神の意思が俺をTSさせて百合ハーレムを企んでいる   作:とんこつラーメン

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皆さんの温かい言葉のお蔭で、なんとかメンタルを保てそうです。

本当にありがとうございます。

今回は、学年別トーナメントに入る前に少し話を挟もうと思います。

所謂、オリジナル回ですね。






第27話 上級生達

 私がシャルロットとコンビを組んでから約一週間。

あの日から私達は一緒に訓練をして、コンビネーションの確認などをしていた。

で、今日は小休止をしようと言う事で、訓練は中止にすることにして、それぞれに放課後をのんびりと過ごす事にした。

あんまり根を詰めてもいい事は何もない。

適度な休憩も大事な訓練……と、シャルロットが言っていた。

代表候補生の言葉は心に響きますなぁ~。

 

で、そんな私が今いる場所は……

 

「ほぇ~…」

 

全体的に機械的な印象が強いIS学園において、なんとも違和感タップリな木製の扉。

まるで、どこぞの大会社の社長室を彷彿とさせる佇まいだ。

 

「ここが?」

「生徒会室だよ~」

 

隣には本音ちゃんが一緒にいる。

私一人じゃ生徒会室の正確な場所は分からないから。

 

前々から楯無さんから招待はされていたんだけど、想像以上にごたついて、来る機会が全く無かった。

いい機会だから、訓練を休むこの日に来ようと思ったのだ。

 

「え~っと……取り敢えずノックだよね…」

 

私が手を丸めて扉を叩こうとすると、それを完全に無視して本音ちゃんがドアノブに手を伸ばした。

 

「かいちょ~。かおりんを連れてきたよ~」

「ほ…本音ちゃん!?」

 

い…いいのか!?

一応、親しき仲にも礼儀ありって言葉もあるんだよ!?

本音ちゃんが知ってるかどうかは分からないけど。

 

「あら、いらっしゃい」

 

中には、楯無さんが大きなテーブルの中央に優雅に座っていた。

手元には紅茶の入ったティーカップが置いてある。

湯気が出ているって事は、まだ淹れてから時間は経っていないようだ。

 

「その……お邪魔します」

 

一応、色々と挨拶の言葉は考えてきたんだけど、本音ちゃんのいきなりの行動で全部パーになっちゃった。

っていうか、頭から飛んでいっちゃったよ。

 

「ようこそいらっしゃいました」

 

楯無さんの他には、眼鏡を掛けた三つ編みの生徒がいた。

リボンの色からして三年生だ。

 

「え…あ…そ……初めまして」

 

だ…誰だっけ?なんか見た事があるような気がするんだけど……。

 

「貴女の事はよく本音から聞いてます。仲森佳織さん」

「私の名前を……」

「言ったでしょう?本音から聞いてると。それに、仲森さんは色々と有名ですから」

「ははは……有名ですか」

 

『どんな意味で有名なんですか』って聞きたかったけど、怖くて聞けなかった。

 

「私は布仏虚。本音の姉です。いつも本音がお世話になってます」

「は…初めまして。仲森佳織です」

 

すっごく丁寧な人だ…。

思わずこっちが恐縮してしまう。

 

「本音はこの通り、のんびりとした性格をしてるから、色々と迷惑を掛けてないでしょうか?」

「もう~…お姉ちゃん~」

 

流石の本音ちゃんも、虚さんの前では形無しみたい。

 

「迷惑だなんてそんな。寧ろ、私の方が本音ちゃんによく助けられてるぐらいです」

「え?」

「彼女がいてくれるだけで場が明るくなるし、なにより、私に整備のノウハウを教えてくれたのは本音ちゃんですから」

「あら……」

「へぇ~…やるじゃない、本音ちゃん」

「えへへ~…♡」

 

うん、照れてる本音ちゃんも可愛いです。

 

「今じゃ、私のISをいつも整備してくれるようになってるんです」

「それじゃ、本音ちゃんは佳織ちゃんの専属整備士って事になるのね」

「かおりん専属……」

 

専属整備士……なんかいい響きの言葉だ。

本当のプロにでもなったような気分になれるな。

ちょっと照れくさいかも。

 

「って、折角来てくれたのに立ち話ってのは流石に失礼ね。適当に座って頂戴」

「はい。それじゃあ失礼して…」

 

適当って言っても、殆ど座る席は決まっているようなもんだけどね。

私は迷わず楯無さんの正面に座った。

だって、彼女の目が『私の前に座って~!』って訴えてたんだもん。

因みに、本音ちゃんは私の隣。

 

「それじゃあ、紅茶をお出ししますね」

「わ~い♡お姉ちゃんの紅茶~♡」

「本音はお茶請けのケーキを出して頂戴」

「は~い!かおりんの為ならえんやこ~ら」

 

二人揃って奥の部屋に行ってしまった。

残されたのは私と楯無さんだけ。

 

「なんかすみませんでした。結構前に誘われていたのに、中々来れないで…」

「別にいいのよ。こっちは全然気にしてないわ。佳織ちゃんだってクラス代表として忙しかったり、訓練に明け暮れていたりしてたんでしょ?」

「一応は……」

 

正確には、振り回されてたって言った方が正解だけど。

 

「そうそう。噂で聞いたわよ。佳織ちゃん、例の二人の転校生の片方と組んだんですって?」

「え?なんでそれを……?」

「学校って場所は、想像以上に噂の拡散が早いのよ。特に佳織ちゃんは学園では知らない者がいない程の有名人。嫌でも噂は耳に入ってくるわ。私のような役職についていると特にね」

「あぁ~…」

 

忘れがちだけど、この人って生徒会長なんだよな…。

最初のヘッポコぶりを見てしまった私的には、なんとも微妙な会長様だけど。

 

「でも、そう言うのってなんか分かります。生徒会って学校の中心にいるから、いい噂も悪い噂も真っ先に入ってくるんですよね」

「中学の時の経験?」

「はい。一応、副会長でしたから」

 

なんて言っても、完全に名ばかりの副会長だったけど。

あの頃にやった事と言えば、殆どが雑用だった気がする…。

 

「それじゃあ、また副会長をしてみる気はない?」

「……はい?」

 

ふ…副会長?私が?

 

「入学して早々に結果を残して、人望、人柄、実力共に言う事なし。しかも、中学の時に生徒会の経験もある。こんな逸材、そうそういないわよ?」

「いやいや、結果を残せたのは完全に偶然ですし、人望と人柄は普通だと思いますよ?昔の経験だって、殆ど流されてやったようなもんだし…」

「はぁ~……ここも噂通りって訳ね」

「え?」

 

また噂?

 

「佳織ちゃんって妙に自分の事を過小評価する傾向がある……って、先生達が言ってたわよ?」

「えぇ~…」

 

先生達も噂をしてるんかい。

 

「もう少し自分に自信を持ったら?」

「そう言われましても…」

 

私がこれまでやってこれたのは、完全に転生特典のお蔭。

悔しいけど、あのクソ神がくれた特典が無ければ、私なんて当の昔に学園中の笑いものになって、皆から見放されていたに違いない。

別に全てが特典の恩恵とは言わないけど、少なくとも戦闘に関しては間違いなく特典の影響が大きい。

私は謂わばズルをしているのだ。

そんな人間がどうして自信を持てるだろうか。

ましてや、私が模しているのはかの『赤い彗星』と呼ばれた最強クラスのエースパイロットのシャア・アズナブルその人だ。

そんな凄い人物の力を借りるなんて、私には余りにも分不相応過ぎる。

学園では私の事を『赤い彗星』なんて言ってるけど、私にその異名は絶対に相応しくない。

寧ろ、赤い彗星の名を汚しているんじゃないかと言う気にもなってしまう。

本物のシャアが私の事を見たらどう思うだろうか…。

絶対に失望するだろうな…。

 

「佳織ちゃん?どうかした?」

「えっ!?」

 

しまった…ちょっとボーっとしてた。

 

「なんだか元気が無いように見えたけど…」

「あ……なんでもないです。大丈夫です」

「そう……」

 

咄嗟に誤魔化したけど、大丈夫かな…?

 

(あの表情……普段は明るく振舞ってるけど、心の奥底には人には言えないような悩みがあるのかしら…。もしかして、彼女が異常なまでに自分を卑下するのもそれが関係して…?)

 

な…なんか楯無さんにジ~っと見られてるんですけど…。

 

「お待たせしました……って、一体どうしたんですか?」

「かいちょーがかおりんを見つめてる……」

 

ナ…ナイスタイミング!

布仏姉妹が戻ってきた!

 

「お嬢様?どうなさったんですか?」

「ううん。なんでもないわ。って、学園じゃ会長って呼んでって言ってるじゃない」

「これは失礼を」

 

あ、これって絶対に心からの謝罪じゃないな。

だって、虚さんの顔が笑ってるもん。

 

「それよりも、仲森さん。紅茶をどうぞ」

「あ…ありがとうございます」

「ケーキもあるよ~♡」

 

虚さんが紅茶を置き、本音ちゃんがケーキを置く。

勿論、二人分。

 

「それじゃあ、いただきます」

「いただきま~す♡」

 

いつの間にか座っていた本音ちゃんと一緒に、まずは紅茶を口に運ぶ。

少し熱いけど、飲めない程じゃない。

 

「お…美味しい……」

 

いつも本音ちゃんが虚さんの紅茶の事をべた褒めしていたけど、これは納得だわ…。

私は紅茶の専門家じゃないから詳しい事は分からないけど、これだけは言える。

……これを飲んだらもう、市販のティーパックは飲めないわ…。

 

「でしょ~?お姉ちゃんの紅茶はちょ~美味しいんだよ~♡」

「虚ちゃんの淹れる紅茶は世界一だもんね」

「全く…二人して……」

 

文句を言いつつも、その顔は完全に照れてますよ、虚さん。

 

「けど、本当に美味しいです。これなら毎日でも飲みたいですね」

「あら?早速告白?」

「なんでそうなるんですか…」

 

素直に褒めただけなのに。

 

「む~…いくらお姉ちゃんでも、かおりんは譲らないよ~?」

「馬鹿な事言わないの。仲森さんも困ってるでしょ?」

「でも、虚ちゃんの顔、真っ赤よ?」

「えぇっ!?」

 

あらホント。

どうかしたのかな?

 

「あの……布仏先輩」

「な…なんですか?」

「私の事は名前で結構ですよ。本音ちゃんのお姉さんに他人行儀にされるのって、なんか悲しいですから」

「そ…そうですか?じゃあ、私も名前で……」

「分かりました。虚さん」

「こ…これからよろしくお願いします、佳織さん」

「こちらこそ」

 

よかった…。

本音ちゃんのお姉さんなら、これからも接する事は多いだろうし。

いつまでも他人行儀なのはお互いに気まずいからね。

早いうちに打ち解けられれば、それに越したことはない。

 

「あらあら……意外なライバルが出来ちゃったわね?本音ちゃん」

「私だって負けないもん~…」

 

ライバル?なんのこっちゃ。

姉妹で何か競い合ってるのか?

 

「兎に角、さっきの話は考えておいて。無理強いをするつもりはないけど、私はいつでも大歓迎だから」

「そうですね…。そうさせてもらいます」

 

それからも、私は楯無さん達と雑談をして過ごした。

 

この日から、私の放課後の予定に『生徒会室に行く』と言う選択肢が増えた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 6月も中盤に入り、本格的に学園中の生徒がトーナメントの為の訓練を頻繁に行うようになる。

 

そうそう、この間本音ちゃんに聞いたんだけど、整備班の人達はトーナメントには参加しないらしい。

その代わり、自分が整備したISを出場する生徒に使ってもらい、そのISの挙動で成績を決めるとの事。

つまり、私の場合は、私の成績がそのまま本音ちゃんの成績に直結する訳だ。

これは増々負けられませんな。

 

この日、私とシャルロットはトレーニングルームにて体を動かしている。

と言うのも、今日はアリーナが全部予約で埋まっていて、使えなかったのだ。

かと言って、何もしないのは論外。

せめて、こうして体を動かして少しでも体力を付けようと考えた。

 

「ふぅ~…」

「少し休憩する?」

「そうだね……」

 

今まで使っていたルームランナーから降りて、予め持ってきていたタオルで顔を拭く。

 

「少し飲み物を買ってくるよ」

「分かった」

 

タオルを首にかけながらトレーニングルームを出る。

すぐ近くにある自販機に向かい、コインを入れようとすると、後ろに誰かの気配を感じた。

思わず後ろを振り向くと、そこにはどこかで見たような金髪の生徒がいた。

このリボンの色は……3年生か。

胸元が肌蹴ていて、妙に色っぽい。

 

「ふぅ~ん……こうして近くで見ると、中々……」

「はい?」

 

え~っと……どなた様?

 

なんて考えてると、いきなり自販機を背中に壁ドンされた。

 

「なっ…!?」

「結構スタイルもいいし、肌も綺麗で……」

「あ…あの……」

 

わ…私はどんな状況にいるの?

 

「オレは三年のダリル・ケイシー。お前が『赤い彗星』の仲森佳織だろ?」

「え……っと……」

 

ダ…ダリルって……確かアメリカの代表候補生で、そして……

 

「こうして汗を掻いてる姿を見ると、こっちの方もなんつーか…昂ぶってくるな」

「た…たかっ!?」

 

そ…そう言えば、この人って典型的な百合な人だった!!

や…ヤバい!?もしかしなくても狙われてる!?

 

か…顔が近づいてくる…!

 

「………にひ」

 

わざとらしく笑うと、ダリル先輩がいきなり私の顔に流れた汗を舐めた!

 

「ひゃう!?」

「へぇ~…可愛い声を出すじゃん。増々気に入ったよ」

 

そして、トドメの顎クイ!

先輩の目が私の目を見つめてくる……。

 

「オレに全てを委ねてみないか…?」

「何を……」

「オレなら……お前に最高の快楽を与えられるゼ?」

「いや……私はですね……」

 

先輩の唇が私の唇に近づき、その距離がゼロになろうとした……時だった。

 

「何をしてるっスか~!!」

 

いきなり黒髪の女子が私達の間に割り込んできた。

 

「もしかしてって思って警戒していたら、案の定だったっスね!」

「なんだよ…。折角いいところだったのに…」

「なにが『いいところ』っスか!完全にダリルの方から一方的に迫ってたじゃないっスか!」

「いや…だって、こいつみたいな奴はこっちからリードした方がいいと思って」

「リードってなんスか!リードって!」

 

あ…危なかった…!

割と本気で貞操の危機だった…。

 

つーか、このいきなり来た人は……

 

(あの色は2年生。黒い長髪を三つ編みにしてる)

 

でも、背は私よりも小さい?

先輩だと分かっていても、可愛く見えてしまう。

 

「ほら!早く行くっスよ!」

「はいはい。分かったから、そんなに引っ張るなよ」

 

な…なんだったんだ……?本当に……。

 

「アンタ……仲森佳織っスよね?」

「そ…そうですけど……」

「私は2年のフォルテ・サファイア!アンタにだけは絶対に負けないっスからね!」

「何が!?」

 

いきなりの宣戦布告!?

本気で意味不明なんですけど!?

 

「ダリルも!私と言う者がありながら、浮気なんて許さないっスよ!」

「え~?別に愛人ぐらいいいじゃねぇか~」

「絶対に駄目っス!!」

 

痴話喧嘩をしながら二人の上級生は行ってしまった…。

 

ヤバい……心臓のドキドキが止まらないよ……。

 

「はぁ……はぁ……」

 

それからのトレーニングは、あまり身が入らなかった。

シャルロットに心配されたから、今日だけは早めに切り上げる事にした。

 

女の人にあんなにも迫られたのって、生まれて初めてだよ…。

前に千冬さんや束さんに、この少し手前ぐらいの事はされた事はあるけど。

流石に汗を舐められた事は無かったな…。

 

ダリル・ケイシー……か。

これからも今日みたいに迫られたりするのかな…。

 




いつか佳織と接触させたいと思っていた、虚とダリル&フォルテを出してみました。

虚は少しだけフラグが立って、ダリルは完全に狙ってますね。

逆にフォルテはライバル視。

佳織の学園生活はまだまだ大変そうです。

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