神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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プルとプルツーは正義。







第41話 彼女達の気持ち

 温泉後に行われた卓球大会を終えて、暫く部屋でゆっくりとしながら同室の同級生と談笑を楽しんでいたセシリアだったが、少し喉が渇いたので旅館内にある自販機に飲み物を買いに出かけていた。

 

「あら?」

 

それは彼女が偶然にも教職員が泊まっている部屋の前を通りがかった時だった。

一年一組の担任である千冬の部屋の扉の前に耳を当てながら張り付いてる見覚えのある姿が見えた。

 

「………箒さんに鈴さん?そんな所で何をして……」

「「シ―――――!!!」」

「え?」

 

 

二人揃って急に人差し指を自分の口に当てて『喋るな』のジェスチャーをする。

増々意味が分からなくなったセシリアだったが、その時、扉の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

『本当に久し振りですね。二人っきりでするのってこれが初めてかな?こういう時って大抵は一夏も一緒ですし』

『そ…そうだな。だが、偶には二人だけでするのも悪くは無いだろう?』

『ふふ……かもですね。それじゃあ、リラックスしてくださいね?体が強張っていたら意味無いですから』

『分かっている……んん……!佳織ぃ~……もう少し手加減を……』

『ダメです♡唯でさえ千冬さんは色々と溜まってるんですから、この機に全部出しちゃいましょ?』

『そ…それは……んふぅ……♡』

『効果出てきたみたいですね。それじゃあ、ここはどうかな~?』

『かお…りぃぃ~…♡や…やめぇ……』

『我慢してください。あ、ここもやっちゃお♡』

『あぁぁぁぁ~♡』

 

沈黙がその場を支配した。

そして、二人がどうして真剣な顔で聞き耳を立てていたのかが理解出来た瞬間でもあった。

 

「こ…これは……何がどうして…こうなって……え…?えぇ…??」

 

目がグルグルさせながら体全体を振るわせて、誰に言っているのか分からない質問を投げかける。

それを聞いているのかいないのか、箒と鈴は暗い空気を背負いながら落ち込んでいた。

 

「「………………」」

 

顔を真っ青にして廊下の床を見つめる二人。

その様子はさながら、バイオハザードに登場したゾンビを彷彿とさせる。

 

『よし!次は~…』

『いや…少しだけ待ってくれ、佳織』

『ふぇ?』

 

急に室内の会話が途切れる。

それを怪しんだ三人はさっき以上にドアに近づいて耳を寄せる三人だったが……

 

「「「ぶべらっ!?」」」

 

いきなり開いたドアの直撃を受けて、まるで北斗神拳継承者に倒されるモブキャラのような悲鳴を上げた。

 

「何をしている、小娘共」

「は…ははは……」

「こ…こんばんわ…です…織斑先生……」

「お…おやすみなさいですわ!!」

 

千冬から発せられるプレッシャーに気圧されて、思わず後ずさりする三人。

それに耐えられなくなったのか、すぐさま踵を返して逃走開始!……したのだが……

 

「甘い」

「「「なぁっ!?」」」

 

一瞬で回り込まれた。

 

「盗み聞きとは感心できんが……まぁ…これもいい機会か」

 

溜息を吐きながらも、怒ると言うよりは呆れている感じの千冬。

 

「お前等」

「「「は…はい!」」」

「今から他の連中……ボーデヴィッヒとデュノア、それと一夏と布仏と更識を呼んでこい」

「え…えっと……」

「とっとと行け!」

「「「りょ…了解!!」」」

 

今度こそ解放された三人は、千冬に言われた任務を果たすために、それぞれに分かれた。

 

「どうしたんですか?」

「なに。小生意気な鼠が三匹いたんでな。少しパシらせただけだ」

「???」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 数分後。

千冬の部屋にはいつものメンバーが一堂に会していた。

だが、佳織と一夏以外の全員が口を噤んでいて、室内には微妙に重苦しい空気が漂っていた。

 

「ふぅ~…千冬さんってば、本当に溜まりすぎですよぉ~。偶には発散しないと、体を壊しちゃいますよ?」

「そう思うのなら、これからも佳織がしてくれないか?」

「仕方が無いなぁ~…」

 

まるで恋人のような会話をする二人を見て、目を見開いてしまう一夏以外の全員。

 

「もしかして、マッサージをしてたの?」

「そうだ。久し振りに佳織のマッサージが恋しくなってな」

「あ~…分かるわ~。佳織って独特のツボを突いてくるから、普段じゃ味わえない気持ちよさがあるんだよね~」

 

唯一会話に入ってくる一夏を見て、またまた目を見開く面々。

その顔はお世辞にも年頃の少女達が見せていいような表情ではない。

 

「マ…マッサージ……?」

「うん。前はよく私と佳織で姉さんの体をマッサージしてあげてたんだよ」

「時には私と一夏とでお互いの体をしあった事もあったよね」

「うんうん」

 

ドア越しに聞こえてきた声の正体が分かった途端、箒とセシリアと鈴は、その場にへたりこんだ。 

 

「紛らわしいのよぉ~…」

「そうですわ…。てっきり私は……」

「私は?なんだ?」

「な…なんでもありませんわ!」

 

千冬が嫌味ったらしい笑顔で言うと、セシリアは顔を真っ赤にして否定した。

 

一方、事情を全く知らない他のメンバーは揃って頭の上に疑問符を浮かべている。

 

「取り敢えず、適当な所に座れ」

「「「「「「「は…はい…」」」」」」」

「は~い」

 

おどおどとしながらも、それぞれが言われた通りに適当に座った。

 

「ん?佳織……汗を掻いたのか?」

「そりゃ、あれだけすれば汗の一つも掻きますよ」

「ふふ…悪かったな」

 

実は、箒達が他のメンバーを呼びに行っている間も千冬は佳織のマッサージを受けていたのだ。

お蔭で千冬の体からは凝りが取り除かれ、実にスッキリした表情になっているが、逆に佳織は汗を掻いて疲れた顔になっている。

 

「風邪を引いたら大変だ。もう一回風呂に行ってくるといい。今の時間ならまだ大丈夫な筈だ」

「そうですね…わかりました。それじゃあ、もう一回行ってきます」

 

素直に頷くと、佳織はそそくさと部屋を後にした。

部屋を出ていく時に佳織は他の女子達に向かって一言…

 

「頑張ってね」

 

と言い残していった。

それが何を意味するかは、すぐに分かる事になる。

 

「「「「「「「「……………」」」」」」」」

 

一体どうすればいいのか分からないまま、全員が沈黙してしまった。

 

「なんだ?急に黙ったりして…。学園でのテンションはどこに行った?」

「皆緊張してるんじゃない?」

「そうなのか?」

「え…えっと……その……」

 

試しに箒に聞いたら、次の言葉が出ない始末。

明らかに緊張している証拠だった。

 

「ほら、皆は基本的に学園で教師をしている姉さんしか知らないわけだし。いきなりプライベートモードになれって言われても難しいでしょ」

「そう言うお前は大丈夫なのか?」

「家族に遠慮する必要があるの?」

「ふむ……道理だな」

 

完全に姉妹の会話になっている織斑姉妹。

この時ばかりは一夏の奔放さが羨ましい女子達だった。

 

「にしても、他の皆はともかく、箒と鈴はプライベートで姉さんと話すのはこれが初めてじゃないでしょ。何を緊張してるの?」

「む…無茶を言うな!私が最後にまともに話したのは小学生の頃に転校する前だぞ!あれから何年経っていると思っている!」

「それはそうだけどさ~…。じゃあ鈴は?」

「あ…あたしは…その……」

「あぁ。鈴って昔から姉さんの事が苦手だったっけ」

「そうなのか?」

「そ…そんなことはないでしゅよ!?」

「噛んだ時点で肯定してるようなもんでしょ…」

 

ジト目で鈴の事を見る一夏。

その口は猫の口になっていた。

 

「仕方が無い奴らめ…。一夏、そこの冷蔵庫に飲み物がある。丁度人数分ある筈だから、出してくれ」

「りょ~か~い」

 

千冬に言われるがまま、一夏は立ち上がって部屋の奥にある冷蔵庫の扉を開き、中にあるドリンク類を全部出して持ってきた。

 

「ラムネにオレンジジュースにスポドリ、コーヒーに紅茶にミルクココア…後はアップルジュースと野菜ジュースか」

「ほれ。遠慮せず好きなやつを取って構わんぞ」

 

畳に置かれたドリンクを見つめる事数秒。

飲みたい物が決まったのか、順番に取っていった。

 

「「「「「「「い…いただきます…」」」」」」」

「なんで態々言うの…?」

 

ド緊張している皆を見て苦笑を浮かべながら、自分が取ったドリンクを飲む一夏。

 

「……飲んだな?」

「そうだけど?」

「え…え~!?もしかしてこの中に自白剤が…」

「そんな訳あるか馬鹿が。漫画の読み過ぎだ」

 

本音がいつものように間延びした口調で驚くと、千冬がすかさずツッコむ。

 

「……これ、賄賂でしょ?」

「流石に一夏の目は誤魔化せないか」

 

そう言って微笑を浮かべる千冬の手には、いつの間にか缶ビールが握られていた。

因みに、佳織がマッサージをする前にも一本飲んでいた為、これで本日二本目である。

 

迷う事無く缶を開けて、その中身を胃の中に流し込んでいく。

 

「やっぱり……」

 

一夏だけは予想していたのか、あまり驚きはしなかったが、他のメンバーは口をあんぐりと開けて驚きを隠せないでいた。

 

「ここが家ならば一夏に何か作らせるところなんだがな」

「今いるのは旅館だからねぇ~。今の時間にいきなり注文するのもあれだし」

「だな。今回は諦めるしかないか」

 

もう少し時間が早かったら注文していたのか。

 

いつもの毅然とした姿勢を決して崩そうとしない千冬からは想像も出来ない程にリラックスして酒を飲んでいる姿に、女子達は唖然としていた。

 

「何を見ている。私だって人並みに酒ぐらいは飲む。それともあれか?私は傍から見るとゲッター線を口から摂取しているように見えるのか?」

「姉さんなら普通にゲッター線を克服しそうだよね…」

「聞こえているぞ、一夏」

 

ボソっと呟いたつもりが、ばっちり聞こえていららしい。

酔っていても千冬の地獄耳は健在のようだ。

 

「け…けど、いいんですか?今は一応仕事中になるんじゃ……」

「これは佳織にも言ったが、今はもう夜。つまり…今日の仕事はとっくに終了している。故に問題は無い」

「へ…屁理屈だ……」

「固い事を抜かすな。それに……もう賄賂は受け取っているだろう?」

 

千冬が全員の手元を流し見る。

ここでやっと一夏が言った意味が理解出来た。

 

「こうなったら素直に諦めた方がいいよ…。腹芸じゃ姉さんには勝てない」

「人聞きの悪い事を言うな。それではまるで私が脅しているみたいじゃないか」

「半分脅しているようなもんでしょ……」

 

などど言いつつも、遠慮なく飲む一夏。

長い間、千冬の妹をしてきた彼女は当の昔に諦めの境地に至っているのだ。

 

「さて…と。前置きはこれぐらいでいいだろう。そろそろ暴露タイムと行こうじゃないか」

 

暴露。

その単語を聞いた途端、一夏も含む全員の背中に嫌な予感が走った。

 

「お前達……佳織の何処を好いている?」

 

まさかの名指し。

想像以上にストレートに聞いてきた千冬に、顔が沸騰する婦女子達。

 

「わ…私はその……いつの間にか好きになっていた…としか……」

 

目を細めながら両手でラムネを持って傾ける箒。

 

「あたしも……かな…。優しいところ…とか、好きな理由なら幾らでも言えるけど、好きになった切欠って言われると……」

 

スポドリの淵をなぞりながらも、声量は衰えない鈴。

 

「オルコット。お前は?」

「佳織さんこそ私の理想の女性!…でしたけど、今はきっと…別の理由もありますわね……」

「ほぅ?その理由とは何だ?」

「分かりません……でも、佳織さんを見ているとこう……胸が熱くなって……」

 

最初はハキハキと答えていたが、急に口籠るセシリア。

その顔は妙に熱っぽい。

 

「ラウラ。お前はどうだ?公衆の面前でああもハッキリと言ったんだ。何か明確な理由があるんだろう?」

「そう…ですね。嫁…いや、佳織はとても強くて…優しくて……」

「そうだな。確かに佳織は底なしに優しく、そして強い。その『強い』が何を指しているのか……ちゃんと分かっているんだろう?」

「はい…。実力もありますが……佳織は『心』が強いと思います」

「その通りだな。佳織の精神力は実力以上に常人を逸脱している。本人にその自覚は無いようだが」

 

愛しの佳織が褒められたことがよっぽど嬉しいのか、笑顔でビールを飲む千冬。

 

「佳織ってば昔から自分の事を過小評価する事があるよね」

「慎み深いのが日本人の美徳とはよく言ったものだが、あれは少々行き過ぎている気がするな……」

 

本人が全く気が付いていない『異常性』を、ここにいる少女達はハッキリと分かっていた。

これも恋する乙女が成せる技か。

 

「その『強さ』に惚れたのか?」

「それもあります…。けど、佳織は言ってくれたんです」

「何と?」

「『私は君を裏切らない』…と」

「成る程な……」

 

その時、全員が同じ事を思った。

『そんな事を言われたら、そりゃ惚れるわ』…と。

 

「布仏はどうだ?佳織とは同じ部屋に住んでいるんだ。何かあるだろう?」

「わ…私はぁ~……」

 

話を振られて急に縮こまる本音。

その顔からは明らかに湯気が出ていた。

 

「かおりんが頑張っている姿を見て……かおりんの笑顔を見て……気がついた時には…その……」

「好きになっていた…と?」

「はぅ~…」

 

今までで一番乙女っぽい反応だった。

 

「それに……かおりんが傷ついている所を見て……私も支えてあげたいって思って…。でも、私はISの操縦は苦手だし……専用機も持ってないし…。私に出来る事なんてかおりんのISを整備する事だけで……」

「……充分すぎるだろう」

「ふぇ…?」

「ある意味、この中で佳織の事を最も支えているのはお前だ。布仏」

「わ…私が…?」

「そうだ。佳織が常に万全の状態で戦えるのは、お前の整備があってこそだ。佳織も似たような事をお前に言ったんじゃないか?」

「あ……」

 

一筋の涙が零れ、頬を伝う。

 

「お前は立派に佳織の支えとなっているよ。自信を持て」

「は…い……」

 

嗚咽をしながら涙を浴衣の袖で拭く本音。

だが、その顔は確かに笑っていた。

 

「で?デュノアと更識はどうなんだ?」

「ぼ…僕ですか!?」

「ああ。……もしかして…自覚してないのか?」

「ぼ…僕は……」

 

シリアスな雰囲気から一変。

急に話題に上げられて戸惑うシャルロット。

 

「わ…分かりません……僕の中にあるこの気持ちがなんなのか……」

「はぁ……。まぁ、今はそれでいいのかもしれんな」

 

やれやれ…と言った感じで首を振る。

 

「更識はどうだ?」

「私は……その……憧れ……です…」

「憧れ?」

「はい…。まるで本物のヒーローみたいにカッコよくて……優しくて……」

「だから憧れたと?」

「です……。でも……」

「でも?」

「今は……それとは違う風に見てしまう時があるって言うか……」

「………そうか」

 

またまた全員の気持ちが一致した。

『それって完全に惚れてるじゃねーか』…と。

 

「そ…そうだ!一夏はどうなのさ!?」

「私?勿論好きだけど?」

「え…?なんかあっさりしてる…?」

「いやだって、色々と理由付けしてもさ、好きなものは好きなんだから仕方ないじゃん」

 

実にスッパリとした結論。

だが、それ故に真理でもあった。

 

「皆に散々と聞いたけどさ、姉さんはどうなの?」

「ふっ……それを私に聞くか?」

 

何を今更と言いたげな顔をする千冬。

その顔はどこまでも自信満々である。

 

「私は佳織の事を誰よりも愛している」

「あ…愛…!?」

「わぁ~お……」

「ス…ストレート……」

 

自分達よりも上の愛情表現にしどろもどろになるヒロインズ。

その自信に思わず仰け反ってしまう。

 

「ここにいる全員が佳織を巡る『恋敵(ライバル)』になるわけだな」

「ラ…ライバル……!」

「だから……精々自分磨きを怠るなよ?小娘共」

 

これから先の事を思って微笑む千冬。

その手には三本目になる缶ビールが握られていた。

 

 

 

 

 

 




毎度の事ながら、やっぱり長くなっちゃいますね…。

でも、その分濃密になるからいいんですけど。

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