神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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浪漫兵器の魅力に勝てる人っているんでしょうか…?







第38話 青い巨星のかき氷

「鈴!!大丈夫!?」

「げほっ!げほっ!だ…大丈夫…だと思う…」

「そう……よかった」

 

全く……目の前で鈴がいきなり沈んだ時は本気で慌てたよ。

急いで泳いでいって手を掴むことが出来たからよかったものの、もしも間に合わなかったらと思うと、背筋がゾッとするよ。

 

「んじゃ、一旦浜辺に戻ろうか。背中に掴まって」

「え?でも……」

「いいから」

「……分かったわよ」

 

恥ずかしそうにしながら背中に掴まる鈴。

助けられるのが恥ずかしいって思うのなら、最初から競争なんて言わなきゃいいのに…。

 

誰かを背負いながら泳ぐのは中々にコツがいる。

中学時代に救急救命講習を受講してなかったらヤバかったな。

学んだ知識は決して無駄にはならないって、お父さんもよく言ってたし。

 

「その……佳織」

「なに?」

「………ごめんね。んで…ありがと」

「気にしなくてもいいよ。大切な人がピンチだったんだ。助けるのは当然でしょ?」

「た…大切な人……」

 

ん?妙に首の辺りが暖かいな?

プシュ~…って音が聞こえた気もするし。

 

大切な友人が命の危機だったんだ。

いくら私の傷が治ったばかりだとしても、多少は無茶はしますよ。

本当は少しだけ痛かったけど。

 

「よし、到着っと」

 

やっと浜辺に着いたよ。

さて、どこか休める場所は……。

 

「ちょ…ちょっと!もう大丈夫よ!降ろして!」

「本当に?」

「本当よ!」

「はぁ……りょーかい」

 

渋々、私は鈴をゆっくりと降ろす。

 

「おっと……」

「ほら、少しふらついてるじゃん」

「も…もうOKよ。ホント」

「…………」

 

どう見ても無茶してるようにしか見えないな~。

 

「あら?佳織さんに鈴さん?」

「あ」

「げっ!」

 

また抱えてどこかに運ぼうかなっと思っていた時に、セシリアが通りがかった。

その顔は微妙ににやけている気がする。

 

「どうしましたの?なんだか調子が悪そうに見えますけど」

「うん。実はね…「か…佳織!」カクカクシカジカ」

「カクカクウマウマ…。なるほど、海で泳いでいたら鈴さんが溺れかけてしまったと…」

「そうなんだ」

 

途中で鈴がなんか言ってきたけど、私はセシリアに事の一部始終を説明した。

 

「それはいけませんわ!早く体を休ませないと!」

 

お…おぉ~…セシリアも心配してくれたんだ。

なんだかんだ言っても、ちゃんと鈴の事を友達だって思ってくれてたんだね。

ちょっと感動……。

 

「い…いや、セシリア。私は別に……」

「え~っと……あっ!相川さん!」

「ん~?どうしたの?オルコットさん」

 

またなんで丁度いいタイミングで相川さんが来るかな…。

 

「実は……」

 

今度はセシリアが説明。

 

「そーゆーことね!よし!じゃあ行こうか!」

「え?ちょ…ちょっと!?」

「ほら、早く休まなければ!」

 

鈴の両腕をセシリアと相川さんがガッチリホールド。

そのまま『先を行く人』状態で連行された。

 

「か…佳織~!助けて~!!」

「因果応報ですわ。諦めが肝心ですわよ」

「アンタね~!!」

 

………取り敢えず、手でも振っておこう。

 

三人は揃って別館の方に歩いて行った。

行く途中、鈴が大声でこっちに向かって叫んでいたけど、大丈夫だよね?

 

「……どこ行こ」

 

結局、一夏や本音とはぐれちゃったし。

あ…セシリアが来た時に二人の居場所を聞いておけばよかった。

 

う~ん……まだお昼には微妙に早いしな~…。

 

「あれ?佳織ってばこんな場所にいたんだ」

「ん~?」

 

いきなり呼ばれたので振り向くと、そこには水着を着たシャルロットと一緒に……

 

「え…え~っと……」

 

頭の先から爪先までをバスタオルで覆ったミイラ擬きが立っていた。

 

「……ツッコみ待ち?」

「いやいやいや。佳織だって分かってるでしょ?」

「バレた?」

 

知ってるよ。このバスタオル星人はラウラでしょ?

バスタオルの隙間から少しだけ見覚えのある銀髪がはみ出てるし。

 

「ほら、早く出てきなって。本当に大丈夫だからさ」

「そ…その判断は私が決める……」

 

多分、恥ずかしがってるんだと思うけど、そんなに気にする程の事かな?

いや……こういった感性は人それぞれだから、私からは強く言えないけど。

 

「ほ~ら。折角海に来て水着に着替えたんだから。こうしてちゃ意味無いでしょ?それとも、佳織に見てほしくないの?」

「そ…それは……だが……しかし……」

「んも~…さっきからそう言って全くタオルを取ろうとしないじゃない。僕も色々と協力したんだから、見る権利ぐらいはあるって思うんだけど?」

 

シャルロットも説得に苦労してるようだ。

ここまで頑なに見せる事を拒否するって、一体どんな水着を着てるんだろう?

シャルロットじゃないけど、私も少し興味が出てきたぞ。

 

「仕方が無い。ラウラがそこまで嫌だって言うんなら、僕だけで佳織と遊びに行こうかな~?」

「な…なんだって!?」

「ほら、一緒に行こう?佳織」

「う…うん……」

 

これが芝居なのは私も分かっているけど、だからと言ってどうしてシャルロットは私の腕にしがみ付くの?

む…胸が当たってるんですけど……。

 

「ま…待ってくれ!私も行く!!」

「そのままで?」

「あ……。くっ……やむを得ん!!」

 

意を決したのか、ラウラはバババッ!とバスタオルを全部外して水着姿を見せてくれた。

 

「おぉ~…」

「わ…笑いたければ存分に笑え……」

 

黒いビキニ系の水着で、黒いレースがふんだんにあしらってある。

いつものラウラからは考えられないぐらいに露出が多いが、だからこそいいと思う。

髪型も水着に合わせたのか、ツインテールに結んであった。

よっぽど恥ずかしいのか、さっきからずっともじもじしている。

 

「何にもおかしなところなんて無いよね?」

「うん。私は凄く可愛いって思うよ。思わず抱きしめたくなっちゃったし」

「か…可愛い……!?」

 

おぅ……急速にラウラの顔が真っ赤に。

でも、そんな表情も可愛いです。

 

「せ…世辞なんて不要だ……」

「お世辞なんかじゃないって。だよね?」

「うんうん。僕もずっと同じ事を言い続けてるのにさ、全く信じてくれないんだよ。因みに、この水着と髪型は僕がチョイスしたんだ。どう?」

「ぐっじょぶ」

 

こんな時の返事はサムズアップだと相場は決まっている。

 

「シャルロットもよく似合ってるよ。やっぱり専用機の色に合わせたんだね」

「まぁね。僕もこの色が好きだし」

 

シャルロットはセパレートとワンピースの中間みたいな水着で、上下に分かれているそれぞれを背中で繋げるような構造になってるみたい。

水着の色は黄色に近いオレンジで、今の季節にピッタリだ。

 

「私も見習いたいよ。一応着てはいるけどさ、絶対に水着に負けてるって思うんだよね」

「「そんなことない!」」

「へ?」

 

ふ…二人してどうしたの?

 

「佳織もよく似合ってるよ!断言する!」

「そうだ!嫁ほど赤を着こなせる女はそういない!」

「そ…そう?」

 

ラウラに偉そうに言っておいてなんだけど、本当は私も少し自信が無いんだよね…。

だって、こんな派手な水着なんて、着るの生まれて初めてだし。

 

「特にこのパレオがいいアクセントになってるよね!」

「流石はシャルロットだ!目の付け所が違うな!」

「なんでも出せばいいってもんじゃないんだよ!時にはこんなアプローチも必要だって思う!」

「全くもって同感だ!」

「あ…ありがとう?」

 

ほ…褒められてるんだよね……?

 

さっきとは打って変わって、ここまでぐいぐい来るとは予想外だった…。

この二人って何気に仲いいよね。同室だから?

 

「あ!かおりんってば、こんな所にいた~」

「え?」

 

この声は本音ちゃん?

 

「ご…ごめん……ね……?」

 

反射的に声のした方を向こうとすると、私の視界に入ってきたのは……

 

「ん~?ど~したの~?」

 

さっきまでの着ぐるみ姿とは全く違う、至って普通の水着姿の本音ちゃんだった。

 

エメラルドグリーンが綺麗なビキニで、デザイン自体は至ってシンプル。

だけど、逆にそれが新鮮に見えてしまった。

 

いつもとは全く印象が違う本音ちゃんに、私は完全に目を奪われていた。

 

「………………」

「わぁ~!本音もよく似合ってるよ~!」

「ありがと~、でゅっち~」

「むぅ……本音め……流石にやるな……」

 

はっ!?私は何を!?

 

「ほ…本音ってば…待ってよ……」

「あ、かんちゃんの事をすっかり忘れてたや」

「はぁ……」

 

溜息交じりにやって来たのは簪。

彼女は水色のワンピースタイプの水着を着ていた。

ラウラが着ているのと同じように、白いフリルが特徴的だ。

 

「か…佳織さん!?」

「や。その水着、よく似合ってるよ」

「あ…ありがとうございます……」

 

顔を真っ赤に染めながら声が段々と収束していった。

恥ずかしがり屋の彼女には人前で水着を着る事が恥ずかしいのかもしれない。

さっきまでのラウラのように。

 

「佳織って……いっつもそうなの?」

「何が?」

「なんでもない!」

 

……?なんでシャルロットは急に怒り出したの?

 

(佳織が他の女の子を褒めているのを見ると、どうして胸の辺りがチクチクとするんだろう……)

 

ここは機嫌を直してもらった方がいいよね…?

 

「ねぇねぇ、かおりん」

「どうしたの?」

「あそこに海の家があるから、何か食べない?」

「え?まだお昼前だよ?」

「だいじょ~ぶ!あそこにはかき氷とかもあるから!」

「かき氷か……」

 

あれなら大してお腹にも溜まらないし、食べ過ぎなきゃ大丈夫か?

 

「偶にはいいかもしれないね。皆はどうする?」

「わ…私は佳織さんが行くなら……」

「簪はOKっと。二人は?」

「僕も行ってみたいかな?日本のお菓子には前々から興味があったし」

「ならば私も行こう。その『かき氷』とやらがいかなる菓子か知りたいしな」

「はい決定。んじゃ、行きますか」

 

次の行動が決定してところで、早速行くことに。

幸い、海の家は目と鼻の先にあるから迷う事は無い。

 

「こうして見ると、結構大きいね……」

「流石は高級旅館に隣接している浜辺にある海の家…。こんな所一つとっても高級感が溢れてる…」

 

客引きの為なら金は幾らでも使います…ってか?

そう考えると、客商売って本当に大変だ。

 

「え~っと、かき氷屋さんは……あった」

 

すぐ近くにかき氷の屋台によくある赤い字で『氷』と書いてある小さな垂れ幕があった。

きっとあそこに違いない。つーわけで、善は急げだ。

 

「すいませ~ん」

「おお!よく来た!」

 

って、うぉっ!?なんかこのかき氷屋のおじさん、あの『青い巨星』と呼ばれた『ランバ・ラル』にそっくりじゃない!?

 

「え…えっと…かき氷ください」

「了解した。味は何にするのかな?」

 

味は全部で4種類。

メロン味にイチゴ味、それから宇治金時にブルーハワイ。

 

「私は宇治金時にしようかな?」

「私はいちご~♡」

「わ…私はメロン味……」

 

やっぱ、かき氷は宇治金時だよね~♡

これこそ日本の夏って感じ!

 

「う~む……どれにするべきか……」

「初めてだから迷っちゃうね…」

「ほぅ?そこの二人はかき氷は初めてかね?」

「あ…はい。何かおすすめとかってありますか?」

「それは勿論『ブルーハワイ』だ!」

 

……なんとなく、この答えが予め予想出来てしまった自分が嫌だ。

 

「じゃあ、それにしようかな?ラウラはどうする?」

「私も同じものを注文しよう」

「承知した。暫しの間待っていてほしい」

 

そう言うとラルさん(なんとなく、こう呼んだ方がいい気がした)は手際よく氷を機械にセットして、かき氷を作り始めた。

 

「今時珍しい…。これって一昔前にあったって言われている、昔懐かしのかき氷機…」

「おぉ!よくぞ気が付いたな!このラル、いかにかき氷と言えども妥協は一切したくないのでな。昔の伝手を頼りにこれをなんとかして手に入れたのだ」

 

そこまでしてかき氷を作って売りたいのか?

あと、昔の伝手って誰だよ。どんな人物がこんな骨董品を所持してたんだ?

 

「マ・クベ殿には感謝しなくてはな。後でちゃんと礼の電話をしなくては」

 

あの人かよ!?

確かに、アイツなら色んな古い物を集めてそうだけど!

 

「よし、まずはメロン味完成だ」

「わ~い♡」

「では次……」

 

そんな風に、ラルさんは私達と話しながらも器用にかき氷を次々と作っていった。

 

「よし、これで最後だ」

「感謝する」

 

あっという間に全員分のかき氷が完成。

天然の氷を使っているのか、凄くふわふわしている。

こんなかき氷ってテレビでしか見た事ないよ…。

 

「全部で1000円だ」

「と言う事は、一個につき200円なのか」

 

随分と安いな。

最近だと、お祭りの屋台でも500円は取るぞ?

 

「や…安いんですね…」

「これは趣味の一環でやっているからな。あまり値段は気にしないのだよ」

「だが、それでは赤字になったりしないのか?」

「はっはっはっ!値段は安くても数が売れれば問題無い!事実、この浜辺にいる人間の殆どが買って行ってくれたぞ」

「マジで!?」

 

どんだけ人気なんだよ……青い巨星のかき氷。

 

「ここは私が払うよ」

「え?それは悪いよ…」

「気にしないで。ぶっちゃけ、お金を持てあましてるんだよね…」

 

私が専用機であるラファールⅡを受領してから、なんでか私の口座に驚くような大金が振り込まれるようになった。

それを千冬さんに相談したら、なんでもこのお金はデータを取ってくれている私に対するデュノア社からの給料のようなものらしい。

日本円である事に驚いたけど、それは日本政府を経由して振り込まれているから…だそうだ。

本当かどうかは知らないけど。

私にそんな大人達の事情なんて知りようがないし。

 

「はい、1000円」

「毎度あり……今、胸の谷間から出さなかったか?」

「気のせいですよ」

「う……う~む…」

 

え?さっきまで海に入っていたじゃないかって?

お金は拡張領域に入れてましたけど、何か?

 

「どこで食べようか?」

「適当な木陰で……」

 

キョロキョロと周囲を見ていると、ふと視界の端に砂浜にネットを張ってビーチバレーをしている一団を見つけた。

傍にはちょうどいい感じの木陰もある。

 

「あそこにしようか?」

「いいね~」

 

ビーチバレーでも観戦しながら食べるとしましょうかね。

溶けないうちに行かなきゃな。

 

「あ!仲森さん?」

「やっほ~。ちょっと見学いい?」

「いいよいいよ!どんどん見ていって!」

「んじゃ遠慮無く」

 

陰になってるから砂浜も熱くないし。

よっこいしょっと。

 

「久し振りのかき氷、いただきま……」

「美味し~♡」

「もう食べてる!?」

 

しかも結構減ってるし!

私が見て無い所で食べてたのね…。

 

「美味しい……♡」

「ホントだ~!これがかき氷……噂で聞いた事はあるけど、冷たくてフワフワで……」

「う…うむ……確かにこれは美味だな…。氷を細かくしただけなのに、ここまで美味しくなるとは……。東洋の神秘とはよく言ったものだ」

 

別に神秘でもなんでもないけどね。

でも、満足してくれたようでなによりだよ。

 

で、ビーチバレーの方も結構盛り上がってるみたいだ。

夏らしいと言えば夏らしいけど。

 

「ほぅ?なにやら面白そうな事をしているな?」

「そうですね~。これを食べ終わったら参加してもいいかも……って?」

 

この声は……横から?

 

「待たせたな。佳織」

 

私が見上げた先には、前に私と一夏がチョイスした黒いビキニを着た千冬さんが悠然と立っていた。

 

「………………」

 

その姿は本当の美しいの一言で、冗談抜きで見惚れてしまった自分がいた。

あ…あれ…?なんか顔が熱い気がする……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだ終わらない浜辺での話。

でも、楽しいから気にしません。

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