産物屋に来ていた。

 

(本当に綺麗な子だな……)

 

湯を出たから頭に巻いていたタオルが取られて、その軽くウェーブのかかった金髪が美しく靡いている。

髪の長さは私よりも少し長くて、背中まで伸びている。

よく拭き取っていたから、浴衣が濡れる心配はないだろうけど…。

 

「部下達に土産を買っていこうと思ってね」

「ぶ…部下……」

 

もしかして…結構偉い立場の人?

 

「そう言えば、なんでさっきからずっと敬語を使っている?」

「それは……なんとなく……」

 

この子の前だと自然と敬語になっちゃうんだよぉ~!

 

「臨海学校に来ているのは一年生。つまり君は15~6歳ぐらいと言う事になる。私も歳は君達と同じぐらいだ。だから、無理に敬語なんて使う必要はない」

「そ…そうなんですか……?」

「………………」

 

あ、敬語……。

 

「そう…なんだね…」

「よろしい」

 

精神がガリガリと削られるぅ~!!

でも、不思議と嫌な感じはしないんだよな…。

この人とは間違いなく初対面なのに、どうしてか他人な気がしないって言うか…。

緊張感を感じながらも、少しずつ落ち着きつつあるって言うか…。

 

「あそこ……仲森さん?」

「ホントだ。でも、隣にいる子は誰?」

「仲森さんにすっごくそっくりじゃない?」

「双子?」

「「「いやいやいや」」」

 

私達と同じように土産物屋に来ている他の生徒がこっちを見ながら、なんか話してる。

ここでもひそひそ話はやめないのね。

 

「君は人気者のようだな」

「私の表面だけを見て言ってるだけですよ」

 

悪口を言われるよりはマシだけど、それでもいい気分は余りしない。

 

「土産にはどれがいいかな?」

「やっぱり、スタンダードなお菓子系がいいんじゃ?」

「ふむ……菓子か…。妥当ではあるが、だからこそハズレが無いとも言えるか」

「なにより、土産物屋にあるお菓子は沢山入っているから、大勢で楽しめると思うよ」

「一人で食べても味気ないだけだしな。ならば、その方面で決めていこうか」

「うん!」

 

そんな訳で、それから二人で色んなお菓子を見て回った。

中には試食が出来る物もあって、一緒に食べたりもしたっけ。

 

「これにするか」

 

彼女が手に取ったのは、合計で20個も入っているクッキー。

イルカの形をしていて、見た目も結構可愛い。

 

「おや?君も買うのか?」

「あ……家族に買っていこうと思って」

「なら、そのキーホルダーは?」

「なんか可愛かったから……えへへ……」

 

私が選んだお菓子はミニサイズのケーキが10個ぐらい入っているお菓子。

選んだ理由は単純に美味しそうだったから。

で、それと一緒に貝殻のキーホルダーも買う事にした。

 

「……少しだけ待っていてくれ」

「う…うん…」

 

そう言うと、そそくさとどこかに行ってしまった。

すぐに戻ってきたけど。

 

「私も同じ物を買おう」

「え?」

 

あらあら……意外な結果に。

 

「ついでだ。ここは私が奢ろう」

「じ…自分の分ぐらいは払うよ!」

「気にしないでくれ。こうして付き合わせてしまった、せめてもの礼だ」

「そこまで言うなら……」

 

変に遠慮したら、またなにか言われそうだ。

心苦しいけど、ここは大人しく彼女の好意に甘えよう。

 

「では」

 

私の分も持ってレジに向かう彼女。

そこで二人分の金を払ってくれた。

見た感じ、そこそこの額だったけど……

 

「君の分だ」

「あ…ありがとう」

「どういたしまして」

 

今日初めて会った子にここまでさせるなんて……。

いや、この子が飛び抜けていい子なのか?

 

「君のお蔭でいい土産が買えた。本当に感謝する」

「それはこっちのセリフだよ」

 

まさか、臨海学校に来てこんな出会いがあるなんて思わなかったよ。

人生、本当に何があるか分からないね。

 

「あ……私達まだ名前を言ってない」

「それだけ息が合ったと言う事だろう」

「そうかな……」

 

息が合う…か。

ちょっと嬉しいかも。

 

「わ…私は仲森佳織。君の名前は?」

「私は……」

 

その先を言おうとした瞬間、彼女が急にこっちにやって来て耳元に顔を近づけた。

 

「『()()()だよ(・・)赤い彗星(・・・・)

「!!!!!」

 

私をその名で呼ぶって事は……まさか彼女もISを……?

 

「ちょっと!?」

 

慌てて振り向くと、そこにはもう彼女の姿は無かった。

 

「あの子は一体……」

 

まるで幻だったかのように、影も形も無かった。

そして後に知る。

この時の出会いが私にとって『必然の出会い』だったのだと。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 佳織の元から去った後、彼女は軽やかに廊下を歩いていた。

すると、前方から一つの人影が走って来た。

それは以前、彼女と一緒にいた紫髪の少女だった。

 

「た…大佐!どこに行っていたのですか!?」

「温泉に入った後に土産物屋にな」

「お一人で行動なさるなんて、御身に何かあったら…!」

「心配無用だ。少なくとも、日本の旅館内でそんな真似をする輩はいまい」

「油断は禁物です!もしもヤクザが襲撃してきたら!」

「お前は少し任侠映画を見過ぎだ」

 

苦笑する大佐と言われた『彼女』。

 

「ほら、土産だ」

「おぉ!大佐自らこのような…!」

「帰ったら皆で食べるとするか」

「はい!」

 

先程までの心配そうな顔から一転、眩しい程の笑顔に変わる。

見える人には彼女の頭には犬耳が、尻には尻尾が見えていただろう。

 

「しかし……」

「どうしました?」

「矢張り……お互いに自覚していなくても、自然と引かれ合ってしまうのだな……」

「大佐?」

 

ふと、後ろを振り向いて目を細めながら微笑を浮かべた。

 

「このまま、君が私の同志となってくれれば嬉しいのだがな……仲森佳織……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団と炬燵以上に私を受け入れてくれる存在を私は知らない。

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