神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
水着から私服に着替えた後、山田先生と一緒に気絶した千冬さんをなんとかして起こした。
どうやって起こしたかは内緒で。
「…すまんな。みっともない姿を見せた」
「「い~え。お気になさらずに」」
凛とした態度で言ってるつもりだろうけど、鼻から丸めたティッシュが生えてる時点で威厳も何もあったもんじゃない。
「さっきの水着…よく似合ってたぞ」
「そ…それはどうも…」
今更言われても困るんですけど。
どう反応しろと?喜べばいいのか?
「にしても、千冬さn…織斑先生と山田先生が揃って外出なんて珍しいですね」
「案外そうでもないぞ?休みの日とかはよく一緒に飲みに出かけている」
「正確には『連行されている』って言うべきでしょうけどね…」
「あぁ~…」
そういや、千冬さんは相当な呑兵衛だったな。
一夏の話じゃ、家にも相当数のお酒を隠し持っているとかなんとか。
「人聞きの悪い事を言うな」
「事実じゃないですかぁ~…。いっつも最終的には私がタクシーを呼んで学園まで帰る羽目になるんですから……」
「む……それは済まんな…」
山田先生……結婚したら絶対にいい奥さんになりそうな人だ。
私もこんな女性を目指したいもんだ。
「そうだ。別に今は学園にいるわけじゃない。だから無理して『先生』と呼ぶ必要はないぞ。いつもの通りで構わん」
「じゃあ、千冬さんで」
「それでいい」
満足そうに頷いちゃって。
「山田先生はなんて呼べば……」
「適当でいいだろ」
「適当って……」
仮にも目上の女性に適当な事は言えないでしょ。
う~ん……そうだなぁ~…。
「考えるのメンドいんで、名前で呼んでもいいですか?」
「い…いいですよ?」
なんで疑問形?
「それじゃあ改めまして……コホン。千冬さんと真耶さんはどうしてここに?」
「ま…真耶さん……」
ちょっと、急に顔を赤くしないでくださいよ。
周りのお客さんがなんだと思って見てるじゃないですか。
「私達も臨海学校の水着を購入しに来たんだ。決して他の連中と一緒に買い物に行った佳織の事を着けてきたわけじゃないからな」
「はぁ……」
何故に念を押す?
「あれ?千冬姉さんに山田先生?」
「一夏か…」
なんつータイミング。
選んだ水着を持って一夏が千冬さん達の後ろからやって来た。
「二人も水着を買いに来たの?」
「そんなところだ。お前はどんなやつを選んだんだ?」
「私~?取り敢えずこれかな?」
そう言って見せてきたのは、一夏の専用機『白式』と同じ真っ白なビキニタイプの水着だった。
「なんつーか、佳織じゃないんだけど、やっぱり私も白式と同じ色がいいかな~って思って。気が付いたらこれを選んでた」
「うわぁ~……結構大胆な水着をチョイスするんですね~…」
一夏みたいにスタイルがいいと、どんな水着を着ても絵になるからいいよね。
「一夏は白か……」
お?千冬さんも悩んでますなぁ~。
この人もスタイル抜群だから、ビキニとかよく似合いそうだけど。
「…………よし」
どうやら決まったのか、千冬さんは目の前にある棚から二着の水着を取った。
「三人とも。どっちがいいと思う?」
千冬さんが見せてきたのは白と黒の水着で、どっちもビキニ。
この二色なら……
「「「黒」」」
「揃って即決か…」
普段から千冬さんのスーツ姿を見慣れてしまっているせいか、どうにも今の千冬さんからは『黒』のイメージが拭えない。
まぁ、黒を選んだ理由はそれだけじゃないんだけど。
「千冬さんって肌が綺麗だから、黒い水着の方が似合うような気がするんです。ほら、よく言うじゃないですか。深い黒は女をより魅力的にするって」
「そ…そうか……?」
ん?今度は千冬さんの顔が赤くなったぞ?
空調が効きすぎてるのかな?
それとも、スーツなんて着てるせいで暑くなったとか?
「これを素面で言える事が、佳織の一番凄い所なんだよね……」
「確かに、これは堕ちますね~…」
おちる?何が?
「か…佳織がそこまで言うのならば、これにするとしようか…」
「それがいいですよ」
同じ女として、この水着を着た千冬さんの姿に興味もあるし。
「佳織はその赤い水着にするのか?」
「はい。実際に試着してサイズもピッタリだったので」
「え?佳織も決めたの?見せて!見せて!」
がっつくなぁ~一夏は。
「ほらこれ」
「おぉ~!見事に真っ赤だね~!でも、佳織なら全然アリ!寧ろいい!」
「そ…そう?」
そこまで言われちゃうと、なんだか照れちゃうな…。
「よし、二人とも…水着を貸せ」
「「え?」」
有無を言わさず、千冬さんは私達の手から水着を取った。
「今日は気分がいいから、私が奢ってやる」
「ちょ…いいの!?自分で言うのもなんだけど、二つとも決して安くはないよ?」
「構わん。それに、IS学園教師の給料はお前達が思っている以上にある」
はい、大人の話来ました。
つーか、そんなに高給取りなのか……IS学園の教師って…。
「だから気にせず大人しく奢られろ。それに……」
ん?急にこっちを見てどうしたのかしらん?
「これぐらいはさせてくれ。佳織には返したくても返せない程に大きな借りがあるからな」
「そ…そうですよ!今日ぐらいは私達に甘えてもいいんですよ?」
「そう言うのならば、金の半分はお前が出せよ?」
「も…勿論です!(失言でした…)」
山田先生、口は災いの元…ですよ。
「ほら、行くぞ」
「はぁ~い…」
あらら、後ろ姿が切ない。
「……今度、学園のカフェで山田先生に何か御馳走してあげようか…」
「賛成。あれ見てたらなんて言うか……保護欲が掻き立てられるよね…」
先生としてそれはどうなのかって言う疑問は取り敢えず置いといて。
人として魅力的なのは確かだ。
「まぁ……これからも頑張ってください。山田先生」
「いつの日かきっといい事がありますよ」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
佳織が千冬、真耶、一夏と合流した頃。他のメンバーはと言うと……
「あれ…ラウラ?」
「シャルロットか……」
「どうしたのさ?そんな所に立って」
「いや…な。私はこんな店に来るのは初めてでな……」
「あぁ~…どんな水着を選べば分からないと」
「そうだ…。くっ……こんな事では佳織の夫失格だ…!」
「まだ言ってるんだ…それ」
う~ん…と顎に手を当てながら、近くを見渡すシャルロット。
すると、彼女の目線がある一点に絞られた。
「これなんかいいかもしれない」
「ん?どれだ?」
「これこれ」
そう言って差し出したのは、とある水着。
どんな水着かは話の都合上まだ秘密。
「こ…これかっ!?」
「うん!きっと凄くよく似合うって思う!」
「そう……なのか?」
「そうだよ!」
鼻息の荒いシャルロットに次第に押されるラウラ。
そこにグッドなのかバッドなのか分からないが、タイミングよく本音が通りがかった。
「あれ~?二人してどうしたの?」
「あ!本音!ちょっとこっち来て!」
「ん~?」
よく状況が理解出来ないまま、シャルロットの手招きに応じる本音。
「これ!ラウラに似合うって思わない?」
「そうだね~。これなら私もラウラウにピッタリだと思うよ~」
「だよねだよね!?ほら、これにすべきだって!」
「し…しかし……少し露出が多すぎないか?」
全裸でないと寝られない少女が何を言っているのか。
「何言ってるの!今時の女の子はこれぐらい大胆じゃないと!」
そんなラウラの癖を知ってか知らずか、結構ハッキリと言うシャルロット。
(ラウラウの場合は、寝る時の方が露出が多い気がするけど……)
そして、密かに心の中でツッコむ本音。
ラウラの癖を知っている数少ない人物であるが故のセリフだった。
「それに……これぐらいしないと、他の子に佳織を取られちゃうよ?例えばほら……」
「ほえ?」
耳元でそっと囁くように誘惑するシャルロット。
その目線の先には本音がいる。
「本音は佳織と一緒の部屋だし、仲だっていい。ある意味、一番の強敵だって皆も言ってたよ?」
「な…なんだと!?」
佳織のISを一緒に整備して以降、ラウラは本音と簪の事を親友と思っている。
だが、その親友こそが最大のライバルだと知って、彼女の体に戦慄が走った。
「い……いいだろう!これに決めた!」
「やった!」
「ドイツ軍人として、ここで引くわけにはいかんからな!」
ドイツ軍人云々は関係ないと思うが、本人がそう思うのであれば、ここは敢えて何も言わない方がいいだろう。
これも一種の優しさである。
「では、会計をしてくる!」
「いってらっしゃ~い」
その途中でくるりと振り向くラウラ。
「本音!」
「ん~?」
「負けないからな!」
「ふえ?」
本音からしてみれば、全く意味不明な宣戦布告をされた事になる。
だが、鋭い彼女の事だから、すぐに理解するだろう。
そんな中、ラウラを焚き付けた張本人であるシャルロットはと言うと……
「あ…あれ……?」
妙なモヤモヤを胸に感じていた。
(な…なんで心がモヤモヤするの…?私は単純にラウラに可愛い水着を着てほしくて、それで……)
自分でライバルを応援してしまった事に全く気が付いていないシャルロット。
後に自分の本当の気持ちに気がついた時、後悔する事は確実だろう。
「どうしたの~?」
「う…ううん!なんでもないよ!」
慌てて手を振って誤魔化す彼女だったが、その心中は穏やかじゃなかった。
(本当に僕……どうしちゃったの?佳織の事を考えるとドキドキして、なのに、佳織が他の女の子と一緒にいる場面を想像したら、胸がチクッとして……)
その感情が『恋』と『嫉妬』だと分かるのはいつになる事やら。
佳織を取り巻く少女達の青春は、色んな意味で波乱に満ちているようだ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
結局、千冬さんと真耶さんに奢られてしまい、申し訳なく思いつつも、私達は買い物が終わった他の皆と合流した。
合流した時に教師二人がいた事に皆がすっごく驚いていた。
無理は無いと思うけどね。
休日に先生に会ったりすると、ちょっと気まずくなるよね。
「お前達はこれからどうする気だ?」
「お昼を食べてから、少しウィンドウショッピングをして帰ろうと思ってます」
「そうか。ならば、我々は先に失礼させてもらう」
「「「「「「「「「え?」」」」」」」」
てっきり一緒に来ると言い出すと思っていただけに、私を含めた皆が呆けた声を出してしまった。
「休みの日とは言え、暇があるわけじゃないからな」
「門限だけはちゃんと守ってくださいね。じゃあ、失礼します」
行ってしまった……。
ここまで引き際がいい千冬さんもまた珍しい。
(フフフ……ここはまだ勝負時じゃないからな。臨海学校でお互いに水着になった時こそが勝負!今日だけは織斑千冬はクールに去ってやる…。精々足掻くがいい、小娘共)
な…なんか、背筋に言葉に出来ない感覚が走ったような……!
「ど…どうされましたの?」
「大丈夫。問題無い」
「フラグ乙」
あ、簪はこのネタが分かる人なのね。
「先生達も行った事だし、アタシ達もお昼にしましょうか?」
「そうだね。よく見たら、時間もいい感じだし」
スマホで時間を調べたら、もう11時50分を回っていた。
どうやら、思った以上に水着選びに夢中になってたみたいだ。
時間が過ぎるのは本当に早いな~。
「どこにする?」
「ここには飲食店も沢山あるから、歩きながら考えようか?」
「それがいいと思う。ここで止まって考えてもお店の邪魔になるだけだし」
全員の意見が一致したところで、昼食を食べる為に出発する事に。
「ファミレスにファーストフード店……よく見たらフードコートまであるんだね」
「ここって私達が思っている以上に広いから、まだ全てを見回った事は無いんだよね…」
「む…?あれはとんかつの専門店か?あっちには回転寿司まである」
「ジャ…ジャパニーズスシ!?行ってみたいぞ!」
寿司と聞いた途端にラウラの目がキラキラモードに。
この目にはそう簡単には逆らえないんだよね…。
「お寿司ですか……私も興味がありますわ」
「僕も。日本に来たら一度は食べてみたいって思ってたんだよね」
国外組は回転寿司に興味津々ですか。
「………行く?」
「この空気で『行かない』とは言えないでしょ…」
「私はいいよ~。まだまだ余裕はあるし~」
もうこれ確定じゃね?
「回転寿司ねぇ~。こっちに戻って来てから、まだ一回も行ってないわね。私も行きたいわ」
「はい決定」
そんな訳で、私達は丁度近くにあった回転寿司屋に入る事に。
入った途端に海外組(鈴を除く)は、店そのものやレーンに乗って回転している寿司に目を輝かせていた。
集団で座れる席に座って、皆で寿司を食べる事に。
基本的にサビ抜きで安い寿司をセシリア達は食べていた。
私達のように山葵に慣れているメンバーは遠慮なくサビ有りの寿司を食べてたけど。
原作のように山葵を丸ごと食べて悶絶したシャルロットを見て、思わず笑ってしまった。
実際にこの目で見ると、シャルロットが芸能人かお笑い芸人にしか見えない。
少なくとも、私には同じ事は出来ないよ。
セシリアは生の魚類を食べる事に最初は抵抗感を感じていたが、一口食べた途端に表情が変わって、次々と食べ始めた。
日本人として喜んでもらえてなによりだ。
そしてラウラは箸に悪戦苦闘しながらも、なんとか食べていた。
セシリアとは違って生魚に対しての抵抗感は無いみたい。
理由を聞いてみたら『サバイバル技術を一通り学んでいるから、生魚程度にビクついたりはしない』だそうだ。
今まで一体どんな訓練をしてきたんだ…?
こうして騒がしくも楽しい昼食を終えて、少しだけレゾナンス内にある店を見て回ってから帰路に着いた。
もうすぐ臨海学校……か。
不安が無いと言えば嘘になるけど、皆がいるから大丈夫……だよね?
余談だけど、ちゃんと門限には間に合いましたよ。
そこら辺は真面目な女子高生ですよ?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
佳織達が座っていた席の後ろ。
そこにも少し変わった面々が座っていた。
金髪と紫髪と黒髪。
髪の色だけでも特徴的な三人組の少女達で、周囲の人々もチラチラと見ている。
「……いかがでしたか?」
「初めての回転寿司だったが、中々に美味だったぞ」
「いえ、そうではなくて…」
紫の髪の少女が困惑する。
「分かっている。冗談だ」
フッ……と微笑む金髪少女。
その顔はとても優美だった。
「仲森佳織……一見すると普通の少女のようだったが……」
「どうされました?」
「面白い少女だったな」
「面白い…?」
急に紫髪の少女の顔が強張る。
眉間に皺が寄っている様子からすると、静かに怒っているようだ。
「フフ……実際に対峙する日が楽しみだ」
「大佐……」
そうして話している二人を余所に、黒髪の少女は一心不乱に寿司を食べ続ける。
よく見ると、彼女が食べているのは金色の皿の寿司。
つまりは一皿500円以上のネタばかりだった。
結果、会計で5桁の数字を見る羽目になった。
金には困っていない彼女達だったが、レシートに書かれた値段を見た時に目が点になったのは言うまでも無い。
私、過去に一回だけ当たった事があります。
しかも、バイトの面接の時の待合室にあった販売機で…。
その時の幸運のお蔭か、そのバイトには採用されましたけど。