神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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うぅぅ……台風怖かったよぉ~!

窓はバンバン鳴るし、家は滅茶苦茶揺れるし!

自宅なのに全く落ち着きませんでした~!






第29話 偽りの復讐者

 学年別トーナメント1年生の部の第一試合。

私とシャルロットVSラウラと鈴コンビの試合になった。

 

初手で私はラウラと、シャルロットは鈴にそれぞれ分かれての確固撃破作戦を敢行。

 

激しい攻防の末、私はラウラにファンネル→キック→ファンネル→ビームバズーカのコンボをぶちかます事に成功。

これだけすれば、少なくともSEは枯渇寸前か、もしくはゼロになったかしただろう。

なんて思っていた時期が私にもありました。

 

「な…なんだ!?」

 

ビームバズーカを受けたラウラの体がいきなり痙攣したように震えだし、次の瞬間には彼女のISがどろどろに融解し、ラウラの体を覆い尽くした。

 

「これは……!」

 

この現象は……間違いない!VTシステムだ!

 

正式名称『ヴァルキリー・トレース・システム』

 

私も詳しい原理はよく理解してないけど、確かあれって『楽して強くなりたいんだけど、どうしたらいい?』って考えに『じゃあ、強い奴と同じ姿になっちまえばいいんじゃね?』って答えを出した違法装置だったような気がする。

 

心のどこかで楽観視していた自分がいた。

この世界のラウラは一夏を初めとした特定の誰かに対して嫉妬や敵愾心なんかを全くもっていない。

だから、仮に彼女のISにVTシステムが内蔵されていても、発動なんかしないんじゃないかって。

でも、それは間違いだった。

もうちょっと色々な可能性を考えるべきだったんだ!

 

きっと、あれはSEが尽きた瞬間に感情レベルとかそんなものを無視して、強制的に起動するようにプログラムされていたに違いない!

くそっ!どうしてその可能性を少しも考えなかった私!!

 

溶けたISが地面に落下する。

状態が状態なだけに、損傷などは無いみたいだけど……。

 

それを追って私も地面に着地する。

すると、そこに試合中だったシャルロットと鈴も駆け付けた。

 

「ちょっと!あれは一体何なの!?」

「私にも分からん…。ただ……」

「ただ?」

「ラウラのISのSEが無くなった途端にあのような状態に陥った……としか言えない」

「そんな……」

 

本当は『VTシステムだよ~』って言いたいけど、そんな事を言ったら真っ先に私が疑われるに決まってる。

そんなのは流石に御免だ。

 

「SEが…?」

「意味分からないわ…」

 

それには激しく同感だよ。

観客席の方も現状をよく理解できてないのか、皆が目をパチクリとしてるし。

 

「兎に角、試合は中止ね。私達は大人しく退避して、先生達が来るのを待った方が……」

 

鈴の言葉が終わる前に、溶けたISに変化が訪れた。

奴が明確な形を取り出したのだ。

 

「な…なに……?」

「二人とも。気持ちは分かるが、今は迂闊に動くな」

「う…うん……」

 

冷や汗を流しながら様子を見ていると、ソレは動き出した。

 

縦長になったと思ったら、そこから手足のようなものが生えてきて、人型に変化していく。

その速度は非常に早く、まるで早送りで猿が人間に進化していく様子を見ているかのようだった。

 

(やっぱり……千冬さんの姿になるのか…!?)

 

だとしたら本気でヤバい!

確かにデットコピーではあるけど、それでもデータには全盛期の千冬さんの戦闘能力が使われている!

そんなのと正面から戦ったら、命が幾つあっても足りないよ!

しかも、相手は千冬さん本人じゃなくて、あくまで感情の無いシステム。

手加減とか容赦とかする筈もない。

 

内心、私が本気で焦っていると、なんだか様子がおかしい事に気が付いた。

 

(あれ……?)

 

なんか……体がごつくないか?

なんつーか……まるで男のような……

 

前身に皺のようなものが形成されていき、頭は頭巾のようなものに見えた。

 

「これは……まさか……!?」

 

いやいやいや!そんな事ってあり得るのか!?

 

時間にして僅か数秒。

その間に目の前にある『ISだったもの』が『全く別の存在』に変わった。

 

そう……それは……

 

「「「「「「ア……アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」」」」」」

 

漆黒の体躯を持つニンジャスレイヤーだった。

いや、『擬き』と言うべきか。

あれはニンジャスレイヤーじゃない。

本物はあんなにも無闇矢鱈と殺気を飛ばしたりしない。

 

つーか、観客の皆が全く同じ反応をしたことに誰もツッコまないのね。

 

「か…佳織……あれって……」

「あぁ……鈴。多分、お前が考えている通りだ」

「やっぱり……」

「え?ええ?」

 

私と同じ知識を持つ鈴は、即座にあれの姿がなんなのか理解出来たみたい。

一方のシャルロットは完全に状況が分からずに置いてきぼりになってるけど。

 

『ボ……こ…すべし……』

「「「え?」」」

 

今こいつ……喋った?

 

巨乳(ボイン)殺すべし!!!』

 

……………………。

 

「「「「「喋ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」

 

いや、それにも驚きだけど、喋った言葉にも耳を傾けようよ!

この似非ニンジャスレイヤーはなんて言った?

 

「………ねぇ…もう状況についていけないんだけど……」

「奇遇ね。私もよ…」

 

そこ~!諦めないで~!お願いだから戻ってきて~!

 

心の底から困惑していると、山田先生からのプライベート・チャネルが聞こえてきた。

 

『仲森さん!デュノアさん!凰さん!聞こえますか!?』

「「「山田先生?」」」

 

どうやら、この通信は私達三人に行っているようだ。

 

『今すぐに教師部隊を突入させます!だから、貴女達はすぐに……』

「なんだと?」

 

それはヤバいかもしれない…。

もしもあれが本当にニンジャスレイヤーを模しているのならば、間違いなくニンジャの掟に従うはず。

だとしたら、集団で何も言わず襲い掛かるのは非常に危ない!

 

「それはダメだ!」

『え!?何を言ってるんですか!?』

「奴が本当に姿の通りのニンジャならば、そんな事をした途端に何をするか分からない。迂闊な事はやめるべきだ」

『で…でも!だったらどうしたら!』

「大丈夫だ」

『はい?』

「相手がニンジャならば……」

 

私は少しだけ近づいて、手持ちの武装を全て拡張領域に収納した。

 

「こちらもそれ相応の対応をすればいいだけの事だ」

『な…仲森さん!?いきなり何を言って……』

 

このままじゃ埒があきそうにないので、また通信を強制カット。

 

「鈴……」

「分かってるわ。気を付けて」

「了解だ」

「ふ…二人とも?」

 

鈴はシャルロットを連れて端の方に移動した。

 

アイツが本当にこっちの予想通りの反応をするかは分からない。

でもやってみる価値はある筈だ!

 

え~っと……手と手を合わせて合掌して、それから……本名を名乗るニンジャは少なくて、大抵がニンジャネームを名乗るんだっけ?

だったら私は……

 

「ドーモ、ハジメマシテ、シャア・アズナブルデス」

 

済みません……この一時だけはこの名前を名乗らせてください…!

 

「あ…挨拶!?何を考えてるのさ!?そんな事をしてたら攻撃される!って言うか、シャア・アズナブルって何!?」

 

シャルロット=サン、ちょっと五月蠅いですよ。

 

『ドーモ、シャア・アズナブル=サン。ボインスレイヤーデス』

 

相手も同じポーズで挨拶した!

やっぱり、こいつはニンジャなんだ!

 

「なんで挨拶を返すの!?意味が分からないよ!?」

「あれが礼儀ってヤツよ」

「何気に冷静だよね凰さんは!?」

「私の事は鈴でいいわよ」

 

完全にツッコみ役が定着してますよ、シャルロット=サン。

 

………あれ?シャルロットのツッコみに夢中になっててスルーちゃったけど、こいつ…なんて名乗った?

 

「ボイン…スレイヤー……?」

 

なんちゅーネーミングだ…!

恥ずかしくないのか!?

ほら、観客の皆さんも逃げる事を忘れて顔を赤くしてるし!

 

「………………」

「なんで急に眼を逸らすの?鈴」

「別に逸らしてないし」

「いや!思いっきり逸らしてるじゃん!」

「気のせいじゃない?それよりもシャルロット、お尻出てるわよ」

「出てないよ!!」

 

もう完全にコントと化してるじゃんか。

あと、ISスーツなんだから、ある意味では半分お尻出てるよ。

 

「ボインスレイヤー=サン。何故ラウラを取り込んだ。貴様の目的を言うがよい」

『我が目的は唯一つ!巨乳殺すべし!貴様も巨乳!故に殺す!!』

「何故に巨乳を殺す?」

『それが我が使命が故!それ以外に理由など無い!!』

 

やはり、所詮はプログラムか。

こいつにはニンジャスレイヤー=サンのような信念が一切無い。

空虚な器に過ぎない。

 

「いいだろう……」

「佳織……?」

「私はニンジャではない。だが、私の大切なクラスメイトをこのまま放置しておく程、愚かでも無い」

『ならばどうする?』

「知れた事。貴様の中にいるラウラを救出する!それこそが私にとってたった一つの勝利条件だ!」

 

ISのパワーアシストとシャア様譲りの反応速度を用いれば、なんとか戦えるはず!

エネルギーはまだ少しだけ余裕があるし。

ビームバズーカとかが外部エネルギーパック式でよかったよ。

そうじゃなかったら、ヤバかったかもしれない。

 

「では……行くぞ!!」

『応!!』

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に加速、そのまま拳を振り上げる!

相手もそれに合わせるように、加速して拳を握りしめた!

 

「『イヤ――――――――――――――――!!!』」

 

オタク知識で得た私の似非カラテでどこまで通用するかは分からないけど、少なくとも、ここで逃げると言う選択肢だけは絶対に無い!!

 

私達の拳がぶつかり合い、その炸裂音がアリーナ全体に響き渡った。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 観客席で見ていた一夏達一行は、目の前の光景に言葉を失っていた。

いきなりのラウラのISの変化。

どこかで見た事のあるような姿になったISと、壮絶な戦いを繰り広げている佳織。

 

力と力。

技と技。

拳と拳の応酬。

 

それはまさに『ニンジャ』同士の戦いそのものであった。

 

実際には二人ともニンジャではないが。

それでも、その体の中にあるニンジャソウルは紛れも無く本物である!

 

「ボインスレイヤーって……」

「セ…セシリア?さっきから頭を抱えてどうしたの?」

「なんでもありませんわ……」

 

セシリアはこの中で唯一、ボインスレイヤー誕生の瞬間を目撃した人物。

それ故に色々と思うところもあるのだろう。

 

「佳織の奴……いつの間にこれ程のカラテを……」

「いや、あれは多分、見よう見真似だよ」

「なんだって?」

 

武の心得がある箒らしても佳織のカラテは見事の一言だったが、それが真似事だと知り、怪訝な表情と化す。

 

「佳織は昔から『その手』の知識は沢山持ってた。その知識と今の自分の反応速度に加え、ISのパワーアシストでなんとか戦ってるんだと思う」

「ならば……あれは全て即席で行っていると?」

「そうなるね」

「門前の小僧、習わぬ経を読む……と言うヤツか」

 

物真似だけで体格で優れている相手と互角に渡り合っている。

その事実がただただ凄く感じた箒だった。

 

物真似なのはお互い様だが。

 

そんな中、唯一ついてこれていないセシリアは……

 

「頭が痛いですわ……」

 

一人頭を押さえていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「イヤーッ!」

『グアーッ!』

 

私の拳がボインスレイヤー=サンの顔に命中し、

 

『イヤーッ!』

「グアーッ!」

 

ボインスレイヤー=サンの蹴りが私のお腹に直撃する。

 

(強い……!)

 

こうして拳を交えるとよく分かる。

例え存在は偽物でも、その実力は本物だ!

 

そういや、誰かが言っていたっけ。

『偽物が本物に勝てないなんて道理は無い』って。

全くもってその通りだよ!くそっ!

 

「イヤーっ!!」

『グ……!』

 

し…しまった!

こっちの蹴りが掴まれた!

 

『イィィィィィィィヤァァァァァァァァァッ!!!』

 

そのままジャイアント・スイングされて、地面に投げ飛ばされた!

 

「くっ……!」

「「佳織っ!!」」

 

二人の叫ぶ声が聞こえる…。

ISに守られていても、全身がめっちゃ痛い…!

 

『イヤーッ!!』

 

追撃のスリケン!!数は……

 

「ええい!面倒!!」

 

咄嗟にマシンガンを取り出して、飛んでくるスリケンを迎撃!

半ば地面に横たわっているような状態だったから当たるかどうかは微妙だけど、やらなきゃやられる!!

 

「当たれ!!」

 

迎撃……じゃないけど、スリケンを逸らす事には成功して、結果として一個も命中はしなかった。

 

『見事なワザマエ!一瞬の判断でスリケンの迎撃に最も有効な武器を選び、回避してみせるとは!』

「どうも……」

 

今のは完全に偶然だった…。

同じ事をもう一度しろと言われても絶対に出来ない…。

 

「はぁ…はぁ……」

 

膝を押えながら、なんとか立ち上がる。

少しでも気を抜けば、膝が爆笑する…。

早く救出しないと、ラウラの体力が持たない!

 

『だが、もう体の方が限界ではないのか?』

「かもしれんな……だが!」

『む?』

 

頬を落ちる汗を拭い去り、地面に払う。

 

「ニンジャの戦いとは、限界を超えてからが本番ではないか?」

『ゴウランガ…!』

 

なんて強がってはみたものの、本当はとっくの昔に限界なんて迎えてるんだよ。

それでも、救いたい子がいるんだ!!

 

「なんで佳織は武器を使わずに無手で戦おうとするの?佳織の実力なら……」

「ノーカラテ・ノーニンジャよ」

「へ?」

「ニンジャの基本は物理攻撃の戦闘術であるカラテであって、それを怠っていたら、どんなニユーク・ジツも全く意味を成さないのよ。古事記にもそう書かれているわ」

「え…えぇ~…っと?コジキ…って?」

 

鈴は腕組みをしてこっちをジッと見ている。

あんな風に見られたら、増々負けるわけにはいかなくなるじゃない!

 

体力、SE共に尽きかけてる…。

ラウラの事も考えれば、これ以上、戦いを長引かせるわけにはいかない。

 

私の状況を一言で言えば『ナムアミダブツ!』だ。

 

でも、このまま絶望的なまま終わらせはしない。

どこぞの指輪の魔法使いじゃないけど、私の手で絶望を希望に変えてやる!

 

「『イヤァァァァァァァァァッ!!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一話じゃ終わらなかったうえに、鈴とシャルロットがコント染みたことに…。

絶対に賛否両論あるでしょうが、できればオブラートに包んでくればハッピーです。

って言うか、完全に佳織もノッてます。


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