神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
納豆を食べた後にアルカリイオン水を飲むと、体がアルカリ性になって酸を中和するんだって。
バスに揺られながら窓の外をポケ~っと眺める。
眩しい陽光に照らされた木々が高速で後方に去っていく。
「はぁ~…」
これからの事を考えると気が重い…。
この臨海学校ではこれまでで一番の事件が待ち構えているんだから。
「かおりん~、どうしたの~?」
「あぁ~…本音ちゃん」
私に隣の席に座っている、我がルームメイトの本音ちゃん。
きょとんとした目でこっちを見てくる。
「なんでも無いよ。少し寝不足なだけ」
「寝不足?もしかして、臨海学校が楽しみで眠れなかったとか~?」
「ん~…近からず遠からず……かな?」
「どっち~?」
やっぱ、下手に原作知識とか持つもんじゃないね。
先の事を知っていると、対策が立てやすくなると同時に危険が来るって分かっているって事にもなるんだし。
何とも言えない気持ちになってしまうよ。
「寝不足…か。佳織も意外と子供っぽい所があるんだな」
「それもまた魅力の一つでしょ」
好き放題言ってくれますね。前の席に座っている幼馴染コンビさんよ。
「あっ!みんな~!海が見えたよ~!!」
「えっ!?ホントっ!?」
「どこどこっ!?」
にゃはは……皆、全力ではしゃいでるね~。
私も、この一時ぐらいは何にも考えずに彼女達のように無邪気になりたいよ。
「海……か」
最後に海に来たのっていつだっけ?
よく覚えてないや。
毎年プールには友達連中と一緒に行くんだけどね。
その度に何故か一部の女子達から尊敬と嫉妬が綯い交ぜになった視線を送られるんだけど。
「佳織さん?何を黄昏てますの?」
「そう言うのって普通は夕方にするもんじゃない?」
「いや…別に黄昏てるわけじゃないよ。ただ、前に海に来たのっていつだったかな~…って思っただけ」
「あぁ…そうでしたの」
納得してくれたか。
「私も余り海には来た経験が無いな」
「そうなの?」
「うむ。軍務の関係上、上から眺める事は多々あっても、実際に入る事は殆ど無い。あったとしても海中訓練の時ぐらいだな」
「それは……入ったって言うのかな?」
ラウラの場合は境遇が境遇だからね。そこら辺は仕方が無いでしょ。
だからこそ、今回は思いっきり海を堪能してほしいって思うけど。
「そう言えば、佳織って泳げるの?」
「人並みぐらいには」
流石に遠泳とかは無理だけど。
でも、一夏と箒はそれを普通にやってのけるんだよなぁ~…。
そんな姿を見てしまうと、やっぱり二人は千冬さんと束さんの妹なんだなって実感する。
血筋に関しては私も決して他人事じゃなかったけど。
「もうそろそろ目的地に到着だ。お前達、ちゃんと席に座っていろ」
お?もう到着ですか?
千冬さんの言った通り、目の前には旅館と思わしき建物が見えてきた。
それから少しして私達が乗ったバスは今回の臨海学校の目的地である旅館に到着。
それぞれのバスから生徒全員がゾロゾロと降りてきて、旅館のの玄関先に整列した。
「ここが今日から3日間の間、我々がお世話になる花月荘だ。全員、従業員の方々に余計な仕事をさせないように心掛けろ。いいな?」
「「「「「「はい!!」」」」」」」
「では挨拶しろ」
「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」」
全員揃って挨拶すると、流石にかなりの音量になるな。
私達の挨拶の後、従業員の人達の真ん中にいた着物を着た女将さんと思わしき人が丁寧にお辞儀をした。
「はい、こちらこそよろしくお願いしますね。私はこの花月荘の女将を務めております『清州景子』と申します」
女将さんと言うだけあって、本当に綺麗な人だ。
こうして女として生きている以上、将来はあんな風に余裕のある大人の女性を目指したいものだ。
「では皆さん。早速お部屋の方に上がられてください。海に行かれたい方々は別館の方に更衣室がありますから、そこをご利用ください。もしも場所が分からなくて迷った時は、遠慮なく従業員に聞いてくださいね」
挨拶と同じように、丁寧な説明。
私も着物を着れば少しは大人びて見えるのだろうか?
皆は揃って『は~い!』と返事をしてから、一組から順に旅館の中へと入っていった。
臨海学校の初日は一日自由時間となっていて、ご飯の方は旅館の食堂で各々で食べるように言われている。
旅館の料理ってなると、やっぱり新鮮な魚介類かな?
やば……不謹慎と分かっているけど、口の中に涎が…。
「さて、私達の部屋は……」
「どこだろうね~?」
今回、私と同じ部屋に割り当てられたのは、本音ちゃんと一夏と箒の三人。
見知った人間と一緒だから、気楽で助かる。
「ここでじっとしていたら、他のクラスもやって来て込み合ってしまう。早く行くとしよう」
「箒はどこにあるか分かるの?」
「いや。だが、部屋の番号は分かっているのだし、皆について行けば大丈夫だろう」
「それって、迷路で迷った時に最終的に壁に手をついて歩こうとする人みたいだね…」
「べ…別にいいだろ!?」
私は気にしないけどね。
箒の言う通りに皆について行くと、ちゃんと部屋に着くことが出来た。
「私一番~♡」
「「「あ」」」
本音ちゃんが真っ先に扉に手を当てて開いた。
「「「「おぉ~!」」」」
部屋は畳から漂ってくる香りが鼻孔を擽る和室だった。
……別に、私の名前の『佳織』と『香り』をかけた訳じゃないからね?
部屋自体は数人で泊まる事を前提としているだけあって、結構な広さがあった。
窓からの景色は実に見事なオーシャンビュー。
よく見たら、トイレにバスがセパレートになっていて、洗面所まで個室となっている。
更に浴槽に至っては、大の男が足を延ばしても余裕があるほどの大きさ。
「もしかして……ここって高級旅館?」
「もしかしなくても高級旅館だな」
ダヨネ~。
「部屋に風呂があるとはいえ、殆どの連中は大浴場に行くだろうな」
「箒も?」
「まぁ…な。こうして旅館に来た以上、入らないと損だろう?」
御最も。
そんな私も大浴場に行く気満々だったりします。
私だって大きなお風呂でのんびりしたいもん!だって女の子だから!
「さて、とっとと荷物を置いて海に行くとしようよ」
「賛成~♡」
そこら辺に荷物を置いてから、私達はその中から水着等を初めとした荷物を持って、別館にあると言う更衣室へと向かう事にした。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
更衣室へ行く途中に千冬さんと山田先生に会った。
なんでか千冬さんは血走った目で私の肩を掴んで『すぐに行くからな!行くからな!!』って言ってきた。
その場にいる全員がドン引きしてしまった。あの本音ちゃんすらも……。
そうして教師二人組と別れて再び更衣室へと歩いて行くと、途中にある渡り廊下に隣接している中庭にて奇妙な光景と出くわした。
「「「「………………」」」」
目の前で起きている状況を簡単に説明しよう。
地面からウサ耳が生えている。
もう一度言う。地面から『ウサ耳』が生えている。
そう、ウサ耳だ。
僕も私も大好きな、皆に愛される犬や猫に並ぶ愛玩動物の筆頭とも言うべき、あのウサギの耳だ。
あろうことか、それが地面から生えている。
これを奇妙と言わずして何を奇妙と言うのか。
しかも、ウサ耳の近くにはご丁寧に『引っ張ってください』と書かれた張り紙付き。
「……どうする?」
「無視だ」
「え?でも…「無視だ」…う…うん……」
無視を貫いた箒は、そそくさと先に進んで、一足先に更衣室へと入っていった。
「……本当に無視する?」
「でも、これって……」
「うん。多分、一夏の考えている事は正解だと思う」
このウサ耳を埋めた犯人は間違いなく束さんだ。
つーか、あの人以外にこんなアホな事をする人間を私は知らない。
「って!本音ちゃん!?」
「もう既にウサ耳の所にいるし!?」
「いくよ~!」
私達が止める間も無く、本音ちゃんは両手でウサ耳を引っ張った。
「わっ!?」
「本音ちゃん!」
埋まっていると思っていたけど、実はそうではなかったようで、そこに立っていただけだったようだ。
そんな事とは知らない本音ちゃんは、勢い余って後ろに転びそうになった。
それをなんとかギリギリの所で支えることが出来た。
「大丈夫?」
「えへへ~…ゴメンね~かおりん」
「気にしないで。それよりも……」
これ……どうしよう?
そう思って一夏に目配せをするけど、本人は首を横に振るだけ。
「あら?皆さんお揃いで一体何を?」
「セシリア……」
なんちゅータイミングで来るかな、この子は。
「……佳織さんと本音さんは何をしてますの?」
「「あ…」」
そう言われると、今の私達の態勢はお世辞にも普通じゃない。
絶対に何かがあったと思わせる姿だろう。
「う~ん……これには深いような浅いような訳があって……」
「どっちですの?」
どっちとも言えないんだよ。これが。
なんて説明したらいいか考えていると、何かが高速で空から落ちてくるような音が聞こえてきた。
「い!?本音ちゃん!」
「かおりん!?」
咄嗟に本音ちゃんを庇うようにして抱きしめて背中を盾にする。
すると……真っ赤な物体が派手な音と共に地面にぶっ刺さった。
「いいいいいっ!?」
「な…なんなんですの!?」
周囲が土煙に覆われるが、少しして煙が晴れる。
そこから姿を現したのは……
「「「「に…ニンジン?」」」」
機械的なフォルムのニンジンだった。
大きさは大体、大人一人が余裕で入れるぐらい。
「「「「……………」」」」
全員がいきなりの事に呆気を取られていると、そのニンジンがパカッと中央から割れた。
その中から出て来たのは、案の定の人物だった。
「にゃっはっはっ~!見事に引っかかったね~かおりん!いっちゃん!」
「「は…はぁ~…」」
この人の辞書には『普通』と言う言葉は無いんだろうか…。
もしも無いのならば、是非とも今日から追加してほしい。
「いや~、以前に同じ事をしたらさ、着陸した途端に『ソロモンの悪夢』と『真紅の稲妻』に遭遇しちゃって、危うく捕縛されるところだったんだよね~!流石の束さんも、リアルチートなあの二人を同時に相手するのはヤバかったからね。あの時は急いでその場を離れたよ~」
そ…そんな事があったのか…。
つーか、やっぱり『あの二人』もいるのか!
束さんがここまで言うとは……この世界でも最強レベルの実力なのか…。
「でも、お蔭で束さんはまた一つ学習したのです!私ってばエラい!」
自分で自分を褒めますか。
「あれ?」
「な…なんですか?」
ど…どうしたんだ?
「もしかして私……お邪魔だった?」
「「はっ!?」」
束さんに言われて、改めて自分の恰好を確認する。
私の腕の中には本音ちゃんがいて、まるで彼女を抱きしめるような格好になっていた。
「あわわわわ~!か…かおりん~!これは~…」
「ご…ごめん!」
これは私も恥ずかしい!
抱きしめているせいか、すっごく顔が近いし……。
「私が目を離した隙に、またかおりんのハーレムが増えたみたいだね~」
「ハーレムってなんですか…」
人聞きの悪い事を言わないでほしい。
「君の事は知ってるよ。かおりんのルームメイトの布仏本音ちゃんでしょ?」
「え?」
「私はかおりんの事ならなんでも知っているのだ!えっへん!」
「威張る事ですか?」
思いっきり胸を張る束さん。
相変わらず、この人ってスタイルいいなぁ~…。
「しかも、かおりんのISの整備もしてるんでしょ?えらいね~!」
「あ…ありがとうございます?」
……あれ?あの身内以外を完全に見下す束さんが、初めて会った本音ちゃんに対して辛辣じゃない?
これってどういうこと?
「あ~。かおりんといっちゃんのその顔。何か変な事でも考えてるでしょ~」
バレた。
「私だってね、認めるに値する子はちゃんと評価するんだよ?」
「「えぇ~…」」
初耳なんですけど?
「と…取り敢えず、お久し振りです。束さん」
「うんうん。本当に久し振りだね~、二人とも」
この人に最後にあったのは結構昔だったと思うけど、何年経ってもこのテンションだけは変わらないのね…。
「ところで、箒ちゃんはどこかな?さっきまで一緒にいたよね?」
「箒は……」
言うべきか?でも、箒自身は拒否ってたしな…。
「ま、ここで教えてくれなくても、私が開発したこの箒ちゃん探知機『箒ちゃん見つける君』で探せばすぐに見つかるけどね」
色々とツッコみたい事はあるけど、まずはそのネーミングセンス…どうにかなりませんかね?
「それじゃ、私はもう行くね!またね~!かおりんにいっちゃんにほっちゃん!」
「「「「ほっちゃん?」」」」
それって…本音ちゃんの事?
って、いつの間にか彼方まで走り去ってるし!
あの速度に追いつけるのって千冬さんぐらいじゃね?
そんな人を追いつめる二人って……。
やっぱ、同じぐらいの速度で走れるのかな?
「あ…あの……先程の方は一体…?」
「箒のお姉さん…って言えば分かる?」
「お姉さん……って!もしかして、あの女性がISの開発者である篠ノ之束博士ですの!?」
「そ。その篠ノ之束さん」
「ええええええええ~!?」
昔からの知り合いじゃなければ、そのリアクションは当然だよね。
「あ…あの…かおりん?なんか私…その篠ノ之博士に渾名で呼ばれたんだけど…?」
「それは多分、あの人に気に入られた証拠だと思う。束さんって昔から自分が認めたり気に入ったりした人間の事を自分で考えた独特の渾名で呼ぶ癖があるから」
「癖……なの?」
多分ね。
「まぁ…今は放置しても大丈夫じゃない?目的は箒みたいだし。私達は更衣室に行こうよ」
「それがよさそうだね。ここにいるって事は、セシリアも海に行くんでしょ?」
「はい。折角の日本の海ですから」
イギリスの海と日本の海って何か違いがあるのかな?
海外旅行なんて行った事ないから分かんないけど。
つーわけで(?)皆揃って更衣室へとGO。
箒には……言わない方がいいかもな。
知らぬが仏って事もあるし。
え?水着?次回を待て!!