神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
今年でもう何回台風が来たかしら…。
次の日。
私は早朝に自室へと戻って、顔を洗ったりシャワーを浴びて軽く体を流したり、登校の準備をしたりした。
勿論、本音ちゃんを起こさないように静かに行ったよ。
私が保健室で起きた時、ラウラが隣のベッドで寝ていた。
今回の彼女は完全に被害者なのだから、保健室に運ばれるのは当然だけど、まさか隣合わせとは。
保健室のベットは他にもあるのにどうして…?
そうそう、なんかベットの傍にあった棚にどこかで見た事のあるような文字が彫られたスリケンが置いてあった。
あれは一体なんなんだろう…?
一応、回収してからハンカチで丁寧に包んで、部屋の机の引き出しに仕舞ってあるけど。
下手に誰かが触ったりしたら怪我するしね。
その後、私はいつものように本音ちゃんを起こしてから、朝食を食べてから教室に向かった。
起こした時、開口一番に『かおり~ん!!』って言いながら抱き着いてきた。
なんだか泣いていたようにも見えたし、凄く心配させちゃったようだ…。
本音ちゃんには……いや、他の皆にも悪い事をしちゃったな…。
私が食堂に姿を現した時も、皆が私に注目しまくってたし。
にしても、まだ包帯は取れそうにないなぁ~。
動きにくくて不便なんだけど、こればっかりは仕方が無いよね…。
少し体を動かすと筋肉痛と怪我で体が痛むし…。
はぁ~……せめて、臨海学校までには治したいなぁ~。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
いつものように教室に入ると、食堂の時と同じように、皆の視線が私に集中した。
「だ…大丈夫なの!?佳織!?」
「もう動けますの!?」
「あんまり無理はするなよ!?辛かったらいつでも私達に言え!いいな?」
「そうだよ!僕達はいつでも佳織の力になるからね!」
その筆頭がいつものメンバーだったのは、ある意味予想通りだった。
「皆……」
そんな事を言われたら……なんか……私……
「か…かおりん!?どうしたの!?」
「ううん……なんでもない……」
涙が出ちゃうじゃないか……。
「ただ……皆に心配して貰った事が嬉しくて……」
はは……なんかカッコ悪いな…。
早く泣き止まないと。
「グス……。その……皆……」
「ど…どうした?」
「みんな……ありがとう…」
せめてお礼ぐらいは言いたいな。
私はちゃんと笑えてるかな?
「「「「佳織(さん)……♡」」」」
「かおりん……」
あ…あれ?なんか急に皆が固まっちゃったんですけど?
ど…どうしたの?マジで。
「と…とにかく!まだ怪我は完全に治ってはいないんだから、無理だけはしないでね!」
「分かってるって。一応『絶対安静!』って言われてるから。それを破るような真似はしないよ」
痛む体を押えながら、ゆっくりと席に座る。
うぅ~……着席するのも一苦労だよぉ~。
あれ?よく見たらラウラの席が空いたままだ。
まだ来てないのかな?
席に座った途端、後ろからチョンチョンと突かれて後ろを向いた。
「ん?」
「仲森さん」
「相川さん…?」
「昨日は本当にカッコよかったよ。なんだか、本当のヒーローみたいだった」
「大袈裟だよ。私はラウラを助けようと必死になってただけ。困っているクラスメイトを助ける……クラス代表として当たり前の事をしただけだから」
「それを平然と言ってのける時点で相当にカッコいいけどね…」
え?なんかよく聞こえなかった。
「皆さん……おはようございます……」
あ、山田先生がやってきた。
前を向かなきゃ…って、なんか疲れてる?
目の下に隈が見えたような…。
眼鏡越しだからよく分からなかったけど。
「あ!仲森さん!もういいんですか?」
「はい。日常生活には支障は出ません。ご心配お掛けしてすいませんでした」
「そ…そんな!こちらこそ、また貴女に助けられて……本当に申し訳ありません…。これじゃあ、教師の面目が丸潰れですよね……」
「いやいや!先生達が後ろにいるって分かってるから、私だって頑張れるんです。だから、そんなに自分の事を卑下しないでください。少なくとも、私は山田先生の事を教師として尊敬してますよ」
「あぅ~……仲森さぁ~ん…」
「泣かないでくださいよ…」
さっきとは立場が逆になってしまった。
泣いている教師を慰めるクラス代表って…。
「もしかして、昨日の事後処理で…?」
「その通りです、織斑さん…。あ…皆さん、昨日の事は勿論……」
「学園内の秘密…ですよね?前回の事もありますから、それぐらいは皆も承知してますよ。ね?」
試しに皆に目配せをすると、私の意図を汲んでくれたかのように頷いた。
「はぅ~……よかったです~…」
本当に疲れてるんだな…。
心なしか、言葉遣いが幼児退行してる気がするし。
「どうした?山田先生」
「織斑先生」
山田先生とのやりとりをしている間に、千冬さんもご登場。
同じ様に事後処理で疲れている筈なのに、今日も相変わらず凛々しいお姿で。
「む……佳r…仲森。もう怪我はいいのか?」
「完治…じゃないですけど、普通に授業を受けるぐらいだったら平気です」
「そうか。だが、あまり無理をするなよ。病み上がりが一番危険だからな」
「分かりました」
至って普通の教師と生徒の会話……で終わらないのが千冬さんクオリティ。
「今回は本当によくやった。だが、心配する方の身にもなれ。見ていて気が気じゃなかったぞ」
「はは……すいません」
あら、頭を撫でられた。
優しく撫でてくれたのか、怪我が痛むことは無かった。
「もうこんな事が起きない事を祈るばかりだな…」
あ~……その……ごめんなさい。
臨海学校の時に今回以上の事件が起きる……かもしれないです。
最悪、また事件の中心にいるかも…。
今度こそ本気でヤバいかな…。
「さて……そろそろ入ってきたらどうだ?」
え?廊下に向かって話しかけてるけど、誰かいるんですか?
「はい……」
あれ?この声は……
静かに教室に入って来たのは、明らかに落ち込んだ様子のラウラだった。
きっと、昨日の事に責任を感じているんだろうな…。
ラウラは何も悪くないのに…。
あ、ラウラと目が合った。
「な…仲森佳織!?なんでここにいる!?もう起きて平気なのか!?」
「もう何回言ったか分からないけど…私なら大丈夫だよ。流石に激しい運動とかは無理だけど、普通に授業を受けたり食事をしたりぐらいなら出来るから」
「そうか……本当によかった……」
心の底から安心したのか、目尻に涙が溜まってる。
「ボーデヴィッヒ」
「はっ!」
千冬さんに指摘されて、背筋を伸ばす。
「この度は……その……誠に申し訳なかった!!私のせいで皆を危険に晒してしまい、お前に怪我を……」
深く頭を下げてラウラが皆に謝罪した。
肩が震えている。
きっと、ここに来るまでに色々と言葉を考えて、教室の前で勇気を振り絞っていたに違いない。
短い言葉ではあったが、彼女の誠心誠意の謝罪を聞いて、責め立てるような愚か者はこのクラスには一人もいない。
「別に気にしてないよ」
「え?」
「そうだよ!私達も一部始終を見てたけど、明らかにボーデヴィッヒさんも被害者じゃない!」
「そうそう!だから、謝らなくてもいいよ!」
「寧ろ、ボーデヴィッヒさんも大丈夫そうでよかったって思ってるよ!」
「だね~!大事なクラスメイトに何かあったりしたら、私達の方が沈んじゃうよね~!」
「お前達……」
ほらね。皆はとっくの昔にラウラの事をクラスメイトの一員だって思ってたんだよ。
「私の言った通りだろう。謝罪など不要だと」
「はい……」
ついに本格的に泣いてしまった。
「あらら……ほら、これ使って」
「すまにゃい……」
あら可愛い。
私が渡したティッシュで鼻をチーンってする姿が実に癒される。
「ところで…少しいいだろうか?」
「どうしたの?」
「その……な?実は昨日…私が頼りにしている副官に好意を抱いた相手に対してどうすればいいのか聞いたんだ…」
「ふぅ~ん…」
副官って何?副隊長的な役職?
それに好意って?それって友情を感じたって意味?
「それってどんな……むぎゅっ!?」
それは一瞬の出来事だった。
ラウラの顔が急接近したと思ったら、唇にとても柔らかい感触がががががが~!
少ししてラウラは離れてくれたが、私の頭は完全にパニック状態に。
「い…いきにゃりにゃにをっ!?」
呂律が回らないし……。
「か…佳織!今日からお前を私の『嫁』とする!異論は認めん!!」
YOME?
「日本人の主食の…」
「それは米だ」
「雨雲から降り注ぐ…」
「それは雨」
「甲羅を背負った長寿の象徴とされる…」
「それは亀だ。って…からかっているのか?」
誤魔化せなかったか…!
恐る恐る周囲を見渡すと、皆の時が止まっていた。比喩でなく。
「か…佳織の唇が……」
「あわわわわ……」
「佳織さんががががががが~…!」
「あれ……?なんで胸がチクってするの…?それにモヤモヤして…」
「かおりん~…」
約3名が真っ白に燃え尽きて、シャルロットは困惑、本音ちゃんは泣きそうになってる。
「だ…大胆ですね……ボーデヴィッヒさん……って、織斑先生!?」
「………………」
ち…千冬さ~ん!?完全に白目向いてる~!?
「気持ちは分かりますけど、しっかりしてくださ~い!!」
「あ……ああ……」
朝っぱらから教室が騒がしくなっった…。
これ、どうやって収拾すればいいの…?
でも、ここに鈴がいなかったことが不幸中の幸いだな…。
もしもいたらどうなっていた事か…。
想像もしたくない…!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
放課後。私は本音ちゃんを連れて整備室に来た。
目的は勿論、ラウラとボインスレイヤーとの連戦で疲弊したバリスティック・リヴァイヴの整備をする為。
空いているハンガーにISを展開させて、改めて状態を見る。
「うわぁ~……派手にやらかしたね~」
「ご…ゴメン……」
所々に細かい損傷が沢山あって、特に格闘戦を沢山したせいか、両腕の部分がかなりヤバイ事になってた。
「でも、だいじょ~ぶ!これぐらいならまだなんとかなるよ!」
「お願いしてもいいかな…?私の体じゃまだ整備は難しいみたいで……」
「言われなくてもそのつもりだよ~。例えかおりんが『自分でする』って言いだしても、私がするつもりだったから~」
「そうなんだ……」
ホント……本音ちゃんには頭が上がらないなぁ~…。
「それじゃ、早速始めますか~」
本音ちゃんが軍手をつけると、後ろからひょっこりと人影が出て来た。
「あ…あの!私もお手伝いさせてください!」
「簪……?」
このタイミングで来るって事は、さっきからずっと整備室にいた?
「かんちゃんだ~。お手伝いしてくれるの?」
「う…うん。少しでも佳織さんの役に立ちたくて……その……」
「私は大歓迎だよ。だよね?本音ちゃん?」
「勿論~!かんちゃんなら私も歓迎するよ~!」
「だって」
「本音……ありがとう」
うんうん。やっぱり友達同士はこうでなくっちゃ。
「じゃ、改めて始めようか?」
「うん!」
けど、またまた意外な訪問者がやって来た。
「ならば、私も一緒に手伝おう」
「「「え?」」」
次にやって来たのは、銀髪の軍人少女のラウラだった。
「貴女は……」
「なんでここに?」
「嫁を手伝うのは当然だろう?」
「まだ言ってるんだ…」
「よ…嫁!?」
あ…うん。そこに反応するよね、やっぱり。
「佳織は私の嫁だ」
「え……ええっ!?」
「あまり深く気にしないで」
「は…はい……」
なんて言って、実は私が一番困っていたりして。
彼女の『嫁発言』のせいで、またクラスが妙な事になってるし。
「自分のISはいいの?」
「私のレーゲンならば予備パーツで組み直した。幸いな事にコアは無事だったからな」
「それはよかった」
最後にド派手に爆発してたから、正直ドキドキしてたんだよね。
明らかに木端微塵になった感じの爆発だったし。
「あの……なんで嫁?」
「日本では気に入った者を『嫁』と呼ぶのが一般的な習わしなんだろう?私もそれを実行したまでだ」
「「それは……」」
一体何処のどいつがこんな事を吹き込んだんだ!?
あ、別にドイツとどいつを掛けた訳じゃないからね?そこ重要よ?
「クラリッサには感謝しなくてはな…。お蔭で私は自分の気持ちを表現する方法を得た」
そーいや、そんな名前のキャラがいたような…。
朝は副官って言ってたけど、その人がラウラに余計な知識を……!
「それに、私はまだ助けてくれた嫁「佳織って呼んで」…佳織に礼をしていない」
「別に気にしなくてもいいんだけど…」
「そっちが気にしなくても、こっちが気になるんだ。だから、機体の整備を手伝わせてほしい。駄目だろうか…?」
そんなウルウルした目で見ないで~!
これを天然でやってるから、この子は別の意味で侮れないんだよね……。
「い…いいよいいよ!本当は猫の手も借りたいって思ってたし!ね?ね?」
「そ…そうですね!」
よし!簪は了承を得た!
後は……
「本音ちゃんは……」
「ワタシモダイジョーブダヨー。らうらうナラダイカンゲーダヨー」
本音ちゃんの目にハイライトが無いんですけど~!?
本当に大丈夫なの~!?
「よし!ならば張り切って手伝わせてもらうぞ!」
「「そ…そうだね~。張り切って頑張ろ~…」」
やる前から一気に気力を持っていかれたよ…。
ラウラ……恐ろしい子!
その後、ラウラも交えての修復と整備を兼ねた作業が始まった。
流石は現役軍人と言うべきか、作業がサクサク進んでいった。
途中で簪とラウラがお互いに自己紹介をしていた。
二人とも代表候補生と言う事もあってか、すぐに意気投合していたみたい。
こうして人の輪が広がっていくのはとてもいい事だと思う。
高校時代の青春はこうでなくっちゃね!
原作2巻……完!
案の定、ラウラは間違った知識にて佳織にキスをすることに。
純粋無垢であるが故に、ある意味では最強のライバルが誕生した瞬間ですね。