神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる 作:とんこつラーメン
狙い目はザク・ハーフキャノンとケルディムガンダムサーガです。
早く発売しないかなぁ~。
「う…うぅん……?」
瞼を貫通して差し込む光に反応して『彼女』は目を覚ます。
「ここ……は……?」
「目が覚めたようだな」
すぐ傍で声がする。
この声は間違えようがない。
彼女が最も尊敬している女性であり教官『織斑千冬』だ。
「ここは学園内の保健室。お前はあの後すぐに運ばれたんだ」
「あの後……?」
頭に手を当てて、少しずつ記憶が蘇っていく。
「そうだ……私は……」
思い出した。
彼女…ラウラ・ボーデヴィッヒは佳織に敗れた後、謎のシステムがラウラの意思を無視して強制的に発動し、それから……
「きょ…教官!彼女は……仲森佳織は……痛っ!?」
「あまり無理をするな。お前の全身に無理な負荷がかかった上に、佳織の拳や蹴りを受けたんだ。それによって筋肉疲労と打撲跡がある。まぁ、それ程酷くは無いから、回復は早いだろうが」
「そう……ですか……」
起き上がりかけていたラウラは、再びベットにゆっくりと寝転んだ。
その時、自分が普段から付けている眼帯が外されている事に気が付いたが、気にする程でもないと判断し、何も言わなかった。
「あの時の状況は覚えているか?」
「はい。私は仲森佳織に敗れ、その直後に私のISが変貌して……」
「そうだ。……これから話す事は重要案件な上に機密事項なのだが、あの場にいた全員が見ていたからな…。機密も何もあったもんじゃないか…」
はぁ……と溜息をこぼす千冬。
これまで、そしてこれからの仕事の事を考えると、そうせずにはいられないのだろう。
「VTシステムの事は知っているか?」
「あ……はい。確か、正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。過去のモンドグロッソにおいてヴァルキリーを受賞した者の動きを文字通りトレースするシステムであり、そして……」
「あぁ。アレはIS条約において現在、どの国家や企業、組織等で研究や開発は勿論、使用も禁止されている代物だ。それがお前にISに搭載されていた」
「………………」
沈黙しているが、ラウラは決して沈んでいるわけではなかった。
彼女の意識が飲まれる瞬間、確かに聞いたのだ。
『VTシステムを書き換え、BSシステムにした』…と。
それなのに、実際に発見されたのはVTシステム。
この謎のズレがどうしても気になった……が、ここで尋ねても答えは出ないであろうことは明白だった。
なにより、今の自分は疲弊している。
今は体を休める事が優先だろう。
「……アレは実に巧妙に隠蔽されていた。本来ならば操縦者の精神状態や意思、機体の破損状態等がトリガーとなって発動する筈なのだが、今回発見された物は少し違った」
「……SEが無くなったと同時にパイロットの意思等に関係無く、強制的に発動するように……ですか」
「分かっていたのか……」
軍人故の洞察力か……と千冬は思ったが、実際は単純に覚えていただけの事だ。
「現在、学園側からドイツ軍に向けて問い合わせをしている。近いうちに委員会からの強制捜査が入るだろうな」
淡々と事務的に話す千冬の言葉を聞きながら、ラウラは虚空を見つめて、先程の夢の事を思い出していた。
『夢』の一言で片付けるには、余りにも鮮明な記憶。
「私は君を裏切らない……か」
「どうした?」
「い…いえ!なんでもないです…」
小声で呟いたつもりだったが、地獄耳の千冬には聞こえていたようだ。
「あの…先程聞きそびれましたが、仲森佳織は……」
「仲森なら、隣のベットで寝ている」
「え?」
千冬が隣のベットを遮っているカーテンを開くと、そこには顔や腕などにガーゼや包帯を巻いている佳織が静かに寝息を立てていた。
「なっ……!?」
明らかに自分よりも重傷な佳織を見て、言葉を失うラウラ。
「お前を救出した後にISが強制解除され、仲森は倒れてしまったんだ。保健の先生が言うには、ずっと張りつめていた緊張の糸が切れると同時に、今まで蓄積していた疲労が一気にきたせいらしい」
「では、あの傷は……」
「あれか?暴走したお前のISと壮絶な格闘戦を繰り広げたんだ。ああもなる」
「格闘戦……」
なんとなくではあるが、救出される瞬間の事だけは明確に覚えていた。
いきなり目の前が明るくなり、それと同時に、誰かに手を握られて引っ張られた。
ISを纏っていたにも拘らず、その手はまるで生身の手のように暖かかった。
「………!?」
急に顔が熱くなった。
思わず両手を自分の胸の上で重ねる。
「お前……まさか……」
「え?」
いきなり千冬の顔が怪訝な表情になる。
(また堕としたのか……佳織……)
佳織が皆に好かれている事実に、教師として喜ぶべきか、一人の女として嫉妬すべきか、理性と本能の狭間で密かに苦悶する千冬だった。
「取り敢えず、今日はここでゆっくりと体を休めるように。私は事後処理がある為もう行く」
「わ…分かりました…」
椅子から立ち上がり、保健室のドアへと向かう。
その途中で振り返り、念を押すように言う。
「そうだ、お前に限ってないとは思うが、一応言っておくぞ」
「な…なんでしょうか?」
「いくら無防備とは言え、寝込みを襲うような真似だけはするなよ?(それが許されるのは私だけだからな)」
「と…当然です!」
「ならいいのだがな。ソイツは同性に妙にモテるからな」
「そうなんですか……」
フッ……とニヒルな笑みを浮かべ、最後にこう呟く。
「お前が想像している以上にライバルは多いぞ。…………私も含めてな」
「はい?」
それだけを言い残して、千冬は保健室を後にした。
佳織と二人っきりになった保健室。
急にソワソワしてきた。
「な…なんだ…?このモヤモヤと言うか……ドキドキと言うか……言葉では言い表せないような気持ちは……」
そっと隣の佳織を覗き見る。
頭などに包帯を巻いてはいるが、その美しさは全く失われてはいなかった。
本人が起きていたら否定するだろうが。
「お前が……救ってくれたのだな……」
痛む体を我慢しながら、ラウラは佳織が寝ているベットの傍まで向かう。
そして、その手をそっと握りしめた。
「本当に……本当にありがとう……佳織……」
涙を流しながら微笑むその時の彼女の顔は、とても可愛らしく、美しかった。
眼帯が付けられていて今まで隠れていた金色に輝く目が、静かに輝いていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「トーナメントは事故により中止になったけど、今後の個人データの指針としする為、全ての一回戦だけは行う事にする…か」
「中止の原因は絶対に今日の出来事だろうけど、完全に中止にしない辺りが、IS学園らしいって言うか…」
「何が何でもデータだけは取るぞ!と言う意思が見え見えだな」
「その辺りは仕方がありませんわ。学園側もIS委員会に各生徒のデータ等を提出しなくてはいけませんから」
「あぁ~…大人って大変ね~。私は絶対になりたくないわ~」
「なりたくなくても、時間が経っちゃえば嫌でも大人になるけどね~」
「ほ…本音さんって、意外とシビアな事を言いますのね…」
「思ったよりもリアリストなんだな…」
こんな会話を学食でしているのは、毎度お馴染みの佳織ラバーズの面々。
今回はそこにシャルロットも加わっているが。
全員の手元にはそれぞれにドリンクが置かれていて、今が食後なのは誰にも分かった。
「まず確実に箝口令が敷かれるでしょうけど、絶対に意味無いわよね…」
「今回は流石に目撃者が多すぎる。しかも、声援まで送っていたからな」
「まぁ…黙れと言えば皆は黙っていてくれるとは思うけど、確実に記憶には残るよね…」
「色んな意味でインパクト絶大だったからね……」
遠い目をして呟くシャルロットの顔は、どこか疲れ果てていた。
「だが、今回も佳織のお手柄だったな」
「まさか、あの佳織さんがあんな風な戦いをするとは思いませんでしたわ」
「意外と言えば意外だったけど、凄かった事実は変わらないよね」
「そうね。私とシャルロットなんか、あれを間近で見てたから、すっごい迫力だったわよ」
「同時に、佳織がどうして『赤い彗星』って呼ばれているか、実感出来た気がするよ…」
コンビを組んで分かった、佳織の凄さ。
恐ろしく冷静なように見えて、その心の奥底にはとても熱いものを隠し持っていた。
頭はクールに、心はホットに。
言葉で言えば簡単だが、これを実践出来ている人間は非常に少ないだろう。
「その佳織は今、保健室なのよね?」
「あぁ。戦いの最中は分からなかったが、実は全身にかなり無理をさせていたようでな、急いで保健室に連れていかれたよ」
「お見舞いに行きたいですけど、流石にもう時間が……」
「それ以前に、かおりんはヘトヘト~になってスヤスヤ寝てると思うから、邪魔したら駄目だよ~」
「分かってるって。佳織の睡眠を邪魔するなんて誰もしないよ」
「つーか、暗黙の了解よね」
鈴の言葉に全員が頷く。
「にしても……」
「あら?急にどうしたんですの?シャルロットさん」
「いやね……言動とか色々とツッコみどころが多かったけど、戦闘だけをピックアップすれば、今日の佳織ってカッコよかったなぁ~って思って」
「「「「「え?」」」」」
遠い目の次は熱のある顔になるシャルロット。
ほぅ……と息を吐く彼女の顔を、ここにいる全員が一度はしたことがある。
そう、この顔は……
(((((恋する乙女の顔!!)))))
だが、当の本人は己の抱いた感情が佳織に対する恋心の始まりだと自覚はしていないようで、それを瞬時に察した少女達は同時に密かにホッ…と胸を撫で下ろした。
約一名、撫で下ろす程の胸が無い者もいるが。
「あ?」
「り…鈴?どうしたの?なんか凄い顔になってるよ?」
「なんか、どっかで誰かが私の悪口を言ってる気がして…」
口は災いの元。
皆さんも気を付けましょう。
「優勝……チャンスが……消えて……」
「当然……交際も……無効に……」
「そげなこと……そげなこと~~~~!!」
食堂の隅で喚いていた女子達がいきなりどこかへと走り去っていった。
「なんだろう?」
「例の噂の件が無効になった事を嘆いている、佳織のファンの子達じゃない?」
「あ~…アレね。私は別に気にしないけど」
「アタシも。そんな噂に右往左往するよりは、真正面から挑んだ方がよっぽど健全だわ。箒もそう思うでしょ?」
「そ…そうだな!あははは……」
「ん?どうしたの?」
「なんでも無いぞ!うん!ターセル様々だな~!」
「……変なの」
完全に怪しまれてしまった箒だったが、今の彼女はそんな事を気にしている余裕は無かった。
(おいおいおい!トーナメント前の『どんな結果になっても告白しよう』と思っていた私はどこに消えた!?と言うか、こんな雰囲気になって、私だけが佳織に告白とか出来ないだろ!!完全に抜け駆けだと思われてしまう!!ここにいるメンバー全員を敵に回す事だけは絶対に避けたい!!特に本音は!下手に敵対すれば、どんな目に遭うか想像出来ない!!)
実際の彼女は全く『ターセル様々』ではなかった。
「今日は本当に疲れたから、久し振りに大浴場にでも行こうかしら?」
「いいですわね。シャルロットさんもいかがですか?」
「大浴場って、大きいバスルームだよね?いいの?」
「勿論。今日は丁度使える日だよ~」
「じゃあ、決まりだね。皆で行こうよ」
これからの彼女達の予定が決まったところで、一旦解散する少女達だった。
え?入浴シーン?
そんな事をしたら私が殺されますよ。
だから、それぞれに想像してくださいな。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
深夜の保健室。
本来ならば誰も入れない筈の閉じられた場所に、一つの人影があった。
深く被ったハンチング帽子にトレンチコート。
体型から、その人物が男性である事は明白だった。
本来なら警報の一つでも鳴りそうなものだが、そんな気配は一切無い。
それだけで、彼がどれ程の技量の持ち主なのかが分かる。
『フフフ……こうして態々、夜中に侵入までするなんて、よっぽど彼女の事が心配だったんですね?だって、アリーナで見ていた時だって、ずっとソワソワしてましたし』
「……………………」
『この状況での沈黙は肯定だと捉えますよ?』
「勝手にするがいい」
『では、そうします』
何処からともなく女性の声が聞こえてくるが、周囲には聞こえていない。
この声は彼の脳裏にのみ聞こえているのだ。
「しかし、こうして見れば、彼女はどこまでも普通の少女だな…」
『そうです。彼女は転生特典を無理矢理与えられた事を除けば、至って普通の女の子ですよ』
「それを聞かされれば、増々不憫に感じてしまうな…」
『はい…。彼女は『彼』の欲望を満足させる為だけに転生させられたようなものですから』
そう話す『彼女』の声は沈んでいるように聞こえた。
『やっぱり心配ですか?』
「最初はな。だが、今はもう心配はしていない」
『と言いますと?』
「お主も聞いただろう。戦いの最中、アリーナの中にいる人々が送った彼女への声援を」
『あれは凄かったですね~』
「もしも彼女が孤独な戦いをしているのならば私もそれなりの事を考えたが、この子は一人じゃない。あれだけ多くの友が、仲間が、恩師がいて何を恐れる必要がある?」
『そうですね…。特典なんか関係無しに、彼女には人を惹きつける何かがあるのかもしれませんね』
「それが俗に言う『カリスマ』なのだろう」
室内が暗い上に帽子を深く被っているからよく見えないが、彼の顔は確かに微笑んでいた。
『さて……これからどうします?『元の世界』に戻りますか?』
「そうだな。大恩あるお主に言われて『この世界』に来たが、どうやら杞憂だったようだ」
『それには同感です。私も過度な心配をしちゃいましたね。では……』
彼の体が透明になっていき、気配が消えていく。
「シャア・アズナブル=サン……いや、ナカモリカオリ=サンと呼ぶべきか。いつの日か君が君だけの『赤い彗星』になれる日を楽しみにしているぞ。それと……」
彼の手が優しく佳織の頭に触れ、少しだけ撫でた。
「今日の君が見せたカラテ……見事なワザマエだった」
『それじゃあ、元の世界に戻しますね。場所はネオサイタマでよろしいですか?フジキド・ケンジ=サン』
「頼む」
その言葉を最後に彼……フジキド・ケンジこと、本物のニンジャスレイヤーは姿を消した。
佳織のベットの傍に置いてある棚に『忍殺』と彫られたスリケン一枚が置いてあり、月明かりに反射していた。
二人のフラグが立って、しかもご本人の登場~!
もう登場はしませんけどね。
ストーリー的に次回は修羅場の予感?